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「世界最高の論客」と評されるノーム・チョムスキー氏が、自主避難を余儀なくされた福島の親子らと面会/被災者の不安に寄り添わない日本政府の対応を厳しく批判
http://www.at-douga.com/?p=11118
2014年3月26日 @動画
2014年3月4日に、アメリカの著名な言語学者で哲学者のノーム・チョムスキー氏が、東京都内のホテルで、自主避難を余儀なくされた福島の親子らと面会した時の映像を紹介します。
(所要時間:約18分)
動画の内容
東京電力福島第一原発事故から3年がたとうとしている。来日した米国人の言語学者ノーム・チョムスキー氏(85)が、自主避難を余儀なくされた福島の親子らの訴えに耳を傾けた。いまだに不安や恐怖にさらされている被災者たち。「世界最高の論客」と評されるチョムスキー氏の目に、この状況は、どう映るのか。
(林啓太)
◆政府は常にウソで言い含める
「無防備な子どもたちが、放射線の危険にさらされている。恐ろしいことだ」。(※2014年3月)4日に東京都内のホテルで福島の親子らと面会したチョムスキー氏は嘆いた。
チョムスキー氏と会ったのは、福島市に住む武藤恵さん(40)と小学3年生の長女玲未(りみ)ちゃん(9つ)の母子、福島県郡山市から静岡県富士宮市に自主避難した長谷川克己さん(47)の3人。長谷川さんは妻、小学2年生の長男(8つ)、長女(2つ)の4人暮らしだ。
恵さんの自宅は福島第一原発から約60キロ。「政府は換気扇を閉めて、外出する時はマスクを着けるように、ということしか教えてくれなかった」と、当時の混乱を振り返った。
山形県に週末だけ自主避難していた時期もあったが、経済的な問題もあり、やめた。「事故後、子どもの体調が良くない」という。国は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射能汚染の情報を隠していた。それなのに「『安全宣言』をした。周りは事故前と変わらない日常に戻ってたように見えるが、そうではない」と、放射能の恐怖にさらされている現実を訴えた。
長谷川さんは、郡山市内で介護事業を営んでいたが、事故の5カ月後に自主避難した。
「将来、健康被害が出たら、お金で償われても元には戻れない。子どもを守ろうという思いだけだった」。避難先の静岡での生活については「日雇いの工事現場の作業員をして食いつないだこともある。経済的に安定せず、心もとないです」と切々と語った。
自主避難者は十分な補償が受けられない。東電からの補償金も避難区域内に住んでいた避難者に比べて乏しく、経済的な負担が重くのしかかる。
チョムスキー氏は、両手をテーブルの上で組んだり、沈思するように右手をあごに当てたりしながら、静かに親子らの会話に耳を傾けた。話の合間に「ほかの親はどんな対応をしているのでしょうか」 「放射線の被害に理解のある医師からケアを受ける機会はあるのでしょうか」問い掛けた。
「子どもらがどんなに不安でも、政府というのは心配するなとウソで言い含めようとするものなのです」。米国とソ連の緊張が核戦争の寸前まで高まった1962年のキューバ危機のころのことをとつとつと語った。「私の娘の友達の中には、戦争になれば生き残れないと不安そうな子もいた。米政府は『米ソの緊張関係は危なくない』と宣伝した。私の娘は学校の先生から『核戦争が起きても机の下に隠れれば大丈夫』と言われたんですよ」
◆最も弱い子どもらがどう扱われるかで 社会の健全さ問われる
緊張した面持ちでチョムスキー氏の顔を黙って見つめていた玲未ちゃんは、周囲に促されて「武藤玲未です」と自己紹介。チョムスキー氏も、この時ばかりは柔和な表情を見せ、「日本に50年ぐらい前にも来たことがある。私の娘がちょうどお嬢ちゃんと同じくらいだった」と懐かしがった。
チョムスキー氏は、ベトナム反戦運動に関わって以来、外交や大企業優遇の政策で米政府がろうするウソや秘密のやり口を徹底的に批判してきた。
米中枢同時テロの後、米国のアフガニスタン侵攻やイラク戦争について強い反対意見を表明。最近では、米国内の貧困問題でも積極的に発言している。
福島第一原発事故の後、2011年9月に東京都内で開かれた脱原発集会の際、支持を表明する連帯メッセージを寄せた。福島の親子らと面会したのは、福島の子どもたちの「集団疎開裁判」を支援してきた縁からだ。
12年1月、「最も弱い立場の子どもらがどう扱われるかで社会の健全さが測られる。私たち世界の人々にとって裁判は失敗が許されない試練だ」と集団疎開裁判を支持するメッセージを寄せている。上智大での講演を機に来日したチョムスキー氏が、「ぜひ、親子と会いたい」と会談を要望し、実現した。
集団疎開裁判では、郡山市に住む児童と生徒14人が、空間線量が年間1ミリシーベルト未満の地域に疎開して教育を受ける措置を市に求め、仮処分を申し立てた。
司法の判断はつれなかった。福島地裁郡山支部は11年12月、申し立てを却下。仙台高裁は13年4月「福島原発周辺の児童・生徒の健康に由々しい事態の進行が懸念される」としながらも抗告を却下した。
福島の親子らは(※2014年)4月にも、約10人の子どもを原告として、地元の自治体を相手に集団疎開を求める行政訴訟を起こす予定だ。
チョムスキー氏は、親子らに「政府に対する外圧を上手に使うことだ」とアドバイスした。「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)などの権威のある国際的な団体と健康被害の調査について連携し放射線の被害を広く訴えることもできる。日本政府に被害を隠すことは恥ずかしいと思い知らせられればよい」
「日本は広島、長崎の原爆を経験し、放射線の怖さを知っているはず。それなのに、政府が被災者の不安に寄り添わないとは。言葉にならない」と日本政府の対応を厳しく批判した。
チョムスキー氏は、「こちら特報部」のインタビューに、安倍政権についての懸念も表明した。「日本の超国家主義者は平和憲法を無くそうとしている。安倍晋三首相らが靖国神社に参拝し、従軍慰安婦を否定しようとするのは、日本を帝国の時代に戻そうという狙いがあるのではないか。ヒトラーが権力を掌握していく過程を思い起こさせる」
集団的自衛権の行使容認についても「集団的自衛権と言えば聞こえは良いが、実態は戦略戦争だ。米政府も戦争を国防と言い換えるが、それに似ている。だまされてはならない」と指摘。自民党の石破茂幹事長が特定秘密保護法の抗議活動に対し、「テロ行為と本質は変わらない」と言い放ったことに触れ、「政府は市民の反発を恐れている。テロリストというのは、権力側が反対する市民にレッテルを貼っているだけだ。強制や弾圧を正当化する言い訳にすぎない」と話した。
「政府の過ちをただせるのは市民だけだ。困難だろうが、福島や日本全体で、政府が無視できない運動をつくり出してほしい。地域の市民のつながりを強化してほしい。それこそが状況を改善していく道だ」
<デスクメモ>
青いセーターにジーンズ姿。「現代最高の知性」は、ラフな格好で被災者の前に現れた。好々爺(や)のような表情で話を聞いていたが、いったん口を開くと、舌鋒(ぜっぽう)鋭い。人間の尊厳を守るための闘いで、市民と言論の力が重要だという固い信念を感じたという。声を上げ続けなければならない。 (国)
引用元:No Nukes 原発ゼロ
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