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【15/4/11号】 2015年4月6日 週刊ダイヤモンド編集部
日米完敗!地政学で読み解く
新たなる中華覇権の衝撃
『週刊ダイヤモンド』2015年4月11日号の特集は、「世界経済超入門〜地政学で読み解く覇権争いの衝撃」です。アジアインフラ投資銀行の設立をめぐって、対抗する日米に完勝した中国の台頭で、世界の覇権争いは新たなステージへと突入しました。激動の世界経済を、ヒトラーが愛した禁断の学問、「地政学」で読み解きました。
「週刊ダイヤモンド」2015年4月4日号の特集は「世界経済超入門」
「完敗ですね」──。財務省高官は何かをのみ込むように言った。
4月1日、新年度入りした東京・霞が関の財務省。自室のテレビ画面は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーになるための申請期限が来て、当初の予想を大幅に上回る約50ヵ国が参加を表明したこと、そして、日本が当面、参加を見送ることを伝えていた。
AIIBとは、アジア太平洋地域のインフラ整備を支援するために、中国の習近平国家主席が提唱して設立に乗り出した国際金融機関で、世界各国に参加を働き掛けていた。資本金は最終的に1000億ドル、中国が最大の出資国となり、初代総裁のポストも中国人が握る。北京に本部を置き、年内の運営開始を見込む。
AIIBと業務が重複するアジア開発銀行(ADB)を主導してきた日本と米国は、AIIBの組織運営の透明性が確保されていないとして、一貫して参加に否定的なスタンスを取ってきた。
ほんの1ヵ月前、この高官はAIIBについて、「組織のガバナンスの問題が解決しなければ、うまくいかない。このままだと失敗しますよ」と自信ありげに語っていた。自信には裏付けもあった。
当初の参加国は資金を融通してもらいたいアジアの発展途上国が多く、このままでは国際金融機関としての体裁が整わない上、融資の審査能力にも疑問符が付いた。
そこで中国側は「国際金融のノウハウ不足を日本に補ってもらおうと副総裁級ポストを用意して参加を要請してきたが、日本側はこれを断っていた」(中央官庁幹部)。
それなのに、なぜ、日米は中国に敗れたのか──。
最大の理由は、国際社会をリードしてきた主要7ヵ国(G7)の盟友である英国の裏切りだ。英財務省が3月12日、G7で初めてAIIBへの参加を表明したのだ。これに、ドイツ、フランス、イタリアという欧州の残りのG7国が追随したことで、大勢が決まった。
日本の懐柔工作も
英国の裏切りで骨折り損
実は、日本は水面下で参加するか迷っている国に対して、懐柔工作を行っていた。
その中でも、「比較的経済規模の大きいオーストラリアや韓国に、米国と連携しながら圧力をかけていた」と、財務省関係者は打ち明ける。
ところが、経済規模がはるかに大きいG7の一角で突然、雪崩が起きてしまい、先進国までもがそれにのみ込まれる形で、参加へとかじを切ったのだ。G7の4ヵ国が名を連ねるのであれば、日本が入るよりはるかに体裁も整う。中国としては願ったりかなったりである。
中国に対して、反AIIBの包囲網を敷くつもりが、逆に日米が親AIIB国に包囲されるという屈辱。当然、米政府は同盟国の裏切りに怒りをあらわにした。米国が激怒するのを分かっていてもなお、欧州のG7国が参加を表明するだけの“磁力”がAIIBにはあった。
何よりもまず、AIIBが手掛けることになる、アジアの道路や鉄道などのインフラ需要への足掛かりができるのは大きい。
ADBの試算によれば、2010年から20年までに必要なインフラ整備額は約8兆ドル、実に1000兆円近い空前の規模となる。景気低迷にあえぐ欧州としては、是が非でも取り込みたい巨大需要だった。
富士通総研の柯隆主席研究員は、「AIIBへの参加はリスクが小さい割に、欧州にとって経済的なベネフィットが大きい。一方で、今の日米にそこまでの金は動かせない。4兆ドルもの外貨準備がある中国の“チャイナマネー”は強かったということ」と解説する。
さらに、欧州勢のAIIB参加を決定付けたのが、欧州と中国の間に地政学的なリスクがなかった点だ。つまり、両者の間には領土問題など、「安全保障上の脅威」が存在しないのだ。尖閣諸島を抱える日本と異なり、純粋に経済的な損得勘定で動ける利点が、欧州勢が次々と参加表明した背景に隠されているのだ。
ちなみに「安全保障上の脅威」という地政学的キーワードは、これに限らず、崩壊の危機にひんするEU情勢や、中東の覇権争いなど本特集の複数の場面で登場するので、ぜひ押さえてもらいたい。
今回のAIIB騒動を国際金融の観点から読み解くと、また違った風景が見えてくる。
AIIBの設立は、米欧がつくり上げ、長年にわたって牛耳ってきた国際通貨基金(IMF)・世界銀行による国際金融秩序への挑戦と捉えられている。
みずほ総研中国室の三浦祐介主任研究員が、「AIIB設立の背景には、国際金融での中国の地位の低さも影響している」と指摘するように、中国には米欧主導の金融秩序に対する強い反発がある。
例えば、IMFのトップである専務理事はこれまで歴代、欧州人が就き、中でもフランスの通貨マフィアの影響力が強い。世銀総裁は米国人のポストで、国際金融機関の一角を占めるADBの総裁は日本が独占してきた。
中国はこの世界で常に脇役に追いやられており、影響力を行使できる範囲は極めて限定的だった。中国はそこでAIIBという箱を使い、米欧に取って代わる新金融覇権の一手を打ったというわけだ。
米国の外交問題評議会が
示唆した覇権交代の可能性
振り返れば、中国は19世紀初頭まで、世界最大の経済大国だった。世界第2位の経済大国に返り咲いた今、再び、中華覇権を目指して動き始めたのだ。
その意味で、AIIBという組織は、アジアのインフラ整備という大義があるとはいえ、やはり、中国の中国による中国のための銀行といえる。そして、それはG7の取り込みに成功するという最高のスタートを切った。
そのことを米国側も重く受け止めている。米シンクタンク、外交問題評議会は3月20日に発表した論文で、「欧州で最も重要な四つの同盟国が AIIBの創設メンバーになるとの決定は、ちょっとした外交的敗北ではなく、米国が構築した世界秩序にボディブローのように効いてくる」と指摘した。
さらに、「AIIBに関する中国の策略の勝利は、もはや米国はゲームを独占できないことを示しており、国際関係の重力の中心は、西から東に移りつつある」と覇権交代の可能性を示唆した。欧州勢は潮目の変化を敏感に感じ取ったからこそ、中国を向いたのだろう。
米ドルが担う基軸通貨の座を狙う人民元や、米国との自由貿易圏をめぐる覇権争い、そして巨額のチャイナマネーで進める新型の資源外交など、金融覇権への挑戦を端緒に、中国は今後、さまざまな分野で覇権争いに加わっていこうとしている。
そして、何よりAIIBに参加する各国が期待するのが、「シルクロード構想」である。中国から欧州に至る陸と海の二つのルートを通じて、巨大経済圏を構築しようという野心的な構想だ。陸上の「シルクロード経済圏」だけでも、周辺人口は30億人に上る。
G7内でにわかに入った米国と欧州の亀裂、そして米欧主導の金融秩序のほころび。習近平指導部がそのはざまに見据えるのは、超大国、米国を凌駕する「ユーラシア覇権」の構築だろう。
http://diamond.jp/articles/-/69507
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AIIBは世界史を書き換える出来事、もっと議論を!
日本は国家の隆盛に興味を失い内籠りを始めたのか
2015.4.6(月) 川島 博之
孤立する米国、中国主導のAIIBで変わる世界構図
中国主導のAIIBで世界構図が変わろうとしている。北京の人民大会堂で開かれた歓迎式典で乾杯するオバマ米大統領と習近平中国国家主席(2014年11月12日撮影)(c)AFP/Greg BAKER〔AFPBB News〕
中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)の創設メンバーは約50の国と地域になった。国と地域としたのは台湾が入っているためだ。政治的に中国と鋭く対立している台湾までが参加を表明している。アジアで参加を表明していないのは日本と北朝鮮ぐらいである。
日本人が考えている以上に、アジアの人々は中国主導の世界を受け入れつつある。AIIBの設立はアジアの中心が日本から中国に移行したことを象徴的に表す出来事と言えよう。
大手マスコミはこのニュースに関して事実関係を伝えるだけで、積極的な論表を避けている。入る必要はないと明言しているのは中国共産党を蛇蝎のごとく嫌う産経新聞ぐらいで、他のマスコミは“だんまり”を決めこんでいる。毎日新聞が4月1日の社説で「関与へ作戦の立て直しを」と題して柔らかく参加を促しているが、これも参加を強く促すものではなく、腰が引けた内容になっている。
ここでは、早く参加を表明しないと儲け話に乗り遅れるなどと言った近視眼的な視点ではなく、より長期的な視点からAIIBについて考えてみたい。
米国が世界を取り仕切る時代が終わった
AIIBの設立は間違いなく世界史の転換を象徴する出来事である。第2次世界大戦後、初めて米国以外の国が主導する金融の枠組みが作られたからだ。それは米国が世界を取り仕切る時代が終わったことを示している。
米国はAIIBに対して否定的な立場を表明しているが、それは当然のことだろう。ライバルに塩を送る馬鹿はいない。米国はこれまで膨大な人口を抱える中国を市場と捉えて共存を図っていたフシもあるが、AIIBの設立を見て、中国がライバルであることを再確認したと思う。両雄並び立たず。今後、米国が中国を見る目は一層厳しいものになろう。
戦後、米国中心の金融秩序に挑戦を試みたのはソ連と日本だけである。冷戦構造の下でソ連は独自の経済圏の樹立を図った。しかし、その影響力は東欧圏内にとどまり、資金力が限られていたこともあって、その影響力は限られたものだった。それはソ連崩壊によってもろくも崩れ去った。
バブル景気に沸いた1980年代の日本も米国への挑戦を試みたが、アジアに日本が中心となる金融の枠組みを作ることはできなかった。むしろ、米国の心証を損ねて、バブル崩壊と言う返り討ちにあってしまった。
そんな歴史を振り返ると、米国の不快感を無視してイギリスまでその創設メンバーに迎えることができた中国の力を侮ることはできない。まさに、AIIBの設立は戦後の歴史が大きく変わった瞬間と言えよう。
AIIBは中国の奇跡の成長をアジアに広げる
私はアジアの農業を研究してきた者だが、AIIBをアジアの農民が世界を変え始めたことの象徴として捉えている。
中国が短期間で米国の対抗できるほどの力を付けることができた最大の理由は、国民の大半を占める農民を安い給与でこき使うことができたためだ。現在、中国の農民人口は全人口の50%を下回ったとされるが、それは表面だけのこと。中国の都市には出稼ぎが多く住んでいるが、彼らは定住するようになっても農民戸籍のままである。農民が低賃金で働かなければ中国経済は成立しない。
中国の工業部門は強い競争力を持っている。ただ、この10年ほどは調子に乗りすぎたようだ。拡張に拡張を重ねたために、過剰生産設備を抱えるようになってしまった。
例えば粗鋼生産。世界の粗鋼生産量は16億トン。日本は1億トン。それに対して中国は9億トンもの生産力を有している。だが、中国国内の需要は6億トン程度であり、設備をフル稼働させることはできない。その上に、不動産バブルの崩壊が始まった。今後、中国の国内需要は減少しよう。
その膨大な過剰生産力のはけ口としてアジア諸国に目を付けたようだ。金を貸してやるから、中国から鉄を買ってインフラを整備しろと言うのだ。まあ、短期的な視点に立てば、過剰生産力の解消ためにAIIBを設立したと考えられなくもない。
だが、少し視点を引いて見れば、これは過去20年間に中国で生じた奇跡の成長をアジアに広げる動きと捉えることもできる。
中国の人口は13億人。それに対してASEANに6億人、インドなど南アジアに16億人が暮らしている。これらの地域は、これまでもそれなりに経済成長してきたが、その成長速度は中国に大きく後れを取っていた。その原因の1つにインフラ整備の遅れがある。
AIIBの融資は、ASEAN、インド、バングラデシュのインフラの改善に貢献しよう。そして、そこには膨大な数の農民がいる。遊牧民の末裔である西アジアの人々や畑作文明に立脚するラテン系の人々に比べれば、コメを作ってきた地域の人々は勤勉であり、低賃金でも文句を言わずに働く。だから、日本企業が「CHINA+1」などと言って、賃金が高騰した中国に替わってASEANやバングラデシュに進出しようとする。
インフラの整備が進めば、今後、中国だけでなくASEANやインドも世界の工場の一員になる可能性が高い。アジアの農民が工場で働くことは工業製品にデフレをもたらす。現在、中国が世界の工場になっただけで工業製品のデフレが止まらなくなっているが、ASEANやバングラデシュ、インドでも工業化が進展すると、より一層工業製品のデフレに拍車がかかることになろう。
その結果、先進国では工業の振興が国家の隆盛につながるという、19世紀から20世紀まで約200年続いた経済モデルが終焉を迎えることになろう。
入るか入らないは別、議論することが重要
お金の力は大きい。中国の影響力が世界中で米国を上回ることはないと考えているが、アジアでは中国の影響力は確実に米国を上回ることになろう。日本はそのアジアに暮らしている。そして、工業の振興によって国家の隆盛を築くことができない時代が確実に到来した。
この2つの出来事は戦後日本のあり方に根本的な見直しを迫っている。AIIBの設立はそれほど大きなインパクトを持つ出来事である。
しかしながら、この事実に対して、日本の国会やマスコミの感度はあまりにも鈍い。AIIBについて活発に議論し、その対策を探るべきなのだ。入るか入らないは別である。議論することが重要である。AIIBに対する議論があまりにも低調なことは、高齢化が進行した日本が国家の隆盛やアジアの覇権に興味を失い、内籠りを始めたことを示唆しているのかも知れない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43422
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