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不安ばかりが募る中、海峡の対岸では着々と建設が進む。そんなもどかしさが口を突いた。
青森県大間町で建設中の大間原発をめぐり、函館市が国と電源開発に対し建設差し止めなどを求めた訴訟。第1回口頭弁論が東京地裁で開かれ、工藤寿樹市長が建設凍結をあらためて訴えた。
国は法律論を盾に門前払いを求めた。
大間原発で事故が起きれば、最短で23キロしか離れていない函館市に甚大な影響が及ぶことは、福島の事故を振り返れば明白だ。国の主張が一方的なことが分かる。
エネルギー政策は国が主導する分野だが、地方の理解がなくては立ちゆかない。原発を含むエネルギーへの新たな国と地方の関わり方を考える契機にすべきだ。
「私たちの意見を聴くことなく(建設再開を)通告しに来た」「市民の生命と平穏な生活、そして貴重な財産が、一方的に奪われかねない」。工藤市長の意見陳述は35分間に及んだ。
函館市には支援の寄付が650件、2500万円も集まるなど、世論の後押しが強まっている。凍結は「市民の総意」と、市長は言い切った。
そもそも大間原発には問題点が多い。
ウランよりも毒性が強いプルトニウムとウランとの混合燃料を使う世界初の商業炉でありながら、事業者である電源開発は原発稼働の経験がない。近海に巨大な活断層が存在する可能性もある。
にもかかわらず、国の物言いは一本調子だった。
「地方自治体の存立を維持する権利」を、憲法が保障したものではないとした。また、自治体は住民ではないから訴える資格がないと従来通りの主張に終始した。
その一方で、国は原発から半径30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を課している。自治体の権利を否定しておいて義務ばかりを求める。あまりに独善的ではないか。
国や電源開発は函館市の主張を直視すべきだ。それにはまず裁判所が適切に判断できるよう、あらゆる情報を開示する必要がある。
電源開発は大間原発の営業運転に向け、9月にも原子力規制委員会へ新規制基準の適合性審査を申請する考えのようだが、訴訟中にそんなことをすべきではない。
福井地裁は5月に関西電力大飯原発をめぐる訴訟で、運転の差し止めを命じた。東京地裁には大間原発が本当に安全なのか、真摯(しんし)に審理することを求めたい。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/549404.html
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