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だからこそ福島第一原発過酷事故後に福島県立医科大学の副学長として招聘されたとも言えるが、“政府あっての国民”という価値観を公言する確信犯的御用学者山下俊一氏へのインタビューである。
山下氏は、インタビューのなかで、「環境省が青森、山梨、長崎の3県で4365人の子どもを対象に福島と同じやり方で甲状腺の検査をしたところ、精密検査が必要と判断された子は約1%(44人)。福島県は約0.7%(約1800人)だ。3県調査ではこれまでに1例のがんが見つかった。頻度は0.023%で、予測された水準だった。これからみても子どもたちの甲状腺がんの頻度は1万人に2、3人とみてよいだろう」と説明しているが、福島県の調査対象者は0〜18歳で3県(青森・山梨・長崎)の調査対象者は18歳以下と母集団の年齢特性に違いがあり、結果データをそのまま比較することはできない。
(※ 福島県の調査で、甲状腺がん、もしくはがんの疑いがあるとされた人数は74人(甲状腺がんが33人・疑いは41人))
年齢構成の問題に加え、福島第一原発事故との関連ということで考えれば、3県の地理的特性は大きく異なる。4365人の居住県別構成や“たった1例”しかない甲状腺がん発症者の居住県さえ不明のまま、福島県在住の0〜18歳26万人弱のデータと比較しているのは学者として無謀の極みである。(山梨は青森以上に場所によって大きな被ばくを推定できる)
さらに、福島県と言っても、居住する地域によって推定放射線被ばく量が異なる。福島県という括りでまとめたデータと青森・山梨・長崎3県から集めたデータを比較することに“悪意”(甲状腺がん発生と福島第一原発事故との関係性を否定することができるデータとする)を見ないわけにはいかない。
(※ 「福島県内の浜通り(太平洋岸)、中通り(福島市、郡山市など)、会津地方で年齢が上がるとともに同じように頻度が増すなら、放射線による差がないとみていいだろう」と山下氏も語っているように、福島県の調査で見つかった甲状腺がんもしくはがんの疑いがあるとされた74人の居住地域とその地域の調査対象者数の関係を明らかにする必要がある)
調査対象者の年齢構成が違うという問題は山下氏自身もわかっているようで、「――福島から離れた地域の子どもたちは、放射性ヨウ素による内部被曝がもともとない子たち。福島と比較できるのか」と問われて、「むしろ条件が違うからいい。(内部被曝がない)他の地域と同じ頻度ということは、福島のベースライン調査結果では放射線の影響はみられないということを意味する。3県の方で精密検査が必要な結節や嚢胞(のうほう)が多かったのは、対象者の平均年齢が高くその分だけ高く出た結果だろう」と答えていることでもわかる。
福島第一原発事故は東日本全域に深刻な放射線被ばくをもたらしており、山梨。青森を含む3県の調査対象者の居住地域を明確にしないまま「(内部被曝がない)他の地域」という説明はデタラメであるが、「3県の方で精密検査が必要な結節や嚢胞(のうほう)が多かったのは、対象者の平均年齢が高くその分だけ高く出た結果」と説明しているように、居住地域による推定放射線被ばく量の違いはともかく、“0〜18歳”と“18歳以下”という年齢構成の違いがデータに影響を与えることを認めている。
まともな医学者であれば、記事で取り上げられているデータをもって、「これからみても子どもたちの甲状腺がんの頻度は1万人に2、3人とみてよいだろう」とは言わない。
記事を書いた日経新聞編集委員滝順一氏も、「小児甲状腺がんは100万人に1人くらいだと長らく専門家から聞かされてきた。それが調査結果が出てから、最近は検査機器の高性能化でもっと多いのだと言われても、後付けの説明に聞こえてしまう」と書いている。
そして、「最初の1、2年で見つかったがんは事故前に芽生えていたものだとの説明にある程度はうなずけたとしても、それだけでは放射線の影響がまったくないという証明にはならない。まして今年度からの本格調査でがんの頻度が上がった時、そのうちどこまでが自然発生的で放射線の影響ではないと言えるのか。とても難しい説明になると思う」とも書いている。
政府や福島県が行っている“健康調査”で得られたデータが、山下氏らの恣意的な“解釈”によって、甲状腺がん発生と福島第一原発事故との関係性を否定するものとして“活用”されることはあまりにも辛く過酷な悲劇である。
山下氏は、「これから難しいのは、大規模な検診を続けていけば『スクリーニング効果』で本来は見つけなくても問題ないようながんまで見つかる。その検診結果を、検診を受けた子や親にどう説明していくかだ。米国などの研究者からは(被曝量が少ないことがわかったから)もう検診はやらなくてもいいという意見を耳にする。私たちはこの事業を見守りだと考えている。事故の被災者の健康を守り、むしろ増進が可能なようきちんとケアをする責任があると思っている」と説明しているが、健診は、福島第一原発事故に伴う大量の放射線被ばくという稀有な“人体実験”のデータを得ることであり、政府のために癌など疾病の発生増加と福島第一原発事故の因果関係を否定するネタを得ることが目的と考えたほうがいいだろう。
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福島で甲状腺がん検診 被災者の「見守り」継続を
編集委員 滝順一
2014/5/12 7:00
福島県が県内の子どもたちを対象に甲状腺の大規模な検診を進めている。2013年末までに、合わせて74人のがん(33人)、ないし悪性の疑いのある子(41人)が見つかった。この数に驚いた人も多いにちがいない。しかし判定にあたった福島県立医科大学の専門家は「放射線の影響は考えにくい」と説明する。なぜそう判断するのか。検診制度を立ち上げた長崎大学理事・福島県立医科大副学長(非常勤)の山下俊一氏に聞いた。
■「チェルノブイリとは違う」
――11年秋からおよそ2年半の調査で甲状腺がんが33人。たいへんなことが現地で起きているのではと受け止められている。
「甲状腺がんの頻度は長らく、実際にがんと診断され手術を受けた人の数から推定されてきた。大人では10万人に数人、子どもは100万人に1人弱というのが定説だった。ところがここ5〜10年で高性能の超音波診断装置を使った検査が導入され、症状がない人でも甲状腺に結節などがよく見つかるようになった。検診を受ける年齢層や性別、検査方法によって頻度は変わる」
「その結果、各国で甲状腺がんの頻度上昇が報告されている。例えば韓国では、40歳以上の成人で甲状腺がんの数が胃がんや肺がんを上回るほどだ。10人に1人ほどで見つかるが、手術を受けるのは10万人に1人くらい。手術を受けなくてもほとんどの人が寿命を全うできる。急速に悪くなる例もあるが、数のうえでは極めて少ない」
「福島での調査は、事故当時に0〜18歳の若い人たち約36万人を対象にした前例が少ない大規模な調査だ。どれほどの頻度で見つかるか、調査前から懸案事項だった。11年10月から開始し、最初の1、2年は病気の頻度を知るベースラインの調査と位置付けた。それで33人にがんが見つかった」
「チェルノブイリ原発事故後、数年たって子どもの甲状腺がんが増えたことがよく知られているため、世の中は福島でもチェルノブイリと同じことが起きるに違いないとみている。甲状腺がんイコール原発事故による放射線の影響という目でみる」
――事故の影響ではないとみる根拠は何か。
「被曝(ひばく)量が違う。チェルノブイリでは子どもたちが甲状腺に受けた線量(等価線量)は平均500ミリシーベルトとされる。これは事故後、放射性ヨウ素を含む牛乳などを摂取した子が多かったためだ。福島では1080人の子どもたちの甲状腺を直接測った結果、被曝量は最大35ミリシーベルトが1人いたが、大半の子は1ミリシーベルト以下だと推定されている。この被曝量で影響は出にくいと私たちはみている」
「また甲状腺がんでは、がん細胞が増殖して大きさ1センチほどのがんになるのに大人なら10年、子どもなら4、5年かかると考えられる。事故後1〜2年以内、現在の検査で見つかったがんは、平均の大きさが14.3ミリメートルということから事故の前からあったと推測できる。この点からもこれまでに見つかった例は事故の放射線によるものとは考えにくい」
「11年度に約4万1000人を対象に調べ、14例(当初発表の数字)のがん、もしくはがんの疑いのある子が見つかった。約0.03%の頻度だ。同様に2年目は約14万人から50例で0.036%、3年目はまだ検査結果がすべて出ていない中間集計で約8万8千人から10人で0.01%。つまり1万人に2、3人というのが0〜18歳の甲状腺がんの頻度であり、今後本格調査に取り組む上でのベースラインだと考えられる」
「これまでの調査でがんが見つかった子たちの平均年齢は約17歳(事故当時は約15歳)だ。チェルノブイリでは事故当時0〜5歳の子どもたちが5年後くらいに5〜10歳になって甲状腺がんが見つかり始めた。がんの表れる年齢層が福島とチェルノブイリでは違っている」
■他県でもがんになる確率はほぼ同じ
――そもそも甲状腺がんは何が原因で発症するのか。
「放射線が原因になりうることははっきりしている。自然放射線への遺伝的な感受性(影響の受けやすさ)が人によって違うので、(普通に暮らしていても)発症する人もいればそうでない人もいるかもしれない。ほかにも(放射性でない)ヨウ素の摂取量や生活環境などたくさんのリスク因子がありどれかとは言えない」
「環境省が青森、山梨、長崎の3県で4365人の子どもを対象に福島と同じやり方で甲状腺の検査をしたところ、精密検査が必要と判断された子は約1%(44人)。福島県は約0.7%(約1800人)だ。3県調査ではこれまでに1例のがんが見つかった。頻度は0.023%で、予測された水準だった。これからみても子どもたちの甲状腺がんの頻度は1万人に2、3人とみてよいだろう」
――福島から離れた地域の子どもたちは、放射性ヨウ素による内部被曝がもともとない子たち。福島と比較できるのか。
「むしろ条件が違うからいい。(内部被曝がない)他の地域と同じ頻度ということは、福島のベースライン調査結果では放射線の影響はみられないということを意味する。3県の方で精密検査が必要な結節や嚢胞(のうほう)が多かったのは、対象者の平均年齢が高くその分だけ高く出た結果だろう。これから福島でも頻度が上がる。加齢もあるし、今後も注意深いフォローが要る。これまで得たベースラインのデータと比較していく」
福島県と他3県の子どもを対象にした甲状腺検査の結果
福島県(平成23〜25年度) 青森、山梨、長崎県(24年度)
対象者数 269354人 4365人
B、もしくはC判定の人数 1796人(うちC判定1人) 44人(C判定なし)
結果が確定した人数 1342人 31人
甲状腺がん、もしくはがんの疑いがあるとされた人数 74人(うち疑いは41人) 1人(疑いはなし)
B判定は5.1ミリ以上の結節、または20.1ミリ以上の嚢胞が認められた人と、それ以下でも精密検査(2次検査)を要すると診断された人。C判定はすぐにでも精密検査の必要があると判断された人。福島県の調査対象者は2011年3月11日時点で0〜18歳の人。3県調査は調査時点で18歳以下の人が対象。
――加齢に伴い頻度が増すなら、福島での頻度がこれから高まる。それが放射線の影響かどうか見分けられるのか。
「福島県内の浜通り(太平洋岸)、中通り(福島市、郡山市など)、会津地方で年齢が上がるとともに同じように頻度が増すなら、放射線による差がないとみていいだろう」
――放射性ヨウ素による内部被曝はどこまで正確にわかっているのか。1080人の検査結果では実態を知るのに十分とは言えないのでは。
「初期にヨウ素が飛来したいわき市や川俣町、飯舘村の子どもの人口に比べた場合、1080人が全体を推し量るうえで適切なサンプルかどうかは別にして、数は少ないとは言えない。国内外の研究機関などが様々な仮定をおいて内部被曝を推定しているが、それらの結果からみても妥当だと言える」
「これから難しいのは、大規模な検診を続けていけば『スクリーニング効果』で本来は見つけなくても問題ないようながんまで見つかる。その検診結果を、検診を受けた子や親にどう説明していくかだ。米国などの研究者からは(被曝量が少ないことがわかったから)もう検診はやらなくてもいいという意見を耳にする。私たちはこの事業を見守りだと考えている。事故の被災者の健康を守り、むしろ増進が可能なようきちんとケアをする責任があると思っている」
■取材を終えて
甲状腺検診の1年目の結果で、がんが見つかったことを聞いて驚いた記憶がある。「こんなに早く」と思うと同時に、放射線の影響を疑った。後にこれまで取り組んできたのはベースラインの調査でスクリーニング効果が出ているとの説明を知ったのだが、釈然としないものが今も残る。
小児甲状腺がんは100万人に1人くらいだと長らく専門家から聞かされてきた。それが調査結果が出てから、最近は検査機器の高性能化でもっと多いのだと言われても、後付けの説明に聞こえてしまう。
また最初の1、2年で見つかったがんは事故前に芽生えていたものだとの説明にある程度はうなずけたとしても、それだけでは放射線の影響がまったくないという証明にはならない。まして今年度からの本格調査でがんの頻度が上がった時、そのうちどこまでが自然発生的で放射線の影響ではないと言えるのか。とても難しい説明になると思う。
さらに言えば、放射線の影響であろうとなかろうとがんと診断された子と親のショックは変わらないだろう。結果的に見つけてしまった事実を早期診断ととらえてプラスに転化することができるだろうか。
山下さんは「見守り」が大事だと強調するのはその通りだ。ただ福島県や県立医大はこれまで説明がていねいで上手だったとの評判とは遠いところにいる。医学の専門家がきちんと説明して理解をしてもらえる態勢をつくっていくことが大きな課題だ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK08031_Y4A500C1000000/?dg=1
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