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お母さんのための原発資料展望(9) 鼻血・・・「確率的に起こる疾病」とは?
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平成26年5月14日 武田邦彦(中部大学)
福島原発の後の鼻血について、大きな話題になっている。その中で、「よほど理解力がないのではないか」と思われる政治家が多いのにはびっくりする。本当に理解力が不足しているのか、それとも政治的に間違いを押し通そうとしているのか、おそらく後者だろう。
多くの病気も同じことだが、「同じ環境にいて発病する人と、しない人がいる」というのが普通だ。それは「火の中に手を入れたらやけどをした」というような「確定的な関係」の影響が少ないことによる。
たとえば、インフルエンザが流行しても、すべての子供が「病気になるか、ならないか」の2つの状態になるのではなく、「10万人の子供のうち、890人がインフルエンザになった」というものである。詳しく調べれば、たまたまその時に抵抗力がなかったり、悪い環境にいたり、ウィルスに濃厚に接触したりしたという原因はあるだろうが、表面的には「確率的」である。
放射線の被ばくによる疾病の多くも、現在ではそのように考えられている。特に「確定的な関係」がみられる数100ミリシーベルトより弱い被曝の場合は、「確率的」と考えられている。この考えが正しいかどうかは別にして、少なくとも法律(私たち国民相互の約束)では、確定している。
(1年1ミリシーベルトの被ばくで、日本人全体なら致命的発がんが6000人、重篤な遺伝性疾患が2000人の合計8000人:国立がんセンター発表)
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ところで、「低線量の被曝をしたら鼻血がでるか」というのは、「俺は出なかった」などという話は全くの荒唐無稽で、そのような発言を報道する方も見識が疑われます。ましてもっとも身体が強靭な成人男子の例などはまったくといっても参考になりません。
鼻血は口腔内、鼻腔内、咽頭粘膜、気管粘膜、および食道粘膜の損傷によって起こり、部位は広く口腔鼻腔から食道に及びます。子供の場合は鼻腔内のキーゼルバッハからの出血も多いと言われています。低線量で発生する確率が1万分の1の場合、一個人ではほとんど発病しませんが、日本人全体では12000人ほどの患者さんがでることになります。
これは食品安全、環境保全の基本的な考え方なので、専門領域では「10万人当たりの発症者」という整理をするのです。
鼻血を誘発するのが被曝であったり、セシウムの微粉だったりします。セシウム粒子が粘膜に付着したら継続的に被曝を受けますから、あるお子さんの粘膜の被ばく量は、そこの「空間線量」の被曝の数100倍になることもあります。
放射線治療でも鼻血がみられることもあり、全体として常識的な見解は「低線量被曝で鼻血がどの程度の確率で起こるかははっきりしない。これは確率的な疾病であることから、発がんなどと同一の現象である」ということ、「低線量被曝でどのような健康被害がでるかは、母集団が大きい今回の福島の例をしっかり研究していかなければならない」と言うことでしょう。
原発を推進してきた人々の責任は、「疑問を持つものにふたをする」のではなく、「積極的にデータを取り、研究して、まずは健康を守る、次に将来に備える」ということでしょう。
「鼻血が出た」という訴えに対して、それを打ち消したり、バッシングするという態度は、およそ指導者ではありません。また公害(多くの人が被害を受ける環境破壊)では、被害を受けた個人は立証の責任はありません。「俺は咳が出た」で十分で、それを検討するのは自治体です。
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