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http://geocities.yahoo.co.jp/gl/taked4700/view/20140605/1401958762
原発問題でマスコミが世論調査をすることの意味
他の世論調査でも感じるのですが、原発問題は特にその実態が隠されてしまっているのに、原発への賛否を問うことが却って事態を混乱させているように思います。現代社会の抱えるいろいろな問題を理解することは一般市民にはかなり難しく、相当に関心を持って長い時間をかけて観察をしてもなかなか実態が解明できません。事態そのものがかなり複雑になっているときに、簡単な質問項目で問題への評価を問うことが妥当であるようには思えません。
一般市民の8割が原発反対の意見を持っているという世論調査結果を出すことがマスコミの使命のような感覚をマスコミの方たちが持っているように感じるのですが、自分は誤解があるように思えて仕方がありません。
「<マスコミが誘導する恣意的な世論調査>原発の賛否、実際は「即廃止でない」が74%で最大」
Japan In-Depth 6月5日(木)1時16分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140605-00010000-jindepth-soci
という記事が書かれています。筆者は石川和男(NPO法人社会保障経済研究所理事長)という方でテレビ番組などにも何回か登場された方です。
自分はこの方自身も原発問題を誤解されていると思います。そのことが分かるのが原発反対の方たちに対して「『処分場は即必要ではないこと』の説明を、それぞれ十分に尽くしていく必要があるだろう」と書かれているからです。石川氏は処分場は当面必要ではないからそれを考慮する必要がないと言っているわけですが、これこそが二重の意味で大きな誤解です。
一つには、当面対処する必要がないからと言って将来も対処する必要性がないわけではないからです。石川氏は対処を先延ばしすることによって科学技術が進歩し、きちんと対処できると考えられているのでしょう。その可能性が100%ないとは申し上げませんが、近い将来、現実的に意味のある解決ができるとは思えないのです。無害化技術として言われているものは半減期の長いものを短い核種に変えるというものです。一億年以上から何万年という半減期の核種を半減期数秒から数年ぐらいのものに転換できると仮定しても、その過程で新たな核物質を作り出してしまうはずです。つまり、基本的にはプルトニウムなどに中性子を照射して核分裂させ、別の核種に転換するのですが、この工程は一つ一つの原子に一本一本の中性子線を照射するというようなやり方でできるのではなく、様々な核種が雑多に混合した高レベル核廃棄物へ中性子線をある意味シャワーを浴びせるのと同じように照射し、様々な核種がいろいろ異なった形式で核分裂を起こすことを誘導するわけです。核分裂の結果どんな放射性物質が出来るのかは確率的にしか制御できないのです。当然、その中には半減期が数万年とか数千年のものも含まれます。更に大きな問題は、処理の過程で放射性の希ガスや常温で気体の核種が出来てくることです。希ガスは化学的に不活性であるため、それを化学的に吸着することは困難で、現在、再処理工場からはかなりの量が大気中に放出されてしまっています。また現在福島第一原発事故で注目を集めているトリチウムも除去が困難です。そもそも、いろいろな形でできてくる新たな核種を短い核種だけに分離すること自体がかなり難しいはずであり、この工程だけで相当に多量の環境汚染を引き起こしてしまうはずです。また、こういった無害化処理にかかるコストがどの程度でだれが負担するかの問題も解決されていません。現在計画実施中であり、無害化ではなくて、単に分離分別をする使用済み核燃料のリサイクルは技術的にずっと易しいものであるはずですが、現実の六ヶ所村再処理工場は、1993年に着工して既に2兆2千億円ほどのコストをかけても、まだ本格稼働はしていないのです。更に、六ヶ所村再処理施設からは当然かなりの量の放射性物質が環境中に漏れだしてしまいます。通常の原発運転一年分が再処理工場を運転すると一日で漏れるとさえ言われているのです。
もう一つの問題は、時間の問題です。いつ頃に無害化技術が完成するのか。そして、いつ頃まで現状の保管を続けることが出来るのかという問題です。無害化技術が完成する時期は多分予測が付きません。自分としては100年後でも無理ではと思います。次に、既に使用済み核燃料はいっぱい溜まってしまっています。多くの原子炉で今後10年も保管が出来ません。青森県のむつ市に専用の乾式キャスクでの中間貯蔵施設が完成し2015年から保管が開始されますが、容量は5000トンです。この容量が何を測っての5000トンであるのかはっきりしませんが、日本にある原発を全て運転して行ったとき、1年で発生する使用済み核燃料は1000トン程度であると言われています。六ヶ所村の再処理工場が本格稼働したときに年間で処理できる量が900トンとされています。常識的に考えると現状では数年で行き詰るのです。
そして、この時間の問題はとても深刻な危険があることを意味しています。つまり、既に大きな地震の活動期に入った日本で核施設を大きな地震が直撃する危険性です。2011年3月の大地震以降多くの原発が運転停止をしているため、半減期の短い、つまり強い放射能を帯び発熱量の高い核種はかなり減少していますが、それでも今後数年程度は依然としてプールでの保管が必要である様子です。更に、使用済みのMOX燃料はプールでの保管が100年以上必要とされ、既にMOX燃料を装荷してしまった玄海原発や伊方原発は非常に長期の原子炉またはプールでの水冷保管が必要になるのです。水冷が必要な時に事故が起これば、またメルトダウンに至る可能性があります。
以上のように、石川氏の「処分場は即必要ではない」という主張はかなり楽観的な見方であることが明らかです。問題は、専門家である石川氏がこういったとても独りよがりの楽観的な見方をしてしまっているという点にあります。
つまり、現状の原発問題、または被曝問題については、数多くのことが解明、または公開されていないのです。例えば4号炉の爆発映像が公開されていないなどの重要なデータが隠ぺいされています。また、放射性微粒子の健康影響については研究自体がされていないとされています。環境中にただ漏れしているはずの放射性希ガスがどんな健康被害を及ぼすかの研究はされているのですが、その結果は公表されていない様子です。
そして、最も重大な問題は、高レベル核廃棄物の処分問題です。日本だけでなく、世界中の原子炉が廃炉問題に直面しているわけで、高レベル核廃棄物をどう処分するかは世界中で目途が立っていません。再処理するのか、そのまま埋設処分するのか、そのどちらも目途が立っていません。再処理自体がまだまだ未完成の技術であり、地層処分に至っては安全な処分ができる地域は地球上にないのではないかと言われています。
更に、こういった高レベル核廃棄物処分問題に関しても理解の一致がされていず、様々なレベルで異なった見方が存在し、人々が対立しています。
非常に大まかな言い方をすれば、核に関する理解は専門家も含めて非常に混乱しているのです。こういった状態のとき、最も危険なのは社会的な混乱です。ただでさえ、福島第一原発事故での被害が隠ぺいされていることが明らかであるのに、世論形成の基礎であるはずの様々な客観的データが公開されていません。
現在、日本社会は混乱状態にはありません。しかし、イラクもリビアもアフガニスタンも、そして、エジプトもシリアも、タイやブラジルにしても最初から混乱状態にあったわけではありません。
政府やマスコミが取り組むべきはきちんとした情報公開であり、話合いに基づいた合意形成なのです。単に世論調査をして世論誘導をするだけでは、一気に混乱状態に持って行かれてしまうはずです。そして、合意形成のために残された時間はあまりありません。次のアメリカ大統領選挙までには3年もないのです。
障害になっていることの中で多分最大のものは利権にしがみついて現状を誤魔化している人々のはずです。結局、そういった人々は目前の具体的な利権しか見ることをせず、既に対処が手遅れになりつつある現実を無視しているのです。こういったことが続けば、その結果は日本社会全体の壊滅しかありえません。
2014年06月05日17時55分 武田信弘 ジオログのカウンターの値:49933
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