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3万人診た専門家が断言「子どもの鼻血は放射線に由来する」
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2014年5月24日 日刊ゲンダイ
飯館村の小学校/(C)日刊ゲンダイ
北海道がんセンター名誉院長が一刀両断
政府と一部メディアが大騒ぎした漫画「美味しんぼ」の鼻血描写に対する大バッシング。政府は「風評被害」と決め付け、鼻血と原発事故の因果関係の否定に躍起だが、この見方に真っ向から反論しているのが、国立病院機構北海道がんセンター(札幌市)の西尾正道名誉院長(66)だ。
西尾氏は74年に札幌医科大を卒業後、国立札幌病院(現北海道がんセンター)の放射線科に勤務。08年に院長に就任し、昨年3月に定年退職するまでの40年間、放射線治療医として約3万人のがん患者を診た。いわば、放射線とがんの関係を知り尽くした国内第一人者だ。
その西尾氏は23日、参院会館で「鼻血論争を通じて考える」と題した文書を配布し、「美味しんぼ」の鼻血バッシングについて「鼻血は鼻の局所にベラボーに放射性物質が当たったから。放射線に由来する」などと持論を展開した。
福島原発事故後、定期的に福島に通って甲状腺検査をボランティアで続けている西尾氏。自身の経験を踏まえ、事故直後に「子どもが鼻血を出す、という声を実際に聞いた」と明かし、鼻血と原発事故の因果関係を全否定する政府の姿勢を「がんの専門家でも、放射線の専門家でもない人が(放射線の影響を)否定している」と強く批判した。
■指弾されるべきは御用学者
さらに「ICRP(国際放射線防護委員会)の基準では鼻血は出ない」との意見に対しても、「そもそもICRPは原子力政策を推進するための物語を作成しているNPO団体。ICRPはシーベルト単位の被曝(ひばく)でなければ鼻血は出ないというが、その場合は(急性被曝にみられる)深刻な状況で、鼻血どころではなく、歯茎からも出血し、紫斑も出る」と説明。長崎・広島でみられた外部被曝による急性被曝の重い症状と、いまだに不明な部分が多い低線量被曝の症状をごちゃ混ぜに論じる無意味さを強調した。
その上で、被曝が及ぼす鼻血の可能性について、「事故で放出されたセシウムが、ちりなどに付着して人体に吸い込まれた際、鼻などの粘膜に付いて局所的に放射線を出すことになる。準内部被曝的な被曝となる」と、独自の見方を示した。
「美味しんぼ」バッシングの旗振り役となった菅官房長官や石原環境相といったシロウトではなく、まっとうな専門家の意見だけに真実味がある。鼻血を訴える声を無視し、「風評被害」で片付けようとする今の国や自治体の方がよっぽど無責任だ。
そもそも「美味しんぼ」で描かれているのは「鼻血」の問題だけではない。未曽有の大事故を起こしながら責任を取らない国や東電の無責任さも鋭く追及しているのだ。批判されるべきは、漫画の描写ではなく、国や、原発の安全神話を振りまいてきた御用学者たちだろう。
「今の日本は法治国家ではない。科学も金儲けになっている」。西尾氏の指摘に国や自治体は真摯に耳を傾けるべきだ。
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