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20140419 R/F #067「小出裕章ジャーナル」【ALPSは汚染水対策の切り札なのか?】
小出ジャーナル文字起こし
ALPSは汚染水対策の切り札なのか?「まともに動かないということがありますし仮に動いたとしても多分私はできないと思います」〜第67回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no67/
ラジオフォーラム
今西:
福島第一原発の汚染水問題、相変わらず続いているんですけども、 汚染物質を取り除けるALPS(アルプス)という装置が 鳴り物入りで1日750トンの汚染水が処理できるということでですね、 非常に期待が大きかったのですが、 実際、試験運転的に稼働させましたら、 先だってもですね十分に浄化されてないということでした。
やはり、なかなかああいう過酷な環境の中でキチンとした物を設置するというのは、 かなりハードルが高いということなんですね。
小出さん:
はい。大変難しいだろうと思います。 今、汚染水の中にある放射性物質の内で、特別に重要なのは3種類しかありません。
今西:
3種類ですか?はい。
小出さん:
セシウムとストロンチウムと、そしてトリチウムです。 セシウムに関しては、これまでもそれなりに補足するという装置が動いてきまして、 まあそれなりに捕まえてきたのです。
ただし、今私それなりに捕まえてきたと言いましたけれども、 捕まえるということは消したということではないのです。 いわゆるゼオライトという粘土鉱物にですねセシウムをくっつけたというだけなのであって、 汚染水の中にあったセシウムは、どんどんどんどんゼオライトにくっついてきたわけです。
ある所まで行きますと、ゼオライトがセシウムをくっつける力を失いますので、 そのゼオライトをそのまま保管しているのですけれども、 保管すると言っても、ゼオライトのそのものの温度は多分もう何百度にも、 もうなってしまっていると思います。
そして、放射線を出しているわけですから、 もう保管すること自身も大変危険なことだという状態でやってきました。 ただし、セシウムを取り除いても汚染水の中には、 ストロンチウムとトリチウムという放射性物質が残っています。
ALPSというこの装置、あるいは他の装置を組み立てたところで、 トリチウムという放射性物質は全く補足できないのです。
ですから、ALPSで、もし取り除くことができる、 あるいは意味があるとすれば、ストロンチウムという放射性物質です。 東京電力の説明によれば、汚染水の中からストロンチウムを捕まえて、 汚染水の中のストロンチウムの濃度を法令が定めている濃度限度以下にできるので 海に流せるというのが東京電力の描いている絵なのです。
しかし、残念ながら多分それはできないのです。 ALPS自身がまともにまずは動かないということがありますし、 仮に動いたとしても多分私はできないと思います。
例えば、つい先日もタンクの中から汚染水が漏れていますけれども、 ある時に漏れた汚染水の中には「全ベータ放射能」と私達は呼ぶ放射能の量が、 1cc当たり2億4千万ベクレルという時がありました。
今西:
とんでもない数値ですね。
小出さん:
それはおそらく正体は、ストロンチウムだと私は思っていますが、 環境中にもし放射能を流していいという濃度まで下げなければいけないとすると、 その濃度は1cc当たり30ベクレルなのです。
それに比べて汚染水の中には2億4千万ベクレルもの放射能があったということですから、 一言で言えば、1000万分の1に綺麗にしなければいけないということなのです。
それで、私も京都大学原子炉実験所の中で廃液の中から放射性物質を捕まえる という仕事をしている人間なのですが、 「汚染を1000分の1まで減らせ」と言われれば「あっ、できる」と即答します。 「1万分の1に減らせ」と言われたら「うん、まあできるだろうな」と思います。 「10万分の1にしろ」と言われたら「ん〜、できるかなあ」と首をひねってしまうという、 そういうぐらいのことなのです。
それも私が今できるできないと言ったことは、非常に綺麗なというかですね、 そんなに被ばくをしないでも済むような場所でキチッとした装置を使って、 キチッと作業をしてできるのがどのくらいかという事をお答えしているのであって、 そうではない現場、もともとキチッとした装置ではない物で、被ばくをしながら作業をして、 1000万分の1にしなければいけないという状態に今なっているわけで、 残念ながら多分できないと私は思います。 そうなると、いつか汚染水そのものを海へ流さなければならなくなる日が そう遠くなく来るだろうと思います。
今西憲之:
なるほど。 それでですね、実際例えば先ほどセシウムの場合はゼオライトを使用して、 そこに吸着させる。 けども、そのゼオライト自身は結局、放射性物質を帯びてしまうということは、 そのゼオライト自身もまたこれキチンと管理をしないといけない。 だから、それが汚染水からゼオライトという物に変わっただけで…。
小出さん:
そうです。 要するに、体積をコンパクトにしたいのです。 今はもう敷地の中に何十万トンというような汚染水があって、 そんなものいつまでも溜めておける道理がないわけですから、 とにかく量を減らしたいということで、 水の中からゼオライトというような粘土鉱物の方に移して、 体積を減らしたいと言ってるわけです。
しかし、体積を減らすということは、 要するに、一定の体積の中に含まれる放射性物質の量が増えてくるわけですから、 発熱量がどんどん増えて、要するに温度がどんどん上がってくると。 多分、何百度というような温度に既になってしまっていると思います。
要するに、正体はウランが核分裂した核分裂生成物そのものなわけで、 これまで日本の国、あるいは世界中で その核分裂生成物をどうやって始末すればいいのかと さんざん悩んできているわけですけれども、 本当にどうしたらいいかということは、未だにわからないのです。
日本の場合には、高レベル放射性廃物という物をガラスに固めて 地下300〜1000メートルに埋めてしまおうというような計画が進んでいる わけですけれども。 それにしたって日本のような地震国では、「安全である」 なんてことが言えないという状態で、みんなが頭を抱えているわけです。
この今セシウムを吸着したゼオライトという粘土鉱物だって、 まさに高レベル放射性廃物とでも呼ぶべきものなのであって、 これをほんとにどう出来るかということは、 残念ながら誰にも分からないのです。
今西:
なるほど。 ということはですね、まあ確かにALPSが稼働し、 汚染水が一定浄化されてくるというのも大事だと思うのですが、 それ以上に根本的な問題、「水で冷やす」ということを もう考え直さなければいけないということになるのでしょうか?
小出さん:
はい。 私はそう思います。
まずは、汚染水これ以上増やしてしまうと、 ほんとにどうにもならなくなって、 近い将来、汚染水を海に流すことになると思いますので、 今溶け落ちた炉心がどこにあるか分からないのですけれども、 でも、もう水をとにかく入れて冷やすというやり方は、 できる限り早くあきらめるべきだと思います。
今西:
なるほど。 分かりました。 小出さん、ありがとうございました。
小出さん:
はい。ありがとうございました。
今西:
今日はですね、小出さんのお話でですね、 ほんとにあの汚染水問題が一層深刻である状況というのが、 ほんとによく分かりました。 次回も宜しくお願い致します。
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