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【 汚染された故郷、再建できない生活、そして原発難民の帰還へ強まる政治的圧力 】〈前篇〉
http://kobajun.chips.jp/?p=18179
2014年5月16日 星の金貨プロジェクト
苦悩する地元住民は蚊帳の外、日本政府と『日本の大手メディア』による除染完了の安全宣言
「補償は打ち切る、原発被災者は元いた場所に帰れ」強まる安倍政権の冷酷な圧力
原子力ムラの強大な力を背景に、一部大手メディアと結託、日本の原子力発電の大復活を目論む
充分な賠償を行なえば、巨額の費用が表面化。そんな対応は原発に対する世論の反発を招くだけ
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 4月27日
3年前に発生した福島第一原発の事故によって避難を強いられて以来、キム・ウンジャさんと彼女の夫は環境中に残る放射線の被害を避けるため、見事な山容を誇る自然の中にある村の丘の上にある自宅に戻ることを拒んできました。
しかし彼らは今、最早選択の自由は許されなくなるかもしれないと話しています。
2014年4月、日本政府は付近一帯を250億円の費用を投じて除染作業を行い、福島第一原発20キロ圏内の避難区域内では初めて、都路地区の安全宣言を行い住民の帰還を促しています。
この決定により事故の責任者である東京電力は、これまで負担していたキムさんたちが車で1時間ほど離れた場所のアパートの避難生活を可能にしていた、月々の給付金を打ち切ることが出来るようになります。
「日本政府と日本の大手報道機関は除染によって放射性物質がほとんど除去されたかのように伝えていますが、それはすべてうそです。」
と、韓国出身のキムさん(55)がこう語りました。
キムさんは日本人の夫と都路村の郊外で小さな韓国のレストランを経営しています。
「私はここから避難をしたいのですが、そうすることができません。私たちは今度の事で、お金をすっかり使い果たしてしまったのです。」
しかしそうした境遇にあるのは彼女だけではありません。
日本政府と国営放送、全国規模の報道機関が都路村の再開を、2011年3月の福島第一原発の事故が付近一帯を壊滅させて以来、初めての画期的な出来事として報道する一方で、地元の人々はその裏にある暗い現実について重い口を開きました。
彼らは、かつて住んでいた自宅は損傷がひどく、住むには危険過ぎる上、他の場所で生活を再開しようにも、未だに充分な賠償金を受け取れずにいると主張しています。
ほとんどの家族にとって自宅は最大の財産ですが、元住民たちは東京電力がその家屋の補償すらきちんと行っていない点について、口をそろえて批判しました。
住民たちによれば、住んでいた場所によって最低でも事故前の評価金額の半額以上の補償が受けられるはずでしたが、実際には最高でも30万円程しか手にしておらず、受け取るべき金額の数パーセントに留まっています
多くの村民は補償金額そのものについても、未だに様々な形で放射性物質の漏出を続けている福島第一原子力発電所から充分に離れた場所で生活を再建するか、あるいは伝統的な農家の木造家屋を修理するには補償金額が低すぎると不満を露わにしています。
これらの家屋は地震によって損害を受けた後、福島第一原発の事故により住民たちが避難を余儀なくされたことにより放棄されたことにより、腐敗が進み、一部あるいは全部が倒壊してしまっています。
この結果避難を余儀なくされた多くの住民が不安定な状態のまま捨て置かれ、窮屈で劣悪な環境の仮設住宅で暮らし続けることを強いられるか、東京電力が費用負担していた都路村以外でのアパート生活を打ち切らざるを得ない状況に追い込まれています。
東京電力は日本政府から命令の下、各種の補償金の支払いを行っています。
元の住民たちは現在、望もうが望むまいが、かつて住んでいた場所に戻るよう求める圧力が強められつつあることを感じています。
日本政府は現在月額数万円から十万円を超える月々の補助金を、来年3までに打ち切ることを公表するとともに、仮設住宅についても順次閉鎖していくことを発表しました。
それ以前に帰還を果たした村民に対しては東京電力が90万円の一時金を支給することになっており、このことも帰還への圧力を強めています。
「東京電力は、補償問題についてあまりにも不当な態度を取り続けています。」
都路地区が属する田村市の冨塚市長がこう語りました。
「私たちは被害者なのです。なのに充分な補償を求めるために、東京電力まで出向いてぺこぺこと頭を下げなければならないのでしょうか?」
150,000人の住民が避難・移住を強いられた福島第一原発の事故の被災地では、日本政府が3兆6,000億円をかけて行っている除染作業進んでいますが、専門家は都路地区が除染完了と住民帰還の先例と位置づけられていると語っています。
同時に専門家は、強大な力を持つ原子力産業に対する批判を抑え込み、日本の原子力発電事業全体について、可能な限り福島第一原発の事故以前の状態に戻すため、事故の被災者たちは日本政府の圧力が強まっていることを感じとっていると指摘しました。
「その態度はまさに冷酷で、無責任です。」
原発事故の被災者が充分な補償を受けられるよう、東京に拠点を置いて被災者のサポートを行う法律組織『原発被災者弁護団』( http://ghb-law.net/ )の弁護団長を務める丸山輝久弁護士がこう語りました。
「日本政府は充分な賠償を行なえば、巨額の資金が必要になり、そうなれば日本で原子力発電を続けることに対する一般国民の疑念を呼び覚ましてしまう、その事が解っているのです。」
東京電力はこれまで支払った様々な形の補償・賠償金の総額が3兆6,000億円に上っている以外のことについては、コメントを拒否しました。
東京電力の広報を担当する山岸氏は、次のように語りました。
「わが社はそれぞれのお申し出について、心を傾けてお話をうかがっています。」
補償について基準作りを進めている文部科学省のスポークスマンは、ひとり一人の被災者の要求に出来るだけ対応するようにしているが、すべての要求に応ずることは難しいと語りました。
補償関連の係争問題を解決するために設立された政府の委員会は、これまで不満を持つ避難者から10,000通以上の請願書を受け取ったと述べました。
〈 後篇につづく 〉
http://www.nytimes.com/2014/04/28/world/asia/forced-to-flee-radiation-fearful-japanese-villagers-are-reluctant-to-return.html?_r=0
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何度か書きましたが、仙台市で暮らしている私たちは3.11を体験することにより、住む場所や家を奪われるという事がどういう事なのか、その『臨死体験』をしたように思います。
そして原発難民になってしまわれた方々は、実際にそれまでの人生を奪われるという苛烈な体験を強いられることになってしまいました。
福島、宮城、岩手の3県の被災地の中にあって、原発難民の方々の境遇だけは想像を絶するもののようです。
しかしそこにある『理不尽さ』が相当に大きなものである事だけは、容易に想像できます。
ではなぜその理不尽さは、そのまま放置されているのか?
その理由については、後篇をご覧ください。
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【 汚染された故郷、再建できない生活、そして原発難民の帰還へ強まる政治的圧力 】〈後篇〉
http://kobajun.chips.jp/?p=18206
2014年5月17日 星の金貨プロジェクト
「安全な故郷」に向かうはずの道の脇に、延々と並ぶ放射性廃棄物の黒い袋
「原発被災者は元いた場所に帰れ」、そのために様々に『仕組まれる』補償制度
一度原発事故が起きてしまったら、満足な賠償・元通りの生活など望むべくもない
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 4月27日
2014年3月、安倍晋三首相が田村市を訪れた際、冨塚市長は原発被災者が充分な補償を得られるよう求める手紙を手渡しましたが、未だに回答はありません。
※写真
都路地区への帰還が開始されましたが、そこに続く道の両側には放射性物質に汚染された廃棄物を詰めた黒いビニール袋が大量に積み上げられています。
住民同士の結びつきが強い日本の山間部や農漁村などでは、普段は訴訟などの係争ごとは敬遠されるにもかかわらず、都路地区では500人程の住民たちが東京電力に対し充分な補償を求める1〜2の訴訟に、原告として加わっています。
多くの原発避難者、特に小さな子供たちがいる家族は放射線被ばくの懸念があり、かつての住居には戻りたくないと考えていますが、日本政府は都路地区は最早安全であると主張しています。
もともと都路地区は事故の際に、最も規模の大きな放射性物質の降下を免れており、付近と比較すれば汚染の程度がひどくない場所でした。
そこに1,300名の作業員が入り、土地の表面の土を削り取って新たに汚染されていない砂利を策など大規模な除染作業を行った結果、さらに放射線濃度を下げることができました。
最近の現地調査による放射線量は最高で毎時0.23マイクロシーベルトという値であり、これは事故以前の放射線量の3倍程度あり、避難区域に指定されている近隣の市町村と比較すれば低い値です。
しかしこの数値が人間にとって安全なものであるかどうかは、大いに議論のある問題です。
多くの専門家は、長期間被ばくを続けることが人間の健康にどう影響するか、経験も知識もほとんど無いことを認めました。
全域が避難区域となり住民が居なくなった市町村の中で、都路地区が再び人間が住めるようになったモデルケースになることを日本政府も福島県も期待していました。
現在のところ、帰還を果たした住民は全体の3分の1に留まっています。
その3分の1の人々の大半は、最早ガンの発症などそれほど気に病む必要が無いと語る年齢の高い人々です。
2011年3月11日、地震と津波によって福島第一原発の冷却装置が機能しなくなり、都路地区の住民約3,000人は全員が次の日のうちに批難しました。
福島第一原発から20キロ以上離れた場所で暮らしていた大半の住民は、損害金として30万円を受け取り、半年後には自宅に戻っても良いとの通告を受けました
しかし大半の住民は戻りませんでした。
一部の人はその理由を店舗などの生活施設が再開していないことを理由に挙げましたが、多くの住民が放射線に対する懸念を主な理由に挙げ、未だに戻ろうとはしていません。
一方住んでいた場所が福島第一原発から20キロ以内にあった357人の住民については、事故発生から3年以上が経つ4月1日まで帰還が許されませんでした。
これらの人々は事故前の自宅の評価額の約半分に相当する、最も高い補償金を受け取りました。
その中に63歳の宗像国義さんがいます。
宗像さんは福島第一原発から南西15キロほどの場所にある農場で、壊れてしまった小屋を修理していました。
宗像さんは東京電力から受け取った補償額500万円では、祖父が建てた古い農家を修理するにはとても足りないと語りました。
板の間の床はひどく歪み、引き戸はもはや閉まりません。
しかし彼はここに戻ることも、去ることもできずにいます。
※宗像義邦さんが福島第一原発の事故発生以来、3年間打ち捨てられたままになっていた自宅の修理をしていました。(写真下)
宗像さんは事故直後、最早この場所で生活することをあきらめ、北海道に渡りその場所でトラック・ドライバーとして人生をやり直そうとしました。
しかし蓄えも無く始めた再出発はたちまち金銭的に行き詰り、18か月後には断念せざるを得なくなり、被災者に対する月々の補償金を受け取るため、この場所に戻ってきました。
彼は3月に補償金が打ち切られてしまったら、その先生活して行けるかどうか自信が無いと語りました。
「結局、住民私は自宅を丸ごと捨てさせられた様なものでした。」
彼は引退前、福島第一原発で働いていたこともあり、放射線を特に恐れてはいないと語りました。
「補償金が欲しければここに戻って来るしかありません。しかしその金額は、この場所で生活を再建するためには、とても充電なものではないのです。」
キムさんと夫の水落聡さんは結局この場所に戻りませんでした。
2人は余生をこの場所で送るつもりで3,000万円をかけて自宅兼店舗を建てましたが、そのすべてが無駄になる事態が目の前にあります。
この建物の購入を前向きに検討してくれる人など現れそうにありません。
キムさんも水落さんも、この建物は実質的に無価値だと語りました。
しかし2人にはこのレストランを細々と経営する以外に生活手段は無く、借り上げ仮設住宅の家賃補償が打ち切られれば、この場所に戻る以外、選択の余地が無いだろうと語りました。
「日本政府も電力会社も、事故以前と同じように原子力発電所を稼働させるため、すべてが元通りの状態に戻ったと言いたいのです。」
57歳の水落さんが、小さなレストランで妻の手伝いをしながらこう語りました。
「彼らは敢えて補償を充分に行わないことによって、被災者は元いた場所に戻るしかない、そのような選択をするように仕向けているのです。」
〈 完 〉
http://www.nytimes.com/2014/04/28/world/asia/forced-to-flee-radiation-fearful-japanese-villagers-are-reluctant-to-return.html?_r=0
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この記事を読んでいて思い出したのが、パレスチナ住民に対するイスラエルの占領政策です。
私が本で読んだのは、パレスチナ住民の本来の権利・人権意識を奪うために、『政策として』理不尽な取り扱いを繰り返し、それに慣れさせることにより抵抗意識を徐々に奪っていくイスラエルの狡猾な手法でした。
記事を読み、原発難民の人々に対する現政権の対応もまた、同様の考えに則っているように感じました。
同時に「分割して統治せよ」という、英国の植民地政策で使われた手法も福島で用いられているようです。
すなわち体制に協力するなら可能な限り優遇し、そうでなければ冷酷に取り扱う、あるいは分母に含めずその存在が社会の目に触れないようにしてしまう。
そこには政権に協力する大手メディア、出版社などが加わって『権力カルテル』とも言うべき体制が構築されており、事実を次から次に闇に葬っている。
残念ながらそうした闇が広がり続けているのが、現在の日本であるように感じます。
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