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福島第一原発事故時に必要性が明らかになった「免震重要棟」。年内の再稼働一番手と目される川内原発に「免震重要棟」が設置されるのは「2015年めど」。泥縄の再稼働ではないのか photo Getty Images
原子力規制委が「泥縄の再稼働」を週内にも決断へ! 福島第一原発事故の教訓は何処に?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39764
2014年07月08日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 :現代ビジネス
新聞報道によると、今週水曜日(7月9日)にも、原子力規制委員会(田中俊一委員長)が九州電力の川内原子力発電所1、2号機の再稼働にお墨付きを与える見通しだ。
崖っぷち状態で不意の大規模停電に繋がりかねない今夏の電力需給や値上がりの一途を辿る電気料金、悪化し続ける国際収支、そして排出削減がままならなくなる温暖化ガス問題など山積みの懸案を見ていると、何の展望もないままに、いたずらに原発の運転を停止させておくのは、われわれのくらしと日本の経済を脅かす行為と言わざるを得ない。
しかし、だからと言って、福島第一原発の未曾有の事故の経験を活かそうとしない泥縄式の再稼働に賛成票を投じることもできない相談である。
トータルで見て、果たして今回の再稼働への道筋は合理的なものだったと言えるのか。今一度、検証しておきたい。
■行き当たりばったりで混迷極めた3年4ヵ月
東北電力など電力各社による自主的な対策の実施(2011年3月)、旧原子力安全・保安院による「緊急安全対策」の指示(2011年3月)、同院による「シビアアクシデント対策」の指示(同年6月)、菅直人元首相が原発再稼働の条件として表明した「ストレステスト」の導入(2011年7月)、そして原子力規制委員会の発足(2012年9月)と同委員会による新規制基準の施行(2013年7月)…。
東京電力の福島第一原子力発電所が2011年3月11日に東日本大震災の直撃を受けて、国際原子力事象評価尺度 (INES)で最悪の「レベル7」の事故を引き起こして以来、今月で3年4ヵ月あまり。日本の原発政策は、朝令暮改の行き当たりばったりの対応が繰り返され、混迷を極めてきた。
曲がりなりにも再稼働へ向けて一定の方向性が定まったのは、昨年夏、原子力規制委員会が新規制基準を施行してからのことである。
だが、新規制基準への適合性の審査に第1陣で手を挙げた北海道、関西、四国、九州の各電力は、できるだけコストをかけずに、できるだけ早く再稼働に漕ぎ着けたいという姿勢が露骨だったうえ、提出する書類も不備が目立ち、審査は難航した。
特に、規制委員会を苛立たせたとされるのが、原発ごとの耐震の想定値の上限引き上げ問題である。横並びの“談合”体質の電力各社が、個別の判断に基づく対応に難色を示し、共同で研究費などを拠出している電力中央研究所に一括の見直し案を算出させようとしたからだ。
そうした中で、審査開始から8ヵ月を経た今年3月初め。火力発電用の化石燃料の調達コストの高騰による経営の圧迫が顕著だった九州電力が、もはや背に腹は代えられないと、問題の“談合”破りの挙に出た。そして、「他と対応が違う」と規制委の歓心を買うことに成功し、「優先審査」対象の座を勝ち取ったのだ。
期待された電力需要のピークである夏までの再稼働には間に合わないものの、今週水曜日(9日)にも適合性審査の合格証書にあたる「審査書案」が示される見通しで、年内の再稼働が現実味を帯びてくる。
■今夏は老朽発電所のフル稼働が必要!?
今後、川内の優先審査が済めば、原子力規制委員会は、他の原発の本格的な審査に進む見通しだ。
その対象としては、昨年7月に新規制基準への適合性審査の第1陣で手を挙げた北海道、関西、四国、九州の4電力の6原発のうち、準備不足が目立つ北海道電力の泊原発と福井地裁が運転差し止めを命じた関電の大飯原発の2ヵ所を除いたところ、つまり、九電の玄海原発、四国の伊方原発、関電の高浜原発の3つが有力視されている。
反原発派の方々からは厳しいお叱りを受けるだろうが、今夏の電力需給を見ると、原発の運転停止の継続はほぼ限界に近付いている。電力10社の今春の経済産業省に対する報告で、今年8月が昨年並みの猛暑になった場合、沖縄を除く全国の9電力の予備率は平均で4.6%と、安定供給に最低限必要とされる3%を確保するのがやっとだからである。
しかも、原発依存度が高く、ガスタービンなどの緊急電源の設置で後手に回ってきた関西電力と九州電力の予備率は、それぞれ1.8%と1.3%と、必要な予備率(3%)を割り込むことも明らかになっている。
電力業界では、中部電力が火力発電所などをフル稼働して、電気を関西、九州両電力に融通することで、この危機を乗り切りたいとしているが、フル稼働が必要な発電所には事実上の廃棄処分になっていた老朽設備が多く含まれている。全国レベルでは、そうした老朽設備が全体の2割に達しており、いつ、そうした設備がダウンし、突発的な大規模停電が起きても不思議はないという。
また、アベノミクスの異次元の金融緩和に伴う円安も加わって、化石燃料の調達コストが高騰、われわれの支払う電気料金はうなぎのぼりだ。これは、くらしの負担だけでなく、経済全体の足を引っ張る重荷である。そもそも老朽化した火力発電の酷使には、CO2の排出拡大という地球環境を損ねる問題も付き纏う。
■名ばかりの「安全基準」、事故対策は不十分
そこで問題なのは、一連の原発再稼働が、福島第一原発事故の経験を踏まえた万全の措置を講じることができたのか、そのうえでの必要最小限の施設の再稼働になっているかという視点だろう。福島第一原発事故の発生以来、これまで何度もこのコラムで指摘してきたが、この視点からみると、この間に政権交代という絶好の転換の好機があったにもかかわらず、まったく改善が見られないのが実情だ。
そもそも、事実上、再稼働にお墨付きを与える権限を持っている原子力規制委員会の新規制基準は、いわば地震の揺れと津波に対する建築基準を強化したものに過ぎず、事故の予防を約束するものではない。
一部のメディアが喧伝する「安全基準」という呼び名とは、似ても似つかないものだ。つまり、深刻な事故が再び発生するリスクは残されたままであるにもかかわらず、事故が起きたときの対策は不十分なのである。
その典型的な例が、原子力損害賠償制度。1サイト当たりの上限が1200億円しかなく、被害者の泣き寝入りを減らするために必要だという大義名分で、東電の国有化や原子力損害賠償支援機構の設置を招いた。この制度の昭和30年代からの構造的不備は何ら改められていない。
また、原発周辺の住民のいざという時の避難計画作りも、県レベルの自治体に丸投げ状態。ほとんどの地域で万全には程遠いまま放置されている。
さらに、使用済み燃料の中間貯蔵地と最終処分地の決定という大きな懸案にも解決のめどが立っていない。
■「BMRよりPWRが安全」は乱暴である
最後になったが、本稿でもうひとつ指摘しておかなければならないのは、政府、電力会社が福島第一原発事故以来、大別して2つある原発のうち、水素爆発など深刻な事故を引き起こした福島第一原発の属するタイプ「沸騰水型原子炉」(BWR)と違って、「加圧水型原子炉」(PWR)は格納容器が大きくて安全だというムード作りを行ってきた問題だ。
実際のところ、原子力規制委員会も、その路線に沿って、PWRの川内原発をまず解禁し、次いで同じくPWRの玄海、伊方、高浜の本格審査に入ろうとしている。
しかし、BWRと比べてPWRの方が安全という議論はあまりにも乱暴である。なぜならば、炉内で熱した水蒸気を直接発電に使うBWRと違って、間接的に熱した水蒸気を使うPWRは、その分だけ配管が多く複雑になり、PWR固有の事故を起こしてきた歴史的な事実があるからだ。
関西電力の美浜原子力発電所の2号機が1991年2月に、同3号機が2004年8月に起こした事故はいずれもそうした配管の破断が原因だ。しかも、3号機の事故は、5人もの作業員の命を奪うという我が国の原子力史上最悪の事故の一つだ。
それにもかかわらず、原子力規制委員会が、PWRの川内原発に再稼働のお墨付きを与えるにあたって、BWRの原発と違い、2007年の中越沖地震や今回の東日本大震災で重要性が裏付けられた施設の設置に猶予期間を与えるとみられているのは、それが速やかな再稼働を後押しするための措置だとすれば、技術面での安全確保を唯一最大の使命とすべき機関として安易と言わざるを得ないだろう。
その第一が、九州電力が申請段階でその設置を「2015年度めど」としている「免震重要棟」の問題だ。大規模地震の際の指揮所となる「免震重要棟」は、中越沖地震の反省から必要性が幅広く知られるようになったもので、BWRの東北電力・女川原発や中部電力・浜岡原発では早くから自主的に設置されてきた。指揮所の安全確保は、BWR、PWRという原子炉の形態とは無関係に重要なはずである。
■安倍首相は安全委員会に責任を押し付け
同様に、九州電力は申請時に、福島第一原発が水素爆発を起こしたことで重要性が確認された、いざという時に大気中に排出するガスから放射性物質を取り除くための「フィルター付きベント(排気)設備」の設置を「16年度をメド」と猶予を求めていた。
こちらは、PWRの原子炉の容量がBWRより大きいという理由で、すべてのPWRに猶予期間を設けてPWRの早期再稼働を後押しする方針が明らかにされている。いずれも、安全よりも再稼働を優先するものと受け取られかねない判断で、原子力規制委員会の使命を考えれば、ちぐはぐな印象を免れない。
本来ならば、原子力規制委員会は、もっと厳密に、その役割を設備の安全性や強度の問題の審査だけに限定すべきだった。言い換えれば、再稼働の是非は高度に政治的な判断として扱うべきものだったはずなのだ。
しかし、安倍晋三首相は政権発足以来、政治が是正すべき原子力損害賠償制度、住民の避難計画、使用済み燃料の処分計画などの不備を放置したまま、「(原子力安全委員会によって)安全性が確認された原発は、再稼働する」と言い続けて、政治が下すべき判断を原子力規制委員会に押し付けてきた。
是正措置や判断に意見が対立する問題があり、それらを実施することに伴い、政権の支持率が下がるリスクを嫌ってきたからである。そうした姿勢には、首相のリーダーとしての自覚と資質を問われるべき問題が横たわっている。
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