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<「忘災」の原発列島>再稼働は許されるのか 伊方原発
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140526-00000061-mai-soci
毎日新聞 5月26日(月)18時15分配信
◇「夢物語」の避難計画 現実、逃げられない
原発再稼働に向け、国は歩みを進めている。わずか3年前に起きた東電福島第1原発事故の教訓はどれだけ生かされているのか。新シリーズ「『忘災』の原発列島」の初回は、いち早く住民避難計画を作り、「早期再稼働有力」とされる四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)周辺を歩いた。【樋口淳也】
「原発で何かあったら、諦めるしかないね。だって逃げ道ねえもん」
目の前に広がる瀬戸内の海を見やりながら、50代の男性はため息をついた。伊方原発から西に約4キロ。佐田岬半島北側の海岸線に沿うように走る県道脇で、男性は木々の剪定(せんてい)作業をしていた。首に巻いたタオルで額の汗をぬぐいながら続ける。「避難計画ができたって言われたって、どうせ使えんよ。ここらあたりじゃみんなそう言っとるけん。事故が起きたら終わりだってね」。最後は、吐き捨てるように声が大きくなった。
東日本大震災後に見直された原子力災害対策指針などに基づき、国は全国の原発30キロ圏内にある21道府県135市町村に避難計画の策定を求めた。原子力規制庁によると、2013年度末までに策定を完了したのは71市町村。30キロ圏の全自治体で策定を完了したのは10原発。伊方原発はその一つだ。
伊方原発は、愛媛県西部に延びる佐田岬半島の付け根にある。全3基のうち、3号機は昨年7月、安全審査を申請。福島第1とは炉の型が違う「加圧水型」で、早期再稼働するのではと言われる。
松山市から車で1時間強の八幡浜市。そこから、半島中央を貫く国道197号(通称メロディーライン)に出て、半島先端に向け走ってみた。この道は原発事故時、まさに「命の道」となる。
避難計画は、原発で緊急事態が発生した後、即座に避難が必要な予防防護措置区域(PAZ、5キロ圏)と、事故が悪化した場合に避難を求める緊急防護措置区域(UPZ、30キロ圏)に分けて立てられる。
県によると、伊方原発では放射性物質放出前は、PAZ内と県が原発西側の半島全域に設定した「予防避難エリア」の住民計約1万1000人が、マイカーやバスで国道197号を東に逃げる。つまり一部は原発に「向かって」逃げる。しかし、事故が深刻化して放射性物質が放出されると、国道の原発付近区間が通行できなくなるため、西側に残った住民は一転、西側の三崎港を目指して避難する。
国道は片側1車線だが、大型車も余裕を持って行き違え、きれいに舗装されている。しかし「伊方原発をとめる会」の和田宰事務局次長は「半島は元々地盤が悪い。国道が地震などで通れなくなることもあり得る」と話す。確かに、うねるように走る国道には頻繁にトンネルが現れ、山あいを渡る橋の部分も多い。伊方町は南海トラフの巨大地震で最大震度7が襲うという。不安になった。
木の剪定中の男性と出会ってから30分ほど走ると、三崎港に着いた。県の広域避難計画では、原発以西の住民、最大で約5200人がここから大分県などに避難する。しかし犬を連れて散歩中の女性(63)はこの計画を「それこそ夢物語でしょ」と切り捨てた。
愛媛県の試算では、三崎港発の定期船(1時間に1本)を利用しただけでは事故発生から直ちに避難しても16時間半かかる。中村時広知事は「海上自衛隊、海上保安部、民間船舶などの協力を得れば、最大輸送力を4倍にできる可能性がある。すると4時間半で輸送完了する」と述べている。だが、計画書には周辺基地などに所属する艦船のリストなどが載っているだけ。事故時に何隻が使用可能かなど具体的な記述はない。二宮久・県原子力安全対策課長は「行政として限界もある。常時避難用の船舶を確保しておくのは難しいし、自衛隊などからの支援もあくまで臨機の対応になる」と苦しい。
何より、地震や津波との複合災害について県は「理念として考慮している」とするが、計画は具体性に欠ける。三崎港近くで商店を営む男性は「津波が来たら、船で避難なんて考えられない」と指摘する。実は、三崎港は南海トラフの巨大地震で最大13・7メートルの津波が襲うと想定されているのだ。男性は「福島の被害を見たら、この辺りもひとたまりもないと思ってしまう。そんな中で船に乗るのは無理。あまりに非現実的だ」と嘆く。12年10月の避難訓練では、悪天候の中、民間の医療船が参加したが「事故を起こしてはいけない」(県担当者)と訓練を取りやめた。
残りは空からの避難だが、阿部悦子県議(会派・環境市民)は「ヘリコプターで一度に救助できるのは数人程度。複合災害の場合、避難者の集合場所すら作れない可能性がある」と警告する。
「勤務中は難しい」と言われ、UPZ内の自治体で計画作りを担当したある職員に、勤務後、車を走らせながら話を聞いた。避難計画を手に「国は、周辺道路が混雑しないよう、PAZは即時避難、UPZは屋内退避などと区分して段階的に避難するよう求めている。私たちもそれを前提に計画を作ったが、うまく機能するとは思えない」と打ち明ける。ちょうどPAZとUPZの境界にさしかかった。「目の前を他人が避難していくのに、自分は避難せずに屋内にとどまれと。それができますか」と問われた。答えられなかった。
さらに「問題は他にもある。社会福祉施設の入所者は、避難しろと言われても、体が不自由な人を運ぶ手段や人手がなく、取り残される可能性が高いんです」。実際に施設を取材した。「避難計画は作れていない」との声が多い。
職員は「地元自治体だけで完璧な計画は作れない」と訴える。国は批判を受けて昨年、地域ごとに関係省庁と自治体などが参加する「協議会」の設置を決めた。だが「情報共有は行われるが、実質的な避難計画策定の作業をする場ではない」(県関係者)。まるでアリバイづくりだ。
原発からの避難時間を研究する民間団体「環境経済研究所」の上岡直見代表は「原発は国策と言えるが、避難計画は自治体が策定することになっている。自治体は『逃げられない』と思っても言えないので、数字合わせで逃げられるストーリーを言わざるをえないのではないか」と指摘する。
複合災害に対応した計画は作れるのか。数少ない「避難計画策定済み原発」の伊方原発でも、この現状。「夢物語」という女性の言葉が苦くよみがえった。
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