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放射線量調査―住民の役に立ってこそ
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2014年4月19日(土)付 朝日新聞社説
原発事故による低線量被曝(ひばく)の影響をどう考えるか。
確たる知見がない領域だからこそ、対策を講じるうえでは丁寧な説明や情報公開を心がけてほしい。
政府が福島県内で、空間線量からの推計値と個々人が実際にうける線量との関係を調べて、公表した。
線量が高く実測値を得ることが難しい避難指示区域で、機械的な推計値ではなく、できるだけ本来の生活パターンに即した数値を得ることが狙いだった。
結果、人体を模した計測器から得られるデータと空間線量からはじく積算線量の間には強い相関関係が認められた。
避難指示解除を境にふるさとへ戻るか否かの判断を迫られる住民には、「空間線量ではなく実際に自分が戻ったときにうける線量が知りたい」という切実な思いがある。
今後、避難指示の解除を検討する際、住民の判断に役立つ推計法を確立していくことは重要だ。今回の調査はその一歩として評価したい。
問題は、これまで調査の存在自体を公表しておらず、「数値が悪く、隠していたのではないか」との疑念を招いたことだ。
昨年夏に調査を決めたにもかかわらず、この間、原子力規制委員会内で開かれた住民帰還に関する会合や、田村市内の避難指示解除を検討する住民説明会といった場でも、調査のことを明らかにしなかったのはなぜなのか。
政府側は「推計値の算出方法が科学的に正しいと検証するのに時間を要した」「途中経過まで公表するという判断はなかった」という。
だが、原発事故をめぐっては避難時の大混乱をはじめ、政府の情報公開に対する不信が根強い。今回の調査も、被災者への有益な情報提供が主眼なのであればなおさら、調査実施の段階から広く知らせ、データがそろわない段階でも進み具合や見通しについて適時開示していくべきだった。
政府のもつデータを個人情報などに注意しつつ公開し、よりよい政策づくりにつなげるのが世界的な流れだ。原発事故について日本がもつデータは、世界が共有して次に生かすべき最たるものだろう。
低線量被曝の影響評価については未知の部分が多い。被曝の受け止め方も様々だ。
「住民の役に立ってこそ」を大原則に、国内外の専門家同士による論評や検証を重ねつつ、知見を国民全体で共有していく努力を怠らないでもらいたい。
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