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お母さんのための原発資料探訪(3) 1年1ミリは「安全」なのか?
http://takedanet.com/2014/01/post_0fba.html
平成26年1月23日 武田邦彦(中部大学)
音声解説
原発事故の後、「1年何ミリまで大丈夫なのか?」という番組、記事、雑誌の特集などどのぐらいあったでしょうか? そのたびに「専門家」という人が登場し、時には「武田は1年1ミリなどととんでもないことを言っている」というような人まで登場しました(私は正しいことを言っているので、批判されても平気ですが)。
でも、日本というのはそれほど野蛮な国と思っているのでしょうか? これほど原発があり、放射線の利用が進んでいて、レントゲン検査なども多いのに、「国民が被曝しても良い限度」が法令で定められていないと言う専門家が出てきたことには驚きました。
2年ほどたった昨年にはさすがに「法令で決まっていない」という人はほとんどいなくなりましたが、まだ「事故時の被ばく量は決まっていない」とか、相変わらず「専門家に被ばく限度を聞く」という特集も見かけます。
でも、日本は文明国で法治国家なので、原発や放射線の利用をする限りは、被ばく限度(線量限度)は当然、定められています。日本政府がいくら悪辣であるとしても(そんなことはありませんが)、国民を守る法律ぐらいは作ってあるのです。
それが「1年1ミリ」であり、特に非常時とかの区別はありませんが、原子力安全委員会の通達では「最大事故でも5年合計で5ミリまで」とされていて、非常時では1年に4ミリ浴びてしまったら、避難などしてその後の4年を何とか合計で1ミリで抑えるという考え方になっています。
それでは「1年1ミリ以下」なら「安全」なのでしょうか? これもかなり頻度高く質問を受けるものですし、お子さんを持つお母さんの不安でもあります。そこで、まずは国際的な取り決めの内容を紹介します。
先入観があるとなかなか理解しにくいのですが、被曝のレベルは2つに分けて決められていて、1)免除レベル、2)線量限度、です。「免除レベル」というのは普通は「安全だ」と言われる数値で、日本では1年0.01ミリシーベルトの被ばくとされていて、「クリアランス・レベル」とも言います。
このような基本的な「考え方」は国際的に決まるので、もともとは英語で表現されます。「免除レベル」というのも「安全だ」というのではなく、”acceptable”と”tolerable”の間という定義です。これを日本語に訳すと、「受け入れられる」と「我慢できる」ということです。
「受け入れられる」というのは全く被害がないということではなく、自然の中で普通に生活していたらいろいろな危険(雷、嵐、台風など)がありますが、その程度ということです。数字でいえば、日本では1年に100人程度の犠牲者という感じです。
「免除レベル」というものの考え方を国際的に決めて、具体的な数字は各国で決める理由は、あまりに危険な状態にある国では1年1000人でも「まあまあこのぐらいは受け入れられる」と思うかもしれませんし、国土が完全に作り上げられ、自然災害もほとんど無くなった国では、1年10人でも「そんな危険なことは受け入れられない」というかも知れないからです。
日本でこの免除レベルは1年0.01ミリシーベルトですから、1年10マイクロシーベルトになります。たとえば福島のあるところが1時間1ミリシーベルトの空間線量率とすると、わずか10時間で1年分を被曝することになります。つまり、低線量だから「大丈夫」ということは、原発事故までの日本では「専門家のうち、ほとんど全員が言わなかったこと」です。
免除レベル(1年10マイクロ)と線量限度(1年1ミリ)の間は、 ”tolerable”、つまり「犠牲者は出るけれど、我慢できる」という状態です。つまり被曝によってある程度の犠牲者が出るけれど、それは仕方がないとして「我慢しよう」ということです。
つまり、「原発で電気ができて、それを利用するのだからある程度の人が犠牲になっても良い」ということで、「1年1ミリが安全だ」ということではありません。これを「正当性の原理」と言いますが、これについては次回にじっくりお話します。
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