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被曝被害を測るシーベルトの巧妙な仕組み
内部被曝 (扶桑社新書)のアマゾンの書評に明らかに誤解に基づいていると思えるものがありました。http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4594065775/ref=cm_cr_dp_hist_one?ie=UTF8&filterBy=addOneStar&showViewpoints=0 にある書評がそれで、内部被ばくはあまり危険ではないとされていますが、多分、非常に多くの方が同様に考えられているのだと思います。直観として、これには誤解があると思うのですが、それをきちんと説明しようとすると、自分自身がシーベルトという単位についていい加減な理解しかしていないと気が付きました。
そのため、もう一度それらについて確認をしてみようと思います。
シーベルトの定義は次のものが一般的である様子です。
「生体の被曝による生物学的影響の大きさ(線量当量)を表す単位である。」
「ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位がグレイ(記号 Gy。定義 J/kg)である。生体(人体)が受けた放射線の影響は、受けた放射線の種類と対象組織によって異なるため、吸収線量値(グレイ)に、放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数を乗じて線量当量(シーベルト)を算出する。」( http://ja.wikipedia.org/wiki/シーベルト )
まず、この定義そのものが実態に合っていないような気がします。つまり、熱量で影響を測ることになっていること自体が疑問です。ハンマーで金属を打てば、金属は熱を帯びます。この意味で放射線の影響を、その物質が放射線から吸収したエネルギー(吸収線量)で表そうということでしょうが、ハンマーで石を叩けば、熱を帯びることはほとんどなく石が割れるだけです。化学反応には確かに発熱反応とか吸熱反応があり、一定の熱の出入りがあるのですが、例えばさまざまな触媒を使うことによって、そういった熱の出入りを抑えて反応を起こさせることが出来ます。また、同じような発熱を伴う反応であっても人体に有害な化学反応もあれば無害な化学反応もあるでしょう。つまり、同じガンマ線であっても、環境により異なった化学反応を起こすはずだということです。
次に、「放射線の種類ないし対象組織ごとに定められた修正係数」というものが問題だと思います。放射線の種類とはアルファ線とかベータ線、ガンマ線、中性子線、X線などのことであり、対象組織とは、普通、脳とか甲状腺、眼球、肝臓などの人体の組織のことです。被ばくとは放射線と人体との間の作用のことなので、それぞれの種類ごとに場合分けが必要なのは当然ですが、本質的な違いが放射線の種類にはあり、それを無視して単に修正係数の大きさの違いにしてしまっていることがおかしいと思います。つまり、ガンマ線は基本的に大きさのない単なるエネルギー波ですが、アルファ線は明確に大きさも質量もある粒子線です。微視的ではあってもアルファ線は物理的なインパクトも与えているはずであり、化学作用だけではないのです。
しかし、シーベルトにはより本質的な問題があると思います。それは放射性微粒子による局所的な被曝についてほとんど考慮されていない点です。具体的に言えば、1秒に1000本のガンマ線の照射を受けたとしても、それが全身なのか、または甲状腺全体なのか、またはその放射線源が微粒子でその微粒子周辺にだけ集中的に1秒に1000本のガンマ線が浴びせられているのかで、まったく細胞個々の受ける放射線の数は異なるからです。人体には60兆個程度の細胞が普通あるとされています。体重を60キロと仮定すると、甲状腺はせいぜい20グラムですから、60キロの3000分の1ですが細胞数にすれば200億個もあるのです。微粒子の周囲にある細胞は最大限多めに見ても1万個程度でしょう。ある一つの細胞が毎秒1000本のガンマ線を受ける確率は、次のようになります。
全身:1000÷60兆=600億分の1
甲状腺:1000÷200億=2000万分の1
微粒子の周りの細胞:1000÷1万=10分の1
どうやって微粒子の影響を無視する仕組みになっているかと言えば、ごく簡単なことで、単位がキログラムだからです。J/kgが基本の単位であり、微粒子による被曝でも、体内に均一に分布するカリウム40による被曝でも、X線などによる外部からの被ばくでも、その違いを考慮してはいないのです。
もっと実践的に言えば、線量計(サーベィメーター)を喉にあてて甲状腺の被ばく量を測りますが、この時、出てくる値は、基本的に甲状腺全体からの量として測られるだけであり、局所的に放射性ヨウ素の高濃度の濃縮が起こっていても、それは分からないのです。同様に、鼻腔や肺へ放射性微粒子を吸い込んでも、局所的な被曝量として計測は一切できず、単に機器が当たった周辺全体の被ばく量として計算されるだけです。くり返しになりますが、放射性物質が微粒子として存在していても、または放射性原子としてばらけて存在していても、その区別をつけて計測することは現状の検査機器ではできません。全ては単にキログラムあたりとか全身あたりのベクレル数でしか測れないのです。
東電のサイトに「ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)の換算例」というものが載っています。それを引用します。( http://www.tepco.co.jp/life/custom/faq/faq_02s_01-j.html より以下引用:)
(例1)100Bq(ベクレル)/kgの放射性セシウム137が検出された飲食物を1kg食べた場合の人体への影響の大きさ
ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)の換算例
100×1.3×10のマイナス5乗=0.0013ミリシーベルト
(例2)100Bq(ベクレル)/kgの放射性セシウム134が検出された飲食物を1kg食べた場合の人体への影響の大きさ
ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)の換算例
100×1.9×10のマイナス5乗=0.0019ミリシーベルト
※実効線量係数(mSv/Bq):ベクレルからミリシーベルト(mSv)に換算する係数。核種(放射性物質の種類)、化学形、摂取経路別に国際放射線防護委員会(ICRP)などで示されています。上の例では、原子力安全委員会の指針(発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針)で示された数値(経口摂取・成人)を用いています。なお、この数値は放射性セシウム134では1.9×10-5、放射性セシウム137では1.3×10-5となります。
(*以上引用終わり)
この例も、セシウムが均一にばらけていることを前提にしていて、微粒子で存在する場合のことは考慮していません。ただし、食べ物として体内へ吸収した場合、原則的には均一に分布するので、ある程度この計算は妥当だと思います。
より問題があるのは空間線量です。公園などに設置されているサーベィメーターが毎時何々マイクロシーベルトと表示していますが、これはもともとガンマ線しか計測していませんし、線量計のある場所一帯の平均的な放射線量を示しているにすぎません。たまたまアルファ線やベータ線を発する微粒子があっても全く検知されませんし、ガンマ線を発する微粒子があっても、非常に少なめにしか表示しません。こういった空間線量計はもともと地面などに降り積もったガンマ線を出す放射性物質を測るためのものであり、空中を浮遊している放射性微粒子を計測するものではないのです。
最後に、ここまで読まれた方で、実行線量とか預託実効線量、あるいは等価線量というものがあるので、局所的な被曝もきちんと見られていると言うかもしれません。しかし、局所被ばくの量を表す等価線量も臓器単位であり、微粒子がその周辺にある細胞へ与える線量を示しているわけではありません。
すべての場合に、微粒子による局所的な被曝については無視されていると言っていいと思います。美味しんぼで問題にした鼻血は基本的に放射性の微粒子が鼻粘膜についた結果のものであるはずで、それをシーベルトという単位で議論すること自体が実態に合っていないのです。
2014年05月23日14時00分 武田信弘 ジオログのカウンターの値:49105
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