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中国:「西側の価値観」との戦い
2015年02月23日(Mon) 裴敏欣
中国から最近伝わるニュースは大抵、気が滅入るものだ。中国政府が批判派の弾圧を強化しているためだ。
だが、観測筋、特に経済アナリストがほとんど理解していないように思えるのは、自由主義と「西側の価値観」に対する中国指導部の戦いが、役人の腐敗を根絶し、イノベーションと企業家精神を促進し、外部世界との関与を深めようとする政府の努力を直接損ねているということだ。
時代に逆行する政府の政策は、中国の持続的経済発展に深刻な悪影響をもたらすだろう。
弾圧を強化する中国政府
中国動画サイトから米国ドラマ4本消える、規制強化か
中国政府はネット検閲を強化するなど、弾圧を強めている〔AFPBB News〕
まず、政府はインターネットの検閲を強化しており、その結果、グーグル、フェイスブック、ニューヨーク・タイムズなどを含む人気のポータルやウェブサイトがほぼ閲覧不能になっている。
さらに、有名な人権派弁護士が何人も拘束されている。例えば、言論の自由を唱える著名弁護士、浦志強氏は、検察当局が同氏の立件を試みる間、すでに半年以上拘束されている。
一方、中国の政府高官は、中国共産党内部で政治的な規律を徹底するようになった。昨年6月、中国社会科学院に籍を置く中国共産党規律検査委員会のトップ、張英偉氏は、中国最高峰の政府系シンクタンクである同院について「外国勢力が浸透しており、政治的に微妙な時期に違法な共謀を行っている」と述べた。
社会科学院の副院長で院内党組織の副書記を務める趙勝軒氏はこれに応じ、社会科学院は「学者を評価するうえで、政治的な規律を最重要基準として扱う」と誓った。そのすぐ後、社会科学院の王偉光院長は論文の中で、中国における階級闘争は絶対に消滅しないと断じた。
政権が敵探しをする中で、中国の学界全般が大きな標的となっており、いくつかの大学は立憲主義のような「扇動的な」思想を支持したという理由で教授を解任している。特にひどいケースでは、遼寧省の政府系新聞が、教授が体制を批判するところをつかまえるために、学生に変装した記者を教室に送り込んだ。
中国教育相の袁貴仁氏の最近の発言は、それよりはるかに甚大な害を及ぼす恐れがある。袁氏は「西側の価値観を広める」教科書――特に「党の指導部を攻撃、誹謗したり、社会主義を中傷する」もの――を中国の教室内に絶対に持ち込ませないと断言した。
袁氏の地位を考えると、この誓いの言葉は事実上の公式方針になる。中国のためには、そうならないことが望まれる。
言論の自由と西側の価値観に対する最近の激しい攻撃は、習近平国家主席が直面している重大な政治的課題を反映している。習主席は強欲と不信感によって弱体化した一党体制を、市場を基盤とした改革を実行し、自己の長期的存続を維持することができる、思想的に結束した秩序ある体制に変えなければならない。
習近平国家主席のビジョンの論理的な欠陥
習主席、給与62%アップ 中国メディア
習近平国家主席〔AFPBB News〕
自由主義の弾圧は、自身の反腐敗運動とともに、この目標を推し進めていけると習氏は考えているようだ。
このビジョンは、非現実的であるのと同じくらい論理的に欠陥がある。
どれだけ懸命に努力しようと、報道の自由や健全な市民社会、法の支配がない状態で一党体制の腐敗を根絶するのは事実上不可能だ。しかし、報道の自由といったこれらの要素は、まさに中国共産党の政治局員らが排除しようとしている「西側の価値観」なのだ。
中国教育相、大学から「欧米の価値観」を排除
中国・北京の大学で、入学試験前に教科書などを読む学生たち〔AFPBB News〕
中国はこの過ちに対して大きな代償を払うことになるだろう。
袁氏の教科書キャンペーンが、標準以下のレベルの教材を使うしかなくなる2800万人の中国の大学生に与える影響を考えてみるといい。
教育がこんな形で損なわれた場合、どうすればこうした学生がグローバル経済の中で競うことを期待できるのか?
現在のトレンドは、特に社会科学と人文科学の分野で、教師にとっての条件が悪化することも意味している。学者たちは西側諸国との学術的な交流に関して、より厳しい制限を課されるからだ。
海外の会議に出席したり、西側の学術誌に寄稿したり、中国国外で学生を指導し、自ら研究することに時間を費やす機会が減ると、学者の専門能力の開発とキャリアが著しく損なわれるかもしれない。
その結果、政府による「西側の価値観」の抑圧は――ましてやネットに対する執拗な戦いは言うまでもなく――、中国のトップクラスの精鋭の流出に拍車をかけることになりそうだ。
2013年には41万3900人という前代未聞の数の中国人学生が海外に留学しており、2014年にはさらに増えることが予想されている。そのうち9割の人が西側諸国(および日本)を留学先に選んでいる。
悪夢と化す「中国の夢」
確かに、大学に通う年齢の中国人学生のうち外国の大学へ留学する学生はごくわずかだ。実際、2013年に海外留学した学生の数は、中国の大学に進学した学生の6%程度に過ぎない。
しかし、中国の支配層のエリートは、自らの長期的存続の代償としてこの集団を見限るどころか、逆に出口へ殺到する流れを先導し、自分の子供たちを主に米国のアイビーリーグや英国のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学に留学させている。
共産党の指導者は、自分たちの子供が西側の価値観に洗脳されることを心配しないのかと不思議に思える。彼らはすでに、明らかに、自分の子供を中国の大学に行かせたくないと考えている。そして、もし袁氏がその意を通せば、中国の大学は次第に、世界レベルの西側の大学よりも北朝鮮の大学に似てくるだろう。
そうなったら、広範囲に及ぶ壊滅的な影響が出る。中国国内に残った何千万人という学生は、中国経済の国際競争力を維持するために必要な知識とスキルを得られない。ましてや、競争力を高めることなど論外だ。
実際、中国の持続的経済発展にとってイノベーションが不可欠であることを考えれば――この点は習主席が繰り返し強調している――、中国の教育における西側の影響力との戦いは全くもって不合理だ。
政府の弾圧がすぐに終わらなければ、国の偉大さと繁栄という習氏の「中国の夢」は、加速する衰退と高まる後進性という悪夢に変わるだろう。いずれにせよ、西側の価値観に対する戦いは、中国が負けるしかない戦いなのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42990
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