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規制委トップ、再稼働審査事実上合格の川内原発「安全とは言えない」 甘い基準露呈
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140808-00010006-bjournal-bus_all#!bydSDU
Business Journal 8月8日(金)3時0分配信
原子力規制委員会(田中俊一委員長)は7月16日、九州電力が昨年7月8日に提出した川内原発(1〜2号機、鹿児島県)の設置変更許可申請に対して「新たな規制基準に適合している」との審査書(案)を発表。これを受け報道各社は「事実上の審査合格」と一斉に報じた。以降、8月15日まで1カ月間の意見聴取後、正式な審査書がまとめられる。並行して現在、パブリックコメント【編註:広く国民から意見・情報を募集する制度】を募集中だ。
「新たな規制基準」は「重大事故対策」「耐震・耐津波性能」「自然現象・火災に対する考慮等」の3つを柱として規制委が策定したものである。約420ページにわたってまとめられた同審査書(案)を丹念に見ていくと、今回の「適合」判断で規制委は、川内原発の安全対策を全面的に「適切である」と評価している。安倍晋三首相は、「日本の安全基準は世界一。安全確認された原発から稼働を」と規制委の発表を歓迎、他の原発についても「次なる再稼動を」と促した。ちなみに、原発は廃炉以外に止める方法がないため、送電はなくても冷却システムは稼働中であり、「再稼動」という表現はあくまで便宜的な表現にすぎない。
川内原発は鹿児島県薩摩川内市にある加圧水型軽水炉(PWR)で、1号機(運転開始は1984年)と2号機(同85年)の原子炉出力は各89万キロワット。九電は159万キロワットの3号機(改良型PWR)増設を計画中で、実現すれば国内最大規模となる。8月に川内原発が正式「適合」となって新基準による発送電再開の第一号となれば、他の原発とともに川内原発3号機の増設計画にも追い風となる。
●規制委トップ、「安全とは言えない」と発言
ところが、今回の川内原発「仮・適合」発表直後に、規制委の田中俊一委員長から意外な発言が飛び出した。「新規制基準を満たしたから安全とは言えない」「世界一の安全基準という言葉は政治的な発言」として、規制委の発表内容と矛盾する見解を述べたのである。
さらに「再稼動」についても、「そのベースとして我々の審査がある」という一方で、「判断に規制委員会は関与しない」「事業者、住民、政府など関係者の合意で決まる」とコメントした。「基準は満たしているが、安全とは言えない」のであれば、普通に考えて「基準そのものが甘すぎる」ということになるのではないか。その新規制基準を策定したのは規制委であり、田中氏はそのトップに当たる委員長である。しかも、その基準で川内原発を審査し「適合」と発表した。規制委がこのまま「適合」判断を変えなければ、電力会社に対する「設置変更許可」でアイドリング中の原発に本格稼動が認められる。政府と電力会社はその合格証書に基づき、自治体や住民への説得を行うのである。
周知のように、反原発世論はいまだ広範に根強く、多くの国民が巨大事故再発の不安を拭い切れない。例えば、2011年の東日本大震災では、東京電力福島第一原発は想定していた高さ10メートル以上の津波に襲われ、防護壁が役に立たなかった。また、620ガルの地震まで耐えられる世界トップクラスといっても、日本では「基準地震動」に対する最大応答加速度値2000ガルを大きく超えた揺れも観測されている。世界有数の地震列島・日本で外国の基準などは通用しない。稼働中の冷却システムではいまだに汚染水漏れは止まらず、汚染がれきは各地に分散され、農林水産品の産地隠蔽・産地偽装も常態化している。
そもそも、安倍首相が国内外に向けて発信する「日本の規制基準は世界一厳しい」との発言は事実と異なる。ヨーロッパの基準は日本よりも格段に厳しい。例えば、二重の格納容器に加えて、メルトダウンで漏れ出る溶けた核燃料を冷却プールに流すコアキャッチャーは不可欠とされており、飛行機テロの防護コンクリートも二重構造。いずれも、国内の既存原発に後付けすれば莫大なコストがかかるため、日本では経済性を優先して安全性を二の次にしてきた。原発で安全性を優先し規制基準を厳しくすれば、経済合理性を失い「再稼働」などできなくなってしまうからである。稼働を停止すれば廃炉にするしかないが、古い原発を廃炉にすれば、原発は「資産」から「負債」に反転する。そうなれば電力会社は経営破綻してしまうため、古い原発を廃炉にすることを極力避けようとする。そのため、政府は規制基準をできるだけ緩くする。
規制委トップ自ら「甘い」と認める審査基準合格を根拠に、川内原発は再稼働に突き進む。
藤野光太郎/ジャーナリスト
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