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ルポ漫画「いちえふ」を発売した元原発作業員が見た“現場”
http://gendai.net/articles/view/newsx/149708
2014年4月23日 日刊ゲンダイ
(C)いちえふ 竜田一人 講談社 モーニングKC
福島第1原発で働いた作業員が原発ルポルタージュ漫画を描いた。23日発売の「いちえふ〜福島第一原子力発電所労働記〜」(講談社・第1巻)。昨年、漫画誌「モーニング」主催の新人賞で大賞を受賞した作品だ。作者の竜田一人氏(49)を直撃し、漫画を描いたきっかけやトラブル多発の福島原発の現状をどう見ているか聞いた。
竜田氏は大学卒業後、職を転々としながら売れない漫画家として活動。震災後、ハローワークで被災地の仕事を探す中で、福島第1原発の作業員の職に就く。2012年6月から半年間、原発構内の休憩所管理や建屋の配管補修などに従事した後、年間被曝限度量に達したため自宅に戻り、漫画を描き始めたという。
「もともとは単純に働きに行ったんです。でも行ってみたら、あんな興味深いところはない。漫画家として描きたくなった。それに、報道されているのとは違ったので、自分が見た光景を残しておきたいと思ったのです」
■現地で「フクイチ」と呼ぶ人は皆無
漫画のタイトル「いちえふ」。これにも報道に対する皮肉が込められている。
「作業員や地元の人は100%、福島第1原発のことを『いちえふ』と呼んでいました。報道では作業員とされる人が顔を隠してインタビューに答え、<フクイチでは…>なんて語っていましたが、本当に作業員だったの? と疑問に思いました。世間では、作業員は低賃金でこき使われて虐げられた人たちのように伝えられていましたが、実際は自己責任で判断し、自分の意思で来た人たち。みんな普通のオッサンですよ。下ネタやギャンブルの話、冗談を言って楽しく仕事していました」
さて、頻発している原発トラブル。竜田氏はこれをとても心配しているという。
「トラブルの種類が問題です。単純なミスなのか、構造的な欠陥なのか。最近は、誤ったところに汚染水を流してしまいましたが、これについてはキッチリ調べる必要があると思います。故意にやろうとすれば可能。いまは作業員の身元確認や背後関係などほとんどノーチェックなので、悪意のある人が現場に入り込める状況なのです。最低限度のチェックをした方がいいんじゃないかと思います」
先ごろ政府がまとめたエネルギー基本計画については、こう言った。
「国の大きな方針もいいですが、福島原発の事故を収束させる議論が後回しになっている気がしてなりません。これから何十年もかかる廃炉作業で、長期的に熟練の作業員を確保できるのか。健康に影響のない範囲内で被曝限度量を合理的に上げることを考えてもいいのではないか。そうした現場の視点が不足しています」
単行本は第2巻の予定もあるというが、竜田氏は「早く『いちえふ』へ戻りたい。原発収束作業にずっと関わりたい」と話している。
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