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エネルギー政策の方程式 自由化と原発、どう両立
電力小売りを全面自由化する法案が国会で審議入りした。エネルギーの大競争時代が迫る。企業が針路を決める条件は、電力市場改革、東京電力の再建の行方、原子力発電の将来の3つ。この連立方程式の解を見極めることだ。答えはどれも欠けるわけにはいかないが、簡単には解けない。互いに絡み合い、矛盾を抱えているからだ。
関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)。4基が並ぶ原子炉の南側斜面で多数の作業員が働いていた。断層調査のために掘った幅70メートル、深さ40メートルの穴を埋め戻す作業だ。
原発の再稼働を目指す電力各社は原子力規制委員会が定める新しい基準を満たす対策を急いでいる。関電の場合、3カ所の原発にかかる費用は約3000億円。ここに来て追加の耐震工事が不可避となり、上ぶれする可能性もある。
それでも、この費用を上乗せしても大飯の発電単価は1キロワット時あたり「数円の世界」(吉田裕彦所長)。発電単価が10円前後の液化天然ガス(LNG)発電所に比べ圧倒的に安い。
電力自由化時代を勝ち抜く条件は競争力のある電源だ。「関電が原発を4基稼働させ、中部電力が1基も動かせなければ、中部電は電気料金で勝てない」(関係者)。首都圏市場を見据える中部電にとり、西に陣取る関電の原発がどれだけ動くのか気が気でない。
ただし、既存の原発を動かすだけなら、の話だ。福島第1原発事故は、ひとたび事故が起きれば電力会社の存続が危うくなることを示した。電力自由化の下で、上限のない賠償リスクや、巨額の資金調達が伴う原発の建設・維持を電力会社が担うのは簡単ではない。
「国と事業者の役割分担をはっきりさせてほしい」。電気事業連合会会長でもある関電の八木誠社長は訴える。国の新しいエネルギー基本計画は原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた。電力自由化と原発は両立するのか。この問いに答えを出さない限り、大競争は始まらない。
東電の再建を、効率的な市場をつくり強じんなエネルギー産業に組み替える“てこ”にする――。東電の大株主である国は思惑を隠そうとしない。突破口はLNGの調達部門を他社と統合し、東京湾岸の火力発電所を最新型に建て替える「包括的アライアンス」だ。
調達量を世界最大規模の年4000万トンに増やして購買力を高め、割高な燃料費を下げる。狙いはわかるが、東電と上流で組む電力・ガス会社は原燃料を同じ価格で調達し、小売り段階で東電と競えるのか。巨大な独占を新たに生むのではないか。疑問が残る。
東電の数土文夫新会長は「東電には国際感覚がない」という。エネルギー基本計画は電力やガスなど業態の垣根を越えた「総合エネルギー企業」の誕生を促す。電力需要が伸びる海外で、インフラ商談が過熱する現実もある。
鉄鋼や重電のようにエネルギーも国際競争に堪える日本企業は必要だ。うまくいけば“強い”東電が核になる。それと国内の競争促進は両立するのか。エネルギー各社は様々な変数がある中で百年の計に決断を下さなければならない。
[日経新聞5月5日朝刊P.11]
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