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「日本を揺るがす新常態 失速中国でも稼ぐ鉄則」 中国経済が「クラッシュ」する可能性が減った
http://www.asyura2.com/14/china5/msg/663.html
投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 07 日 00:52:15: tW6yLih8JvEfw
 


「日本を揺るがす新常態 失速中国でも稼ぐ鉄則」
中国経済が「クラッシュ」する可能性が減った

日立製作所の小久保憲一・中国総代表に聞く

2015年4月7日(火)  小笠原 啓

 中国は今、安定成長と構造改革を両立する「新常態」への移行を模索している。日経ビジネス4月6日号では「日本を揺さぶる新常態」と題し、この変化が日本経済にどのような影響を及ぼすのか、特集記事を掲載した。
 その連動記事の第2回は、日立製作所の小久保憲一・中国総代表のインタビュー記事を掲載する。新常態下の中国には、どのようなビジネスチャンスがあるのかを聞いた。
(聞き手は小笠原啓)
習近平政権は今年3月の全国人民代表大会(全人代)で、2015年のGDP(国内総生産)成長率を7%前後に設定すると発表しました。中国の高度成長は終わったのでしょうか。

小久保:「7%前後」と宣言されたことで、中国経済は減速一辺倒になった、あるいは終焉を迎えたという意見を聞くようになりました。しかし、7%というのは決して悪くない。10年続ければ経済規模が倍増する水準です。


日立製作所の小久保憲一・中国総代表(写真:陶山 勉)
 仮に、これまでのような10%成長を続けた場合、経済がクラッシュする可能性がある。それを7%に下げて、クラッシュしないようにコントロールする。「新常態」を簡単に説明すると、こういうことになると思います。

 賃金上昇で中国に魅力がなくなったと言う人もいますが、私はそう考えてはいません。人件費高騰は消費者の購買力向上に直結するので、悪いことばかりではないからです。

 日立は中国で地産地消を進めています。中国で作った製品の多くを中国で売り、中国内で儲けている。膨大な人口と、それが生み出す購買力は大きな魅力です。中国でできるだけ安く製品を作り、あちこちの国で売る会社とは違います。

新常態下の中国では、売れる製品が変わってくるのですか。

小久保:中国はこれまで、発電所と製鉄所を作ることに力を注いできました。経済成長により余裕が出たことで、他の領域に目を向ける余裕が生まれてきた。中国社会が抱える様々な課題を解決しようという、気運が高まっているわけです。これも新常態の一つの側面だと思います。

 例えば医療の問題。中国の病院は小さな「1級」から、中くらいの「2級」、設備が整った「3級」に分類されていますが、多くの人は最初から3級の病院に行ってしまう。軽い症状の患者までが押し寄せる結果、3級の病院はいつも長蛇の列で、素晴らしい医療機器が活用しきれていない。診察だってあっという間に終わってしまいます。

「中国の頭脳」をフル活用

小久保:一方で、1級や2級の病院は患者が来ないので赤字になってしまう。こうした状況を解決するには、病院間をIT(情報技術)でつなぎ、症状が軽い患者は1級病院で見てもらい、本当に重篤な患者だけを3級病院で診察するという体制を作ることが重要です。

 中国政府はヘルスケアに加え、環境対策や都市化についても注力する方針です。そうなると、今後は地下鉄や電力、水道といったインフラを「賢く」改良していくことが、さらに求められるでしょう。ITと社会インフラの両方を抱える日立にとっては、大きなチャンスがあると考えています。

中国で研究開発部隊を急速に拡大しています。2015年度の目標は3000人で、2年前から750人増やす計画です。

小久保:地産地消を進めるためには、顧客の要望をきちんと吸い上げて、製品にフィードバックする必要があります。その際、海外顧客の要望を日本に送って、日本の開発部門が検討して戻すのでは時間がかかりすぎる。

 これまでは東京が方針を決定し、それを実行するために各国の現場が頑張るというスタイルでした。しかし、顧客に一番近いのは現場です。何をすれば中国ビジネスが伸ばせるかも、中国の現場が一番よく分かっている。研究開発段階から中国で行い、設計や製造、販売に至る「フルバリューチェーン」を整備するのが狙いです。

 銀行のATMが好例でしょう。日立は中国の四大銀行などに対し、かなりの数のATMを納入しています。ところが多くの銀行は、ATMに装填する現金の需要予測や配送計画を効率化できていません。

 中国では偽札が横行しています。そこで、どのATMで偽札が入金されたかを当局が正確に把握できる機能を付けたらヒットしました。他にも、スキミングを防止する装置をATMに搭載したら、引き合いが非常に増えています。ATMというハード単体を売るのではなく、様々なニーズを吸い上げて、ITと組み合わせた「ソリューション」として提供していきたいと考えています。

習近平政権は反腐敗運動を強化しています。中国で日立のエレベーターを手掛ける合弁会社のトップが調査されるケースも起きています。今後、中国ビジネスにどのような影響が出るのでしょうか。

小久保:色々と誤解があるので、説明させてください。調査されている幹部は、確かに日立の中国のエレベーター合弁会社のトップでした。しかし同時に、他の中国企業のトップや政府の役人という顔も持っていました。今回は、その人が経営していた中国国有企業で重大な規律違反があったとされ、調査を受けています。

北京に日立幹部200人が集結

 (日立のエレベーター製造拠点がある)広州市政府もこの点を気にかけてくれています。調査が始まったらすぐに「(幹部の調査は)日立とは関係ない」と、広州市の副市長が現地の日立幹部に説明してくれましたし、政府が発行する機関紙にもその旨を掲載してくれました。今後も日立のエレベーター事業をサポートするので、頑張って投資を続けてほしいというのが、広州市政府のスタンスです。

 こういった経緯もあり、中国におけるエレベーター事業は今も順調です。売れ行きには全く影響がありませんし、オペレーションは正常に動いています。

 2014年6月、中西宏明会長や東原敏昭社長を筆頭に、執行役やグループ会社の社長を北京に集め、200人規模の大会議を開催しました。当時は、安倍晋三首相と習近平国家主席が「握手」する前で、日中関係が冷え込んでいた時期です。その頃にあえて北京で会議を開いたのは、「日立は中国から一歩も引かない、もっと伸ばす」ということを、幹部全員で確認し合う意味がありました。

 中国事業の売上高は2013年度に1兆円を超え、日立全体の11%を占めています。今や米国より大きく、日本に次いで2番目です。調達面でも中国の存在感は高まっている。日立と中国は、既に切っても切れない関係になっているのです。縮小するとか撤退するとか、そういう判断はあり得ません。

このコラムについて
日本を揺るがす新常態 失速中国でも稼ぐ鉄則

中国経済が歴史的な転換期を迎えている。世界2位へと駆け上がった高速成長時代に別れを告げ、安定成長と構造改革を両立する「新常態」の時代に突入した。その影響は、日本を含め世界経済を揺るがすインパクトを持つ。習近平国家主席は抵抗を受けながらも反腐敗運動を進め、格差の是正という難題を解決しようとしている。大きく変化する中国では役人との付き合い方も含め、ビジネスモデルを抜本的に見直す必要がある。経済が失速する中でも賢く稼ぐ鉄則を探った。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150403/279550/?ST=print  

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コメント
 
01. 2015年4月08日 16:53:24 : nJF6kGWndY

在中外国人にとっても他人事ではないな

http://jp.wsj.com/

CHINA REAL TIME REPORT
中国の外国人求職者、じわり疎外感
2015 年 4 月 8 日 14:05 JST
 外国人が職を求めて中国に流入し続けている。ただ、かつてほど職探しが楽ではなくなったと嘆く外国人もいる。ビザ(査証)発給要件の厳格化や熟練した地元労働者の台頭、全体的に歓迎されない雰囲気などがその背景だ。それでも、北京の高級ホテルで今月開かれた外国人向け就職セミナーには、臆病だが好奇心の強い外国人が数百人集まり、おしゃべりの能力を発揮した。

 一張羅を着こなし、ブリーフケースに最新の履歴書を持参してきた人もいれば、みずぼらしいTシャツに色あせたジーンズで現れた人もいる。ただ、多くの参加者は、外国人ならほぼ全員が何らかの職に就けた最盛期が過ぎ去ったことを認識しているようだった。

 フィンランドから来たエンジニアのユハニ・ホンカネンさん(59)は中国で工場長として14年の経験を持つ。ただ、国内外の需要が減退する中、職を得る機会も減っていると感じると話した。面接の合間のインタビューで、「労働市場は完全に下り坂だ」と嘆いた。

 多くの求職者にとっての頼みの綱は英語教師だ。ただ、この仕事も昔ほど簡単に手に入れられるわけではない。教員資格の証明書を要求されることが多くなったほか、政府が犯罪履歴や健康診断、厳しい入国審査を課すため、手続きに数カ月かかることもあるのだ。

 英語学校のサービスマネジャーと教師を務めるピーター・ホドソンさんは、「2005年に旅行ビザでやって来た。私の中国語はひどい」とし、「かつてほど(英語教師への就職は)簡単ではなくなった」と語った。

 ガタガタの机の反対側には、英語教師よりも技術職やマーケティング、メディア業界を志願する、えり好みするようになった外国人たちがいた。中国に来る前にリベリアで起業した経験のある33歳の参加者は「2年間、英語を教えてきたが非常に退屈だ」とした上で、「もっと興味深い仕事を本気で探している」と話した。

 終日のセミナーには数多くの英語学校のほか、航空会社、大学、医療クリニック、エンジニア会社、国営中央テレビ(CCTV)などの採用担当者も参加していた。

 採用担当者らは、北京の大気汚染や生活費の急上昇などで資格要件を満たす外国人労働者を引きつけるのが一段と難しくなったと話す。また、米国経済が強いせいか、数年前と比べて北米からの求職者が少なくなり、スペインやウクライナ、東欧、ロシアからの参加者が多いという。

 英語を教えているスペイン人の23歳の男性はエンジニアの仕事を探していた。男性は「欧州経済が上向けば帰国することを考える」と述べ、「(中国では)職探しは難しくない。自分が求める職を見つけるのが難しいのだ」と話した。

 中国での経験が豊富な求職者や採用担当者らは、最近は中国が外国人を積極的に受け入れなくなったとの大まかな感触を持っていると話す。こうした認識は、中国にある欧米の商工会議所が最近実施した年次調査からもみてとれる。

 北京の語学学校、ベルリッツで教師とコンサルタントを務めるバル・ベイツさんは「歓迎されていない気がする。ベルリッツで16年間働いてきたが、目に見える変化だ」と指摘。「中国は自力でやっていけるとの思いを強めている。また、北京は大気汚染の悪評がたっている。考え直す人が増えている」と語った。

 中国の指導部は引き続き外国人を歓迎しており、最近は一定の要件を満たす外国人に10年ビザを発給したと述べた。中国人力資源社会保障省(日本の厚生労働省に相当)がまとめた直近の統計によると、2013年に中国で働いていた外国人労働者の数は24万4000人と、12年の24万6000人を下回った。

原文(英語):From Pig Farmer to Math Teacher: Chasing Jobs in China


02. 2015年4月09日 00:01:46 : jXbiWWJBCA

「日本を揺るがす新常態 失速中国でも稼ぐ鉄則」
ピケティが解説、中国が「新常態」に突き進む必然

2015年4月6日(月)  武田 安恵

 『21世紀の資本』で所得と富の分配について明らかにした経済学者のトマ・ピケティ氏。中国には経済が発展するほど格差が広がってしまう歴史的な構造要因が残っており、「新常態」でそれが是正できなければ中国の先行きは厳しいと説く。
 「中国の格差問題に対する私の率直な印象は、解決は非常に難しいというものです。中国を訪れた際、政府関係者や学者と議論しましたが、その多くが中国で格差が拡大していくことに対して心配し、懸念を示していました。しかし、今のところ中国には格差を解消する手段がない。あったとしても不十分なものばかりです」

 『21世紀の資本』を著したフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏。経済格差が各国で深刻な問題を引き起こしている中で、同氏が導き出した「資本収益率(r)>経済成長率(g)」という不等式は世界的に注目を集めることになった。過去の膨大なデータを解析することで、「富める者がさらに富み、持たざる者との格差が広がる」という法則を明らかにしたからだ。

 そこで本誌は、急速な経済発展に伴い格差が拡大した中国について、ピケティ氏に意見を求めた。その答えは、現状の中国を憂慮しつつも、問題点に鋭く切り込むものだった。


『21世紀の資本』で所得と富の分配について明らかにした経済学者のトマ・ピケティ氏(写真=Getty Images)
 「もし本気で格差解消に取り組もうとするならば、今以上に多くの人が牢屋に入ることになるでしょう。中国はまず、所得、不動産、相続に関する税の累進性を強化するように、税制度を改正しなければなりません」

 実は、ピケティ氏は『21世紀の資本』の中で中国についても取り上げようとしていた。だが、中国では国際的な基準の統計データが不足しており、あったとしても信用に足る内容かどうかが確信できなかったため、断念した。

 ただ、ピケティ氏は習近平政権が推し進めている反腐敗運動については極めて高い評価を下している。

「新常態」とは
もとは2008年のリーマンショック後、世界経済が新しい局面に入ったとの意味で使われるようになった「ニューノーマル」の中国語訳。2014年5月に習近平国家主席が河南省を視察した際にこの言葉を使ってから、高速成長から安定成長に移行する中国経済の現状を意味する言葉として広まった。
まず腐敗をなくすことから始めるべきだ

 2014年11月、上海の名門、復旦大学で開かれたピケティ氏の講演会で、こんなやり取りがあった。会場の参加者から「中国のこれからの発展に関して、習国家主席に何かアドバイスはありませんか」と質問を受けたピケティ氏はこう答えた。

 「企業や政府の間にはびこる汚職、そして腐敗が不透明な収入を増やし、一部の人に富が集中する要因となっているのは紛れもない事実です。その意味で、習政権が推進している反腐敗運動は、富の不平等な分配を確実に是正できる方法と思っています」

 「そもそも中国では、なぜここまで汚職が蔓延するのでしょうか。それは、個人の収入をきちんと管理する制度がないからです。賄賂を受け取っても長期にわたって誰にも気が付かれないので、通常ではあり得ない金額の蓄財に走る人もいます。だからこそ、反腐敗運動は格差是正に非常に効果があるのです」

 習政権の反腐敗運動に対しては、国際社会から批判の声も上がっている。重大な規律違反の疑いで逮捕された共産党幹部は既に100人を超えた。「腐敗を撲滅する」という大義を振りかざし、政敵を次々と葬り去ろうとする習政権の姿勢は、時に「強権的」とさえ映る。だが、ピケティ氏は格差を是正するには、まず腐敗をなくすことから始めるべきだと指摘する。

 中国では政府高官の巨額蓄財が度々明らかとなっている。真相はいまだやぶの中だが、温家宝前首相の一族が27億ドル(約3240億円)以上もの資産を蓄えていると米ニューヨーク・タイムズ紙が報じたこともある。腐敗はあらゆる階層に広がっている。地方政府の中堅幹部が高級腕時計を複数所有していることがばれて、失職に追い込まれる事件などは頻繁に起きている。

 こうした実態が肌身に染みているだけに、ピケティ氏の発言は中国国内で大きな話題を呼んだ。在日中国人ジャーナリスト、徐静波氏や中国メディア『陸家嘴』のインタビューなどに答えたピケティ氏は、中国特有の問題点をこう指摘している。

 「日本は経済成長の過程で格差が解消されていきましたが、中国は経済が発展すればするほど格差が広がっています。中国は社会主義の国であるはずなのに、大部分の資本が一握りの人に独占されています。このことを私は理解できない」

 「ただ、私は中国が毛沢東時代に戻って全ての人が平等になるべきだと言っているのではありません。むしろ、適度な格差は社会にとって有意義だと捉えています。なぜなら、それは人々の上昇志向やイノベーションを生み出す動機となるからです」

 歴史をさかのぼって実証分析を積み重ねる手法はピケティ氏の最大の持ち味だ。同氏が指摘する通り、個人の利益より国全体の利益が優先された毛沢東時代、中国は発展から取り残されていた。ところが、ケ小平が実権を握ってから経済が急成長した。格差を許容する「先富論」を打ち出したからだ。

「中国には相続税がない」

 先富論は、先に豊かになれる地域、あるいはそうした力のある個人から豊かになることを推奨した。ケ小平の改革解放政策の根幹を成す考え方であり、平等の問題はいったん棚上げされた。発展に乗り遅れた地域や人はいずれ支援できると考えたからだ。

 まず選ばれたのが沿岸部だ。中国政府は深圳など沿岸部を中心に経済特区を設け、市場経済化のためのモノとインフラ、そして外資導入のシステムを集中させた。狙い通り沿岸部から豊かになり始め、富裕層が次々と生まれていった。

 ところが沿岸部と内陸部、都市部と農村部の所得格差は急速に広がってしまった。ケ小平以降の江沢民および胡錦濤政権は「西部大開発」という目標を掲げ、内陸部も発展させようと試みた。ただ、抜本的な解決には至っていない。

 2012年の中国統計年鑑によると、都市と農村部の1人当たり所得格差は1980年に2.5倍だったが、2011年には3.1倍へと拡大している。また、1人当たりのGDP(国内総生産)は最も高い天津市と最も低い貴州省の差は約5倍だ。沿岸部と内陸部の経済格差はいまだ解消されてはいない。


中国主要地域の1人当たりGDP。先に豊かになった沿岸部内陸部との格差は5倍(出所:「中国統計年鑑2012年版」)
 ではどうすればいいのか。格差が度を超えてしまうと社会階層を固定化させる要因になってしまうため、政策で強制的に格差を是正する必要があるとピケティ氏は説く。

 「問題の本質は、資本の分配のされ方、そして税制の問題にあります。中国は急速な経済発展を遂げて、一握りの人がお金持ちになりました。それ自体は途上国の発展段階として自然な現象です。しかし、中国政府は富裕層が資本を独占することを規制し、低所得者層にも富がきちんと分配される仕組みを導入できていません」

 「例えば、中国の富豪ランキングに載るようなお金持ちがこの1年間に納めた所得税は、一般的なホワイトカラー1人が納めた所得税とそれほど変わりません。これではお金持ちはますます富み、貧しい人はますます苦しむ。これが非常に大きな問題なのです」

 ピケティ氏が推奨する仕組みは富裕層への課税強化だ。格差を解消するための処方箋として『21世紀の資本』の中でも繰り返し述べられていることだ。

成長鈍化を受け入れよ

 「中国政府は財産を再分配できる制度を速やかに取り入れるべきです。驚くべきことに、中国には相続税がありません。それは、格差を助長させる要因にもなっています。資産を持つ者に対しては相続税を課すべきです。加えて中国政府は、所得税の納付状況を透明化した方が良いでしょう。それは、政府に対する国民の信頼を高めることにつながるはずです」

 ピケティ氏が格差の解消を強く求めているのは、富裕層に対する一般大衆の不満を解消させるためだけではない。このまま格差を放置したままでは、中国経済の発展が難しい段階に達しているとの認識がある。その最大の要因は、一人っ子政策による出生率の低下だ。世界最大の人口を誇る中国も近い将来、人口減少に転じるのは確実視されている。

 「人口の減少は、中国のGDPに確実に影響を与えます。2030年以降、中国の人口は減り始めます。同じ人口が多い国でも、生産人口を依然多く抱えるインドと高齢化が既に始まっている中国とでは、中身が全然違います。これから人口ボーナスが期待できるインドと、それが消失しつつある中国では、今後たどる道は明らかに違ってくるでしょう」

 中国が、安価で豊富な労働力を武器に高い経済成長を遂げてきたのは周知の事実。だが、その最大の強みと言われていた労働力も、近年は人件費の高騰と人口減少で優位性が崩れつつある。


中国でも数多く講演したピケティ氏。写真は2014年11月の上海での講演模様(写真=王辰)
 2桁の経済成長率が望めなくなった今、中国政府は経済構造の改善を通じ、成長の質を変化させることで持続的な経済発展を目指そうとしている。

 だからこそ景気が減速している現状を「新常態」と表現し、国民に成長鈍化を受け入れるよう促している。言い換えれば、それは大規模に資本や労働を投入することでリターンを得る従来型の発展の形との決別である。資本の効率性を高めると同時に、得られた収益を適正に分配できる経済モデルへの転換を意味している。

 幸いにも、足元の経済成長が鈍化しても失業率は高まっていない。徐々にではあるが、製造業に代わりサービス業の雇用が増えているためだ。

 世界に通用する中国企業も次々と台頭している。斬新なスマートフォンを販売し中国のアップルとも評される小米科技(シャオミ)、中国語圏以外にも勢力を拡大するインターネット企業の騰訊(テンセント)、そして世界有数の家電メーカーとなった海爾集団(ハイアール)など、イノベーションの担い手は着実に増えている。

 新常態下で活躍するのは中国企業だけではない。中国の抱える問題を解決したり、拡大する中間層向けのビジネスを得意とする日系企業にもビジネスチャンスが広がっている。

(ピケティ氏のコメント部分は本誌取材、中国内での講演やインタビューでの発言を基に再編集した)

このコラムについて
日本を揺るがす新常態 失速中国でも稼ぐ鉄則

中国経済が歴史的な転換期を迎えている。世界2位へと駆け上がった高速成長時代に別れを告げ、安定成長と構造改革を両立する「新常態」の時代に突入した。その影響は、日本を含め世界経済を揺るがすインパクトを持つ。習近平国家主席は抵抗を受けながらも反腐敗運動を進め、格差の是正という難題を解決しようとしている。大きく変化する中国では役人との付き合い方も含め、ビジネスモデルを抜本的に見直す必要がある。経済が失速する中でも賢く稼ぐ鉄則を探った。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150403/279549


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