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避難計画は“他人事” 川内原発再稼動ありきの安全神話を信じるな〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140723-00000002-sasahi-soci
週刊朝日 2014年8月1日号より抜粋
原子力規制委員会は16日の定例会合で、鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発1、2号機の安全対策が新規制基準を満たしているという「審査書案」を了承。今秋の再稼働に向け、事実上の“お墨付き”を与えた。火山や活断層による地震の危険性などに関して甘いと指摘されている。しかし、それだけでなく16日の会見でも避難計画についての質問が相次いだが、田中俊一委員長は、“他人事”を決め込んだ。
「万全か万全でないかは率直に言って判断が分かれるところがありますので、今後どうするかはまだ。私どもの規制の範囲外というところもありますので、審査の中で評価しておりません」
環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也氏が憤る。
「規制委は住民避難は自分たちの責任の範囲外だと言っていますが、規制委の設置法第1条には『原子力利用における安全の確保』について『一元的につかさどる』組織だと書かれていて、当然、住民避難にも責任がある。法令に反することを堂々と主張していて、許せない行為です」
電力会社も国も避難計画に責任を持たないため、結局、自治体に丸投げされることになる。鹿児島県の策定した避難計画について調べている環境経済研究所の上岡直見代表がこう語る。
「県の計画では自家用車で逃げる以外の交通手段を想定していない上、代替の輸送手段となるバスの台数もまったく足りていない。また、県が避難路として想定している道路の一部は、ハザードマップで5メートルの津波が来たら水没することになっている。原発が壊れるような津波が来たら、当然、通れなくなります」
もっとひどいのは、介護が必要な高齢者など要援護者の避難計画だ。伊藤祐一郎・鹿児島県知事は6月、「30キロ(圏内)までの要援護者の避難計画というのは現実的ではない」と話し、10キロ圏より外の避難計画は当面策定しない考えを示した。移動が困難な要援護者は屋内退避で十分という暴論なのだが、前出の上岡氏はさらにこんな問題点を指摘する。
「屋内退避といっても、要援護者をサポートする人も必要だし、食糧や水などのライフラインも必要になる。それらをどうやって確保するのかも、まだ考えられていないのです」
これが、安倍首相が胸を張る「世界一の安全基準」の実態である。
16日の会見で、田中委員長は高浜原発(福井県)について「ほぼ論点は整理されてきている」、玄海原発(佐賀県)について「相当のところまで詰まったと感じている」と語り、次なる“合格候補”に挙げた。
「原発再稼働を乗り切れるか。これが安倍政権の最大の試練」(自民党議員)
川内原発で前例を作り、政府は再稼働の量産体制に入ろうとしているのだ。
「今回、審査書案を出すのを当初の予定より1週間遅らせたのは、13日に投開票があった滋賀県知事選への影響を恐れたからでしょう。規制委は政府と一体となって再稼働に邁進している」(前出の飯田氏)
3・11前の構図が再び、復活していたのである。
(本誌・小泉耕平/桐島 瞬)
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