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《石平のChina Watch》金融不安、貸し渋り、ヤミ金融… 夜逃げドミノに見る中国経済の末日(ZAKZAK)
http://www.asyura2.com/14/china5/msg/210.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 12 月 01 日 12:18:15: igsppGRN/E9PQ
 

【石平のChina Watch】金融不安、貸し渋り、ヤミ金融… 夜逃げドミノに見る中国経済の末日
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141201/frn1412011140003-n1.htm
2014.12.01 夕刊フジ


 中国の新聞に今、頻繁に登場する新造語に「失聯」というのがある。「連絡を絶つ」という意味だが、多用されるのは企業経営者の場合である。

 倒産寸前の企業の経営者が突然連絡を絶って夜逃げする、それが失聯事件となって世間を騒がすのだ。もちろんその際、企業の借金や未払い賃金などが踏み倒されるのは普通である。

 たとえば最近、新聞に報じられた失聯事件を拾ってみよう。

 10月22日と24日、広東省にある2つの照明器具企業の経営者が相次いで失聯した。そのうちの1つの企業の場合、踏み倒された借金は7千万元(約13億4千万円)に上る。

 23日、陝西省の企業経営者が数億元の借金を踏み倒して失聯。25日、山東省でも企業経営者が従業員の未支払い給料45万元を踏み倒して失聯。

 11月5日、雲南省では、不動産開発会社の経営者が県の「重点開発プロジェクト」の工事の途中で失聯している。13日、中国中古車のトップブランドとされる「易車匯」の経営者が失聯、全国に点在する数多くの店舗が閉鎖された。

 同じ13日、河南省の物流大手「東捷物流」の経営者が失聯、同社に商品を供給している数百の企業は売掛金の回収ができなくなってしまった。

 そして14日、大連市で前代未聞の失聯事件が起きた。中之傑物流と邁田スーパーという2つの会社の経営者が同時に失聯したのだが、この2人は実は夫婦だったのである。

 このように多くの業界で、経営者たちによる夜逃げ事件が多発しているが、経済環境全体の悪化以外に、「高利貸」と呼ばれる闇金融の氾濫も、失聯事件を多発させた大きな原因である。

 金融不安が高まってきている中で、保身に走る国有銀行が民間中小企業への融資を渋った結果、多くの中小企業が生き延びるために闇金融に手を出すことになった。

 だが、借りた金の法外な高金利に耐えられなくなると、経営者たちは結局、元本を踏み倒して失聯を選んでしまうのである。

 このような現象が広がると、窮地に立たされるのは高利貸をやっている民間金融業者である。貸金が踏み倒された結果、破綻に追い込まれるのは彼らの方だ。そうすると今度は、民間金融業者の失聯も始まる。

 たとえば、四川省の成都市では10月20日、民間金融業者、創基財富会長の段家兵氏の失聯が発覚したが、それに先立って、9月4日には聯成●という民間金融の経営者が姿をくらまし、同12日には、内江聚●融資理財公司の経営者が飛び降り自殺した。

 そして10月初旬、地元民間金融大手の四川財富聯合が破綻して、経営者の袁清和氏は夜逃げ先で拘束された。9月からの一連の破綻・失聯事件で焦げ付きとなった融資総額は百億元にも上ったという。

 かくして今の中国では、多業界にわたる「失聯」が各地で広がり、そのドミノ現象で民間金融の破綻を誘発するという悪循環が始まっている。

 民間金融から大量の資金を調達しているのは不動産開発業者だから、現在進行中の不動産バブル崩壊はまた、悪循環に拍車をかけることとなろう。バブル崩壊後にやってくるのは金融の崩壊であるから、中国経済の末日が確実に近づいてきているのが分かる。

 習近平国家主席がアピールしてきた「大国中国」の経済という名の土台はすでに崩れかけている。

                   ◇

【プロフィル】石平

 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

●=晶の三つの日を金に


 

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コメント
 
01. 2014年12月01日 17:56:49 : s1AaoZsOya
「そして誰も居なくなった」、バレ元逃げ得の中国社会が良く分かる。
皆が逃げるのは逃げ切れる当てが有るからで、金さえ出せば逃げ切れる世界なんだろう。

02. 2014年12月01日 23:44:50 : wmsWNHMjXM
日本だって、標題にある「金融不安、貸し渋り、ヤミ金融… 夜逃げ」なんてザラにあるんでないの。資本主義(市場経済)で少し不景気になればどこにでも起こる現象。これを問題視するなら、資本主義などやめてしまえということになる。

03. 2014年12月02日 07:21:21 : jXbiWWJBCA

加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ
【第40回】 2014年12月2日 加藤嘉一 [国際コラムニスト]
台湾地方選で国民党惨敗
中国民主化と中台関係へどう影響するか
 先週末台湾で行われた統一地方選挙、及びそこから発生する政治情勢は、本連載のテーマである中国民主化問題を考察するうえでフォローアップしておかなければならない。本稿では、(1)選挙過程と結果をレビューし、(2)選挙過程・結果が中国との関係に及ぼす影響をプレビューし、(3)最後に選挙過程・結果が“中国民主化”にもたらすインプリケーションを3つの視角から考える。

地盤のなかの地盤を
失った国民党

 11月29日、土曜日。

 台湾22県市の首長や地方議員らを選ぶ統一地方選挙が投開票された。投票率は約68%。2016年の総統選挙の前哨戦と捉えられていた。

 結果は、首長ポストで国民党が15から6に減らし、民進党は6から13に増やした。肝心な6つの直轄市市長選挙では、国民党が台北市、桃園市、台中市でそれぞれ市長ポストを失った。これによって、民進党が4直轄市、国民党が1直轄市、無所属が1直轄市の市長を押さえるという地方政治構造へと変化した。

 特筆すべきはやはり台北市長選である。

 台北市は1998年以来16年間に渡って国民党が市長ポストを押さえてきた。国民党にとっては地盤のなかの地盤である。国民党が今回擁立した候補は与党・国民党の連戦・名誉主席の長男・連勝文氏。最大野党・民進党は台北市長候補の擁立を見送り、実質的に無所属で医師出身の新人・柯文哲氏を支持した。

 結果は、得票率57.1%:40.8%で柯氏が圧勝。連氏は惨敗だった。

 選挙前の世論調査などを見る限り、この結果自体は予想通りであった。特に、若年層の投票傾向は顕著で、20代の有権者の間では約80%が柯氏を支持していた。

 この原因・背景について、現在香港を拠点に雑誌の編集長を歴任し、中国の言論市場でも政治問題や中台関係に関する発信をしてきた台湾の政治評論家・張鉄志氏は3つの視点から分析を加えている(張鉄志:台北市長選挙是青年世代的選択、騰迅大家、2014年11月20日)。

(1) 連勝文の“富二代”と“官二代”(出身が裕福、かつ政治家二世/筆者注)のバックグラウンドは、台湾民主化における最大の欠陥の一つ“金権政治”を露呈している。台湾の選挙には莫大な資金がかかり、政治献金をめぐる良好な規範も欠けている。台湾社会は民主化後、かえって不平等になり、政治的不平等と経済的不平等が相互に悪化している。

 柯文哲も社会の不平等を解決する策を打ち出せなかったが、その選挙活動は庶民的で、台湾選挙史のなかでは稀なほどに大財団の影響を受けなかった。台湾の金権政治に対する抑制を示した。

 4月に台北で“太陽花学生運動”が発生した主な原因の一つは、台湾の金権民主によって生まれた民主空洞化と社会不平等である。台湾の若者世代の価値観には大きな変化が生まれており、連と柯は異なる価値観を代表している。

(2) 候補者間のディベートにおいて、連が“経済競争力”を繰り返し説き、自らの経済力と行政力を強調していたのに対し、柯は主に“開放政府、全民参与”を掲げていた。“太陽花学生運動”の社会的脈絡のひとつは、若者世代が“物質主義”から“ポスト物質主義”へとシフトしていることであり、経済成長よりも、環境保護や正義・公正、社会への参画といった分野に関心を示しつつある。

B 若者世代はますます国民党派か民進党派かというレッテルを放棄する政治的傾向を持つようになっている。もちろん彼らにも政治的立場はあるが、二項対立では理解できなくなっている。これはグローバルな趨勢でもある。多くの民主国家において、有権者の政党への傾斜と忠誠は低くなっている。

 張氏は、連氏は旧時代の、柯氏は新しい時代における若者の価値観に符合する候補者であったと比較している。

2016年総統選の結果は
中台関係にどう影響するか

 台湾新市長へ当選した直後、柯文哲氏は記者会見にて“6つの信じること”を発表している。

(1)政治を信じることは良心を取り戻すこと
(2)政府を開放し、全民の参加を促し、透明性のある政治理念を信じること
(3)人は夢を持つからこそ偉大であると信じること
(4)衆人の知恵は個人の知恵を超越すると信じること
(5)選択肢があるかぎり、プラスと進歩の方向性を堅持すべきだと信じること
(6)これらを信じることによって台北が変わることを信じること

 張氏が指摘しているように、社会の不平等や金権政治に不満を持った若者や一般大衆に好かれやすい、庶民的なアプローチをしているように見える。ポストモダンやシビルソサエティを意識した政治主張に聞こえる。選挙キャンペーンの過程で90%以上の時間とエネルギーをインターネット上に割いたという柯氏は、庶民出身の自分を政治の素人と呼び、「台北市政府に入ってからも庶民の声に耳を傾けたい」と述べている。

 今回の選挙結果は必然的に2016年初頭に開催される総統選挙に影響を与えるだろう。大敗した国民党の馬英九政権も人事や政策を含め、運営を余儀なくされる見込みだ。

 29日の夜、江宜樺・行政院長(首相に相当)はすでに辞意を表明しており、馬英九総統自身も国民党主席を辞任する方向で調整を進めている。国民党に比べて中国と距離を置く立場をとる民進党が2016年の総統選挙で勝利し、与党の座に返り咲いた場合、中台関係・交流はどのような展開を見せるのだろうか。

 2010年6月に馬英九総統が経済政策の目玉として掲げていた両岸経済協力枠組協定(Economic Cooperation Framework Agreement;ECFA)が中台間で締結されたが、国民党時代に締結された経済・貿易分野における政府間協定は、民進党が政権を獲った暁にどのように維持・実践されるのか。中台関係にとって、政府間交流の停滞や頓挫が経済・人文・観光といった民間交流に及ぼすインパクトは軽視できない。

自らが望まない結果だったから?
中国では控え目な報道に終始

 今回無所属派として出馬し、民進党の支持を受けた柯文哲氏は29日夜の記者会見で中台関係に関する質問を受けた際、以下のように答えている。

「私が台北市長になった後も、両岸の都市間協力はこれまでの頻度と深度で継続的に進めていく。より多くの市民が両岸都市交流から果実を得られるようにモデルを探索していく。私は過去に18回訪中している。19回目の訪中も不思議ではない」

 中国の習近平政権にしてみれば、今回の選挙結果は多少の誤差はあれ、ある程度予測できたはずだ。2016年に台湾で民進党政権が誕生することも睨んだうえで、今年6月中国側の台湾担当閣僚級高官として初めて訪台した張志軍国務院台湾事務弁公室主任は、民進党の政治家や関係者とも交流を進めている。張主任が台湾訪問期間中に会談した次期総統候補と目される2人――国民党の朱立倫・新北市長、民進党幹部の陳菊・高雄市長は今回の選挙でそれぞれ勝利を収めている。

 中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、台湾の統一地方選を受けて、「我々は今回の選挙結果を承知している。両岸の同胞が、両岸関係が収めてきた貴重な成果を正視し、両岸関係の平和と発展を共に守り、引き続き推し進めていくことを願っている」とだけコメントした。

 中国メディアも、対岸の選挙結果が自らの望んだものではなかったからか、違和感を覚えるほど控え目な報道ぶりで、基本的には“国民党惨敗”を伝えるに留まった。

水面下で展開が予想される
政治的バーター取引

 今回の選挙結果を受けて、2022年まで任期があるとされる習近平総書記は、対台湾関係の政策研究にこれまで以上に本腰を入れていくに違いない。

「2016年の総統選で国民党が負けたときに備えて」というような表面的な対策を越えて、台湾社会で日増しに増えている新しい価値観を持った若年層の生存状況・現状認識や経済活動への参加方法、それらの状況が台湾の経済社会・民主政治にどのような影響を与え、また対内・対外を含めてどのような政策インプリケーションをもたらすのか。こうした想定し得る問題とその背景・原因・構造を徹底的に分析していくだろう。

 そのうえで内政・外交双方から「台湾とどう付き合っていくべきか」、「自分の任期内にどこまでを動かし、どこから先は次のリーダーに委ねるべきなのか」といったテーマを研究していくだろう。

 元民進党中国事業部主任の顔建発氏は、北京政府の出方を以下のように分析する(顔建発:九合一選挙対台湾政局輿両岸関係的影響、両岸公評網、2014年12月1日)。

「北京は国民党の統一陣営・戦線が崩壊するのを食い止めつつ、同時に民進党が台湾独立に傾斜しないように防波堤を築こうとするだろう。北京は“底線”(ボトムライン)をより明確に主張するが、具体的な政策・対処療法はこれまでよりもプラグマティックに、友好的に台湾と接しようとするにちがいない。北京は民進党が再び与党になることを想定して事前に準備や対策を練り、リスクを最小限に抑えようとするだろう。たとえ民進党が与党になったとしても、既定のルールと雰囲気のなかで両岸関係をマネージできるように台湾側に働きかけるだろう」

 私も顔氏の分析に大方同意する。北京政府は独自の政治的バランス感覚を持って国民党、民進党双方と付き合いつつ、経済プレイヤーとしては台湾よりも巨大な自らが経済・貿易・サービスなどの協定分野で戦略的に譲歩をしていくと同時に、「武力による統一」や「台湾を解放する」といった文言を公式に使用しない代わりに、民進党サイドに「台湾独立」を封印させるような政治的バーター取引を水面下で展開していくだろう。

 中国側のボトムラインは台湾が独立を宣言しないことであり、経済関係や民間交流といった領域では中国側が譲歩していくことはやぶさかではない、というスタンスを堅持していくに違いない。

 経済力を背景に歩み寄り、政治的に譲歩を引き出す――。言い換えれば「物質面での提供は惜しまない代わりに、政治的なボトムラインは守るように」と相手プレイヤーに迫り、取り込む戦術は中国共産党の十八番である。中国国内の経済・知識エリート、香港・マカオ、台湾、東南アジア・アフリカ・ラテンアメリカの新興国・途上国、そして欧米や日本をはじめとした先進国などすべての対象が例外ではない。

 台湾側のボトムラインは何であろうか。言うまでもなく、自由民主主義という価値観に基づいた政治体制を堅持することを前提に、中国と付き合っていくことである。

 中国の経済がどれだけ壮大で威圧的だとしても、中国の市場がどれだけ広大で魅力的だとしても、中国の政治がどれだけ強大で戦略的だとしても、自らの奮闘を通じて実現してきた自由民主主義だけは手放してはならない。それが2300万の台湾人の総意であるに違いない。

 そして、私から見て、4月の“太陽花学生運動”でも明確に見られたが、「中国と付き合う過程で台湾の法治主義や民主主義が侵蝕されるのではないか」、「馬英九政権は中国との関係を重視するあまり、法治や民主といったルール・手続きを軽視しているのではないか」といった台湾の有権者たちの危機感が、今回の地方統一選における“国民党惨敗”という結果に色濃く反映されていた。

 私が日頃意見交換をさせていただいている台湾の20代、30代の知識人たちは、今回の選挙結果を受けて、「台湾は勝利した。民主主義は勝利した。選挙という民主政治によって台湾人が出した答えがこの結果だ」と主張していた。有権者であること、台湾人であることの誇りを掲げていた。“台湾独立”を煽動するのではなく、中台関係や両岸交流の安定と繁栄を唱え、対話を通じて相互理解を促進しようとしている人たちが、こう主張しているのだ。

選挙が“中国民主化”に与えうる
3つのインプリケーション

 最後に、今回の台湾統一地方選挙の過程と結果が“中国民主化”に与えうるインプリケーションを3つの視角から考えてみたい。

 まず、台湾の状況と香港の状況は根本的に異なるという点から議論を始めたい。

 香港市民が、2017年に開催予定の“普通選挙”において、自分たちの意思を反映する公正な民主選挙を獲得すべく北京にある中央政府、および中央政府の支配下にある香港政府と日々闘っているのに対し、独立した政治体制を持ち、民主主義システムが機能する台湾の市民が闘っている権力者は台湾政府である。

 香港の“普通選挙”がどれだけ公正な手続きになるかという問題は、本連載でも検証してきたように、“中国民主化”がどれだけ進展しうるのかを図るうえで直接的なインディケーターとなる。

 一方で、台湾ですでに実現されている民主選挙がどのように行われているかという問題と、“中国民主化”の間に直接的な相関性は見いだせない。

 台湾からすれば、中国が民主化することで、対岸との付き合い方が制度的かつ観念的、即ち根本的に変わってくるのは必至だが、中国にしてみれば、同じ中華系の台湾の民主化を受けて、「それは素晴らしい。自分も民主化できるように努力します」、あるいは「台湾の政治体制に学ばなければならない」という具合にはならないし、党・政府関係者から「台湾政治に学べ。同胞に学べ」といった掛け声は出てこない。私が知る限り、中国共産党が本気で参考にしている政治体制はシンガポールくらいである。

 台湾の民主主義に基づいた統一地方選挙と“中国民主化”は直接関係ない。これが1つ目のインプリケーションである。

 一方で、前述のとおり、台湾の統一地方選挙と中国というファクターの関係は大ありである。

「中国とこういう付き合い方をすべきではないか」、「中国と付き合う過程で法治や民主の仕組みを確実に重んじるべきではないか」といった市民としての欲求を、若者世代を中心に訴えている台湾人が、“中国との付き合い方”という文脈において法治・自由・民主主義といったルールや価値観を守るべく、市民社会の機能を駆使しつつ自らの政府を徹底監視し、自覚と誇りを持って奮闘するプロセスは、対岸の中国が民主化を追求していくうえでポジティブな意味合いを持つ。

 なぜなら、台湾が中国と付き合う過程で、政治体制やルール・価値観といった点で中国に取り込まれる、即ち、台湾が“中国化”していくことは、中国共産党の非民主主義的な政治体制が肥大化しながら自己正当化する事態をもたらし得るからだ。

 西側民主主義国家が中国の体制変遷に対して、いかなる希望的観測を抱くかはさて置き、中国自身が法による支配、民主的な政治、基本的人権、市民の自由を制度的に重んじる政治体制を追求していくことが、そこで暮らす人々の根本的利益、そして中国という文明の長期的利益に資するものと私は考える。

 台湾人が法治・自由・民主主義を守るべく奮闘するプロセスは“中国民主化”にとってポジティブな意味合いを持つ。これが2つ目のインプリケーションである。

 今回の地方統一選挙で国民党が惨敗したことで、今後台湾の政治・経済・社会・言論といった空間にはこれまで以上に対中関係を警戒したり、中国側の対台政策・政治体制・社会構造・経済モデルなどを批判したりという現象が増えるだろう。政府間交流や民間交流を進める過程で、中国・中国人に対する批判的・強硬的な声も高まるかもしれない。2016年初の総統選挙で民進党が勝利して与党に返り咲けば、なおさらその傾向と可能性は深まる。

 そんな中で注視すべきひとつの不確定要素が中国のナショナリズムである。台湾で対中批判的・警戒的な世論が高揚すれば、中国国内における対台湾・台湾人ナショナリズムも相応して高揚するだろう。大衆が感情的・強硬的になるなか、台湾の政治体制や経済モデル、社会構造を批判する世論は暴走するだろう。

 台湾人の能力や素養を蔑視する声が若者の間で広まるかもしれない。ちなみに、香港に対してはすでに起こっている。私のまわりでも「香港人は競争力に欠ける」、よって「香港は大陸からの労働者なしにはやっていけない」と傲慢に主張する若者が少なくない。

 中国人民の間で、台湾に対して狭隘かつ排他的に高まるナショナリズムは、結果的に中国自身の非民主的な政治体制や開発独裁型の経済モデルを正当化させる、言い換えれば、“中国民主化”を後退させ得る“魔力”を持ってしまうのだ。

 対台湾ナショナリズムの高揚は“中国民主化”にとってネガティブな意味合いを持つ。これが3つ目のインプリケーションである。
http://diamond.jp/articles/-/63015


04. 2014年12月02日 07:47:53 : jXbiWWJBCA

中国の物価が下がる時:デフレスパイラルの恐怖
2014年12月02日(Tue) Financial Times
(2014年12月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


浙江省義烏市の巨大卸売市場に並ぶ観光グッズの数々(写真:iamdanw)
 中国・浙江省の義烏(イーウー)市にある「中国小商品城」は、「ウォルマートを大きくしたやつ」と呼ばれることも多い、60万平方メートルの広さを誇る世界最大級の卸売市場だ。

 ここには雨具からボタン、世界各地の都市を称える冷蔵庫マグネットに至るさまざまな商品が大量に並んでおり、中東やロシア、アフリカなどから仲買人が品定めにやって来る。商品の多くは、この都市の郊外に点在する小さな工場で作られている。

 しかし、年末が近づく中、米国や英国、オーストラリア、日本などに輸出するプラスチック製クリスマスツリーを製造しているチャイナ・チョンシェン・クラフツ社のクオ・ウェイ工場長は対応に苦慮している。同社は一部の製品を、製造原価を下回る価格で販売しているそうだ。

 「売上高は持ちこたえているけれど、価格については、お客様から値引きを求められている。皆、景気が悪いんだと言っていますね」とクオ氏は言う。「弊社の商品の中には、もう利益が出ないものもあるが、顧客に喜んでもらえるように製造を続けている」

 クリスマスツリーの値段が下がることは、西側諸国の消費者には朗報に聞こえるかもしれない。しかし中国の物価の下落は、世界中に新たな脅威を突きつける。今日では多くの国々が、冴えない需要と心配になるほど低いインフレ率という問題を抱えているからだ。

過剰生産能力に苦しむ製造業、生産者価格はもう3年近くデフレ

 中国で大量に作られる製品が高度経済成長と投資によって吸収された10年間が終わった今、義烏市にあるような中国の工場の多くは、在庫をなかなかさばけずにいる。

 需要が中国内外で縮小し、多くの産業が慢性的な過剰生産能力に苦しんでいる。特に困っているのは鉄鋼やガラス、セメントといった基本的なコモディティー(商品)の業界であり、価格を下げ続けるしかないというケースが多い。

 その結果は中国の公式統計にも反映されている。統計によれば、いわゆる生産者物価はもう3年近くも明らかなデフレに陥っている。それ以上に心配なのは恐らく、10月の消費者物価上昇率が前年同月比1.6%というほぼ5年ぶりの低水準に落ち込んだことだろう。

 「皆、ユーロ圏が問題を抱えていると思っているだろうが、中国の問題の方がはるかに大きい」。フランスの大手金融機関ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、アルバート・エドワーズ氏はそう語る。

中国、成長率目標7.5%は達成可能か
多くのコンテナが積まれた中国山東省青島の港〔AFPBB News〕

 中国は世界最大の輸出国であり、中国を最大の貿易相手国とする国は数十カ国に上る。その中国の製造業者が売上高を伸ばそうと値下げをしていることから、影響は世界中の工場や小売店に及んでいる。

 多くの国々で――特に欧州と日本で――政策立案者が物価の下落を懸念していることを背景に、中国が自国のインフレ率を押し上げられるか否かはパズルの重要なピースになりつつある。

 スイスの大手金融機関UBSのエコノミックアドバイザー、ジョージ・マグナス氏が指摘するように、「中国以外の国は、中国のデフレ圧力など全く必要としていない」。

 隣国の日本を20年間も悩ましたり、欧州の政策論争で最大のテーマになったりしている類のしつこいデフレスパイラルに中国が突入する公算は小さい、という楽観的な見方もある。確かに、少なくとも今のところは経済成長率も年7%を超えており、世界の需要の重要なエンジンになっている。

 しかし、ディスインフレ懸念が強まる兆しになり得る動きが1つ見られる。中国人民銀行(中央銀行)が先月、2012年以降では初めての利下げに踏み切ったのだ。

 「今回の利下げは、昨今の中国のデフレ圧力が非常に強いものになり得ることを明確に示している」。BNPパリバ・インベストメント・パートナーズで中国株式部門のトップを務めるフランソワ・ペリン氏はこう述べている。

10年以上前から取り沙汰されてきた「中国デフレ輸出論」に現実味

 中国はもう10年以上前から、デフレを輸出していると批判されてきた。例えば2002年には、日本の財務省の幹部だった黒田東彦氏(現日銀総裁)が本紙(英フィナンシャル・タイムズ)にて、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟すれば世界経済に「強いデフレ圧力」が加わるだろうと警告していた。

 そのわずか1年後に、米連邦準備理事会(FRB)が「中国はデフレを輸出しているのか」と題したディスカッションペーパーを公表したが、中国経済はその規模が「小さい」ため影響を及ぼすには至らないと結論づけた。

 だが、それから10年が経過し、世界経済における中国の立場は、製品の供給者としても原材料の需要者としても大きく変わった。実際、中国経済の減速は、4年ぶりの安値水準を先週記録した石油をはじめとするコモディティーの価格下落の大きな要因になっている。

中国のディスインフレの背景にある同国特有の根深い問題

 エネルギー価格の下落は世界中のインフレ率を引き下げる方向に作用しているが、中国で今生じているディスインフレは、世界第2位の経済大国特有の根深い問題、すなわち慢性的な過剰生産能力、不十分な需要、そして経済成長の失速によるものだと見る向きが多い。

 これらはすべて、甘やかされた国有企業が生産能力の削減に消極的だったり、地方政府が簡単に借りられるからと借金を積み重ねたりしているトップダウンのシステムがもたらした副作用だ。

 この国には太陽光パネルから造船、鉄鋼、化学に至るさまざまな産業で過度な拡大を行ってきた長い歴史がある。

 これらのセクターに属する企業の多くは現在、延命措置を受けており、中国の巨大な「シャドーバンキング(影の銀行)」システムからの資金供給にますます依存するようになっている。政府保証付きだと(その正否はともかく)見なされている高利回りの「理財商品」を「非銀行金融機関」が販売するシステムだ。

 住宅市場の落ち込みでさえ、その原因は多くの都市で供給が過剰になっていることに求められる。

 中国の政府機関の研究者が先週、ムダな支出がどれほどの金額に達しているかを明らかにした。これによると、世界金融危機が中国に及ぼす影響を弱めるために2009年以降に行われた景気刺激策における「効果のない投資」――不要な製鋼所、ゴーストタウン、空っぽの競技場などの建設など――は計6兆8000億ドルに上るという。

 生産能力が過剰であるのは、地方政府に加わっていたプレッシャーによる面が大きい。地方政府幹部の成績は昔から、その地方の国内総生産(GDP)に基づいて評価されているため、赤字の工場でも生産を続けさせようという誘因が働くのだ。

金融システムのリスクも増大

 この過剰生産能力は、物価の下落が企業の収益を悪化させ、銀行システムにもストレスをもたらすという不幸な結果を招いている。

 銀行の融資基準をクリアできないために資金を借りられず、そのままでは倒産してしまう企業がある場合、地方政府幹部は銀行に圧力をかけ、融資基準を緩和させる。赤字の製造業者は債務をさらに膨らませるが、破綻を免れ、生産を継続する。すると、この生産が物価の下落圧力をさらに強めることになるのだ。

 中央政府は、地方政府幹部の成績を主にGDPで評価する制度をやめると約束した。だが、この方針転換が地方政府の隅々に浸透するには、恐らく何年もかかるだろう。

 デフレは金融システムのリスクを高める要因にもなっている。供給過剰のセクターに身を置く企業(特に民間企業)は、銀行融資を絶たれるとシャドーバンキングシステムから恐ろしく高い金利で資金を借りる。出荷価格の下落はこの債務負担をさらに大きなものとし、デフォルト(債務不履行)のリスクをさらに高めてしまうわけだ。

全世界に波及する中国の価格下落の影響

 過剰生産能力は、単なる地方の問題ではない。中国製品の価格下落の影響は、全世界の生産コストに波及する。金融危機の前には、この価格下落が西側の消費ブームを後押ししていた。しかし今日の供給過剰は、先進国の物価下落という問題を悪化させる恐れをはらんでいる。

 コーネル大学のエスワー・プラサド教授(経済学)は言う。「中国のディスインフレと鈍い需要の伸びは、この2つの問題が中国以上に深刻な他の国々に負の波及効果を与える恐れがある」

 デフレは経済に二重の打撃を与える。1つには、デフレは実質ベースの債務負担を膨らませる。スタンダード・チャータードの試算では対GDP債務比率が250%を超えている中国には、とても受け入れる余裕のないことだ。

 物価の下落は消費の妨げにもなる。消費者が価格が一段と下がることを見込み、購入を遅らせるからだ。だが、信用を燃料とした投資から消費者主導型の成長へと経済を移行させようとしている中国は、市民に買い物をしてもらう必要がある。

 支出拡大計画については、少なくとも全面的なデフレの見通しが今より深刻なリスクになるまでは、中国の政策立案者にできることはごくわずかしかない。

 HSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレッド・ニューマン氏は「コモディティー価格の下落は、世界の需要を牽引する消費国に恩恵を与える」と言う。

中国政府の選択肢

中国人民銀行、貸出・預金金利0.25%引き上げ
11月21日に予想外の利下げに踏み切った中国人民銀行〔AFPBB News〕

 物価がじりじり下がり続けた場合、中国政府には需要を創出するための選択肢がいくつかある。

 だが、日本と欧州の中央銀行が思い知らされたように、長年の過剰な信用拡大に対処している時には、金融政策でインフレを喚起するのは至難の業だ。

 多くのアナリストは、さらなる利下げと、一部産業に的を絞った緩和措置を予想している。これは消費支出を下支えし、企業の債務負担を軽減することができるだろう。

 だが、経済全般に対する利下げの影響については疑問がある。借り入れコストの低下は主に国が支援する巨大企業に恩恵を与え、たとえ経済的に存続能力がなくても、これらの企業が存続できるようにする。

 また、利下げは現状が保たれることを示唆する可能性もあり、これが「新政権が再び成長を刺激するために信用緩和を利用するという印象を市場に与えるかもしれない」とバンクオブアメリカ・メリルリンチの中国担当チーフエコノミスト、ルー・ティン氏は指摘する。

 習近平国家主席と李克強首相の指揮下で、中国は本物の市場原理の導入を目指す包括的な改革に向けた道筋を示した。だが、これまでのところ成果はほとんど上がっていない。

 「政策に携わる人々の大多数はまだ、改革について肯定的に話していると思う」。ドイツ銀行のエコノミスト、ツァン・ツィーウェイ氏はこう言う。「問題は、タイミングと実行する方法だ」

 それまでは、中国の経済モデルは信頼されている成長の原動力に依存し続ける。すなわち、信用を燃料とした投資と輸出だ。だが、どちらにも重圧がかかっている。金融危機以来、近年の信用拡大は爆発的だったうえ、世界経済の鈍い成長は、輸出のエンジンが失速し、価格を押し下げていることを意味している。

通貨切り下げという破壊的な選択肢

人民元、対ドル基準値6.7896元に 最高値更新
中国が人民元切り下げに動いたら・・・〔AFPBB News〕

 懸念されているのは、中国が国内のインフレを煽るために通貨切り下げという破壊的な選択肢を選ぶことを決断することだ。

 人民元の価値が大幅に下落したら、輸出が増加し、過剰生産能力を使い切る助けになる。また、弱いコモディティー価格の重荷を相殺することにもなる。

 だが、輸入物価の上昇は中国の消費者にとって悪い知らせであり、製造業者にとっても投入原価の上昇は痛い。

 アナリストらは、通貨切り下げの可能性はまだ小さいが、徐々に高まっていると話している。

 「可能性が高いとは思わないが、中国の統計が弱くなるにつれ、政策立案者に通貨切り下げという楽な選択肢を取るよう求める圧力が強まっていく」とニューマン氏は言う。「中国が為替レートを切り下げることにした場合、それはゲームチェンジャーになるだろう」

円安が通貨戦争に火をつける恐れ

 そのような動きは、諸外国、特に欧州と日本のデフレと戦う努力に悲惨な影響を及ぼすかもしれない。中国は対EU輸出で世界最大の輸出国であり、これは中国製品の価格が大幅に下がったら、すでに非常に低いユーロ圏のインフレ傾向に新たな下落圧力を加えることを意味する。

復興支援で低利融資、被災地の金融機関に 日銀
10月末に量的緩和拡大に踏み切った日銀〔AFPBB News〕

 だが、日銀の量的緩和プログラムの積極的な拡大は、リスクを一段と高めた。円は人民元に対して最安値を更新する一方、韓国は日本円を注視していることを市場に通告した。

 もし日銀が地域的な通貨戦争に火をつければ、中国は中立ではいられないかもしれない。

 「中国がやっているように信用バブルを潰そうとしているのであれば、絶対に避けたいことは為替レートの急上昇だ」とソシエテ・ジェネラルのエドワーズ氏は言う。「経済的には、中国には多くの選択肢がない。これはとにかく1つの必然性であり、日本が最後の決定的な一撃になる」

By Josh Noble and Gabriel Wildau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42352

 


05. 2014年12月02日 20:14:07 : jXbiWWJBCA

2014年12月02日(火) 真壁 昭夫
中国の金融緩和は何をもたらすか

中国人民銀行も予想外の利下げを発表 photo Getty Images
11月21日、中国の中央銀行である人民銀行は、予想外の利下げを発表した。今後の景気次第では、追加的な緩和措置が図られる可能性もあるという。世界的にディスインフレ懸念が高まる中、中国の政策当局も金融緩和に舵を切ったことになる。

すでに、わが国やEUなど主要国の金融政策は、緩和気味に運営されている。ところが、期待した通りには物価は上がらない。その背景として、新興国の成長が安定に向かい世界の需要が縮小している事が指摘できる。そうした状況下、各国の中銀は景気の下支えのため、当面、金融緩和策を継続せざるを得ない。

無視できない原油価格の低下
需要低迷の動きを如実に示すのが原油価格の低迷だ。一般的に、原油等の商品価格はドルで表示される。そのため、ドルが下落すると原油価格は上昇しやすい。足元のドル高はドルの購買力の上昇を受けた、モノ(原油等)の価格の下落だと考えればよい。

通常、モノの価格が低下すれば、消費者はより低いコストで資源を手に入れることができる。本来であれば、もう少しモノが売れるようになってもよいかもしれない。然し、足許ではモノの価格低下が需要の回復につながっていない。その問題を解消すべく、中銀は経済に流通するお金の量を増やすことで需要を刺激しようとしている。

では金融緩和は需要回復に直結するのか。わが国の経験から言えば、答えはノーだ。この事実を踏まえると、OPECの減産見送りは、更なる需要低迷を想定したものと考えられる。新興国の成長ペースが調整されるまでには、まだ時間がかかるだろう。

新興国通貨の上昇期待は抱きづらい
ECBのドラギ総裁は構造改革の必要性を強調している。これは、金融政策だけで需要を拡大させることが困難だというメッセージに他ならない。新興国についても同様のことが言える。課題は投資に依存した成長の裏で蓄積されてきた債務の処理だ。

中国のシャドーバンキングに留まらず、東南アジア諸国の家計債務の水準など、過去の低金利環境は債務の膨張と維持を支えてきた。そして、インフレ抑制を強調してきたインドでさえ利下げ観測が出始めている。新興国の金融政策の潮流は徐々に変化しつつあるようだ。

利下げは短期的な景気回復への期待を高めるだろう。ただ、それは債務問題の放置にもつながる。新興国の需要が成長の安定化だけでなく、債務処理という重石によって低迷する展開も否定できない。

2015年、米国の金融政策は引き締められる可能性がある。OPECの減産見送りが個人消費を支えるとの見方もあるが、低金利環境で蓄積された債務のコストは米国の金利動向から大きく影響されやすい。

新興国の課題は債務の解消に尽きる。成長の安定化は、家計や企業のバランスシート調整圧力を高めるだろう。米国の金融引き締めを控える中、利回り格差を狙って蓄積されてきた新興国通貨のポジションに対する解消圧力も進みやすい。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41262


 

スパークス阿部氏:対話型ファンド時代到来、企業で資本革命

  12月2日(ブルームバーグ):スパークス・グループ の阿部修平社長は、経営者との対話を通じた投資を行うエンゲージメントファンドを運用する環境が日本でも整ったとみている。アベノミクスによるデフレ脱却の動きに加え、企業の間で資本効率の改善に向け革命的な変化が起こりつつあるためだ。
阿部氏は11月28日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、スチュワードシップコードによる対話を軸に企業の価値を顕在化させる戦略は時間がかかるため、デフレの悪影響で株安局面が長期化すると、効果を発揮しにくいと指摘。しかし、アベノミクスの登場で「デフレのスーパーサイクルは終えんし、正常なインフレの環境に変わっていくと強く確信した」と言う。
日本の慢性的な株主資本利益率(ROE)の低さにつながっていた企業の低利益率も、「根底にあるのはデフレ」と阿部氏。これも、ROEを重視する姿勢を安倍晋三首相が打ち出し、経営者の間で資本効率に関する考えが大きく変わり始めた。
同氏によると、国内でROEを主要な指標として理解していた企業は「大企業の一部にとどまっていた」が、アベノミクスをきっかけに企業が価値を生むことこそが経済の根本にあるとの認識が浸透、その成果を測る手段が株価、株価をチェックするのが投資家の役割となった。「資本の生産性の革命が起こった。血を流さずに江戸幕府が革命政府に権力を渡したように、江戸城が開城された時代感覚をもってこの何年かを見ていかなければならない」と話す。
阿部氏は、現在8.6%にとどまる上場企業のROEが「2016年度までの間に10%に達するだろう」と予想。その上で、国際的に比較できる「12%はリアルチャレンジで試金石になる。本当にプロフィットマージンを改善しなければならない」と指摘した。
初の個人向け商品、企業へのリスペクト重要
安倍政権が12年12月に誕生以来、日本銀行の量的・質的緩和策の導入とコーポレートガバナンス(企業統治)改革を盛り込む政府の成長戦略、スチュワードシップコード策定などを経て、11月までにTOPIX は66%上昇。12年12月に前年比マイナス0.2%の生鮮食品を除く全国コア消費者物価指数 (CPI)は、10月にプラス2.9%となった。
スパークスでは2日、個人向けの対話型ファンドで国内初となる公募投資信託「日本株式スチュワードシップ・ファンド 」の運用を開始。同ファンドの源流となった私募投信はことし3月末から運用し、同社によると10月末時点のパフォーマンスはプラス23%、配当金込みのTOPIXはプラス12%だった。運用資産が約40億円の私募投信では保有を5銘柄に限定しているが、集中投資などで制限がある今回の公募投信では20−30銘柄を組み入れる。
阿部氏は、「問題を明確にしてそれを伝え、リスペクトを払い、持続可能に企業価値を上げていく」と投資企業に対するアプローチ姿勢を説明。株主が資本主義の原理原則を主張し、過去に蓄積した現金や土地を全て吐き出せというような「アウトロー的なやり方では対話によるストラテジーが市民権を得ない。日本企業を根本的に変えていくことにはならない」との考えだ。
目標達成には株主だけでなく、ユーザーや従業員など全てのステークホルダーが一定以上に満足している状況が必要な半面、「株主と経営者はフレンドではない」ため、「対話が成り立たないときは公に訴えて一定のプレッシャーをかける」と緊張感の必要性も指摘した。
スパークスによると、「日本株式スチュワードシップ・ファンド」の新規設定額は8億3300万円。株価と潜在的な企業価値との乖離(かいり)が大きく、目的を持った対話でそのギャップが解消される可能性の高い銘柄に選別投資する。経営者の決断から結果が出るまでの時間軸を踏まえ、当初2年間は解約できないクローズド期間としている。
阿部氏は、個人投資家にとって対話型ファンドはまだ興味がある程度の段階で、「社会的に意義があることに参加している満足感と投資収益という2つを満たさないと大きな流れにならない」と分析。同ファンドの実績を通じ、「運用会社として実際にアプローチが有効であることを示す」と意欲を語った。同社の運用資産残高は、10月末時点で国内外合わせて7911億円。
(更新前の記事は、引用の間違いを訂正済みです)
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 長谷川敏郎 thasegawa6@bloomberg.net;東京 Tom Redmond tredmond3@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 院去信太郎
更新日時: 2014/12/02 12:33 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFQR216K50XU01.html


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