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増え続ける汚染水、凍らない「凍土壁」、稼働しない「ALPS」、トリチウム汚染された地下水、あと40年続く原発作業(7/9 日本経済新聞)
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Wednesday, July 09, 2014 東京江戸川放射線
そびえる原子炉建屋4号機の影が海に向かって長く伸びる。日中の暑熱がやっと和らぎ始めた午後5時すぎ、赤い掘削機がうなり地下に穴を掘る作業が始まった。これからの季節、東京電力福島第1原子力発電所の戸外作業は午前や夕方の涼しい時間に限られる。防護服を着た作業は過酷だ。
東電は2014年7月8日、福島第1原発を報道陣に公開した。6月に工事が始まった「凍土遮水壁」の作業現場。掘削機が掘る穴には冷凍管を埋め込む。建屋周辺の地下をぐるりと囲む氷の壁だ。周辺の地下にたまる高濃度汚染水が地下水と混じり合って汚染が広がるのを防ぐ。じっと現場を見つめていた東電の担当者は「汚染水対策がようやく本格化する」と感慨深げにつぶやいた。
専門外の「水」を扱うという慣れない作業に、東電は翻弄され続けてきた。爆発で周囲に飛び散った放射性物質は雨水に混じり、一部が太平洋に流れ出た。高濃度汚染水は、ためたタンクのあちこちの隙間から漏れ出した。事故で破壊された原発の解体に手を付ける前に、まず東電は汚染水問題の解決に忙殺されている。
現場を視察した国際原子力機関(IAEA)は汚染水問題に深い憂慮を表明。東電に任せきりにせず、政府を交えた総力戦で国家プロジェクトを完遂しなければならないと助言した。
こうして国が関与することになった汚染水対策の切り札が凍土壁だ。税金約320億円を投じ、このほど着工した。今秋には汚染水を浄化する施設も大量に増設される。福島第1原発の汚染水対策は正念場を迎える。
巨大なアイスキャンディーが原子炉建屋付近の地下をぐるりと取り囲む様子を想像してほしい。1メートルおきに地下30メートルまで差し込む凍結管は全部で1500本、全長は1.5キロ。これだけの規模の氷の壁は世界でも前例がない。年度内には凍結管を埋める工事を終える。来年度には凍結管に冷たい不凍液を流し、周りの土壌をアイスのように固める作業が始まる予定だ。
汚染した区域の地下を氷の壁で囲えば、地下水が外から流入して放射性物質と混じり、新たな汚染水が際限なく増える現状を打開できる。さらに汚染水が海側に流れ出るのを氷の壁で妨ぐ効果も見込む。これが凍土壁の目的だ。
当初は鉄板や粘土で壁を造ることも考えた。だが、原子炉建屋付近の地下にはたくさんの配管やトンネルが走り、中には汚染水で満たされているものもある。そこに鉄板などを打ち込めば汚染が拡大してしまう。配管などを傷つけず土壌を固めるために選んだ手法が凍土壁だ。もともとは水分の多い場所でトンネルなどを掘るための技術。運用期間は2020年度までを想定している。
しかし、凍土壁はここにきて不安材料がでてきた。「なぜ凍らないのか」。東電の関係者は首をひねる。福島第1原子力発電所の原子炉建屋と海の間には、高濃度汚染水がたまる地下坑道(トレンチ)がある。東電は4月からトレンチ内に凍結管を差し込んで汚染水を凍らせる工事を始めた。いわばミニ凍土壁だ。
ところが、2カ月以上たってもトレンチ内にたまった汚染水の一部が凍らない。汚染水が流れ続けているのが原因と考えられ、凍結管を増やす対策などを検討中だ。
前例のない大規模な凍土壁計画には様々な関門が待ち構えている。巨大な「アイスキャンディー」が汚染水対策のカギを握る。
なぜ福島第1原子力発電所は汚染水問題でこんなにてこずるのか。その最大の理由は、原子炉の真下をとうとうと地下水が流れ続けているという同原発の特殊な立地だ。
事故で溶け落ちた核燃料はまだ原子炉の中に放置されたままで、熱を発し続けている。放置して過熱すれば危険なため、1時間に数トンの水を常に浴びせて冷やしている。この冷却水は放射性物質に触れて汚染水になるが、同じ冷却水(汚染水)を循環しながら使い続けていれば汚染水が増えることはなく、何の問題もなかった。
だが、原子炉建屋は爆発の衝撃で破壊され、ひびが入っている。ここに福島第1原発特有の大量の地下水が押し寄せ、隙間から建物の中に流れ込む。その量は1日に400トン。原子炉を冷やした汚染水に日々地下水が混じり込み、汚染水は毎日400トンずつ増え続けている。
東電は汚染水をためるためのタンクを自転車操業で増設し、止めどなく増える汚染水を片っ端から貯蔵している。しかし、急ごしらえのタンクには不具合が発生。鉄板をボルトでつないで造ったタンクはあちこちで隙間が開き、汚染水が土壌に漏れ出した。
作業ミスも相次いだ。整地が不十分なままタンクを傾いて置いた場所では、誤って汚染水を満タンまで注水し、天板からあふれてしまった。タンク同士をつなぐバルブの開閉を誤り、汚染水が土壌に流出したこともある。
東電はタンクからの汚染水漏洩の見回り強化や作業手順の改善、溶接して造る丈夫なタンクへの置き換えなどの対策を相次ぎ実施。タンクからの漏洩事故はひとまず収まった。だが、敷地内にずらりと並ぶタンクにいつまでも汚染水を保管し続けるわけにはいかない。リスクと隣り合わせだ。
http://www.nikkei.com/edit/interactive/osensui0709/
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