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美味しんぼ、苦い後味 編集部「表現のあり方見直す」
http://www.asahi.com/articles/ASG5K522BG5KUTIL00X.html
2014年5月18日15時29分 朝日新聞
「編集長の責任を痛感」「表現のあり方について今一度見直します」――。人気漫画「美味しんぼ」(小学館)の東京電力福島第1原発事故の描写をめぐり、週刊ビッグコミックスピリッツ編集部は19日発売号で見解を示した。鼻血と被爆を関連づけた描写は、放射線リスクや表現の自由をめぐる議論に発展。地元にも波紋が広がっている。
■「被曝で鼻血」両論併記
「根拠のない風評に対し、国として全力を挙げて対応する」。安倍晋三首相は17日、訪問先の福島市で記者団に述べた。
「風評」とされる内容の一つに、被曝の影響とした鼻血の描写がある。同誌の特集では、放射線との因果関係について否定と肯定の双方の意見が掲載された。
日本大学歯学部の野口邦和准教授(放射線防護学)は、被曝による鼻血が考えられるのは「全身に500〜1千ミリシーベルトを超える被曝をした場合」とし、福島県民の被曝はそこまでではないとした。
被曝の専門家には同様の意見が多い。東北大の細井義夫教授(放射線医学)によると、大量の被曝で鼻血が出るのは、血液を固める血小板が減るためで、その場合は歯茎などからも出血しやすくなるという。
一方、岡山大の津田敏秀教授(疫学)は特集の中で「因果関係がないという証明はない」とし、被曝による鼻血はありうるとした。
また、ストレスなどによって健康影響が生じるとする意見も複数あった。避難者らの相談会を開く小児科医の山田真氏は「不安の中で生きている人が、『放射線のせいじゃないか』と思うのも当然」と指摘。「低線量被曝の影響はわからないことが多い。将来のためにいろいろな症状を記録していく必要がある」と朝日新聞の取材に語った。
いわき市の木田光一医師は「健康状態を被曝と被曝以外の影響に分けて考えるのは難しい。被曝との関係は問わず、医療支援を充実させるべきだ」と話す。
■表現に国が介入する不安
最新号で完結した「福島の真実」編は、作者の雁屋哲さんが福島県の人々を取材して描かれた。前半は農家などを取材して福島の食の安全を訴え、風評被害を憂えた。後半は、鼻血の表現などで、なお続く現地での不安を取り上げながら、自主避難者への支援を訴えて終わる。
今回の特集で、作家の玄侑宗久さんは、周りに鼻血が出た人がいないとしたうえで、「登場する『四人の鼻血の一致』は信じますが、それだけで福島県全域を危険と見做(な)し、出て行くことも支援するという考え方は、福島の複雑な状況を更に混乱させるもの」と意見を寄せている。
特集には漫画表現への指摘も。元・東電福島原発国会事故調査委員の蜂須賀礼子さんは、主人公の被曝量では鼻血は出ないとして、セリフのやりとり(「福島の放射線とこの鼻血とは関連づける医学的知見がありません」「うっかり関連づけたら大変ですよね」)を「医師が放射線と鼻血とを故意に関連づけないようにしている印象を与えます」と記した。
「美味しんぼ」について、評論家の呉智英さんは「作者の雁屋さんはこれまでも、はっきりした主張や信念を込めた作品を残してきた。今回も原発事故の被害を訴えたい思いが強かったようだが、被害を訴えるほど、新たな風評被害を生んでしまうことに思いが至らなかったのではないか。これだけ話題になるのは、漫画というメディアが社会に認知されている証拠とも言える」と話す。
科学者だけでなく、閣僚らからの懸念の声に対しては疑問の声もある。
漫画文化にくわしい藤本由香里明治大教授は今回の騒動について、「地元からの抗議は当然だが、閣僚らが一斉に遺憾の意を示したことに不安を覚える。批判されているのは政府自身にもかかわらず、国が漫画表現に対して介入する余地を残したのでは」と話す。多くの人が知っている作品ゆえに大騒ぎとなったが、漫画によるルポ作品は珍しくなく、論の運びも突出してはいないという。「ただし、『福島の真実』編の既刊の単行本では福島の農産物は安全と言っているのに、今回、相反するように見えるのは、前半では福島に残る人に寄り添って描いたので、後半では避難の正当性を強調したのだと思いますが、危険を強調、単純化しすぎたきらいはあるように思います」
ジャーナリストの佐々木俊尚さんは「科学的には、(低線量被曝による鼻血は)あり得ないという知見が積み重ねられている。だが、子供が鼻血を出す経験をしたお母さんは不安だ。社会は不安に思う人がいることを引き受けなければ。作品を『非科学的』と断罪しても不安は消えない。政府などは、不安を和らげる努力を延々と続けるべきだ」と話している。
「美味しんぼ」は次号から一時休載に入る。小学館広報によると「以前から決まっていたこと」という。
■福島の反応は
福島県内の反応は様々だ。福島市の飯坂温泉観光協会は観光客が減っていないか各旅館に問い合わせた。影響は出ていないが、旅館で働く男性(60)は「あれを読めば福島の温泉に行こうと思わなくなる」と影響を心配。全町避難が続く浪江町の馬場有町長は「客観データも入れ、バランスよく表現してほしかった」。本格漁業の自粛を続ける県漁業協同組合連合会の野崎哲会長も「福島で生計を立てる我々はどうすればいいのか」と憤る。
一方、「美味しんぼ」批判に走る国や自治体に違和感を訴える人も。福島県いわき市で子育て中の女性(45)は「行政は『大丈夫だ』と説得するばかり。それに反することを言うと邪魔だと言われる状況が悲しい」。飯舘村の菅野典雄村長は「放射能に対する考え方は人それぞれ。ちょっと衝撃的だったが、日本全体で勉強する機会になれば」と話す。
■「編集部の見解」骨子
19日発売の週刊ビッグコミックスピリッツに掲載される「編集部の見解」の骨子は以下の通り。
・多くの方々が不快な思いをしたことについて編集長として責任を痛感している
・残留放射性物質や低線量被曝の影響についての議論や報道が激減しているなか、あらためて問題提起をしたいという思いもあった
・ご批判、お叱りは真摯(しんし)に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく
誌面では「編集部の見解」のほかに、有識者13人による賛否の意見や自治体からの抗議文を紹介する特集も掲載している。
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