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抗議を受けた小学館発行の「美味しんぼ」。先月28日発売号で原発取材後の主人公が原因不明の鼻血を出し(右)、最新号では井戸川克隆・前双葉町長の「今の福島に住んではいけない」との発言が描かれた(左)
「美味しんぼ」の描写に波紋 被曝で鼻血…抗議相次ぐ
http://www.asahi.com/articles/ASG5D4W9FG5DUGTB00C.html?iref=comtop_6_06
2014年5月12日23時25分 朝日新聞
週刊ビッグコミックスピリッツの人気漫画「美味(おい)しんぼ」の東京電力福島第一原発事故をめぐる描写に対し、福島県や地元政界などが12日、発行元の小学館に相次いで抗議した。問題視するのは登場人物が放射線被曝(ひばく)と鼻血の因果関係を指摘したり、「福島に住んではいけない」と述べたりする場面。県内には風評被害への懸念が根強い一方、強まる抗議に「被曝への不安が口にしにくくなる」と心配する声もある。
「福島県民の心情を全く顧みず深く傷つけ、農林水産業や観光業へ深刻な損失を与えかねない」「断固容認できず、極めて遺憾だ」
福島県は12日、ホームページに載せた見解で、鼻血の描写などについて、小学館に対し強く抗議。「原発事故で放出された放射性物質に起因する直接的な健康被害が確認された例はない」とも指摘した。
同日には政府のスポークスマンである菅義偉官房長官も会見で「住民の放射線被曝と鼻血に因果関係はないと、専門家の評価で明らかになっている」と断じた。自民党県連や民主党県議らでつくる会派も相次いで抗議声明を出した。
騒ぎは大学にも飛び火。福島大准教授が12日発売号で除染の効果を否定したことに対し、中井勝己学長は「多方面に迷惑と心配をおかけして大変遺憾。教職員には立場をよく理解して行動と発言をするよう注意喚起する」と談話を出した。
一方、鼻血をめぐる発言をした福島県双葉町の井戸川克隆・前町長は9日の会見で「本当のことをしゃべっただけだ。県が慌てるのはおかしい」と語った。
最新号の描写について、スピリッツ編集部は12日付のホームページで「行政や報道のあり方について議論を深める一助としたい」とコメント。また、19日発売の次号の特集ページで複数の識者の意見や抗議に対する見解を示すとしている。漫画の内容や表現を変える予定はないという。
原作者の雁屋哲氏は、自らのブログで福島に関する作品が続くことを明らかにし、「取材などはそれから後にお考えになった方がよいと思います。書いた内容の責任はすべて私にあります」とコメントしている。(高橋尚之、根岸拓朗)
■「事実と思えない」「実情知る契機に」
福島県民の受け止めは様々だ。
福島市の学童保育指導員佐藤秀樹さん(47)は「放射線への不安は当然ある。それでも多くの人が県内で懸命に子育てをしている事実をどうみているのか」と首をかしげる。内部被曝検査や食品の放射線量をチェックすることで、被曝への不安は少しずつ和らいだ。「事実を積み重ねた表現とは思えない」という。
これに対し、原発事故の刑事責任を問う原発告訴団長の武藤類子さんは「私も事故後、鼻血が出るとの訴えを耳にする。放射性物質の存在も事実だし、因果関係がないとは断定できないはず。鼻血の表現にこぞって大抗議をすることに違和感を覚える」と話した。
ツイッターで批判の口火を切り、つぶやきが1万回以上リツイートされた郡山市の塾講師「順一」さん(32)は「主張を封じるのではなく、問題点を検証し、より多くの人に福島の実情を知ってもらうきっかけになれば」と話す。
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《美味しんぼ》 1983年から連載が始まった人気グルメ漫画。新聞記者を主人公に、様々な食べ物や食文化を紹介する。食にまつわる社会問題を取り上げることも多く、過去には牛乳の製法や化学調味料などをテーマにして物議を醸し、業界からの抗議を受けたこともある。これまでに単行本は110巻が刊行され、累計発行部数は1億2千万部を超える。
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■問題とされた描写
問題とされたのは先月28日と今月12日発売号。前者では福島第一原発の構内を取材した主人公らが原因不明の鼻血を出し、福島県双葉町の井戸川克隆・前町長が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ」と語る場面が描かれた。
続く12日号では、井戸川氏の「鼻血や疲労感で苦しむ人が大勢いるのは被ばくしたから」「今の福島に住んではいけない」との発言を紹介。福島大の准教授も実名で登場し「福島はもう住めない、安全には暮らせない」「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」と語る場面も描かれた。
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