http://jp.wsj.com/articles/SB12091905799479333513004580459151344099036
アルミ市場揺るがす中国の輸出
BIMAN MUKHERJI AND RHIANNON HOYLE　原文（英語）
2015 年 2 月 13 日 17:36 JST

14年の中国アルミ精錬量は前年比14％増 Bloomberg News
　【香港】中国のアルミニウム輸出の急増が市場力学を変えつつある。また、中国の税金制度のために、アルミそのものが変形されることもある。
　2014年には上海期貨交易所（上海先物取引所）のアルミの供給が急増し、価格は8％下落し1トン＝2081ドルとなった。同年のロンドン金属取引所（LME）のアルミ価格は4％上昇した。
　しかし、中国のアルミ輸出は政府が海外販売分1トンごとに輸出税15％を適用することから魅力が欠ける。この税制措置には生産物を国内にとどめる意図がある。
　実際には、中国のアルミ精錬業者はアルミを半完成品として輸出することで税金を免れているとアナリストらは指摘する。通常「一次」アルミはインゴット（一般原材料用鋳塊）として生産されるが、アルミの場合は戸枠やホイールキャップなど製品形状へと比較的容易に加工できる。いったん輸出された半完成品は、輸出先で再び融解され、望ましい形状へと作り直される。
　さらに中国の生産業者はアルミ半完成品について付加価値税13％の還付措置の恩恵を受ける。買い手がLMEでアルミを購入する際の価格をふまえると、これによって他国産アルミと比較して中国のアルミの競争力は増す。
　ウッド・マッケンジーのアルミ担当主任アナリスト、ウダイ・パテル氏は「半完成品の輸出が急増している」とし、「この一部は単に半完成品に化けた一次製品だ」と述べた。

中国のアルミとアルミ製品の純輸出量の推移（単位：千トン）
　中国のアルミ輸出全体に占める半完成品の割合を知ることは難しいが、シティグループのデータによると、昨年12月のアルミとアルミ製品の海外販売量は合計48万8000トンに上った。これは昨年1月の輸出量と比べると136％増だ。
　パテル氏は、ますます多くの中国のアルミ生産業者がアルミを半完成品へと加工できる施設を建設していると述べている。つまり、今年の中国のアルミ輸出が高止まりする可能性があることを意味している。
　昨年の中国のアルミ生産量は14％増加の2830万トンと過去最高記録を更新したが、年前半の価格急騰が増産につながったことも一因だ。
　中国からの輸出が増加しているためにより多くのアルミがアジアに向かい、アジア地域で買い手が期近物に支払うプレミアムの低下につながっている。
　金属・鉱業・肥料業界の調査会社CRUグループのアナリスト、ローラ・ページ氏によると、アジア市場の指標とみなされる日本のアルミ3カ月物のプレミアムは1トン当たり425ドル前後で推移しているが、欧州では同470ドル、米国では同522ドルになっている。
　シンガポールと韓国のプレミアムはそれぞれ同310ドル、同375ドルと一段と安い。
　中国の輸出は米国など生産不足の緩和につながるはずだ。また、中国国内の需要の伸びが一段と鈍化すれば、同国の絶え間なく続く増産による供給過剰は何年間も続く可能性がある。
　マッコーリー・グループは顧客向けリポートで、「これは価格に深刻な下押し圧力をかけるだけでなく、在庫が平常の水準に戻るまでに十年かかるかもしれない」との見方を示した。