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「来日中国人の“欧州ブランド品爆買い”は終息へ」
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シャネルなど高級ブランド、中国で値下げ
倹約令・国内割高で閑古鳥 内外価格差縮小、顧客流出防ぐ
仏シャネルなど欧州の高級ブランドが中国で商品の値下げを始めた。習近平指導部の倹約令に加え、中国国外の店舗への顧客流出によりブランド各社の中国の店舗は軒並み苦戦している。名目は内外価格差の是正だが、割安感を打ち出すことで世界最大のブランド品購入者となった中国人を引き留めようと躍起になっている。
「今回値下げした商品はすべて売り切れです」と店員が説明する。上海市中心部にある高級ショッピングモール「恒隆広場」。週末でも閑散とする売り場で唯一、熱気に包まれているのがシャネルの店舗だ。同社が中国でハンドバッグの定番商品を値下げした18日以降、店舗前は常に30〜50人が行列をつくる。
同社が３万8200元（約72万円）から３万元に約２割値下げしたバッグはすでに売り切れ。今は予約販売だけを受け付けている。シャネルの中国での値下げは「地域間での価格差を縮めること」（同社）が目的で、ユーロ安が進む欧州では値段を引き上げる。価格調整は「今後１年でファッション製品のすべてに適用される」という。
行列に並んでいた20歳代の女性はすでに２つのシャネルのバッグを持つが、いずれも海外の非正規の業者から国際郵便で取り寄せる「代理購入」で入手した。代理購入は偽物が届くなどリスクも大きく「海外との価格差が大きくなければ、実物を見られる中国で買いたい」と女性は話す。
税金で高価に
中国では関税だけでなく、日本の消費税に似た増値税、それに流通コストなどが加わり、輸入品はブランド品から日用品、食料品に至るまで極めて高価となっている。高級ブランドの場合、欧州の店舗で買えば同じ商品が中国より50〜80％安く買えることもある。これが中国人観光客の海外での「爆買い」の大きな理由となってきた。
別の50歳代女性が腕にはめるスイスの腕時計「ジャガー・ルクルト」は香港で約７万元で購入した。欧州などではさらに安い可能性もあるが、中国では11万元で販売されているという。女性は「シャネルのように値下げしてくれれば、本当は中国で買いたい」と話す。
ブランド各社の値下げの公式見解はユーロ安によって発生した内外価格差の是正だ。これまでも内外の価格差はあったが、中国市場のてこ入れの狙いもあり、長年の課題に手を付けた。また、売れないから値下げではブランドに傷が付きかねないが、為替変動による価格調整なら面目は立つ。
スイスの高級時計メーカーのパテックフィリップは２月10日から腕時計の価格をアジア太平洋地区で３％、香港で７％、スイスで５％引き下げる一方、ユーロ圏で７％引き上げた。スイスは１月15日に１ユーロ＝1.2スイスフランの上限を撤廃してから、スイスフランが急騰。通貨高を価格に転嫁するためアジアで値上げしてもおかしくないはずだが、実際には値下げした。
追随が焦点に
米コンサルティング大手ベイン・アンド・カンパニーと伊高級ブランド業界団体アルタガンマの調査によると、中国大陸のブランド市場規模は「2012年まで前年比20％超の伸びを続けてきた」。だが、13年は同２％増、14年は同２％減と急減速。仏ＬＶＭＨの14年の営業利益は５年ぶり減益だった。今年２月の春節（旧正月）でも中国国内でのブランド品の売り上げは低迷したままだ。
ファッションブランドの物流を手掛けるライフスタイル・ロジスティクス（上海市）のアンドレ・スギウラ社長は「いったん（値引きなどの）セールを始めると、次のセールを待って買わなくなるため、これまでブランド各社は値下げに慎重だった」と指摘する。それでも事実上の値引きに踏み切ったブランド各社。仏エルメスや伊グッチなど他のブランドも値下げに追随するかどうかが今後の焦点となる。
上海＝土居倫之、大連＝森安健
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中国人、格安求め海外へ 19年、31兆円消費の見方
中国大陸の店舗で「閑古鳥」が鳴くのは、内外価格差の存在が広く知れわたり、格安な海外に買い物に行く人が増える一方なためだ。米金融大手バンクオブアメリカ・メリルリンチは今月まとめたリポートで、2019年には中国人が海外旅行に使う金額は年間2640億ドル（約31兆円）になると推測する。
中国は12年から既に海外渡航者数、消費金額とも世界１位で、14年は１億900万人、1640億ドルに達した。ただ、全国民の５％しかパスポートを取得していないとされ、今後さらに増えるのは間違いない。
海外旅行の主役は「Ｙ世代」と呼ばれる1980年代、90年代生まれの若者で、全体の62％を占める。スマートフォン（スマホ）で世界中の情報を仕入れ内外価格差を熟知しており、最も安い地域を探して飛んでいく。
［日経新聞３月２６日朝刊Ｐ．９］
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