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【 日本は原子力発電をどうするか、国民ときちんと向かい合って議論をするべきである 】《前篇》
http://kobajun.chips.jp/?p=16606
2014年2月14日 星の金貨プロジェクト
日本は原子力発電の根本的な問題に関する、公の、そして適切な議論をしていない
『電気料金の高騰により、企業が海外流出する』懸念、現実はどうか?
原子力発電『復活』の規模とタイミング、『裏工作』ばかりが目立つ安倍政権
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2月11日
いくつかの先進工業国が福島第一原子力発電所の事故とその後の惨状を見て、原子力発電に背を向けました。
中には現在稼働中の原子力発電所も止めて、原子力発電の完全廃止に向け処理を進めている国もあります。
しかしその国は日本ではありません。
「ドイツは福島第一原発の事故を受け原子力発電の全廃を決めました。アメリカでは原子力発電の継続に変更はありません。
では日本はどうでしょうか?
福島第一原発の事故が起きた日本では…」
原子力発電に関する複数の著作のある館野淳氏がこう語りました。
「私たちは根本的な問題に関する公の、そして適切な議論をしていません。
経済成長のために原子力発電による安価な電力供給が必要なのか?それとも原子力発電を無くし、安全な社会を築きたいのか?」
20年続いた経済停滞から抜け出そうと模索を続ける日本、その中心にあるのが東京です。
多くのアナリストが2月9日に投票日を迎えた東京都知事選挙が、この問題に関する公開討論の場になることを望みました。
では選挙の結果はどうだったでしょうか?
結果としては原子力発電の廃止を熱心に訴えた、元首相を含む2人の候補が当選でき無かった事も含め、日本の原子力発電所を今後どうすべきか、その指針となるようなものは得られなかったのです。
しかし首相である安倍晋三氏はこの結果に満足し、選挙の翌日、数日のうちに「現実的でバランスのよい」エネルギー戦略を発表する用意があると語りました。
複数のアナリストは、この政策にこそ現在停止している複数の原子炉を再稼働させる方針が盛り込まれるはずだと見ています。
しかし同時にもし安倍首相が、原子力発電所は安全になったという事を納得させられないまま、日本の原子力発電を福島第一原発の事故以前の状態に戻そうと急いだりすれば、国民から強い反発を受けるだろうと警告しています。
「今回原子力発電の廃止を訴える候補者が落選しましたが、それが直ちに原子力発電の継続についてのコンセンサスが成立したということにはなりません。」
現在は退官した慶応義塾大学の政治学教授であった浅野史郎(元宮城県知事)氏がこう語りました。
福島第一原発の事故で3基の原子炉がメルトダウンして以降、原子力発電に関して3年間四分五裂したままの国内世論が、今回の都知事選挙で一応集約されたようにも見えます。
これまでは資源の少ない日本が国際競争に打ち勝つためには、原子力発電が作り出す低価格の電気を必要なのだという政策がまかり通っていましたが、今やそうした政策の上に国民の新たな合意を築くことは不可能です。
アナリストは次のようにも見ています。
基本的に、福島第一原発事故の惨禍がもたらした原子力発電の安全性に対する疑問は根強いものがあり、国民の間には心からの恐怖が存在します。
同時に多くの国民の間には、原子力発電を全廃した場合に、日本経済は数十年間の間成長できない状態が続くのではないかという、未知の将来に対する恐れもあるように見受けられます。
この問題に対しては、近年非常な勢いで国力を増大させた中国が東アジア地区における日本の影響力に挑戦する動きを見せ、緊急性のある課題が入れ替わったようにも見えます。
こうした状況に有権者の意向にはためらいが目立ちます。
選挙では日本の経済成長政策、有名になったアベノミクスには、原子力発電の継続が必要不可欠であると主張する安倍首相が率いる自民党に投票する一方、世論調査では原子力発電所の再稼働に反対する意見が過半数を占めています。
こうしたこの国をどう前進させるのかという大切なコンセンサスを作れない状況は、原子力発電の停止によって不足する電力を火力発電で補う状況にもつながっています。
このための輸入燃料費が、かつては多額の貿易黒字を誇っていた日本を貿易赤字国にしてしまいました。
目下において多くの日本人は、高額になりつつある電気料金については、省エネルギー対策を徹底して行うなどして対応しています。
そして、景気が低迷していた最中においてさえそうであったように、多くの日本人のための生活は比較的快適な状態を保っています。
地下鉄は一分の狂いも無く発着を繰り返しています。
国内は世界のほとんどの場所よりも安全な上、経済規模はまだ世界第3位の規模を誇ります。
日本国内の高額の電気料金がきっかけで企業の海外移転が促進される懸念がありましたが、この点については、アベノミクス政策によって発生した円安と成長促進方針の下での企業収支の改善により、これまでは部分的に相殺される結果になったと経済学者は分析しています。
「人々はアベノミクスによる経済の全体的な底上げにより、目下のところはそれ程経済的に損失を受けているという感覚は無いはずです。」
慶応義塾大学経済学部の野村興児教授がこう語りました。
「しかしいずれ負担しなければならなくなります。」
《後編に続く》
http://www.nytimes.com/2014/02/12/world/asia/nuclear-issue-in-limbo-as-indecision-grips-japan.html?partner=rss&emc=rss&_r=0
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まさに「正論」のニューヨークタイムズ、面目躍如たる記事をご紹介しましょう。
長いので前編・後編に分けさせていただきました。
後編は明日掲載致しますが、ぜひ全編をお読みくださるようご案内申し上げます。
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【 日本は原子力発電をどうするか、国民ときちんと向かい合って議論をするべきである 】《後篇》
http://kobajun.chips.jp/?p=16619
2014年2月15日
日本は最終的に全原子炉を廃炉にすべき、その『最良の』結論に代わるものは無い
原子力発電の実態、それは福島第一原発の事故現場における東京電力の対応が明らかにしたはず
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2月11日
現地の視察を行う安倍首相
安倍首相と経済界の彼の同調者もまた、次のように主張しています。
福島第一原発の事故発生以来、国内に存在する稼働可能な原子炉48基をすべて止めてしまっているために、日本は毎年3兆6,000億円に昇る天然ガスを初めてとする火力発電用の燃料を輸入しなければならなくなっており、これはアベノミクスの経済効果に対する著しい脅威だと。
しかし、その安倍首相といえど、これまでは原子力発電所の再稼働を強行するわけにはいきませんでした。
原子力安全・保安院に代わって設置された原子力規制委員会は、国内の原子炉について早計に安全宣言を行い、国民の猛反発を受けることを恐れています。
原子力規制委員会は昨年7月に施行された新しい安全基準に、申請のあった原子力発電所が適合しているかどうか2014年1月に最初の決定を行うことになっていましたが、結局早くとも春までに具体的な決定が下されることはない、そうした見方が一般的です。
福島第一原発の事故現場で次々と発生した事故やトラブルは、人びとの原子力発電に対する懸念を一層深いものにしました。
そして今後は福島第一原発の状況について包み隠さず公にすると誓ったはずの東京電力が、相変わらず事実の隠ぺいを続けたいたことが明らかとなった事も、その傾向に拍車を掛けました。
「正直なところ、どうすれば良いのかわかりません。」
東京都知事選挙で、原子力発電の廃止を訴える候補の演説会場を訪れた、非正規雇用の会社員である35歳の男性である森川さんがこう語りました。
「私は今回の選挙が原子力発電の無い日本への第一歩になれば良いと考えています。
しかしそのために具体的にどのような方法を取れば良いのか、その点が解らないのです。」
このような考え方こそが、東京都知事選挙の結果に現れた日本人の複雑な心境を表現しています。
勝利した枡添氏は、原子力発電推進の立場をとる自民党の推薦を受けましたが、自身は漠然とした言い方ではあっても、原子力発電の段階的廃止を支持する発言をし、政権与党と一定の距離を置いたことが勝因の一つであるとアナリストは見ています。
明確に原子力発電の即時廃止を訴えた宇都宮氏、細川氏の合計得票数は190万票で、当選した枡添氏の得票数に迫るものでした。
しかしその数字以上に、人々の脱原発への思いは強いという事を明らかにした選挙でした。
放射性物質歩車の中でただ一人原子力発電の継続を公然と訴えた元自衛隊幹部の得票数は、上記の3人からは大きく離され、4位という結果に終わりました。
しかしアナリストによれば、同時に今回の選挙において、かつて首相を務めた政治的に高い経歴を有する細川護煕候補と、細川氏を応援した史上まれにみる高い人気を誇った小泉純一郎元首相が掲げた、全原発の即時停止という高い目標には必ずしも納得していないことも明らかになりました。
選挙演説において、それまで原子力産業を後援する立場だった二人は、福島第一原発の事故を受けその方針を180度転換し、日本が原子力発電所を全廃しなければならない状況は緊急を要するものだと語り、もっと安全な再生可能エネルギーの開発の先駆者をめざせば、併せて経済成長への起爆剤の一つとなり得ると主張しました。
しかし多くのアナリストは、与党側の候補者が当選をしたという事実は、有権者の多くは細川氏と小泉氏の主張は現実性に乏しいと感じたことを表していると語っています。
組織内部における意見の亀裂は、原子力発電の継続について一枚岩の結束を誇っているように見えた実業界でも表面化しました。
原子力発電所の再稼働を公然と要求する数少ない団体であり、日本を代表する議会工作のための実業家団体である経団連ですが、内部では若い経営者による離反が始まりました。
こうした亀裂は安倍首相率いる与党内でも表面化しました。
約50人の若手国会議員が、安倍首相の原子力発電の支持姿勢に、臆することなく反対の立場を明らかにしました。
一方では一般市民のこの問題に対する関心の低下ともみられる現象も起きています。
首相官邸前の路上で毎週続けられてきた脱原発のための抗議行動は、2年前の数万人の規模から、現在数百人規模にまで減少しています。
結局日本人の多くが原子力発電について、福島第一原発の事故以前の状態に戻したいとする推進派の考えも、直ちに全原発を廃炉にするという理想主義的考えも、そのどちらも否定していると一部のアナリストは見ています。
アナリストは安倍首相が政権に復帰して早々に廃棄した民主党政権による方針、全廃に向け日本国内の原子炉を段階的に廃止していくというプランを再び採用する他は無いと分析しています。
すなわち、現実的な選択肢とは、将来の原子力発電の廃止を確約した上で、最新の設備を持つ原子炉の再稼働を容認することです。
「安倍首相も細川氏も、世論の中心にはいません。」
と、一橋大学のエネルギー産業の専門家である橘川武郎(きっかわたけお)教授がこう語りました。
「経済成長を促しつつ、段階的に原子炉の廃炉を進めていくことが原子力発電の問題を解決するための最良の方法である。
その結論は変わらないのです。」
http://www.nytimes.com/2014/02/12/world/asia/nuclear-issue-in-limbo-as-indecision-grips-japan.html?partner=rss&emc=rss&_r=0
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