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建設差止め訴訟に揺れる大間原発「フルMOX。つまりプルトニウムをひたすら燃やすためという目的のために造られた原子炉です」〜第71回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no71/
20140517 R/F #071「小出裕章ジャーナル」【建設差止め訴訟に揺れる大間原発】
石井彰:
北海道の函館市が4月3日青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者の電源開発J-POWERと国を相手取り、建設の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こしました。原発差し止め訴訟で自治体が原告になるのは、日本では初めてのことです。
この訴訟が特別な意味を持つのは、函館市が原発のいわゆる立地自治体。自分の所の土地にある原発ではなくて、周辺の自治体であるということが大変注目をされています。
そこで、小出さんに今日はこのお話を伺いたいんですが、まず、この大間原発そのものについて、ちょっと教えていただけますか?
小出さん:
はい。青森県の下北半島の最北端にあります。本州最北端ですね。で、すぐ向かい側が北海道ということで、函館市まで市役所のある所まで30数キロだと思いますし、函館市の一番大間原発に近い所は、20キロ程度しかないという、そんな所なのです。
そして、もともと大間町というのは、青森県ではありますけれども、青森市とのつながりは大きくなくて、むしろ海峡を挟んだ函館市とのつながりが大きい。要するに、生活文化圏としては函館市と一緒に生きてきたという、そういう町なのです。
そこに電源開発株式会社、最近はJ-POWERとか呼ばれていますけれども、その会社が大間原子力発電所を建てるという計画を随分昔に立てたのですけれども、すったもんだ様々なことがあって、なかなか実現に至らなかったのですが、2008年だったでしょうか? ようやく着工して現在造りつつあるということなのですが、福島第一原子力発電所の事故を受けて、一時期工事すらができない状態でした。それが、また今再開されてるという状態です。
石井:
この原発自体に他の原発とは違う特徴があるそうですが。
小出さん:
そうです。私達の間ではフルMOX炉と呼んでいます。
石井:
フルMOX炉?
小出さん:
はい。モックスと言うのは、MOXと書くのですが、ミックスとオキサイドという英語の単語の頭文字を取っていまして、日本語で言うと、混合酸化物燃料と私達は呼んでいます。
一体、何を混合してるのかと言うと、普通の原子力発電所の燃料はウランで造られているのですけれども、大間の原子力発電所の燃料はウランだけではなくて、それにプルトニウムという物質を混合させて燃料に使うという特殊な原子炉です。
石井:
これは、他にもあるんですか? 日本には。
小出さん:
はい。もともと日本にある原子力発電所は、ウランを燃やすというために設計されてこれまで運転されてきました。しかし、原子力発電所を運転すると、使用済み燃料の中にプルトニウムという物質が自動的に溜まってきます。
そのプルトニウムという物質は、長崎に落とされた原爆材料だったのです。原爆に使えるぐらいだから、原子力発電所の燃料にも使えるということで、日本では日本の原子力発電所の使用済み燃料の中から、プルトニウムを取り出してきました。
と言っても、日本がそれを実行できるわけではなくて、イギリスとフランスに送って再処理という作業をしてもらってプルトニウムを取り出してもらってきたのです。長い間、それを続けてきてしまいまして、今、日本にはいわゆる日の丸という印が付いたプルトニウムが44トンあるという状態になっています。
それを日本では、原子力発電所で燃やすと言ってきたのですが、本来それを燃やすための原子炉というのは高速増殖炉という、今まで日本にはない原子炉なのです。そして、もんじゅという原子炉を高速増殖炉ですけれども、完成させてそこで使うと公式には言ってきたのですが、もんじゅ自身が全く動かないのです。
そのため、44トンものプルトニウムが行き場がなくなってしまっているわけですが、先程聞いていただいたように、プルトニウムというのは原爆材料そのものなのです。44トンのプルトニウムでもし、長崎型の原爆を造れば、4000発もできてしまうというほどのプルトニウムを日本は懐に入れてしまったのです。
ところが、その使い道もないということで、日本は国際的に大変不審の目を向けられていまして、使い道のないプルトニウムは持たないという国際公約をさせられたのです。
しかし、もんじゅを含めて高速増殖炉は動かない。それなら、もう仕方がないから、ウランを燃やすために設計された普通の原子力発電所で燃やしてしまおうという、誠に愚かで危険な策謀を始めまして、それがプルサーマルと呼ばれてきた計画です。
でも、そのプルサーマルで燃やしたとしても燃やせる量が知れているので、なんとかプルトニウムをひたすら燃やせるような原子炉を造りたいということになりまして、大間原子力発電所というのはフルMOX。つまり、プルトニウムをひたすら燃やすためという目的のために造られた原子炉です。
石井:
小出さん達専門家の目から見て、単にウランを燃やすだけじゃなくて、そこに大変濃度が高いプルトニウムを混ぜるという事は、非常に難しい技術が求められるのではないかと素人考えで思うのですが。
小出さん:
はい。おっしゃる通りです。特に、今、日本がやろうとしてるプルサーマルというものは、もともとウランを燃やす為に設計された原子炉の中に一部プルトニウムも混ぜ込んで運転しようとする計画です。
皆さん石油ストーブをお使いだと思いますけれども、石油ストーブの燃料はは灯油です。灯油を燃やす為に設計されたのが石油ストーブですけれども、石油ストーブでガソリンを燃やそうとすれば火事になってしまうわけですね。ですから、本来ウランを燃やすために設計された原子炉でプルトニウムなどを燃やしてはいけないのです。
私は、ですからプルサーマルという計画に反対してきました。ただし、今度の大間の原子力発電所は初めからプルトニウムを燃やすために設計するという、そういう原子炉ですので、設計の考え方としては私はプルサーマルよりはいいと思います。
しかし、プルトニウムという物質は、ウランよりも核分裂の連鎖反応をコントロールしにくいという。まず、基本的な性質を持っていますし、おまけにプルトニウムという物質はウランに比べて放射能の特性が20万倍も高いというほどの猛毒物質なのです。
100万分の1グラムのわずかなちりをもし誰かにすり込ませることができれば、その人は肺がんで殺せるというほどの猛烈な猛毒物質であって、それを取り扱うということ自身に危険がともないますし、万一事故でもなれば、また事故の被害の危険が大きくなってしまうということになります。
石井:
こういう新しい形の原子力発電所というのは、小出さん世界にはいくつかあるんですか?
小出さん:
ええ、フルMOXという原子力発電所は世界にひとつもありません。
石井:
この大間だけですか?
小出さん:
そうです。先程聞いていただいたように、日本の場合にはちょっと特殊な事情がありまして、核兵器材料であるプルトニウムを大量に貯め込んでしまって、それを何とかしなければいけないという所に既に追い込まれてしまっているという。その事情のために、こんな原子炉も必要になっているわけです。
石井:
ありがとうございました。
小出さん:
はい、ありがとうございました。
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