01. 2015年3月11日 08:36:02
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中国軍の脅威、 目の前の危機と受け止めているのは日本よりも米国 ワシントンの討論会で日米の認識ギャップが浮き彫りに 2015年03月11日(Wed) 古森 義久 中国が2隻目の空母を建造か、市公式アカウントに投稿 即削除 中国は近年、防衛費を大幅に増額している。中国東北部・遼寧省大連港に係留された同国初の空母「遼寧」(2014年7月6日撮影)。すでに第2の空母建造に取りかかっているとの情報もある〔AFPBB News〕 中国の軍拡による直接的な脅威は、どう見ても米国よりも日本にとってのほうが深刻なはずだ。地理的な距離を見ても、尖閣諸島奪取に意気込む様子を見ても、激しい反日言動を見ても、中国の軍事力の増強は日本を威圧している。 だが日米両国の受け止め方を比べてみると、日本よりも米国側の方が、中国の軍拡を脅威と受け止める度合いがずっと高いのである。ワシントンのある討論会でそのことが印象づけられた。日本側の中国の軍拡への認識は鈍いと言わざるを得ないのだ。 いまに始まった話ではない中国軍の日本本土攻撃能力 この日米ギャップが露呈したのは、2月27日、ワシントンのリベラル系の大手研究機関「ブルッキングス研究所」が開催したシンポジウム「中国の安全保障・外交政策=日米の見解比較」においてであった。その主な内容はタイトルどおり、日本と米国が、中国の安保がらみの動向をそれぞれどう見ているかについての比較だった。 シンポジウムでは米国側から5人、日本側から4人の民間の専門家や研究者たちが中国の対外戦略を論じた。焦点となったのは、中国の軍事力増強が日本にとってどんな意味を持つか、である。 ブルッキングス研究所は、どちらかと言うと中国に融和的な民主党系のリベラル志向の組織である。そんな組織が主催する討論会であるにもかかわらず、米国側の代表者たちの中国の軍拡への見方は極めて厳しいものだった。それに対し、日本側の反応はまったく鋭さが欠けていた。 米国側の専門家は、日本側の専門家よりも、日本への脅威に対してより深刻で重大な懸念を示していた。だが日本側は脅威としての認識が低いことに加えて、中国の軍拡への対応策をなにも示さなかった。 シンポジウムでは、まず日本側が「中国人民解放軍は日本の本土への攻撃で、どの程度の能力を有しているのか、どの程度の脅威なのか」との問いを設定した。この設問を巡るやり取りが日米ギャップを明快に印象づけるものだった。 答えたのは、米国防総省の中国軍事担当の部署を歴任し、現在は「海軍分析センター」中国研究部長のデービッド・フィンケルスタイン氏である。フィンケルスタイン氏の発言は次のようなものだった。 「中国軍の日本本土攻撃能力はもうずっと以前から存在しているのに、いま、その能力の有無を初めて議論するような態度には当惑する」 中国人民解放軍が陸、海、空の各軍、そして宇宙から、核兵器、サイバー攻撃、各種ミサイルなどまで、多方面で大規模な軍事能力の増強を進めていることは、確かにすでに広く知られている。 さらに同氏はその後の発言で、中国軍の中距離ミサイル多数が長年、日本本土を攻撃範囲に収めてきたこと、ずっと「日本本土への脅威」が存在してきたことも強調し、日本側の認識との差を見せつけた。 中国の軍拡、元々の仮想敵は米国や台湾 日米のギャップはそれだけではなかった。 日本外務省出身の辰巳由紀氏が発言したときである。辰巳氏は、米国スティムソン・センターの主任研究員として、日米関係やアジアの安全保障問題を研究している。同氏は「日中のミラーイメージ(左右対称)」という表現で、中国側の軍拡は日本の動向に反応した結果ではないか、という見解を述べた。日本側が中国に対し融和や自制の姿勢を見せれば、中国は軍拡を緩めるのでは、という示唆が背後にある言明だった。 ところがフィンケルスタイン氏はこれに対しても「中国軍の近代化は日本の動向とは直接なんの関係もない」と述べ、日本側の見解を排したのだった。 同氏は、中国が江沢民主席の下、1993年頃から米国や台湾を主な対象として大規模な軍拡を始めた経緯を詳述した。日本の防衛態勢や対中政策にかかわらず、中国は20年以上前から国策として軍事力の大増強を決めていたというのである。 だが、米国や台湾を対象とした軍拡であっても、その一端は明らかに日本への威圧となっている。尖閣諸島に対しては海軍力、空軍力を基盤にした侵入を続けているのだ。 一方、「中国の現在の対外戦略は日本への敵意そのものだと言える」と述べるのは、アジアや欧州の軍事問題の研究でも知られるブルッキングス研究所外交政策研究部長のマイケル・オハンロン氏だ。 同氏は「中国の対外政策の柱は日本への嫌悪であり、その背後には過去の屈辱を晴らせていないという歴史上の不満がある」とも述べる。中国への批判をにじませながら、日本は軍事面で中国のそうした脅威に対応する抑止措置をとるべきだという意見を表明した。 「日本は防衛費を50%増加すべき」とオハンロン氏 日本側では、防衛研究所主任研究官の飯田将史氏が「挑発的」「冒険主義」などと評して中国の軍事政策を説明し、日本への危険性を指摘した。飯田氏は、中国側の日本の領海への頻繁な侵入についても強調したが、そうした動向を明確に「日本への脅威」と呼ぶには至らなかった。中国の軍事脅威にどう対応すべきかについては、まったく言及がなかった。 また、東京大学教授の高原明生氏と早稲田大学教授の青山瑠妙氏もパネリストとして見解を述べた。高原氏は、中国による日本非難の主張が事実と反する点が多いことを具体例を挙げて指摘した。青山氏は、中国の対外戦略全般、特に国際秩序への挑戦などに焦点を絞った報告をした。しかし、高原氏も青山氏も中国の日本への軍事的脅威を強調したり、日本がとるべき対応策を提言したりすることはなかった。 それに対してオハンロン氏は、中国の軍拡に対応することを日本に求めた。同氏は安倍政権の防衛政策への支持を表明しつつ、「日本は現在の防衛費を少なくとも50%増加してGDPの1.5%まで引き上げるべきだ。そうすれば中国の抑止やアジアの地域安定に大きく寄与する」と具体的な提案をしたのである。 またフィンケルスタイン氏は、中国軍が中距離ミサイル配備や新型潜水艦増強などによって明確に日本に脅威を与えていることを強調し、そのうえで、米国と共同でミサイル防衛網を構築することに、これまで以上の力を注ぐことを日本政府に訴えた。 米側代表たちのこうした発言や提言は日本側の消極姿勢とは対照的であり、日本側との温度差をみせつける結果となった。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43153 |