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東電の総会は今年、出席者数が2150名。11年の9309名より大幅に減った
原発推進の限界も露呈、東京電力の株主総会 反原発の議案は全て否決
http://toyokeizai.net/articles/-/41336
2014年06月28日 中村 稔 :東洋経済 編集局記者
東京電力の今年の定時株主総会は6月26日午前10時から東京国際フォーラムで開催された。昨年の総会は雨天だったが、この日は比較的天気がよく、 出席者数は2150名と前年より60名増えた。ただ、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故があった11年の出席者数9309名、12年の4471名と 比べると大幅に少なく、大震災前の10年の3342名も下回った。
総会の所要時間は3時間23分で、11年の6時間9分、12年の5時間31分、13年の3時間41分より短縮された。大震災前の10年は3時間1分だった。途中、議事進行を遅らせたとして質問中の株主一人が退場させられたが、特に大きな混乱はなかった。
■「原発は重要電源」とする国策を盾に
東電は12年7月、政府管理下の原子力損害賠償支援機構が1兆円を出資して議決権の50.11%を握ったことで、実質国有化された。今年の総会は国有化後、 2度目の総会である。また、下河辺和彦氏の後任として今年4月に東電会長に就任した数土文雄氏(前JFE社長)が初の議長役を務めた。
2011〜2013年と同様、今年の総会でも、反原発派の株主から原発廃止などを要求する多くの株主提案(全11議案のうち10議案)が出され、関 連する質問(意見)も発せられた。しかし、原発維持の基本方針を変えない東電取締役会に、多数株主の機構(国)や取引金融機関などが賛同する形でことごと く否決された。
東電取締役会は、今年4月に策定された国のエネルギー基本計画で、原発が「重要なベースロード電源」と位置付けられ たことを、原発維持方針の根拠に挙げている。国有化・東電の原発維持路線を根本的に転換するには、安倍政権の脱原発政策への転換、または脱原発を明確に掲 げる政党への政権交代が必要となる。
しかし、脱原発の株主提案がすべて否決されたとはいえ、東電経営陣が自ら思うように原発を推進できなくなっていることもまた事実だ。
総会では数土会長が議長を務めた
現在、冷温停止状態を維持しつつ、福島第一原発の廃炉作業を支援している福島第二原発(全4基)。同原発の廃炉を求める株主提案に対して、取締役会では、今 後の扱いは「未定」であり、国の政策や地域・社会の人々の意見を踏まえ検討するとして、廃炉決断の可能性に含みを持たせている。福島の県議会や県民の大多数が再稼働に反対している限り、早晩、廃炉を迫られるのは必至と見られる。
また、大震災2カ月前に着工し、大震災によって建設中断 となっている東通原発についても、建設再開は難しい。東電経営陣は「国のエネルギー政策に関する具体的議論や地域・社会の方々の意見、当社の経営状況など を踏まえ決定する」として、同原発建設中止の株主提案は否決された。だが、同原発の南側に隣接する東北電力東通原発1号機の敷地内断層に対して、原子力規制委員会は活断層との見方を強めており、この地域一帯が原発立地上、不適と認められる可能性は高い。また、原発の新増設(工事進捗率の高い島根3号機、大間原発を除く)については、現政権も想定していない。
■新潟県知事の同意はほど遠い
一方、柏崎刈羽原発(全7基)について東電経営陣は、是が非でも再稼働を実現したい考え。だが、昨年9月に規制委へ新規制基準適合性審査を申請した6、7号機は、敷地内断層や地下構造の問題などから審査が難航しており、合格のメドは立っていない。
再稼働の条件となる地元同意に関しても、立地自治体の一つである新潟県の泉田裕彦知事が「福島第一原発事故の検証と総括が終わらない限り、再稼働の議論には入らない」としており、同意を得られる保証はない。
東電の廣瀬直己社長は、関連した株主の質問に答える形で、「知事のお考えはごもっとも。われわれとしては、原子力安全改革プランの中で事故の検証をしっかり 行い、福島の方々へしっかり謝罪していく。また、新潟県の技術委員会でも事故の検証を1年以上にわたって議論していただいており、そうしたことで知事のご理解を得たい」と語った。
しかし、泉田知事はこの廣瀬社長の発言に対し、「社長が総会で何を言おうと、メルトダウン隠蔽について虚 偽説明し、約束した安全対策を実行しない、事故責任を取らないなど、信用できない東電を理解することは困難です」と、ツイッターでコメントしている。知事 の理解を得るには程遠い状況だ。
反原発の議案は全て否決された
株主からは、福島第一原発の吉田昌郎元所長の調書をすべて明らかにせよ、との要求も出た。これに対し廣瀬社長は、政府事故調査委員会による「吉田調書」の扱 いは政府の管轄とした一方、東電自身が作成した事故調査報告書でも吉田氏に質問しているが、「危機的状況下での判断であり、他の社員との発言に食い違いも ある。いろいろな意見、事実を踏まえて検証しながらまとめたのが報告書だ」として、吉田氏への個別調書の公開に否定的な考えを示した。
福島県民の株主による質問では、「福島第一原発での放射性物質を含んだ地下水による海洋汚染に対し、根本的な対策が打ち立てられていない。地下水バイパスに よる一部地下水の放出に対し、多くの福島県民は懐疑的であり、その受け入れは苦渋の決断であるという心根をわかってほしい」、との要望が出された。
これに対し4月に福島第一廃炉推進カンパニーのプレジデントに就任した増田尚宏常務執行役は、「汚染水問題に対しては、汚染水を取り除き、増やさず、海に漏 らさないために、重層的な対策を行っている。汚染水を増やさないために、地下水バイパスで(汚染前の)地下水を海に放出することに関しては、漁協の皆様に 苦渋の決断をしていただいた。その信頼を損なわないように、しっかりと運用目標を守ってやっていく」と回答した。
■まず自らがコストダウンを
また、電気料金の再値上げの可能性に関する株主の質問に対し、山口博副社長は「原発の再稼働が遅れると収支が非常に厳しくなるが、再値上げは他のあらゆる手段を講じたうえでの最後の手段と認識している」と説明した。
今年1月に新たな経営中期計画である「総合特別事業計画」を策定した際には、今夏にも再値上げ決断の可能性を示唆していたが、料金値上げを人質に とったかのような形で原発の早期再稼働を求める東電経営陣の姿勢に批判も高まっていた。そうした批判を受け、電気利用者に負担を転嫁する前に、まず自らが コストダウンを徹底して身を切るという姿勢に転換したものだ。国民の多額の税金が注入され、電気利用者の負担で経営している東電には、国民・利用者による 不断の監視が必要といえる。
(撮影:尾形文繁)
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