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お母さんのための原発資料探訪(6) 自然放射線と病気
http://takedanet.com/2014/02/post_7486.html
平成26年2月6日 武田邦彦(中部大学)
音声解説
これまで「人工的に作られたもの(たとえば原発)からの被曝」を整理してきました。人工的なものは他人(人間)がわざわざ被曝させるのですから、正当化の原理(メリット=被曝量)が大切なのですが、自然の放射線の場合は、生まれたときからあるので、それをどのように考えるのかは別の問題があります。
その場合、「自分の意思」と「強制的」の二つを分けなければなりません。日本国に住めば、おおよそ年間1.5ミリシーベルトの自然からの被曝を受けますので、「自然放射線からの被曝」というと、この1.5ミリシーベルトを指します。
一方、ラジウム温泉など「自分の意思で被曝するために行く」という場合は、自然放射線による被ばくには入れません。つまり、「自分の意思で損害を受ける」(被曝は国際的にも国内的にも損害と考えられている)場合は、法令の外にあるからです。
そこで、自然放射線の話は次の二つに分かれる。
1)自然にも放射線があるのだから、被曝は健康に問題はないのではないか?
2)ラジウム温泉が体に良いというのだから、被曝も健康に良いのではないか?
この二つの話は、すでに解決済みだから、専門家が一致して同じ説明をすればよいのに、残念ながら利害関係があって、キチンとした説明をしていない。
まず、「自然にも放射線があるのだから」というのは良いが、「だから健康に問題がない」というのは間違っている。あまりにも当然のことだが、「自然にもウィルスがいるのだから」、「ウィルスは健康に影響がない」ではない。普段から人間の周りにはウィルスがうようよしている。それがあるときに増殖して人間の限界を超えるとそこで「発病」し、時には死に至る。
「ウィルスが自然界にある」ということと、「ウィルスが健康に影響がない」ということではなく、「ウィルスの量と体の抵抗力の関係で決まる」ということだ。まったく免疫力がなく、体力が落ちていればわずかなウィルスでも病気になり、ウィルスに対する免疫があり、体の抵抗力があれば病気にならない。そんなことは誰でも知っている。
ある収録で私が「放射線に対する体の防御がある。一定の被曝は大丈夫」と言ったら、誰かわからない人が「武田は言っていることが違う。今度は安全と言った」と宣伝していた。誰が何を言っても良いのだが、この人は「少量のウィルスは常にいるが、それが大量になると感染したり、発病したりする」ということも知らずにネットで活躍しているのか?と驚いたことがある。
つまり、人間は自然界の中で済んでいるので、「自然の脅威」については常に防御機構を持っている。特にその土地に住んでいる人はその土地の環境に合わせて防御系を作る。その典型的なものが「肌の色」である。
北の方の人は白人というぐらい白く、アフリカの人は黒人で真っ黒である。なぜこれほど違うのかというと、太陽の光で皮膚がんになるので、それを防ぐために太陽の強い地方の人は肌が黒くなる。日本人の肌が黄色であるのも、もちろん日本の態様の強さに合っている。
この図は特に詳細に理解しなくても良いのだが、私が材料の劣化の研究の一環として、紫外線による皮膚の劣化を研究していたころの、「紫外線の劣化と回復」をまとめた図だ。太陽の光でDNAが劣化し、それを同じ太陽の光で励起した分子が補修するという機構を人間は持っている。
また、インド人とイギリス人は、4000年ほど前には同じ人たちでカスピ海の北に住んでいたが、ある時に東南に向かって移動した人が今のインド人、西北に移動した人がイギリス人である。その時の肌の色は黄色だったと思われるが、今では北に言った人が肌が白くなり、南に言ったインド人はかなり黒い色をしている。
また現代は人の移動が激しいので、白人でも熱帯地方に住んでいる人がいて、皮膚がんの発生率が高いことが知られている。
これらの基礎的な知識でわかることだが、
1)日本人の被曝に対する防御は、日本の自然放射線(1.5ミリ)の範囲にある、
2)世界に放射線が高い地域があっても、だからそこまで日本人が安全だということではない、
3)ラジウム温泉なども場所によっては危険な場合もある、
ということがすぐわかる。
自然放射線のことを話すときに、世界の平均(2.4ミリ)を使ったり、世界にはもっと高いところがあると言ったり、ラジウム温泉があるじゃないかと言ったりする人は、1)知識がない、2)錯覚、3)悪意 のどれかであることは間違いない。このようなものは「基礎的学問」だから、「意見の違い」というものはない領域だからだ。
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