03. 2014年7月07日 18:54:57
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>「健康食品」のはずの青汁に放射能照射実際は、よほど高線量の照射でも、害はほとんどないだろう http://food-entaku.org/ir-qa-2.htm Q5:海外で色々な食品へと実用化されているのに、なぜ日本ではジャガイモだけなのでしょうか? A5: ジャガイモの他に、さまざまな照射食品の安全性が国内外の試験で確認されていますが、日本でジャガイモに続いて許可されなかったのは、一部の消費者団体による反対運動などの政治的な問題と考えられます。 日本では多くの先進諸国と同様に、食品への放射線照射はいったん原則的に禁止した上で、安全性が確認されたものから個別に許可するという手順を取っています。日本で1972年にジャガイモの照射芽止めの許可に先立って、国を挙げての安全性試験が実施され、ジャガイモと玉ねぎの芽止め、米と麦の殺虫、ソーセージとカマボコの殺菌、みかんの防カビについて安全性が確認されました。そして、ジャガイモに続いてこれらの食品の照射も許可される筈でしたが、一部の消費者団体による照射馬鈴薯ボイコットなどの執拗な反対運動の影響で、許可を要請する立場にある事業者や関係省庁と、許可を与える立場にある厚生省の双方で、食品照射の実用化を進める機運が後退し、次の一歩が踏み出せないまま今に至っています。
2000年には全日本スパイス協会が香辛料の放射線殺菌の許可を厚生省(当時)に要請しましたが、それに対して国として許可するのかしないのか、その理由は何か、などは明らかにされていません。その後、厚生労働省はようやく2007年6月の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会で、(1)食品照射の安全性に関する科学的な知見、(2)製造業や流通業等の社会的な需要、(3)消費者がそれを受け入れる素地の有無の3点につき「中立的で能力のある外部機関」に委託調査する旨を決定しました。そして、2年後の2009年6月に、その調査を受託した株式会社三菱総合研究所の報告書が厚生労働省のHPに掲載されました。しかし、その報告書は、初歩的な用語の間違いや事実関係の誤りが多く、しかも参考資料として食品照射に反対している団体の要望書や申し入れ書だけが20ページ余りも添付されているというおかしなもので、日本食品照射研究協議会は厚生労働省に対して報告書の誤りを指摘するコメントを出しています。(「業務報告書への一般的なコメント」、「本報告書における主な疑問箇所」) 「食品照射を巡る最近の状況」(放射線と産業、2009年) 「日本における食品照射の開発の経緯と今後の課題」(食品照射、2003年) Q6:食品照射のデメリットってなんでしょうか? A6: 食品によって、また目的によって異なりますが、一般的には以下の3つが考えられます。 (1)コストが高い、 (2)食品によって向き不向きがある、 (3)消費者の感覚的な拒否反応が心配、 (1)コストが高い。芽止め照射の費用は2〜3円/kgですが、コストは線量に比例するため殺菌のための線量ではその十倍〜百倍になります。したがって、商品価値が高くメリットが大きい場合や、他に適当な方法がない場合に限って使われます。 (2)食品によって向き不向きがある。小麦粉の粘度低下など、食材によっては風味や加工特性が変わることがあります。水溶性のビタミンB1やビタミンCなど特定の栄養素の損失も起こり得ますが、加熱処理と同程度以下であり、特に栄養学的な問題にはならないとのデータがあります。 (3)消費者の感覚的な拒否反応がある。メーカーや流通業者は、一部の消費者運動家などによる攻撃やボイコット運動、企業・商品イメージ低下などのリスクを負います。リスク管理機関の科学的データに基づく毅然とした行動と、各方面の関係者の粘り強いリスクコミュニケーションの努力によって、消費者の理解と信頼を得られない限り、日本の消費者が食品照射のメリットを享受することはできません。 「食品照射を巡る最近の状況」(放射線と産業、2009年) 「食品照射の現状」(RADIOISOTOPES、2007年) http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/syokuhin/siryo/syokuhin06/siryo2.pdf http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0626-8l.pdf 第4章 照射食品の健全性の見通し 食品照射が有用な技術であるとしても、放射線照射された食品が健全でなけ れば、食品照射という技術を食品取扱い技術の選択肢の一つとすることはでき ない。ここでいう照射食品の健全性とは、照射食品の毒性学的安全性、微生物 学的安全性、および栄養学的適格性の3つの観点を合わせたものである1-3)【参 考4−1】。 照射食品の健全性に関する知見については、わが国や各国、さらには国際的 な機関が実施した大規模な調査・研究により蓄積され、複数の学術的な報告書 が公開されている。それらの知見を基に、食品照射の主要なリスクと考えられ る照射食品の健全性についての見通しを以下のようにとりまとめた。 4−1.食品照射を行う前提条件4,10,13) 生鮮食料品に過剰な線量を照射すると、その食品本来の特性や商品価値を失 う可能性があり、また、照射前後の管理が不十分な場合、生き残った微生物な どが増殖する危険性がある。 コーデックス規格では、一般条件として、以下を必要としている。 @)食品照射の正当性は、技術的な必要性のある場合や消費者の健康上の利 益となる場合、及びその両方の場合に認められること A)食品照射を適正衛生規範(GHP:Good Hygienic Practice)と適正製 造規範(GMP:Good Manufacturing Practice)、または適正農業規範 (GAP:Good Agricultural Practice)の代替として用いるべきでは ないこと B)線量が技術的及び衛生上の目的に見合っていること C)適正照射基準(GIP:Good Irradiation Practice)に適合しているこ と D)食品及び容器包装が適切な品質、かつ許容できる衛生状態であり、放射 線照射処理に適していること E)適正製造規範(GMP)に則って放射線照射前後に対象となる食品及び 容器包装が適正に取扱われていること 4−2.安全性(毒性学的安全性、微生物学的安全性)の見通し (1)毒性学的安全性 毒性学的安全性とは、照射食品の急性毒性、慢性毒性、発がん性、変異 原性、遺伝毒性、催奇形性等に関する安全性である。これに関しては、非 常に多くの動物実験が過去数十年にわたって実施されてきた。 21 a.わが国の原子力特定総合研究 わが国の原子力特定総合研究では、同研究が終了する1988年までに、 ばれいしよ(照射される放射線の種類:ガンマ線、その目的:発芽防止、 以下同様に示す)、タマネギ(ガンマ線、発芽防止)、米(ガンマ線、殺虫)、 小麦(ガンマ線、殺虫)、ウィンナソーセージ(ガンマ線、殺菌)、水産ね り製品(ガンマ線、殺菌)、みかん(電子線、表面殺菌)の7品目に対し、 慢性毒性、繁殖性、催奇形性、変異原性、遺伝毒性など多くの毒性学因子 に関する何百もの研究が実施され、その結果が検討・評価された32-35)。そ の結果は、 i)照射による毒性物質の生成を調べる化学的検査において、照射による 影響と見られる成分変化は認められない ii)照射した食品の慢性毒性、繁殖性、催奇形性などに及ぼす影響を調べ た動物実験において、影響が見られない iii)照射した食品の染色体や生殖細胞に対する遺伝的な影響を調べる変 異原性試験や遺伝毒性試験において影響が見られない というものであった。この結果に基づいて、7品目それぞれに適性線量(照 射目的が達成でき、食品として適性が維持される線量)が明らかにされた (ばれいしよ:70〜150Gy、タマネギ:20〜150Gy、米及び 小麦:200〜500Gy、ウィンナソーセージ:3〜5kGy、水産ね り製品:3kGy、みかん:1.5kGy)。 b.WHOの評価 WHOは、各加盟国における食品照射に対する消費者からの不安・批判 があったため、過去に行われた国際的な検討あるいは各国の専門家委員会 により検討された膨大な量の研究と共に1980年以降に実施された科学 的研究も検討・評価し、特にその当時議論の的となった研究や指摘につい て注意深く評価して、1994年、報告書「照射食品の安全性と栄養適性」 1)において、 i)入手可能な科学的な文献の再検討の結果、食品照射は十分に検証され た食品処理技術であることを示している。安全性についての研究結果 は、現在までのところ有害な影響を示していない。食品照射は、貯蔵 期間を延長し、微生物などの有害生物を不活性化することで、より安 全で豊富な食品の供給を保証することができる。 ii)なお、慢性毒性、生殖毒性、催奇形性など多くの毒性学的因子を評価・ 検討した結果、対象とする因子によっては、評価・検討の対象となる 研究報告が少ないものもあるが、照射食品の摂取による毒性学的な影 22 響はない、という研究結果で一致している。 ということを確認している。なお、同報告書では、中国において、医大生 男女70人の健康なボランティアに対する照射食品の試食試験が実施され、 非照射食品を与えたグループと照射食品を与えたグループの間で有意な差 はなかったとする結果もまとめられている。 さらに、世界各国で研究開発が進められ、1997年、WHOの高線量 照射に関する専門家委員会は10kGy以上の線量を照射した食品に関し ても健全性評価を実施し、意図した技術上の目的を達成するために適正な 線量を照射した食品は、適正な栄養を有し安全に摂取できる旨の結論を下 した9)。 c.香辛料について 香辛料への放射線照射した場合の分解生成物については、香辛料に放射 線を80kGy照射するとアルデヒド・有機酸類などの酸化物が微量生成 されるが、10kGyの場合ほとんど検出されないとされている36,37)。毒 性試験による評価については、香辛料にはもともと変異原性物質や刺激性 物質が含まれているため長期毒性試験を実施することが難しい。ハンガリ ーでは、催奇形性試験、遺伝毒性試験について、代表的な香辛料の混合物 (パプリカ55%、黒コショウ14%、コリアンダー9%、オールスパイ ス9%、マジョラム7%、クミン4%、ナツメグ2%)にコバルト60か らのガンマ線を15kGy照射したものを被験試料として実験が行われた。 その結果、照射香辛料でラットやマウスを飼育試験した場合、その生育に は照射、非照射による差は認められず、また、照射によるそれらの催奇形 性や遺伝毒性の発現は認められなかった38,39)。さらに、照射香辛料による 変異原性試験でも、照射による変異原性は認められていない40)。また、わ が国で実施した4種類のスパイス(黒コショウ、赤トウガラシ、ナツメグ、 パプリカ)についてのエームス試験の結果41)においても変異原性は認めら れていない。 (2)微生物学的安全性 微生物学的安全性とは、照射食品に生残する微生物による影響や照射に よる微生物の突然変異に関する安全性である。放射線は、その物理化学的 作用で微生物を殺滅または不活性化させる化学変化を誘発する。その線量 レベルは、存在する微生物を完全に殺滅するには十分ではないが、微生物 数やその種類を著しく減少させるには十分な線量に設定される。一方、放 射線照射が、病原性や毒性または放射線などに対して抵抗性が増大した突 23 然変異株の誘発を増加させるのではないかという懸念が指摘されているが、 そのような誘発が生じているとの科学的な証拠は得られていない1)。 食品の中には、一般に、アフラトキシン等のカビ毒(マイコトキシン) を産生する可能性がある糸状菌類やボツリヌス菌で汚染されているものが ある。例えば、アフラトキシンは、日本、EU、米国で輸入食品に対する 規制が行われている。アフラトキシンの汚染が見つかった事例としては、 わが国では、平成17年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果に よると2005年度にナツメグ、バジルシード、トウガラシで併せて15 件、その他のもの(トウモロコシ、落花生、ハトムギ等)で139件とな っており、欧州では、EU諸国の食品・飼料の危害情報の報告(RASF F年次報告)によると2005年にトウガラシやパプリカなどの香辛料で 48件、その他のもの(果物・野菜、ナッツ類等)で899件となってい る。 放射線照射処理により、アフラトキシンの産生能が増加すると指摘され た(Jemmali & Guilbot(1969), Applegate & Chipley(1973), Priyadarshini & Tulpule(1979))ことに対し、他の研究者は、放射 線照射によるアフラトキシンの産生能は増加せずむしろ減少することを見 出した。WHOは、科学的知見に基づく総合的な評価として、GMPに基 づく適正な条件で貯蔵した照射食品のアフラトキシンレベルの増加という 危険性は存在しないと結論した1)。また、ボツリヌス菌についても同様の 試験が行われているが、毒素産生能への影響は認められなかった1,42)。 以上により、安全性についての研究結果が現在までのところ有害な影響 を示しておらず、安全性について一定の見通しは得られているものと考え られる。 4−3.栄養学的適格性の見通し 食品照射は、主要栄養素及び微量栄養素の両方に変化を起こし得るがその変 化量は少ない1)。10kGyまでの線量では、それらの主要栄養素の顕著な破 壊は観察されていない。50kGy程度の高い線量の場合、化学分析を行うと 多種類の栄養素の含有量が減少することが検出されるが、その変化量は小さく、 また、生成物は放射線照射に特有なものではないことがわかっている9)。また、 タンパク質に対する放射線照射の影響は加熱と同様であり、その変化量は加熱 と比較して小さい場合が多いとされるとともに、肉や魚をはじめとして多くの 食品で滅菌線量を照射しても、必須アミノ酸への顕著な影響は観察されなかっ た。 ビタミン類には、ビタミンB1 などのように放射線照射によって破壊され易い 24 ものがある。しかし、放射線の効果はビタミンの種類によって異なるとともに、 食品の種類によっても異なるため、栄養素摂取の観点からは、全体の食事に対 するその食品の寄与率に左右されることを考慮すべきである。香辛料について 考えると、香辛料の1日当たりの摂取量は食品全体から見て非常に小さいと推 定され、香辛料本来の使用目的からしても栄養学的影響は無視できるレベルと されている。一方、ミネラルは放射線感受性が低いので放射線照射による損失 は無視できる。 以上より、食品照射による栄養学的適格性についても見通しが得られている といえる。 4−4.個別に指摘されてきた事項 以上に述べてきたことのほか、照射食品の健全性に係る事項として、今まで 指摘されてきたことについて、これまでの知見を整理すると以下の通りである。 (1)誘導放射能の生成1) 食品照射に用いる電離放射線のエネルギーには、食品の構成元素に誘導 放射能を生成する可能性がある核反応のしきい値を考慮して上限が設けら れており、それを超えなければ、放射線測定感度の高い測定装置で測って も検知できるほどの誘導放射能は生成されない。コーデックス規格28)で定 めている、照射する放射線のエネルギーの上限は、電子線10MeV、X 線及びガンマ線5MeVであり、使用されるガンマ線源とそのエネルギー は、コバルト60が1.173MeV及び1.333MeV、セシウム1 37が0.662MeVとなっている。 (2)放射線の照射により生じる化学反応1) 食品照射は加熱処理と同様に、物理的な方法である。すなわち、電離放 射線のエネルギーが食品に吸収されると、励起分子が生成され、この分子 が解裂またはイオン化を引き起こす。さらに化学結合が切断され、電荷を 有するフリーラジカルが生成される。フリーラジカルは、非常に不安定で 化学反応を起こし易く、ほとんど瞬間的にその反応が起きて、食品中に分 解生成物ができる。分解生成物は、そのほとんどが加熱でも生成すること がよく知られている。放射線照射特有の化合物としては、脂質に放射線照 射した場合の2−アルキルシクロブタノン類の生成が報告されている43)。 これについての評価や見解については後述する。 25 (3)照射タマネギの慢性毒性試験と世代試験44) 原子力特定総合研究で実施されたタマネギの慢性試験では、照射タマネ ギを摂取することによって生体が障害を受けるかどうかを評価するため、 マウス及びラットを用いた慢性毒性試験が行われた。タマネギ無添加飼料、 非照射タマネギ添加飼料及び0.07、0.15、0.3kGy照射タマ ネギ添加飼料(タマネギは乾燥後添加、添加量は、マウスでは25%、ラ ットでは2%及び25%)を摂取させ、一般症状、体重等の観察を行うと ともに、血液学的検査、病理組織学的検査等を行った。マウスを用いた試 験においては、タマネギの添加によると考えられる赤血球数の減少、脾臓 の腫大(はれて大きくなること)などが見られた(タマネギにはもともと 溶血性があるため)が、照射によると考えられる影響はみられなかった。 ラットを用いた検査には異常が認められなかった。 また、照射タマネギを摂取することによって次世代に影響を与えるかど うかを評価するため、マウスを用いて3世代目まで飼育し、繁殖生理に対 する影響及び催奇形性の有無が調べられた。タマネギ無添加飼料、非照射 タマネギ添加飼料及び0.15、0.3kGy照射タマネギ添加飼料(タ マネギは乾燥後添加。添加量は2%及び4%)を摂取させて試験を行った が、妊娠率、平均同腹仔数、着床数等繁殖生理に対する影響は認められな かった。また、催奇形性については、各群共通に骨の変異の一種である頚 肋が認められたが、照射の影響によると考えられる異常は認められなかっ た。 以上の結果に基づいて、放射線照射したタマネギの慢性毒性試験や多世 代試験では、問題がないことが報告されている。 (4)栄養失調児の倍数性細胞の出現率45) インドの国立栄養研究所から、栄養失調児に0.75kGy照射した小 麦を与えたところ血中の倍数性細胞(ポリプロイド;染色体数が倍化する 異常)の出現率が高まったとの報告が公表された(Bhaskaram & Sadasivan (1975))。 このため、インド保健省は、専門委員会を設置し詳細な検討を行った。 この検討では、議論の対象となった試験は0.75kGy照射した小麦が 種々の動物の骨髄やリンパ細胞に染色体異常を生じたり、栄養失調の子供 に倍数細胞を出現させるという証拠にはならないとされ、さらに倍数性細 胞の増加があるとしたすべての試験は、技術的な欠陥があるとされた。こ れらの試験結果を注意深く解析すると、照射小麦が倍数性細胞を増加させ ることはないという結果を出した試験に比べて、有意な差がないものであ 26 ることが明らかになったと報告されている。 (5)シクロブタノン類の生成43,46) a.シクロブタノン類の毒性 放射線特有の生成物として、中性脂肪(トリグリセリド)の放射線分解 で2−アルキルシクロブタノン類が生成するが、このうち、2−ドデシル シクロブタノンはDNAに障害を起こしたというDelincèe らの報告(19 98,1999)がある。しかしながら、WHOの見解(2003)では、 長期間の動物実験とエームス試験が陰性という結果を含む、現時点での科 学的証拠に基づくと、2−ドデシルシクロブタノンなどの2−アルキルシ クロブタノン類は、消費者に対して健康リスクをもたらすようには見えな いとされた47)。WHOはこれまで、FAO/IAEA/WHOの専門家グ ループや各国各地域の専門家によって導き出された「照射食品は、安全で、 栄養学的にも適合性がある」という結論に疑問を挟む様ないかなる論拠も 持ってはいないとしている。なお、WHOはこの見解を結ぶにあたり、こ の化合物の毒性/発がん性について残された不確定要素の解明のための研 究を実施することを引き続き奨励していくこととしている。また、米国 Sommers ら(2003,2004)は、2−ドデシルシクロブタノンによ る変異原性はないとする研究結果を報告している48,49)。 b.シクロブタノン類の発がん促進作用 2-アルキルシクロブタノン類の「発がん促進作用」については、Raul ら(2002)50)が行った報告では、飲料水をラットに投与し、発がん物 質であるアゾキシメタンを投与したところ、3ヶ月後の観察ではアゾキシ メタンのコントロールに比べ異常はなかったが、6ヶ月後に2-アルキルシ クロブタノン投与群で腫瘍数および腫瘍サイズの増大が認められ、発がん 促進作用活性のあることが確認されたとしている。しかしながら、同報告 について、米国の食品医薬品庁は、ラットの2-アルキルシクロブタノン類 への暴露量が、人の暴露量とされる値よりも3けた多いことなどから、2- アルキルシクロブタノン類の摂取ががんを促進すると信じるに足る理由を 示す実質的な情報や信頼できる情報がないとしている51)。また、EUの食 品科学委員会は、この実験結果を基に脂質を含む照射食品中の2-アルキル シクロブタノン類を人が摂取することについて健康リスクを評価すること は適当でないと結論している52)。 27 (6)放射線照射による異臭の発生 食品照射の場合、研究や実績の積み重ねにより、コーデックス規格や各 国の規制において適正な照射線量が定められている。その定められた線量 を超えて照射すると、食品(肉類や食鳥肉など)によってはにおい(照射 臭)が発生することがある14,35)。このにおいは主に肉蛋白構成々分である 含硫アミノ酸あるいは脂質に由来するものと考えられている。このような ことから、適正な照射を行うことは商品価値を維持する観点から重要であ るが、健全性の点から見て問題はないとされている。 (7)食味、加工性への影響 食品に放射線を照射すると、米については、供試した品種によっては、 食味に変化が現れるものがあり、また、小麦については、製めん適性の低 下が認められた報告があった2,35)。これらは、放射線照射によって生成し たフリーラジカルが関与する化学反応の進行により、高分子であるデンプ ンが低分子化することなどに由来するものと考えられている。しかし、こ れは商品価値を低下させることになるので、通常、事業者において処理方 法として選択されることはないと考えられるとともに、健全性の点から見 て問題はないとされている。 (8)ベビーフード事件 1978年、ベビーフードの原料に用いる粉末野菜に、食品衛生法に基 づく許可がないにもかかわらず、放射線殺菌を実施して販売していたとい う問題が発生した。本件は、法律に基づいた安全性の確認が行われていな い食品を販売したものであり、食品の安全に関する企業コンプライアンス の欠如として、厳しく律せられるべき問題である。照射食品の安全性とは 別次元の問題であるが、このような事案が過去にあったことも念頭におき、 関係者はこのようなことによって国民の信頼が損なわれることについて十 分認識すべきである。厚生労働省は、本事案を踏まえ、「食品の放射線照射 業者に対する監視指導について」(昭和53年10月12日付け環食第26 7号厚生省環境衛生局食品衛生課長通知)により、各都道府県衛生主管部 長等に対し、食品の放射線照射業者に対する監視指導の留意点について通 知した。 |