01. 2014年12月08日 06:58:02
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インドネシアは「中国の一人勝ち」に抵抗できるか 日本が中国主導のアジアインフラ投資銀行との差別化を図るには? 2014年12月08日(Mon) 大場 由幸 11月27日付けロイターによれば、25日、インドネシアのバンバン・ブロジョネゴロ財務相は中国主導のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)参加に関する覚書に署名した。ブロジョネゴロ財務相は声明で「インドネシアはAIIBの提案を高く評価し、準備作業に積極的に関わっている」と述べた。 すでに中国は関係21カ国と10月25日付けで『アジア・インフラ投資銀行創設準備に関する政府間枠組覚書』(MOU)を締結しているが、その中にインドネシアは入っておらず保留されていたものだ。 日本主導のアジア開発銀行に挑戦状? AIIBで中国が狙うもの AIIBの設立に必死になっているのは間違いなく中国だ。まず北京開催のAPEC首脳会議に向け10月25日にMOUに署名した国々は、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、中国、インド、カザフスタン、クウェート、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、オマーン、パキスタン、フィリピン、カタール、シンガポール、スリランカ、タイ、ウズベキスタン、ベトナムの21カ国である。 AIIB構想はインフラを整備していきたい新興諸国にとって資金調達面でメリットがある。そこからインフラ整備資金を低利で借りることができれば、既存の国際機関からの融資や市場からの調達以外に新たな資金調達チャネルを確保できることになる。 中国はAIIBを新たに設置することで自らの影響力を最大化し、日本主導のアジア開発銀行(ADB)と競うつもりであろう。 新興諸国への投資は中国の国益に適う上に、アジアにおける影響力の拡大も期待できる。また同地域のインフラ建設受注を中国企業に獲得させることも狙える。さらに、AIIBでは各国自国通貨建ての貿易・投融資や資金調達を推進することが想定されており、人民元はその中核となり得るだろう。 AIIB実現は、ウィンウィンの関係が構築できるかにかかっている。公正・公平な制度を構築し、透明性のある情報開示を行うことも重要だ。少なくともADB等、既存の国際金融機関との役割分担を明らかにし、それらと協調する姿勢が不可欠ではないだろうか。 しかし、AIIBは「中国の中国による中国のための国際金融機関」となるのではとの懸念は拭い切れない。中国が暴走すれば歯止めがきかないリスクも否定できないが、それでも、インドネシアを含め22カ国がすでに中国とのMOUに署名している。 インドネシア新政権の微妙な発言 インドネシア、ジョコ新大統領就任 スラム出身の改革派 大統領就任式を終えパレードするジョコ・ウィドド新大統領 ©AFP/Bay ISMOYO〔AFPBB News〕 インドネシアでは、ジョコ・ウィドド新大統領の下、10月27日に新大臣就任式が開催された。「仕事内閣」を標榜する新内閣は、同日、即座に各大臣が役所へ赴き局長以上とミーティングを行い、翌28日には各役所で大臣と職員との顔合わせが行われた。 これでいよいよ「仕事内閣」が船出するわけだが、新大統領の公約・基本方針のキーワードは、インフラ、社会福祉、マイクロ企業、海洋国家等である。 インドネシアは、そうした政治日程のために10月25日の時点では中国とのMOUに署名できなかったとされるが、MOUへの署名が遅れた理由はそれだけか。今後、本当にインドネシアも中国主導のAIIBに本格的に参加するのだろうか。 実は、11月25日にブロジョネゴロ財務相がAIIBへの参加についての覚書に署名した直後、アンディ・ウィジャヤント内閣官房長官は「覚書は最終的なものではなく財務省と外務省で検討中だ」と発言している。 そもそも新大統領の選挙公約には「インフラ/農業/中小企業開発銀行」設立構想があり、その背景にはインフラ等の開発は自前で行うべしという国のプライドがあるのかもしれない。 そして、元々この構想はブロジョネゴロ財務大臣が副大臣在任時に発案したアイディアなのだ。 インドネシア独自のインフラ開発に必要なもの 現時点で「インフラ/農業/中小企業開発銀行」設立構想については、その具体的な内容は全くの未知数だ。 インドネシアでは、1990年代末に起きたアジア通貨危機後の金融改革で、破綻寸前の国営銀行を経営統合により救済した苦い歴史があり、汚職の温床ともなりかねない国営銀行の運営が難しいことは多くの国民が身に染みて理解している。 しかし、「中国の一人勝ち」が予想されるAIIBに対峙し、今後、大国インドネシアには、必要とされるインフラ開発については自立的な体制の構築を図りつつ、中国だけに過度に依存しない形で推進していくことを期待したい。 インドネシアの今後の対応は、他のアセアン諸国などにも少なからず影響を与えるかもしれないからだ。 とは言え、中長期的な視点から見れば、インドネシアのインフラ等の開発には莫大な資金と技術が必要となり、自前で開発銀行を設立するにしても、やはり複数の国際機関からの資金援助や日本を含む友好国からの二国間協力が必要となろう。 そうした重層的な政府援助や民間投資資金が十分に得られなければ、先行き、大国インドネシアでも中国主導のAIIBに大きく依存するような状況に陥ってしまうかもしれない。 今後、日本がとるべき戦略としては、ADBを主導してAIIBとの役割分担・棲み分けを議論すると共に、インドネシア等新興諸国に対しては、各国インフラ等の開発の為の自立的なファイナンス体制構築・民間資金の導入等に関し、単なる資金だけではない日本の経験やノウハウの伝承もセットで応援するというアプローチが望ましいのではないだろうか。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42335 |