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2014年7月23日(水)
原子力規制委員会が九州電力川内原発の再稼働に向け「適合」判断を下した(16日)ことに対し、新聞各紙は全国紙をはじめ多くの地方紙が社説でとりあげました。「無謀な回帰に反対する」など再稼働への動きに警鐘鳴らす「朝日」「毎日」、「再稼働を軌道に乗せねばならない」と督促する「読売」「産経」という全国紙の二分状況に対し、地方紙は原発立地地域の各紙を中心に「安全判断」への痛烈な論調が目立ちます。
安全神話の復活
地方各紙の論調のポイントは大きく二つ。規制委の「適合」判断で「原発は本当に安全か」と、住民の避難計画が未整備という問題です。
川内原発のある鹿児島県の「南日本」は「まだ安全とはいえない」と指摘。規制委が「危険性は小さい」とした噴火・火砕流対策に疑問を投げかけ、「新たな知見が示された場合には重大な決断を」と求めます。東電柏崎刈羽原発のある「新潟日報」は、「福島事故の究明は道半ば」のもとで、あらゆる事態をどこまで想定しているのか、火山対策は十分か、安全対策に盲点はないか、と指摘。「再稼働よりも解決しなければならないハードルがあることを自覚すべきだ」と政府や電力会社に突きつけています。
新基準そのものへの疑問も相次いでいます。「秋田魁(さきがけ)」は、新基準が外国の最新原発より遅れていることなどをあげ、「世界で最も厳しい」というが果たしてそうなのか、と一蹴。「高知」は、そもそも新基準について「解明されていない原発事故の原因を反映しておらず、絶対的な安全は保証できない」と批判。「基準を過信するのは、事故の遠因となった『安全神話』の復活にもつながりかねない」と警告します。
福井判決の重み
今回の「適合」判断で、規制委が住民の避難計画を審査の対象とせず置き去りにしたことも大問題です。「河北新報」は「事故が起きる前提に立つとするならば、避難計画こそ優先すべき対策のはず」とその逆行ぶりを指摘。「徳島」は「30キロ圏内の完全な避難計画を再稼働の最低条件とする必要があろう」と求め、「西日本」も「本来なら避難計画の実効性を再稼働の前提とするのが筋」「不安や課題を残したまま、再稼働に進むのでは拙速」だと批判します。
地方紙の視点で特徴的なのは、福島事故の現実から論じていることです。伊方原発のある「愛媛」は、いまも13万人が避難生活を余儀なくされ苦難を強いられている現実にふれ、「福島の痛みを、今もう一度、まっすぐ見つめ、エネルギー政策を考え直す」ようよびかけています。福島の現実を顧みず、もっぱら「電力供給は綱渡り」「料金高騰が生活と産業を直撃」「国富の流出に思いを致すべき」と再稼働を督促する「産経」「読売」などの立場と対照的です。
「産経」「読売」がたつ「国民の生命より経済優先」という考え方は、先の福井地裁判決で厳しく退けられたものです。この判決が地方紙にも生きているといえます。
(近藤正男)
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