48. 2014年7月18日 20:52:40
: FSv3Z716zE
原子力規制委員会の安全審査で、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が合格第1号となった。しかし、再稼働は2014年10月以降にずれ込む。電力需給は綱渡りで、地元経済への打撃も収まらない。原子力発電が本格化した1966年以降、初めての「原発ゼロの夏」を現場から報告する。2014年7月7日午後。兵庫県姫路市の関西電力姫路第二火力発電所5号機で、2人の作業員が耳を澄ませていた。構内は約40℃だ。巨大なタービンが回り、轟音が響く。「聴診棒」と呼ばれる約1mの金属棒をタービンに当て、回転音に異常がないか調べた。 点検個所は約200か所。2014年夏は2倍に増やした。野田明夫副所長は「長期間の故障だけは避けなければならない」と危機感を募らせている。 運転開始から40年を超えた5号機は、2015年度までに廃止する予定だった。原発再稼働が進まず、2020年度まで5年程度、活用することにした。ところが2014年4〜6月だけでも出力が低下する故障に2回見舞われた。運転を止めて隅々までチェックする定期点検の時期に来ていたが、2014年夏を乗り切るため、秋に先送りした。休日や夜間に必要な部分だけ補修し、しのいでいる。 電力会社にとって、電力を安定供給するには、供給力が最大需要を少なくとも3%上回る必要があるとされる。電力危機以前はおおむね8%以上の余力があった。だが、関西電力管内の見通しは2014年夏、ぎりぎりの3%。東京電力から電気を分けてもらうことでやっと達成した。それでもピーク時の余力は87万キロワットで、姫路第二火力発電所5号機クラスの火力発電所が1基故障しただけで電力不足に陥りかねない。 大阪市の危機管理室は「今年(2014年)は計画停電どころか、突然の大規模停電の恐れすらある」と警戒感を強める。計画停電を想定した訓練を行うなどして、もしもの時に備えている。 「これは注意が必要だ」。台風8号が接近した2014年7月8日午前、九州電力本社の中央給電指令所で、社員たちの視線は大型電光掲示板に注がれていた。最高気温はは30℃を超え、冷房需要がぐんぐん伸びた。ピーク時の需要は予想より約100万キロワットも多く、供給力に対する使用率は「やや厳しい」に相当する94%になった。 九州地方は関西と並んで全国で最も需給が厳しい。長崎県にある電源開発松浦火力発電所2号機が定期点検中の3月、タービン落下事故を起こして供給がストップしていることが大きい。九州経済産業局は2014年6月の立ち入り調査で、「今夏の需給逼迫の大きな要因だ」と叱責した。 東日本大震災前の2010年度、九州電力の発電量のうち火力発電は52%だったが、2013年度は89%に高まった。古い火力発電所をフル稼働しているため、故障の危険はつきまとう。 沖縄電力を除く全国の火力発電所のうち、運転開始から40年以上が経過した「老朽火力」の割合は震災前の1割から2割になった。 予想外の猛暑になった場合、原発ゼロの夏を乗り切れるのか。「後は神頼み。気温が上がらないよう祈るだけだ」。九州電力の瓜生道明社長が語った言葉は、多くの電力関係者の本音と言える。 原子力発電所の運転停止が続き、火力発電所への依存が大きくなっている。2013年度は日本の発電量のうち、火力発電の割合が88%で、第1次オイルショックが起きた1973年度の80%を上回る水準になった。東日本大震災前の2010年度は62%だった。
火力発電所は老朽化が進む。沖縄電力を除く電力9社の出力で見ると、運転開始から40年以上が過ぎた古い発電所は約2割(2013年9月末現在)を占める。四国電力は約4割、東京電力も約3割と高い。震災後の電力不足で、設備が劣化したり発電効率が悪かったりして利用を控えていた発電所も、使わざるを得なくなった。 心配されるのがトラブルだ。電力会社は火力発電所をフル稼働させるため、定期点検を先送りしている。火力発電所のタービンは4年ごと、ボイラーは2年ごとの点検が法律で決まっているが、延期が認められた。 電力需要が高まる夏と冬を対象にした経済産業省の調査では、トラブルや緊急の工事などで予定外に運転を止めたケースは2013年度は561件と、2010年度より2割増えた。40年超の発電所だけみると、2013年度は169件と、2010年度の1.7倍に増えていた。 ■火力発電所のうち運転開始から40年を超えた発電所の割合 電力9社計(最大出力ベース):21%「老朽火力の基数/全体、76基/240基」 北海道:15%「3基/14基」 東北:13%「5基/23基」 東京:27%「29基/69基」 北陸:17%「3基/10基」 中部:20%「15基/42基」 関西:19%「6基/35基」 四国:41%「6基/11基」 中国:15%「5基/17基」 九州:15%「4基/19基」 *2013年3月末時点で電力9社が保有していた火力発電設備の最大出力の合計(1万kw未満など除く)
|