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インタビュー:人民元改革、脱ドル依存に主眼=行天元財務官
2015年 05月 13日 19:09 JST
[東京 13日 ロイター] - アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立をはじめ、中国による人民元の国際化に向けた取り組みが活発化している。元財務官の行天豊雄・国際通貨研究所理事長は、ロイターのインタビューで、中国による人民元改革は基軸通貨を目指すのではなく、ドル依存からの脱却に主眼があるとの見方を示した。
行天理事長は、中国の台頭と人民元の存在感増大の背景には、米ドルという一国の通貨に依存した戦後の国際金融体制の揺らぎがあると指摘。米国による覇権に「かげり」が生じ、その矛盾が今、あぶり出されているとの構図を提示。大きな流れの中にあるとの見解を示した。
また、円は米中の間に立って、混乱が生じないようにする役割が十分にあり得ると指摘。そのためには使い勝手のよい通貨にすべきであり、東京市場を国際金融市場としてさらに発展させる努力が欠かせないとの見解を示した。
主な内容は、以下の通り。
──中国による人民元の国際化に向けた取り組みが、急速に進んでいるようだ。
「中国は3─4年前から取り組みを強めている。今に始まった話ではない。最近は、貿易取引から資本取引にまで人民元を生かせる場面を広げている段階。その進ちょくは計画通りといえるのではないか」
──その狙いをどう見るか。
「2008年のリーマン・ショックを通じて、米国中心の国際金融体制への不安感が生じ、中国はドル依存を徐々に減らす必要性を強く持っただろう」
「ただ、中国はドル依存に対して危機感を抱きつつも、人民元をドルに代わる基軸通貨にしようとしているわけではないのではないか」
「もし、人民元を基軸通貨にするならば、中国は米国と同様、ばく大な(貿易)赤字を甘受しなければいけなくなる。それは、中国の長期的な政策にはなり得ないだろう」
「中国人民銀行の周小川総裁が、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)を準備通貨にすべきとの論文を発表し、話題になった経緯がある。全く非現実的なこと、当人も理解していただろう。人民元がドルに取って代わるという話ではなく、何かしないといけないという考えの表れだったのだろう」
──ドルを基軸通貨とする現行の枠組みに問題が生じてきているのか。
「中国の人民元改革は、ドルという一国の通貨を基軸通貨と位置付けるいわばドル制度にかげりが出る中で、生じてきたことだと見ている」
「1944年のブレトンウッズ体制では、一国の通貨ドルを国際通貨にしたところに根本的な矛盾があった」
「ブレトンウッズ体制ができた当時は、ドル(の価値)は金でバック(裏付け)されていたが、米国は金兌換を維持する力がなくなり、1971年のニクソンショックで同体制が崩壊した」
「とはいえ、米国はほかの面では圧倒的な覇権国家だったため、金の保証がなくても実質的な価値保全があると受け止められた。金ドル制度がドル制度に変わって継続してきたわけだが、21世紀になって事情が変わってきた」
「米国の総合的な覇権国家としての力に、21世紀に入ってから『かげり』が出てきた。金融危機の震源地となったほか、地政学的な問題をかつてのようには単独で処理できなくなってきている」
「しかも、日本にしても、ドイツにしても、またはかつてのソビエト連邦にしても、米国を脅かす競争相手になり得なかったが、今は米国の単一覇権は認めないという中国が登場してきており、20世紀後半とは様変わりしてきている」
──AIIB設立に向けた動きはどのように位置付けられるか。
「中国としては、世界ナンバー2の経済大国として認知されたい、という点に尽きるだろう。この観点は、地政学的な問題などにも広がりをみせている。AIIBは、こうした全体の流れの一部といえる」
「米国議会はこれを国内の政治問題のように扱い、全く動かなかった点が対応としてまずかった」
──人民元のSDRへの採用をめぐる議論が活発化してきている。
「人民元をSDRに採用するかどうか、その資格をどう考えるかは重要なテーマだ」
「中国は世界ナンバー2の経済大国となったが、当然、単なる経済力だけでは不十分だ。完全なコンバーティビリティを備えなければならない、というのはひとつの理屈として成り立つ。人民元は、この意味ではSDRの構成通貨になる資格は、まだないとの考え方もあり得る」
──人民元がSDRに加わる機は熟していないということか。
「この点は、中国も理解しているはずだ。資本取引の自由化や、コンバーティビリティの完全付与について努力する姿勢を打ち出しているし、一生懸命取り組んでもいる」
「中国の取り組みが完了するまで待つのか、それとも少し手前の段階から採用するかは、現在のSDR構成国の判断次第だろう」
「もっとも、いわゆる普通選挙がない共産党独裁体勢がいつまで続くのかは、わからない。最近の汚職摘発の動きは、一般的には中国国内でも大変に高く評価されているようだが、同時に表現の自由や政治活動の自由への引き締めも強化されており、中国国内から不満が出ている面もある」
「中国が大国になってきているという現実を受け入れることとともに、政治・社会体制が流動的で、完全に成熟したものになったとは言い切れないことも、考慮すべき重要な要素といえる」
──人民元が台頭することで、日本円の位置付けはどうなるか。
「先行き、人民元の使用比率はだんだん高まってくる。とりわけアジアでは、ドル・ユーロ・円・人民元という現行の順序が変わるのは当然だろう」
「とはいえ、日本は依然として大きくかつ、重要な国であることは間違いない。アメリカや中国という超大国が覇権をめぐって競合する時代には、混乱を招かないようにその間に立つという役割は十分にある。円という通貨の価値を安定させ、かつ非常に使いやすい通貨として維持することは、日本のためにも、国際的にも重要になる」
──どういう取り組みが想定されるか。
「ある通貨の使用を誰かに強制するわけにはいかない。通貨は望まれて使われるわけなので、望まれる姿にすることが重要だ。そのためには、貿易・資本取引を拡大する一方、価値を安定させるためインフレと成長率を安定させることだ」
「日本の貿易が活発だったり、国内外の投資活動が活況となれば、円も使われるだろう」
「通貨にとっては、良質なマーケットの存在が重要だ。19世紀末にアメリカはイギリスを国力で凌駕していたが、国際金融の面では第2次世界大戦後までポンドが基軸通貨だった。背景には、ロンドンの金融街シティの存在が大きかった」
「非常に大きく流動性のあるマーケットの存在は、円の国際的な役割にとっても非常に大事だ。政府は東京を国際金融都市にしようと努力してきたが、まだ必ずしも十分ではない」
「シティもウォール・ストリートも、整備には何十年とかかった。いったんできれば非常に強い。これからも国際金融都市づくりの努力を継続する必要がある」
(平田紀之 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0NY12220150513
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