01. 2014年8月07日 10:06:18
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確率は低いが敵攻撃での自爆兵器化を考慮した場合、燃料プール地下化や 外部電源や取水システムの強靭化は要検討だな http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41414 無防備な状態で放置されている日本の原発 福島原発事故で露呈した“アキレス腱” 2014年08月07日(Thu) 北村 淳 広島と長崎が核攻撃を受けた日が近づくと、福島第一原発事故を原爆攻撃とオーバーラップさせて、原子力発電所は核兵器のようなものだといった論調が浮かび上がってくる。しかしながら、このような比喩は、若干正しい点はあるが、決して正確な比喩とは言えない。
核兵器は、強烈な核爆発により発生する衝撃波、熱波、放射線によって攻撃目標周辺を広範囲にわたって瞬時に破壊することを目的とした兵器である。結果として、核攻撃を受けた地域には放射性物質が拡散して放射能汚染を引き起こすこともあり得る。 (広島・長崎の場合、空中で爆発した原爆が超高温だったので放射性物質の大半が瞬時に気化してしまった。そのため、福島第一原発事故よりは放射能汚染の程度が低かったとされる) だたし、核兵器はあくまで核爆発による破壊が目的であり、放射能汚染は副作用ということになる。 放射能兵器になりかねない原子力発電所 核兵器と違って、放射性物質を拡散させて放射能汚染を引き起こすことを目的とする兵器を「放射能兵器」あるいは「放射性物質拡散装置」(RDD)と呼ぶ。厳密には放射能兵器には様々な種類が存在するが、「ダーティーボム」と呼ばれる装置が放射能兵器の代名詞となっている。広範囲にわたって放射性物質を撒き散らす強力な放射能兵器は製造が困難であり、通常は狭い範囲を汚染させる放射能兵器をテロリストなどが使用するおそれがあるとされている。 また、強力な放射能兵器を軍隊が手にして敵を攻撃した場合、攻撃した敵地が放射性物質により汚染されてしまい、自軍自身も進撃できなくなってしまうため、通常の国家間戦争では価値の低い兵器と考えられている。そのため、正規に放射能兵器を装備している軍隊は見当たらない。 もし、敵地の原子力発電所を軍事攻撃して放射性物質が撒き散らされ、福島第一原発事故のような深刻な放射能汚染が引き起こされた場合、敵の原子力発電所は超大型放射能兵器としての役割を果たしたことになる──それも、敵が自ら用意してくれた自爆兵器ということになるわけである。したがって、敵地に侵攻したり占領する計画がない軍事作戦にとっては、敵の原子力発電所に対する攻撃は価値が高いと考えられなくもない。 極めて頑丈な原子炉 原子力発電所を軍事攻撃して放射能兵器による攻撃効果を引き起こすと言っても、決して容易なことではない。厚さ2メートル程度の強固なコンクリートで覆われている原子炉を破壊するとなると、大変な攻撃戦力が必要となると考えられていた。 もちろん、戦術核爆弾で攻撃するのが理想的であるが、それならば原子力発電所を攻撃する必要がなくなる。わざわざ原子力発電所を攻撃するからには、通常兵器による攻撃でなければ意味をなさない。したがって、強力な通常兵器による破壊手段を送り込んで攻撃する困難な作戦が要求されるのである。 実際に原子炉を軍事攻撃した代表的事例は、イスラエル空軍がイラクの原子力開発施設を空襲した「バビロン作戦」である。 1981年6月7日、6機のイスラエル空軍F-15戦闘機の護衛を伴ったイスラエル空軍F-16戦闘機8機は、それぞれ2発の2000ポンド爆弾を搭載してイスラエルを発進した。サウジアラビア上空を横切り(領空侵犯)超低空飛行を続けてイラク上空に達したイスラエル空軍機は、バグダッドの南方タムーズの核施設上空に殺到し、原子炉めがけて16発の2000ポンド爆弾全弾を発射した。14発が原子炉を直撃し、原子炉は完全に破壊され廃墟となった。 ただし、結果的に14発の2000ポンド爆弾で原子炉は木っ端微塵になったが、実際のところ2000ポンド爆弾を何発打ち込めば原子炉を完全に破壊できるのかは、特定できなかった。 そのため、この作戦以降も、巡航ミサイルの弾頭(500〜1000ポンド爆弾級)が数発直撃したり、弾道ミサイルに搭載してある通常弾頭(2000〜4000ポンド爆弾級)が直撃した程度では、そう簡単に原子力発電所の原子炉は破壊されないと考えられた。長距離ミサイルの発達によっても、原子力発電所攻撃は“割の良い攻撃目標”とは見なされていなかった。 福島第一原発事故で“アキレス腱”が露呈 ところが、福島第一原発事故において、原子力発電所の原子炉それ自体は極めて強固な構造物で覆われていても、外部電源供給システムや使用済み核燃料貯蔵プールなどは軍事攻撃に極めて脆弱であることが、誰の目にも明らかとなってしまった。 原子炉建屋の基本的な構造(出所:東京電力ホームページより) 拡大画像表示 軍事攻撃により、強固な原子炉を覆う建造物の外部に設置されている電源供給システムや制御システムが破壊されてしまうと、津波や地震によってそれらのシステムが破壊されたことと結果は変わらないことになる。したがって、福島第一原発事故により引き起こされた放射能汚染が再現されることになる。
それよりもさらに深刻なのは、使用済み核燃料貯蔵プールが破壊された場合である。使用済み核燃料プールは、原子炉建屋内の原子炉格納容器の上部に位置している。そして、原子炉建屋は極めて頑丈な建造物であるが、屋根だけは軍事攻撃に対処できるよう頑丈に造ることはできない仕組みになっている。したがって、屋根部分からミサイルや爆弾が突入して使用済み燃料貯蔵プールを破壊してしまう可能性は十分想定できる。 使用済み燃料貯蔵プールが破壊されると、高レベル放射性廃棄物である使用済み核燃料棒が貯蔵プールから飛び出して大気中に飛び散る可能性がある。それは福島第一原発事故の数倍の惨事をもたらすことになる。大気中に燃料棒が飛び出すと、周囲の人々は即死するという。また、汚染処理用ロボットの電子回路も作動しなくなってしまう。したがって、原発周辺地域は人も機械も近づけない死のエリアと化してしまう可能性がある。 このように福島第一原発事故によって、原子炉を破壊せずとも、より“ソフトターゲット”を攻撃すれば、原子力発電所は“受動的放射能兵器”となってしまうことが、一部の原子力関係専門家の常識から国際的な一般常識となってしまったのである。 日本の原発は“受動的放射能兵器” 日本には営業中の原子力発電所が17カ所(原子炉49基、建設中原子炉2基)と建設中の発電所が1カ所(原子炉1基)それに4カ所の発電所で解体中の原子炉が10基ある。 ところが原子力発電所に対する軍事攻撃は小規模なテロ攻撃しか想定されておらず、原子力関連施設が存在する道府県警察警備部に設置された原子力関連施設警戒隊が担当しているのみである。それらの中で、専従部隊として編成されているのは、解体中を含めて5カ所の原子力発電所(原子炉合計14基)を担当する福井県警察原子力関連施設警戒隊だけである。もちろん、ミサイル攻撃や空襲といった本格的軍事攻撃への防護策などは取られていない。 要するに、日本の原子力発電所は、ミサイル攻撃や爆撃といった軍事攻撃に対しては無防備な状態で放置されているのである。このような状況では、日本の原子力発電所はまさに「軍事攻撃を歓迎します」と言わんばかりの無防備な“受動的放射能兵器”と見なさざるを得ない。 さらに悪いことに、手薄な防備態勢に加えて、現在も日本に軍事的脅威を加えている中国軍と北朝鮮軍は日本の原子力発電所を射程圏に収めた通常弾頭搭載長射程ミサイルを多数保有している。 例えば、中国の東風21C型弾道ミサイル(100基以上保有)、東海10型ならびに長剣10型巡航ミサイル(1000基近く保有)は日本全土の原子力発電所の原子炉建屋や電源建屋それにコントロール施設をピンポイントで攻撃可能である。また、北朝鮮の改良型スカッドD(50〜100基保有)の射程圏内には3カ所(玄海・伊方・島根)の原子力発電所が入っている。 日本各地に点在する原発。赤い円は原発から100キロ圏内を示す。 人民解放軍の各種長射程ミサイルを用いれば、日本各地に点在する全ての原子力発電所を一斉攻撃して“日本自身が用意している”超大型放射性物質飛散装置を起動させることが可能である。このような対日原発徹底攻撃を実施した場合、日本の多くの地域に放射性物質が拡散し、日本には人が住める地域が少なくなってしまう可能性すらある。中国の対日攻撃の目的が、かつてローマがカルタゴを完全に滅亡させたように、日本民族を滅ぼし日本の土地を荒廃地と化すのが目的ならば、対日原発徹底攻撃はうってつけである。
しかし、そのような目的ではない場合、人民解放軍が保有している対日原子力発電所攻撃能力は、放射能汚染という深刻な脅威をちらつかせての強硬外交の最後の切り札になりかねない。すなわち、日本の原発が破壊されて放射能汚染地域がつくりだされる以前に、日本政府を屈服させ、中国の核心的利益に関する主張を日本政府に受け入れさせることも可能になる。 外交交渉の段階では、いくら軍事攻撃の可能性により日本が脅迫されていたとしても、アメリカが日本のために中国を軍事攻撃することは絶対にあり得ない。 原発防衛態勢の構築が急務 アメリカでの9.11同時多発テロや、福島第一原発事故などの教訓から、アメリカやNATO諸国それにロシアや中国などでも原子力発電所を各種軍事攻撃とりわけ長射程ミサイル攻撃から防衛する方策が進められている。しかしながら、日本では原子力発電所に対する地震や津波などの自然災害の影響に関しての議論は盛んになされているものの、軍事攻撃に対する議論はいたって低調である。 原子力発電所の災害に対する安全性に関する議論、原子力発電所の再稼働の是非を巡る議論、そして原発そのものの存続に関する議論などが活発に展開されることは当然の成り行きと言えよう。しかし、福島第一原発事故で放射能汚染の惨状を身をもって経験している日本国民が、なぜ原子力発電所に対する徹底した防衛態勢強化を要求しないのか不思議としか言いようがない。 原子力発電所の安全性に問題があろうがなかろうが、再稼働しようが閉鎖になろうが、原発そのものが廃止される運命になろうがなるまいが、現に日本には“受動的放射能兵器”となり得る原子力発電所・原子炉が多数存在するという事実は短時間では変わらない。われわれは、即刻、原子力発電所を長射程ミサイルなどの本格的軍事攻撃から防衛する方策の構築を開始しなければならない。 |