01. 2014年7月28日 19:29:27
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確かに、審査に経済バイアスがかかっている可能性は0ではないだろうな http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0FX0HJ20140728 インタビュー:原子力規制委の審査「厳正でない」=元安全委技術参与 2014年 07月 28日 16:33 JST [東京 28日 ロイター] - 原子力規制員会の新規制基準審査に合格し、再稼働に向け動き出した九州電力(9508.T)川内原発(鹿児島県)について、旧原子力安全委員会で技術参与を務めた滝谷紘一氏(71)は、ロイターのインタビューで、「(規制委は)科学的、技術的に厳正な審査をやっていない。政治や産業界からの要請に応えるべきということが支配しているのでは」と、批判の声を上げた。
滝谷氏は、川崎重工業(7012.T)の原子力研究開発関連部門で長年、技術者として勤務し、高速増殖炉「もんじゅ」のプロジェクトにも出向。旧安全委(2012年9月廃止、原子力規制委員会に移行)には、茨城県東海村JCO臨界事故(1999年)を機に民間技術者として加わり、2000年から08年まで技術参与を務めた。 引退後に発生した東京電力(9501.T)福島第1原発事故を受け、「贖罪の思いで」(滝谷氏)で原子力に批判的な有識者グループに加わった。同氏は、川内原発の重大事故対策が「基準に適合している」とした規制委の審査書案には多数の疑問点があるとし、連携する専門家らとともに、規制委に意見を出す構えだ。 インタビューの主なやり取りは次の通り。 ──川内原発の審査書案はどこに問題があるのか。 「重大事故対策が有効であるか(の判断)には、(設備などの挙動を分析する)解析コードによる計算が介在しているが、過酷事故に関しては解析コードの不確かさが非常に大きい。現象そのものが非常に複雑で、炉心燃料が溶けたり、流れ落ちたり、原子炉容器が破損したり、格納容器内に溶融燃料が落ちて溜まるなど、そうした現象は再現しがたい」 「内外で(複数の)解析コードを作っているが、私がみる範囲では研究開発段階で、実際の重要な安全問題を審査するレベルのところまで仕上がっていない。解析コードの不確かさについては規制委でも着目していると記載があり、(規制委も)認識している」 「(九電など)PWR(加圧水型原子炉)事業者は全社共通して『MAAP(マープ)』という米国で作られたコードを使っている。全ての格納容器破損防止対策にかかわる事象の解析は、MAAPを使っている。審査結果には、解析コードの不確かさを考慮しても格納容器の場合、限界圧力・限界温度以下であり、水素爆轟(ばくごう=爆発の際に音速を超えて火炎が伝搬する現象)は起こさないとの事業者の主張を追認しているだけだ。計算結果に対する不確かさの幅がこれだけあって、(安全寄りに)最大側で考えても基準をクリアするとか、そうした記載が一切なく、確認のしかたに説明性を欠いている」 ──審査書案では「入力パラメーターを動かしてこれだけの不確かさの幅があったが、それらは問題ない」という言い方もしていないのか。 「入力値を変えて、結果として圧力は基準ケースとほとんど変わらないといった『感度解析』は事業者はやっていて、それでよいと規制委員会は(審査を)通している。私が強調したいのは、MAAPによる解析結果の妥当性及び不確かさを、規制委として科学的、技術的、客観的に評価するためには、同じような機能を持つ別の解析コードを使ってクロスチェック解析を行うべきということだ」 「原子力規制庁は今年3月に、JNES(旧独立行政法人原子力安全基盤機構)を統合したが、JNESは数年前に国の予算を取って、クロスチェック解析用に『MELCOR(メルコア)』という、米国原子力規制委員会が持つ解析コードを整備していた。MAAPとMELCORのどちらが正しいかまでは詰め切れないとは思うが、厳しい側に出た値で判断したと規制委が説明すれば、客観性や定量的な信頼性が増す」 ──MELCORで解析していたら、川内原発の審査でより厳しい解析結果が出ていた可能性があったか。 「旧原子力安全・保安院が、福島事故後の2011年6月に、『東京電力福島第1原発事故に係る1号機、2号機、3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析』という資料を公表している。東電はMAAPで解析して、それを保安院がJNESの支援を受けてMELCORによるクロスチェックを行った結果、地震発生後の1号機原子炉圧力容器の破損時間はMAAPでは約15時間、MELCORでは約5時間と、3倍の差異が生じた」 「川内原発での事故シーケンス(進展)におけるMAAP解析では原子炉圧力容器の破損時間は、事故発生から約1.5時間。問題となるのが、『溶融炉心・コンクリート相互作用』という、(超高温の)溶融炉心が格納容器下部に落下し、コンクリートを溶かして破損させる現象だが、九州電力の対策では(原子炉格納容器上部の)格納容器スプレーで注水して、溶融燃料が落ちてきた時点で、格納容器下部に水を張るから、溶融燃料は水の中に沈積されて、コンクリートと燃料の反応は軽微に止まるとしている」 「しかし、MELCORで解析すれば、原子炉圧力容器破損に至る時間がもっと短い可能性がある。仮に(福島事故でみられた両コードの解析の差異と)同じような特性があるとすれば、川内原発におけるMAAP値での圧力容器破損が1.5時間ならば、MELCORでは30分。川内原発の場合、(事故発生から)格納容器スプレー開始まで49分で、30分で原子炉容器破損が起きたら、(格納容器下部に)水が溜まっていない」 ──その場合、溶融燃料が落ちて格納容器のコンクリートと反応するのか。 「大量の水素が出るし、一酸化炭素も出るし、爆発性のガスが出るとともに、床のコンクリートもどんどん浸食されていく。解析コードの不確かさの検討というのは重要で、きちんとやるべきだ」 ──ほかに問題だと感じる点は。 「原子炉内外での構造物・水反応による水素の発生量が考慮されていないことだ。これを考慮して評価すべきだ。JNESのさらに前身の『財団法人原子力発電技術機構』が2003年3月に『重要構造物安全性評価に関する総括報告書』という分厚い報告書を出していて、これが今回の過酷事故関連の基準作りの参照データのもとになっている」 「その報告書では、過酷事故時に予想される水素の発生源として、『ジルコニウム・水反応、炉内構造物・水反応、溶融炉心・コンクリート反応、水の放射線分解、亜鉛メッキ/アルミニウム・苛性ソーダ反応等が考えられる』と記載されている。しかし、申請者の評価にはこれらのうち、炉内構造物・水反応だけが入っていない」 「炉内構造物の材料の主成分は鉄で、その存在量は多量にある。また、炉外の機器、構造物にも鉄は大量に含まれている。従って、炉内及び炉外における鉄・水反応による水素発生量を評価に入れるべきだ。これにより、格納容器内の水素濃度が爆轟の判断基準の13%を超える可能性もある」 ──もし炉内構造物・水反応の部分を含めていれば、水素の濃度が13%を超えた可能性はかなり高くあるのか。 「私はそのように思っている」 ──指摘している内容は専門的で、審査書案やデータが公表されても専門家でないと妥当性を判断できない。 「私は、原子力安全委員会事務局に8年間いた。福島原発事故以前だったから、当時は安全審査、変更申請が多かったが、そうしたときにクロスチェック解析をしていた。今回はその話がひとつも出てこないなと、おかしいなと思ったのがきっかけで、調べてみたら、いま引用したものが出てきた」 ──審査の経験者でないとわからいことばかりだ。 「審査である程度、馴染んている人でなかったら、規制委員会が黙っていたら誰も気づかないレベルの話だと思う」 「いま2つの市民運動に関わっている。1つは(元東芝(6502.T)原子力技術者の)後藤政志さんと活動している『原子力規制を監視する市民の会』と、井野博満さん(東大名誉教授)が参加する『原子力市民委員会』で、意見を持ち寄っている。規制委は8月15日まで科学的、技術的な意見を求めているので、意見を出していきたい」 ──規制委員会の田中俊一委員長は、川内原発など再稼動を目指す原発を審査する際の新規制基準を「世界最高レベルの厳しさ」と強調している。審査を通じて原発の安全性が高まったのか。 「規制委員会が掲げている科学的、技術的に厳正な審査をやっていないと言いたい。何をもってそうかというと、これまで指摘した具体的なことによるが、政治的、産業界からの要請や期待に応えるべきということが(規制委を)支配しているのではないか」 (インタビュアー:浜田健太郎 編集:北松克朗 インタビューは26日) (浜田健太郎) |