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コラム:中国も直面するイスラム過激派の脅威 2015年 03月 20日 10:57 JST William Johnson[18日 ロイター] - もし米国がイスラム過激派組織を壊滅させたいのなら、中国を狙った過激派の活動に中国政府が抱く然るべき懸念を認識する必要があるだろう。それなくしては、世界的なイスラム過激派との戦いにおいて、中国の協力は今後もあまり期待できないだろう。 しかし、米国が中国の懸念を理解すれば、中国による一段の協力が期待できるだけでなく、中国のウイグル族に対する扱いをめぐり、米国は今より強い立場に立てることになるかもしれない。 メディアは一般的に、ウイグル族と過激派組織とのつながりをあまり大きく扱うことはない。グアンタナモ米海軍基地の収容施設には、イスラム教徒であるウイグル族は1人もいなくなった。米国は、ウイグル族の過激派指導者による声明を無視して行動している。パキスタンが確認した同声明は、同国のワジリスタン地域に相当数の戦闘員が集結しているというものだった。同地域にはアルカイダやタリバンを支持する勢力も存在する。 中国政府が人権問題などをめぐるウイグル族の不満を押さえつける言い訳として、過激派の脅威をよく利用することは否定できない。だからといって、中国国内でウイグル族の過激派組織が攻撃を計画・実行しているという事実が覆されるわけではない。 米外交問題評議会(CFR)のエリザベス・エコノミー氏は、「ウイグル族の政治的・経済的な不満に適切に取り組む能力や意思が中国に欠如していることが、東トルキスタン・イスラム運動のようなウイグル族過激派の脅威を最小限に抑えられない原因ではない」と、明確に述べている。米国は、中央アジアや中東で訓練を受けた戦闘員が中国に戻って攻撃を行うかもしれないという中国政府のもっともな懸念を認識するべきだ。 そうすることで、特にアフガニスタンやパキスタンでの過激派との戦いで、中国のさらなる協力が得られるかもしれない。中国はアフガニスタンに大きな経済権益を持ち、現地の治安維持でも協力している。米軍を中心とする国際部隊がアフガンから撤退するなか、中国の協力は必要不可欠となる。また、中国はパキスタンとも緊密な関係にあり、同国にある過激派の訓練キャンプを閉鎖に追い込むよう圧力をかけることもできるはずだ。 ウイグル族に対する適切な対応を中国に求める一方、対過激派での協力を通じて培われる友好と信頼は、米国の立場を高めることになるだろう。共有する情報が増えれば、過激派組織の犯行なのか、それとも単にウイグル族が改善を求めているだけなのか、米国は今よりも容易に判断できるようになる。過激派組織との戦いで米国が今後も協力するには、ウイグル族の権利を認める中国の努力が必要であることを分かりやすく説明することが肝要だ。そうすれば、米国の立場はいっそう強まり、本当の違いを生み出すことができる。協力は最小限で批判は最大限という米国の現政策では、取り組みが無駄に終わる公算が大きい。 中国では最近、過激派による攻撃が著しく増加。攻撃自体は遺憾なことだが、米国にとってはまた、中国との関係を再調整する機会にもなっている。中国が過激派との戦いで貢献できることの1つは、簡易爆発物の作成にも使用できる技術の流出を阻止することだ。加えて中国は、上海協力機構を通じて親しい中央アジア諸国に対しても、過激派勢力の拡大を食い止めるべく、その影響力を発揮することが可能だ。 中国が直面する問題を米国が認識していることは間違いない。米国が「東トルキスタン・イスラム運動」をテロ組織に指定していることもその証左と言える。しかし、グアンタナモに収容されたウイグル族全員が無実だったというのは、ウィキリークスが公開した文書とは矛盾するし、最近の報道では過激派組織「イスラム国」の活動にウイグル族も参加していることが示されている。 過激派対策と人権問題という2つの平行した政策を取ることは、米外交政策では当たり前に行われている。すでにエジプトやタイ、サウジアラビアやフィリピンでそうした2重政策を取っている。中国に対して同様の政策をためらうことは間違った考えにすぎず、逆効果を招く恐れがある。米国が過激派との戦いで世界をリードするのであれば、どこであろうと立ち向かわなくてはならない。中国も例外ではない。 *筆者は元米空軍将校。2009─2011年、米太平洋特殊作戦軍で上級政治顧問を務めた。 http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPKBN0MG03X20150320 |