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「低線量被ばく 考慮を」 国連人権理事会で勧告 グローバー氏
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2014年3月21日 東京新聞朝刊 こちら特報部:[ニュースの追跡]より 俺的メモあれこれ
国連人権理事会で福島原発事故の健康被害に関する勧告を日本政府に出したアナンド・グローバー氏が20日、東京都内で講演し、低線量被ばくの影響を依然として軽視する政府の姿勢を批判。福島県以外の地域でも健康管理調査を行うよう求めた。(榊原崇仁)
◆日本政府の対応批判 官僚の「勉強不足」露呈
「低線量被ばくによる健康影響は正確には分からないというのが私の見解だ。分からないということは、無視してはならないということだ」。日本外国特派員協会で講演したグローバー氏はそう強調した。
国連人権理の特別報告者に任命されているグローバー氏はインド出身の弁護士。2012年11月に来日し、約2週間にわたって原発事故の被災者や行政関係者らの聞き取り調査などをした。昨年5月の人権理事会での報告や勧告では、@年間1ミリシーベルト以上の放射線量の地域に居住する人たちに対して健康管理調査を実施すること A年間1ミリシーベルト未満に下げるための計画を早期に策定すること B被災者支援などの政策決定に住民を参加させること─などを日本政府に求めた。
講演で、グローバー氏は「いまだ日本政府は『20ミリシーベルト以下は安全』という立場を取る。私の見解と違う」と指摘。福島県内のみが対象の健康管理調査は「限定的」として、さらに広い地域で行うよう求めた。
グローバー氏は、参院議員会館の院内集会にも出席。「チェルノブイリ原発事故では、放射線の健康影響は甲状腺がんのみと結論付けられたが、公開されているデータが非常に少なく、チェルノブイリを前提にするのは問題だ。甲状腺がんに限らず、包括的に健康調査を行うべきだ」と訴えた。
院内集会には日本政府関係者も招かれた。環境省の桐生康生参事官は「広島や長崎でも100ミリシーベルト以下で明らかな影響が認められていないと認識する。なぜ1ミリシーベルトを持ち出すのか根拠を聞きたい」と疑問を呈した。これに対し、集会に参加していた元国会事故調査委員会委員で元放射線医学総合研究所主任研究官の崎山比早子氏は、原爆の被爆者の健康調査のために日本で設けた「放射線影響研究所」が12年に発表した論文を取り上げ「リスクがゼロなのは線量がゼロの時以外にないと書いてある」と反論。グローバー氏もこの論文を根拠の一つとして低線量被ばくの健康影響を考えていると説明した。桐生参事官は「その論文自体、把握していなかった」と言葉を詰まらせた。
人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の伊藤和子弁護士は「勉強不足にもほどがある。危機意識が欠けている証拠だ」。福島市から東京都内に子ども2人と避難している二瓶和子さん(37)は「政府は都合の良い解釈で人権を踏みにじっていることを分かってほしい」と話した。
特別報告者による勧告は、「第三者的な専門家による助言で、法的拘束力はない」(外務省人権人道課)というのが日本政府の位置付け。「勧告に沿った改善の努力を惜しまない」(同)とするが、日本政府の反応はあまりに鈍い。
福島の子どもたちが安全な場所で教育を受ける権利を求める「集団疎開」訴訟の代理人を務める柳原敏夫弁護士は、「グローバー氏の見方が世界の常識。日本政府の非常識な態度があらためてはっきりした」と語った。
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