01. 2015年1月07日 06:45:07
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「未来研究 世界はこうなる」 2015年海外リスク・「ゲームチェンジャー」になる中国、魅力をアピールすべき日本 2015年1月7日(水) 好川一 『2015 世界はこうなる The World in 2015』 2015年、世界はどうなるのか。日経BP社は英Economistから独占翻訳権を得て、『2015 世界はこうなる The World in2015』を発行しました。世界各国の政治、紛争、諸問題、産業を展望する記事を50本選んで翻訳しています。世界81カ国、14業種の2015年に関するデータ集を掲載。さらに日本のビジネスリーダーにとって重要と思われる12のテーマについて経営者やコンサルタントの方々に予測と対策を寄稿いただきました。その中からインターブリッジグループの好川一代表取締役社長による、グローバルリスクに関する寄稿を以下に掲載します。 2015年は中国共産党にとって終戦70周年にあたり、世界反ファシズム勝利および中国人民抗日勝利70周年という位置づけである。国内に諸問題を抱えながらも、対外的には強硬姿勢を継続していくと予想されている。
米国が世界の警察としてのポジションから離れつつあることを見据えれば、中国は国際社会において、世界のルールを作る側に立とうとするだろう。 とはいえ現在の中国には金と軍事力はあるものの、信用と物事の連続性はまだない。習近平主席の努力にもかかわらず根絶できぬ統治者の腐敗、何をしても金次第という拝金主義、「今だけよければいい」という利己主義が広がり、大気汚染をはじめとして国土の荒廃が進んでいる。 しかも今日のインターネットの世界では、以前のようにいろいろな問題に蓋をして隠し続けられるものではない。 さらなる大国を目指すが足下は危うい。権力保持のためにも、自分の都合の良いようにゲームのルールを変えていく。こうした悪しき「ゲームチェンジャー」に中国がなる可能性は低くないと考えておく必要がある。 2014年8月、日本の自動車部品メーカー10社は中国政府から突然、200億円超の制裁金を課せられた。理由は公正な競争環境の保持であるという。また、中国で活動する企業の内部にも火種がある。ある部門の社員全員が突然、集団脱走する事件は特別なことではない。事業運営に支障を来すだけではなく、ノウハウや機密の漏洩が発生する。 時を同じくして島野製作所が取引先であるアップルを特許権侵害で提訴した。アップルは両社で共同開発したピンを別のサプライヤーにも製造させ、価格交渉を有利に進めた疑いをもたれている。 このような国や企業、あるいは社員たちの独自の価値観や法解釈に基づいた、日本側からみると横暴にも思える行動は枚挙に暇がない。そして、それは中国に限ったことではない。 自国有利の自分勝手なルールを押し付けてくる大国や、自社有利の契約を押し付け、すきあらばノウハウや機密を奪おうと狙うグローバル企業は、国境の枠が低くなった今、日本や日本企業のすぐ近くにいる。 それでも世界と付き合い、世界でビジネスを広げていくために、自分の身は自分で守るしかない。高いリスク感度を持ち、かつ想定外の変化に対応できるリーダーが求められるわけだが、有効な打ち手を見いだせていない企業が多い。 依然として無防備な日本企業 そもそも日本の本社と海外にある現地法人を有機的に結合するオペレーションができている日本企業が少ないという現状がある。 その原因の一つは人事である。3〜5年おきにローテーションの一環として現地法人の幹部を機械的に入れ替える人事が、多くの企業で十年一日のごとく実施されている。現地で事業を始めて以来築いてきた人脈やノウハウを引き継いでいけず、世代ごとにブツ切りになっている企業が多々見受けられる。 戦後成功を収めてきたやり方で社員を教育し、これまでどおりのスペックのリーダーを育成しても、揺れ動く世界と時代にはもはや合っていない。知識と教養のバランスを欠いたリーダーが企業の上層部、そして現場の至るところに巣くっている現実がある。 図 日本企業のグローバル経営の課題と対策 人材の問題に加え、日本と海外の事業を統合的に捉えて事業リスクを最小化させる仕組みが整っていない。日本本社の機能を明確にし、より効率的に世界の情報を収集し、決断し、行動を起こせる管理体制を築く必要がある。情報収集については各々の企業が自分として信用できるソースを自力で見つけていくしかない。 自国を持ったグローバル企業 2015年は日本にとっても戦後70年目の節目であり、今後の生存と独立を問われ出そうとしている今、重要な年になる。米国だけを見ていればよかった時代は終わり、これからの方向性が問われてくる。方向性が曖昧なまま、日本企業が無防備に外に出て行くのは危険である。 国家には国境、主権、国民の義務といった枠があるがグローバリゼーションはそれらを曖昧にするという指摘がある。確かに国家を超えた活動をしているかのようなグローバル企業はある。その一方で米国や欧州諸国においては自国回帰の動きも顕著である。 グローバリゼーションと自国回帰という二つのうねりの中で日本企業は、訴訟を恐れず自社防衛の仕組みを確立するとともに、いわゆる伝統的価値観、つまり自国の歴史や特異性こそが価値であり、魅力だという認識を新たにすべきではないかと思う。 世界は日本が特異であるからこそ魅力を感じている。特異であるからこそ、日本製品を愛し日本人を信用する。 芯のある軸のしっかりした企業こそが世界で支持されていくと思われる。日本企業には、自社をとりまく混沌とした世界の中で、世界共通の価値観に配慮しつつ、自社の伝統的価値(日本的価値観)を保守する、難しい舵取りが求められる。 日本的な良いこだわりを保持しながら、臨機応変にたくましく世界を泳いでいける「自国を持ったグローバル企業」へのトランスフォーメーションが2015年のテーマだと考える。 (本記事は『2015 世界はこうなる The World in2015』に掲載された「2015年海外リスク・『ゲームチェンジャー』になる中国、魅力をアピールすべき日本」を転載したものです) 好川一 インターブリッジグループ代表取締役社長 米IT企業やコンサルティングファームにおいて米国や中国で活動。2007年、「境界に発生する種々の課題解決を目指す」コンサルティング会社としてインターブリッジグループを上海で創設。日本企業の中国拠点などに対し事業戦略の立案や情報システム導入を支援している。人財育成の一環として創設以来インターンシップを通じた現地学生の採用を続けている。 日経BP未来研究所 10年先の未来像を詳細に提示する『メガトレンド2015-2024』、技術予測にフォーカスした『テクノロジー・ロードマップ2015-2024』を中心に、未来を予測するレポートを発行。これまで1600社を超える企業に導入され、戦略ツールとして活用されている。10年〜15年先の未来像を提示するレポートを発行するほか、未来予測に関する調査、中期経営計画の策定支援も請け負う。未来像に基づくコンサルティングやリサーチを手がける。 このコラムについて 未来研究 世界はこうなる これから世界がどうなっていくか。もちろん誰にも分かりません。とはいえ、様々なデータと知見を使って、未来像を描き出すことは可能です。そうした未来像を参考にすれば、自分自身の戦略を立てやすくなります。未来を見通すレポート「メガトレンド」シリーズを発行する日経BP未来研究所の研究員や、提携先の外部機関にいる識者たちが、社会、産業、技術の未来像を提示していきます。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141224/275572/?ST=print
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