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「安倍氏と習氏の首脳会談」(RFI・DW English)
http://www.asyura2.com/14/china5/msg/175.html
投稿者 無段活用 日時 2014 年 11 月 17 日 13:23:27: 2iUYbJALJ4TtU
 

(Vers un réchauffement sino-japonais en marge de l’Apec à Pékin: RFI)
http://www.rfi.fr/asie-pacifique/20141107-vers-rechauffement-sino-japonais-marge-apec-pekin/


中国日本


発表 2014年11月7日・更新 2014年11月8日19:06


北京のAPECに合わせて中日関係回復へ


記者 ステファン・ラガルド


係争中の3島、上から順に魚釣島・北小島・南小島。これらは日本では尖閣諸島、中国では釣魚列島と呼ばれている。
REUTERS/Kyodo



北京のAPECサミットが中日両国にとって関係回復の機会となりそうだ。この北東アジアの2大国は2012年以降、領土と水域の主権争いのために関係が極めて複雑化している。安倍晋三・日本首相はこの地域サミットを利用して、政権復帰以来初めて習近平・中国主席と会えるかも知れない。サミット開催を2日後に控えたこの土曜日、両国のトップ外交官が北京で会談した。


北京で来週開かれるその経済協力フォーラムに合わせて安倍晋三氏と習近平氏が会談するものと、日本のメディアは誰も信じて疑わない。NHKテレビによれば、「具体的な準備」は始まっている。ジャパンタイムズによれば、この情報はある与党代議士によって確認された。それまで中国はこの会談に反対していたのに、何が中国の考えを変えさせたのか?


異なる見解

おそらくその日のうちに日本政府が作成したこの声明により、前提条件がクリアされたと中国は見なした。続いて、中国の楊潔篪(Yang Jiechi)国務委員と日本の谷内正太郎・安全保障担当顧問が会談し、両国が主権を主張している釣魚/尖閣諸島についてなど、両国が「近年の緊張状態について異なる見解」を持っていることを日本政府が初めて認めた。日本と中国はこうした相違を確認し、危機管理メカニズムの実施を決めたと、日本側外交官はさらに付け加えた。同じことについて、中国の日刊紙・環球時報から「4点の合意」に言及があった。


釣魚/尖閣列島

東シナ海に浮かぶこと小さな島々をめぐる紛争のために中日関係が悪化して、もう2年が経った。この島々が日本に属すると考えている日本政府は、現在まで、この領土の帰属をめぐって紛争の存在があり得るという考えをずっと認めてこなかった。今回の声明は表現が依然として曖昧で、何をめぐる紛争かに直接言及していないが、それでも声明が出されたことで中国側の外交官は1つの区切りをつけることにした。その代わり、中国の2番目の要求が受け入れられたのは間違いない。中国は日本首相に、論争の神社・靖国にはもう訪問しないと約束すると明言するよう求めていた。これについて安倍晋三氏は中国外交の流儀で応じた。それは内政の問題だと。



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(La Chine et le Japon renouent des relations au sommet de l'Apec à Pékin: RFI)
http://www.rfi.fr/asie-pacifique/20141110-chine-japon-renouent-relations-diplomatiques-sommet-apec-pekin/


中国日本


発表 2014年11月10日・更新 2014年11月10日10:57



中日両国は北京のAPECサミットで関係を結び直す


記者 RFI


APECサミットでの習近平・中国主席(右)と安倍晋三・日本首相。2014年11月10日、北京にて。
Kim Kyung-Hoon


北京で月曜日午前、習近平・中国主席と安倍晋三・日本首相の象徴的な会談が行われ、APECサミットが明るい調子で始まった。係争中の尖閣−釣魚諸島周辺の東シナ海での2年間の紛争を経て、アジア太平洋の21人の指導者による会合に合わせて、両大国は歩み寄った。


報告 RFI北京特約記者、ヘイケ・シュミット

両指導者は氷を割るのに成功した。習近平・中国主席は、人民大会堂で日本首相と30分間会談することをようやく受け入れた。これは両隣国の和解の始まりなのか?それを語るには早すぎる。いずれにせよ、「共通の戦略的利益に基づく互恵関係の回復」の表れとなる対話の再開を、日本首相は希望していた。安倍晋三氏は、海上のトラブルを回避するための海上連絡メカニズムを提案し、あわせて、両国海事当局が具体的に協力して働くことを望むとの考えを示した。

この世界第2・第3の経済大国を隔てるもめ事は、東シナ海の紛争だけではない。そのリストは長い。日本には平和憲法改正の決定がある。また、中国の側では、中国政府は相変わらず第2次世界大戦中の中国占領に時に行われた殺戮行為に対する謝罪を待っている。戦争犯罪人が祀られている靖国神社に、日本の国会議員や閣僚が繰り返し参拝していることは、両当事者の関係に火に油を注ぐことにしかならない。



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(Abe-Xi talks raise hopes of improved relations)
http://www.dw.de/abe-xi-talks-raise-hopes-of-improved-relations/a-18051179


2国間関係


安倍・習会談は関係改善に希望をもたらす


安倍晋三・日本首相と習近平・中国主席の対話では、両国が領土と歴史をめぐる紛争のために悪化した関係の改善に取り組むよう提案があった。しかし、残されたハードルは多いとアナリストたちは警告する。




11月10日月曜日、各国首脳による諸会議に合わせて開かれた、安倍晋三・日本首相と習近平・中国主席の25分間の対話は比較的短く率直なものだった。象徴的ではあるが、非常に意義深いものだ。

この東アジアの2大国の競合関係は数十年の間一触即発の状態にあったが、2010年にある中国漁民が尖閣諸島付近の水域で操業したために日本の海上保安庁に逮捕されて以来、係争中の領土と共有する歴史の解釈をめぐって両国は険悪な関係となった。

東シナ海にあるこの無人の島々は日本の統治下にあるが中国も主権を主張している。中国ではこの島々は釣魚の名で知られている。


中国はこの5島の主権を主張しており、釣魚列島として認識している


この逮捕が引き金となり中国駐在日本企業に対する激しい攻撃が発生し、両国の関係は下方スパイラルに陥った−安倍氏や安倍内閣の一部の閣僚が東京の靖国神社に参拝したために、これに歯止めがかかることはなかった。靖国は日本の戦死者にとって最後の休息地だが、14人のA級戦犯も祀られている。

北京でのアジア太平洋経済協力フォーラム加盟国首脳会議に先立ち、双方に、焼け落ちたように見える橋を少なくともかけ直す工程を始める動きがあった。


問題を背後に

「こうした問題のすべてを背後に押しやるという意味で、この会談は意義深いものだ」と、明治大学国際総合研究所客員研究員の奥村準氏はDWに語った。

「安倍氏はそのように言わなかったかも知れないが、安倍氏が再び靖国に行くことはないと習氏はいまや確信している。2人はこの暗黙の合意に達したのだ」と彼は語った。「同様に、中国の調査船が尖閣周辺の日本領海内に入り込むことも予想されるが、事実としては、事態の激化による偶発的衝突を回避するためのホットライン開設が重要だと、2人は合意している。」

そのため、日中関係の進展につれた変化はあまりないものの、2人が会談したという事実が意義深いのだと、奥村氏は付け加えた。「両国の間に現存する緊張を増大させることは何も起きて欲しくないと両氏は考えてきたが、その考えが合意を見るだろう。そして、今やその合意に基づいて、日本企業の対中投資や日本人観光客の中国旅行などの課題に取り組む政治的環境が整っている。」

数百隻の中国漁船が東京の南にある小笠原諸島に近い日本領海内で希少で高価な赤珊瑚を密漁している現実を考えたとき、事故や誤判断による紛争拡大の可能性を回避するメカニズムは特に重要だと、アナリストたちは語る。


2010年に類似

この事態が2010年に起きた尖閣沖の出来事と類似していることは明らかであり、日本の海上保安庁を巻き込む事件が発生して中国船に損失が出て−あるいは、船員から死亡者が出て−、中国で再び反日感情が爆発する可能性がある。

また、国の安全保障の要素が存在しており、日本領海内で民間漁船が不法操業に従事していると見せかけている。

「中国は漁船とその乗組員にその役目を負わせることで知られており、小笠原諸島周辺で珊瑚を密漁している漁船は中国軍に渡せるような有用な情報も収集しているようだ」と、奥村氏は語った。

「それは、特定の状況に対して日本側がどのような形で反応し、どれだけの速さで対応するか、といったことだろう」と、彼は付け加えた。「それはほとんど尖閣[侵攻]の最終リハーサルのようなものだ。」

しかし、日中関係を長年見てきたウオッチャーたちには、月曜日の両首脳の会談をもっと否定的に見ている人たちもいる。

「25分間といっても通訳に約半分の時間を取られるのなら、会談の結果に進歩は全くないと私は見ている」と、テンプル大学日本校現代アジア研究所長のロバート・デュジャリック氏は語った。


習・中国主席はAPECサミットに先立ち、「アジア太平洋の夢」を高々と掲げた


「譲歩なし」

「共同声明に多くは述べられていない。つまり、双方とも譲歩しなかったのだ。中国の態度に変化はないだろうし、安倍氏も尖閣について交渉する気はないだろう。それで、新しいことが何かあるのか?」と、デュジャリック氏は疑問を呈した。

「会談はただの儀礼だ」と、彼は付け加えた。「安倍氏はAPEC会議に招かれて北京に来ているのだから、中国が彼を招かないというのは不可能だ。だから、習氏もホストとして安倍氏と握手しないわけにはいかない。」

しかし、どうすれば中日両国が友好関係を再び見い出せるようになれるかを考えるなら、アナリストたちは日本領海内で操業している中国密猟者たちの活動をもっと具に見るべきだと、奥村氏は語った。彼らは、中国の真意を測るリトマステストだというようなことを、彼は述べた。

「それらの船は複数の小さな港から来ており、中国諸当局が操業を止めさせたいと考えた場合に、ストップをかけるのが不可能だとは考え難い」と、彼は語った。「どう少なく見ても、漁船が停止命令と続行命令を受けた場合、中国政府にとって難しい問題となるように見える。」



発表 2014年11月10日
記者 Julian Ryall, Tokyo
関連するテーマアジア太平洋経済協力(APEC)アジア
キーワード アジア中国日本安倍




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(投稿者より)

RFIサイトとドイチェヴェレの英語サイトに掲載された記事です。日本語がこなれていない箇所や誤訳がいくつかあるかも知れません。ご容赦下さい。

両氏の会談の概要について、日本の外務省在日中国大使館による記事をそれぞれリンクしておきます。


「どう少なく見ても、漁船が停止命令と続行命令を受けた場合、中国政府にとって難しい問題となるように見える。」 "At the very least, it would be seen as a challenge to the Chinese government if they were told to stop and kept coming." としか書かれておらず、実は訳にも自信がないのですが、2つの場合が考えられるのだと思います。1つは日本が停止命令を出し中国が続行命令を出した場合、もう1つは中国国内の異なる勢力が停止命令と続行命令をそれぞれ出した場合。意味合いは違ってきますが、いずれも確かに中国に難題が降りかかります。


 

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コメント
 
01. 中川隆 2014年11月17日 14:23:47 : 3bF/xW6Ehzs4I : b5JdkWvGxs
日本と中国の間にある尖閣列島は歴史的にも、支那地方の政府が支配したことがなく、日本の明治政府が歴史的に初めて領土宣言をしているから、領土問題は存在しない。


「領土」というのもが、「どの政府も領土していない」ところを、どこかの政府が領土宣言して、それが10年もどこからも異論が出なければ確定する.

その後、100年ぐらいして文句をつけたら、戦争の火種を作るだけで意味がない.もしそれができれば、日本は「今の中国は全部、日本の領土だ」と言っても良い.
http://takedanet.com/2010/09/post_6962.html

そんなことを認めたら、国際的に決められている領土は、またかつての帝国主義時代のように「力のある国がかってに人の領土をとる」ということになって問題がある。


02. 中川隆 2014年11月17日 14:31:24 : 3bF/xW6Ehzs4I : b5JdkWvGxs

小沢一郎の沖縄別荘は辺野古の滑走路の延長線上にあり、その家は、将来、周近平に使用させるという密約がある。

:習近平が沖縄に家を?

エーッ本当?小沢さん!
http://linkis.com/youtu.be/QP4AW


琉球新報によると、鳩山氏自らが理事長を務める「東アジア共同体研究所」は14年4月に沖縄事務所を開設する。

小沢・鳩山は中国人移民支援の為に全力投球する気だね

沖縄は人口が少ないから一番乗っ取り易いんだ。

問題は仕事が無いことだが、小沢・鳩山は子供手当てを移民にもやって、中国人が生活に困らない様にしようとしたんだな

クリミアと同じ手口さ

沖縄に多数の中国人が移民して参政権をもって独立宣言する

・その為に小沢・鳩山は必死になって外国人参政権を通そうとした

・小沢が何故沖縄に巨大な邸宅を建てたのか、もう明らかだね。


小沢の様な中国の手先の売国奴を放置しておいたからこういう問題が起きたんだな。


03. 2014年11月17日 17:33:35 : yXuA12Z4MU
目と眼を合わせろよ。眼を反らして焦らす様子はまるでオカマが気を引く仕草で
気色悪い。60過ぎた中国の主席とは思えない。

04. 2014年11月18日 06:37:17 : jXbiWWJBCA
 


今週のキーワード 真壁昭夫
【第354回】 2014年11月18日 真壁昭夫 [信州大学教授]
日中首脳会談での習近平の態度に目くじらを立てるな
アジアのパワーバランス変化を見据えた“大人の対応”
APECで見えた日中の新たな動き
習近平のふてぶてしい表情の裏側

 北京でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開催された。日米中などの首脳が一堂に会し、それぞれの外交を展開した。一方、わが国では来年10月の消費税率再引き上げを巡って、衆院解散、総選挙の実施が現実味を帯びている。このところ、国内外の政治の動きが早くなっている。

 特に中国がホスト国となったAPEC会議の展開は、私のような政治の門外漢にとっても興味深いものであった。今回の会議の報道を通じて何よりも印象に残ったのは、中国の指導者である習金平国家主席のの自信に満ちた態度だ。知り合いの政治専門家の中には、同氏の立ち居振る舞いを“ふてぶてしい”と表現する人もいた。

 習金平が世界第2位の経済大国の最高指導者として、確固たる政権基盤を築きつつあることを考えると、そうしたスタンスはそれなりに理解できる。

 しかし、中国経済はすでに曲がり角を通過しており、これからは以前のような高成長を達成することは難しいと予想される。また、中国国内では民主化の遅れから国民に不満が蓄積しつつあることや、大規模な不動産バブルの処理、一人っ子政策に伴う人口構成の歪みなど、多くの問題が存在している。

 それらの要素を考えると、中国のモメンタム(勢い)はどこかで低下するだろう。それに伴い、いずれ軍事費の拡大に歯止めをかけざるを得なくなるはずだ。そうなると、中国は現在のような“力の論理”を振りかざすことが難しくなると見られる。

 それにもかかわらず、習主席の表情からは尊大とも言える自身が見て取れる。そのギャップに違和感を持つ人は、少なくないだろう。

 それに加えて、米国の中間選挙で民主党が大敗したことで、今まで“弱腰”と評されてきたオバマ外交は少しずつ変化することも考えられる。中国は、それをどのように収束するつもりなのだろう。

中国の発言力台頭と
米国のプレゼンス後退

 今回のAPEC会議で最も鮮明だったのは、習近平の自身に満ち溢れた表情と、オバマ大統領の大人しそうな振る舞いとの好対照ぶりだった。両国は、偶発的な軍事衝突回避のためのルール、投資協定交渉の促進や温暖化ガス排出量削減目標の設定などで合意した。

 しかし米国が、TPPについて中国を阻害する目的でないことを説明したのに対し、中国側は自国主導で創設する「アジアインフラ投資銀行」や「シルクロード基金」への参加を米国に求めた。

 中国のそうした態度は、いかにも米国に対して“上から目線”を強調しているように見える。友人の政治専門家は、「選挙で大負けし、しかも残り任期が2年というオバマ大統領を上手く使っているようだ」と指摘していた。

 中国は多くの人口を抱え、しかも高成長を続けてきた。米国のみならず世界の主要先進国から見ると、中国は間違いなく重要な需要地である。それを考えると、主要先進国としても、中国に対して強い態度を示すことは難しいのだろうが、米国の国際社会での発言力の低下が鮮明になっている。

 その環境変化の中で、わが国の安部首相はようやく日中首脳会談の開催に漕ぎ着けた。会談のときの習近平のよそよそしい態度はともかく、首脳会談を実施できたことの意味は大きい。

 日米両国の首脳が実際に会って握手を交わしたことで、中国の人々のわが国に対する意識は多少なりとも変化するだろう。また、中国企業のスタンスにも若干の変化が出ることが期待できる。日中関係改善の第一歩になるだろう。

 今回、日中首脳会談が実現したことで、首脳会談が実現していない近隣主要国は韓国だけとなった。朴政権にとっては、日中首脳会談の実現は予想外の出来事だったかもしれない。日中の距離が近づくことは、親中国の政策を進めている韓国にとって好ましいことではない。間接的に、日韓関係にも微妙な変化が出るかもしれない。

 中国や北朝鮮を含む東アジアを巡る情勢は、これから米国をはじめ世界の政治・経済にとって重要なファクターであることは間違いない。ただ、米国にとって頭の痛い要素の1つは、足もとで中東のイスラム国やウクライナを巡る情勢など複雑な問題が顕在化しているため、アジア地域に割けるエネルギーが限られていることだ。

 オバマ大統領とすれば、それらの海外問題に加えて、国内では支持率の低下、中間選挙での敗北という問題を背負っている。台頭著しい中国に大胆なスタンスを取ることが難しいのは、当然かもしれない。

 国際社会での米国の発言力の低下は、アジア地域の安全保障・政治・経済の情勢に大きな変化をもたらしている。米国のプレゼンスが低下した現在、中国は高成長ゆえに軍事費を拡大し、わが国をはじめとする近隣諸国に対して領土問題などを強硬に主張している。

日中首脳会談を無視できない韓国
アジアを巡るパワーバランスの変化

 現在、中国のそうしたスタンスに真正面から異を唱えて、歯止めをかけるパワーは見当たらない。それに加えて、ウクライナ問題で国際的な制裁を受けているロシアと、長期のエネルギー購入契約を締結するなど距離を縮めている。その意味では、ウクライナ紛争で最も大きな“漁夫の利”を得たのは、中国と言えるだろう。

 韓国は、もともと輸出依存度の高い経済体質であり、有力な輸出先である中国に近づいている。また、足もとでGDPの2割を占める主力企業のサムスンの業績に陰りが出ていることも、そうした動きを加速することになっている。

 今回の首脳会談で日中間の距離が縮まると、韓国のわが国に対する外交姿勢には微妙な変化が出てくるかもしれない。韓国が、「経済は中国依存。安全保障は米国頼み」という構図を見直す時期が早まることも考えられる。

中国に目くじらを立てるべからず
わが国がとるべき“大人”のスタンス

 わが国としては、日中首脳会談のときの習近平の表情に目くじらを立てる必要はない。同氏としては、中国国内向けにそうした態度をとって喧伝したと見ればよい。

 中国経済について冷静に分析すると、すでに高成長の期間を終了し、安定成長期に向かって歩み始めている。今後、徐々に成長率は低下するはずだ。成長率が低下すると、今までは水面下に隠れていた問題が次第に顕在化する可能性が高い。

 まずは、多民族を抱える中での民主化の遅れであり、“一人っ子政策”に伴う人口構成の歪みである。また経済面で見れば、未成熟な金融制度や大規模な不動産バブルへの対応だろう。

 無視できないポイントは、これらの問題がこれから一斉に顕在化しそうなことだ。労働力人口の割合の低下は避けられず、成長率が徐々に低下するはずだ。その中で、不動産バブルが崩壊することになると、社会全体に与えるインパクトは大きい。

 特に、国民の中で貧富の差が拡大していることもあり、今後、リタイアを迎える人々の経済的な蓄積が十分ではないと見られる。それは最終的に国民の不満になるだろう。そこに国民の民主化要求が重なると、現在の共産党一党独裁の大勢を維持することも難しくなるだろう。

 わが国としては、現在の状況だけに目を奪われることなく、中長期的な観点で中国と付き合う方法を考えればよい。中国の成長率が低下すると、どこかの段階で軍事費の拡大には歯止めがかかるはずだ。

 それが現実味を帯びてくると、中国は今のような“上から目線”の外交を変えざるを得なくなるだろう。外交姿勢に変化が出ると、国民の海外に対する認識も変わる。わが国とすれば、今のところは中国と付かず離れずの距離感を保てばよい。

 隣国と協調しつつ、主張すべきポイントは遠慮なく国際社会に向けて発信すればよい。そして時間の経過に伴って、中国が自然と普通の国にランディングしていく時期を待てばよい。ささいなことに目くじらを立てず、じっくり時を待つのである。
http://diamond.jp/articles/-/62300


 


 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ
【第39回】 2014年11月18日 加藤嘉一 [国際コラムニスト]
習近平とオバマは中南海で何を語っていたのか
3つのシーンから検証する中国民主化の行方
過密日程のなかで
10時間に及んだ会談

 北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)非公式首脳会議が閉幕した。主催者である中国の習近平国家主席はここぞとばかりに積極外交を展開した。

 アジア太平洋自由貿易区構想、アジアインフラ投資銀行、シルクロード基金といった“パンアジア・パシフィック”を彷彿させ、同地域で主導権を握りながら地域の繁栄と安全を引っ張っていく意思を示唆するプランを次々と打ち出し、参加国に共鳴を求めた。

 習主席は、日中だけでなく、国際社会でも話題を呼んでいた安倍晋三首相との会談に挑んだ。また、韓国の朴槿恵大統領とは中韓自由貿易協定(FTA)を実質的に妥結させた。ロシアのプーチン大統領とも単独で会い、中ロの友好と協力を確認し合った。さらに、習近平・オバマ会談では、温暖化ガス削減の合意や米中両国間の人員交流におけるビザ緩和、経済交流における投資協定の促進、軍事政策・交流でも協力関係を強化していく旨を話し合った。

 今回のAPEC非公式首脳会議を通じて、もちろん安倍・習会談が行われた事実はひとつの注目点であったが、私がもっとも衝撃を受けたのは、11日夕方から12日午前中にかけて、約10時間に渡った習近平・オバマ会談である。昨年6月、米カリフォルニア州サニーランドで行われた非公式会談において、2人は約8時間、時空を共にしたが、今回はそれ以上の接触ぶりであった。

「今回、あなたのスケジュールは過密だ。公式な会談とリラックスできる場面、両方を準備させていただいた」。習主席はオバマ大統領にこう語った。

 本連載の核心的テーマである中国民主化研究という観点から見て、今回の習近平・オバマ両リーダーのやりとりには、中国政治の未来を習近平という中国の最高指導者の思考回路や価値体系から考えるうえで、重要なエッセンスが詰まっている。

 本稿では、両氏の約10時間に渡った接触と交流をレビューしつつ、中国民主化問題を捉える上で我々がいま認識すべきインプリケーションを3つ抽出し、検証を加える。

歴代皇帝が栄光と屈辱を味わった
中南海・瀛台での“中国史講義”

 11月11日、18時半。中国共産党権力の中枢を体現する中南海は瀛台(えいだい)に習近平・オバマ両氏が集まり、散歩を始めた。米中両国からの通訳2人だけが両指導者に同行した。米サニーランドの緑の芝のうえを2人が散歩したときのように。辺りはすでに真っ暗だ。2人は黒いロングコートを身にまとっている。

 習主席が瀛台の歴史を解説し始める。

「瀛台は明の時代に建設された。清の時代には、皇帝が文書を読み込み、批准したり、お客さんを招いたりする場所だった。避暑地でもあった。康煕帝はここで如何にして内乱を治め、台湾を取り返すかといった国家戦略を研究していた。その後、光緒帝の時代になって、国家は衰退した。戊戌の政変に失敗後、西太后はここで幽閉された」

 しんみり聞き入っていたオバマ大統領はこう返した。

「米中の歴史はその点で似ている。改革は障害に遭いやすいのは不変の規律だ。我々は勇気を振り絞らないといけない」

 習主席はオバマ大統領のほうを見て、力を込めた。

「中国人民の今日における理想と目標を理解するためには、中国の近代以来の歴史を知らなければならない」

 散歩、夕食、その後のティーブレイクを含め、21時15分に終了するはずだったが、結局23時過ぎまで交流して、両者はようやく別れた。

「オバマ大統領が“まだ質問したいことがある”と申し出て、それに対して習主席が“どうぞ”と受け入れる場面がいくつもあった。結果、会談は予定以上に伸びてしまった」。当日夜、中南海で同会談を取材した中国党機関紙記者はこう振り返る。

 以下のようなやり取りもあった。

習主席:「中国文明は古代以来“大一統”を重視してきた。中国が統一を維持できている局面では、国家は強く、安定していた、人民は安心し、幸せな生活を送ることが出来た。逆に、国家が混乱・分裂すれば、人民は悲惨なまでの災難を被ることになった。我々は主権を重んじる。歴史上外からの侵略に何度も見舞われたからだ。」

オバマ大統領:「中国人民がなぜ国家の統一と安定をここまで重んじるのかをこれまでよりも理解できた。米国は中国の改革開放を支持している。封じ込めたり、囲い込んだりする意図はない。米国の利益に符合しないからだ。米国は中国側と率直に話し合い、相互理解を増進し、教訓や経験を汲み取りあい、違いや摩擦を管理し、誤解や誤判を回避したい。中国は米国のパートナーだ。」

 別れ際、オバマ大統領は習主席に対して「今晩、私は人生のなかで最も全面的に、そして深く中国共産党の歴史と執政理念、そしてあなたの思想を理解することになった」と告げた。2人は握手を交わし、オバマ大統領は車に乗り込んだ。習主席は車が見えなくなるまでその場に立ち尽くし、手を振って見送った。

 私自身、習主席が歴史書の愛読者で、歴史上の皇帝たちがどのように権力基盤を固め、どのような盛衰のプロセスを辿ったのかを念入りに研究しているということを共産党関係者たちから聞いていた。それだけに、習主席が自らの仕事場でもある中南海にオバマ大統領を招き入れ、しかも歴史上の皇帝が屈辱を味わった象徴的な場所でもある瀛台で“中国史講義”を自ら施したのは印象的だった。

 習近平という国家指導者が、歴史上の皇帝たちの栄光と屈辱を双肩に背負い、且つそれらを内政や外交の場に体現していく指導者であるということを改めて思い知らされることになった。

“リラックスできる場”で漏らした
習近平の民主観と政治観

 次に、“習近平の民主観”を知るうえで重要な直接的なやりとりがオバマ大統領の会話のなかにあった。

 2人の話が政治体制に及んだとき、習主席は憚ることもなく、はっきりと自らの考えをオバマ大統領に伝えている。

「我々の民主に対するこだわりは“一人一票”に限らない。我々の民意に対する追求心は西側国家に比べても遜色ないどころか、それよりも多いだろう。西側の政党は往々にして特定の階級や分野の代表であるが、我々は人民全体を代表しなければならない、だからこそ、我々には広範な民主協商のプロセスが必要なのだ」

 本連載でも度々検証してきたが、“改革”そのものに対しては強いこだわりと戦略を持っているように見える習主席であるが、西側の自由民主主義に対しては終始懐疑的、もっと言えば、拒絶的な見方をしているようだ。

「習主席には、西側の制度では歴史的に複雑な中国を統治することができないという考え方が強い。中国を統治するうえで最も重要なのは、共産党の威信を高め、人民が共産党を信任したうえで力強く改革を進めていくことだと思っている」(共産党関係者)

 西側民主主義の“代弁者”でもある米国のオバマ大統領との“リラックスできる場面”(習主席)で漏らした上記の言葉は、習主席の民主観・政治観を知る上で重要な参考材料になる。

 と同時に、この言葉は、“法治”をテーマにした四中全会をレビューした前回コラム(習近平は共産党内の権力をどこまで掌握しているのか?)における以下の結論部分とも符合する。

「習近平総書記はあくまで共産党の地位と権威を強化するための政治的道具として“法治”を持ち出しているのであり、西側諸国におけるrule of law、すなわち、三権分立に立脚した司法の独立や、憲法の権力に対するチェックアンドバランス機能を制度化することに関心を示しているわけではないと判断できる。」

「習近平という人物をどれだけ解剖できるか。いま中国政治を理解するうえでもっとも重要なことだ」

 長年中南海をウォッチしてきた中国のある知識人はこう述べる。

人権や香港“占中”に
言及した共同記者会見

 翌日の12日、習近平主席とオバマ大統領は場所を人民大会堂に移して会談を行った。習主席の言う“正式な会談”を指す。今回中国を公式訪問(state visit)したオバマ大統領を、中国共産党指導部は熱烈に歓迎した。常務委員7人が全員オバマ大統領と会って交流した手配ぶりからも中国側の重視度が伝わってくる。

 本稿の目的は、習・オバマ会談から米中関係の現状と展望を分析することではなく、中国民主化研究という意味で、オバマ大統領が習主席から引き出した、インプリケーションに富んだ言葉や仕草を抽出し、検証を加えることである。従って、米中首脳会談の詳細や内容については省くことにする。

 ここで私が注目したのは、会談後、同じく人民大会堂で両首脳が挑んだ共同記者会見である。会見は、習主席、オバマ大統領がそれぞれブリーフィングをし、その後、米中それぞれのメディアから1つずつ質問(New York TimesとChina Daily)を受けて終了した(米ホワイトハウスオフィシャルサイト参照:Remarks by President Obama and President Xi Jinping in Joint Press Conference)。

 オバマ大統領は中国共産党政治に“外圧”をかけるような言葉をブリーフィングのなかで切り出した。

「私は、習主席に対して、すべての人間が持つ基本的人権を保護することは、米国が中国との関係をマネージする上での重要な要素であり続けることを今一度述べた。我々は有意義な意見交換をし、習主席も私に対して中国が人権問題で前進している旨を伝えてきた。私はすべての人間が本来的に持つ言論の自由を尊重することがどれだけ重要であるかを描写した。ニューヨーク、パリ、香港を含め、全ての地域で生活する人々である……。我々はチベットが中華人民共和国の一部であると認識し、独立は支持しない。一方で、中国政府がチベットの人々が長年擁してきた文化や宗教、言語やアイデンティティーを保護するための一層の努力を促す次第である」

 オバマ大統領がブリーフィングを終えると、ニューヨーク・タイムズのマーク・ランドラー(Mark Landler)記者が質問を始めた。

 同記者の質問のなかで私が注目したポイントが2点ある。

「中国には“香港で起こっている抗議デモの黒幕は米国である”といった反米的な言論があるがどう思うか?」

「ニューヨーク・タイムズを含め、米国のメディアで働く記者たちが中国当局からビザ発行を拒否されている。今回合意した米中ビザ緩和によって、中国で働く記者たちの処遇も改善されるのか?」

 前者はオバマ大統領に対して、後者は習主席に対する質問である。

「香港問題は習主席との会談でも話題になった。米国は香港で起こっているデモに関与していない旨をはっきりと伝えた。これらの問題は香港、そして中国の人たちが決めるべきことだ。一方で、米国が重んじる外交、そして価値観という観点から、人々の言論の自由、そして香港で透明性のある、公正で、現地の人々の意見を反映できる選挙が実施されるべきだということはこれからも主張していくという立場も習主席に伝えた」

 このように回答したオバマ大統領は、ランドラ―記者が提起したビザ問題に関しては、「米中にはビザ発給をめぐって違いがあるのだろう」とだけ言及し、隣に立っている習主席を刺激するような発言を意図的に控えた模様だ。

 中国の党機関英字紙であるチャイナ・デイリーの記者からの質問である「中国は国際情勢における自らの役割と立ち位置をどう捉えているか?」に対して、これまで同様のスタンスを繰り返した習主席は、ニューヨーク・タイムズのランドラ―記者が提起した質問は無視してそのまま記者会見終了となるかと思われたが、見解を述べ始めた。

 人権問題に関しては、「我々はミッションを達成したとは思っていない。改善しなければならない余地がまだある。中国は平等で、相互に尊重するという基礎に立って、人権問題をめぐって米国と対話をする用意ができている」と語った。

 香港問題に関しては、「オバマ大統領にも伝えたが、香港で起こっている“占中”(Occupy Central)は違法行為である。我々は香港特別行政区政府が法律に従って事態に対処し、香港社会の安定と香港市民の生活と権利を維持することを支持する。香港問題は中国の内政であり、如何なる国家も干渉すべきではない」と語った。

 11月15日、香港の抗議デモを引っ張ってきた香港学生連盟のリーダー3人が、北京にいる李克強首相や政府役人たちに直接思いを訴えるべく香港空港に到着した。事前チェックインも済ませ、あとはドラゴンエアーの機内に乗り込むだけという状況だったが、搭乗手続きの際、中国政府が3人の入国許可証を撤回したため搭乗不可という事情を同航空会社の係員から告げられた。

共産党の権力と威信こそ重要
歴史に根拠を求める習近平

 米中首脳共同記者会見の最後、習主席はビザ問題に関する立場をこう語った。

「中国は市民の言論の自由と基本的権利、及び法律に基づいた外国メディアの権益を重んじている。メディアは中国の法律と規定に従わなければならない。道路で車が壊れた場合、我々は下車し、何処に問題があったのかを見なければならないだろう。問題の発生には必ず原因が伴うものだ。中国にはこのような俗語がある:“問題は、起こした人間によって解決されるべきだ”。」

 私は個人的に、習主席の性格を体現した回答だと感じた。要するに、「原因はあなた方にあるのだ。ビザを発給して欲しければ、やり方を考えなおして、姿勢を正して、出直して来なさい」という意味である。

 本連載でも度々検証してきたように、習主席は共産党の権力と威信を脅かそうとする輩に対しては、自国民だろうと、外国人だろうと容赦しないタイプの政治家であるようだ。

 それを脅かす可能性のある西側の民主主義も、西側のジャーナリストも、表向きは温厚に、実際は断固たる姿勢で拒んでいくに違いない。逆に、中国の尊厳や国益を重んじ、積極的に対話を求めてくる相手に対しては、熱烈に歓迎し、最上級の接待を施すのだろう。今回、中南海でオバマ大統領に捧げたように。

 また、最後に比喩として持ちだした俗語(中国語で“解铃还须系铃人”)の起源となった物語は明の時代に遡る。やはり、習主席は歴史を好み、自らの政治や政策の根拠を歴史に求める傾向があるようだ。

 本稿の結論として、中国民主化に対するインプリケーションを3つ述べる。

@ オバマ大統領率いる米国政府が中国に“民主的外圧”をかけるのは困難である。
A 習近平主席は外から押し付けられる形での政治改革を拒む傾向にある。
B 習近平主席が思い描く政治改革は西側の民主主義とは異なる性質のものである。
http://diamond.jp/articles/-/62301


05. 2014年11月18日 07:23:50 : jXbiWWJBCA

中国人もどうかと思う国家主席の仏頂面
笑顔なき首脳会談、しかし対話だけでも大きな前進
2014年11月18日(Tue) 姫田 小夏
 友人に「ほら、これ見てよ、笑っちゃう」とスマートフォンを差し出され、我が目を疑った。画面に映っていたのは、習近平国家主席が安倍首相との握手で見せたあの表情である。友人が受け取ったそのメールの文面には「習主席の表情、意味深長。。。案の定 〜転送します〜」とあった。

 11月10日、筆者は上海の金融街・陸家嘴で、大手保険会社に勤務する中国人OLを呼び出してお茶をした。話題はもっぱら習近平国家主席と安倍首相の会談についてだった。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の期間中、安倍首相と習主席が行った握手、そのときの習主席の表情が波紋を呼んだ。習主席は安倍首相と対峙しながら「会いたくない」とでもいうような表情だった。その仏頂面を伝えるニュースは一瞬にして中国全土に拡散した。「微博」(ミニブログ)や「微信」(SNS)でもコメントが続々と書き込まれた。

 あの表情をどう解釈し、どう評価するかについて、上海でも熱い議論が展開された。

 習氏といえば「習大大(シーダーダー)」との愛称で呼ばれ、市民にとって敬愛の対象でもある。就任当初は半信半疑だった市民も、腐敗撲滅キャンペーンなど社会悪と闘う姿勢に今では信頼を寄せるようになっていた。「理性的な人物」「前政権に比べ期待できる」など前向きな評価も耳にするようになった。

 スマホの画面を見せてくれた保険会社勤務のOLは、「表情はどうあれ、これ以上日中関係は悪くなることはないでしょ」と言う。だが、習氏は「あの表情」を見せたことで、その信頼感が大きく損なわれてしまった。

習近平主席の態度を批判する中国人も

 上海の国営企業で役員を務める男性は、客人を迎えたその険しい表情についてこうコメントする。

 「あまりに非礼でしかも幼稚過ぎる。大人の社交というものを知らないのか。中国人として恥ずかしい」

 微博の書き込みでも「習氏の態度はあり得ない」とするものが目立つ。中国人から見ても、やはり「ホスト国にあるまじき態度」だと解釈されたようだ。

 中国人の間で使われる古い言葉に、「来者都是客」という言葉がある。「来る者はみな客人だ」という意味だ。ところが、中国国家主席はあろうことか安倍首相を「客人」とは認めなかったようである。

 中国のメディアもプーチン大統領やパク・クネ大統領を「中国の客人」として扱ったが、安倍首相については「APEC的客人」と会議の一参加者という扱いをした。

 そもそも中国には、日本人以上に客人を大事にする文化がある。テーブルには食べきれないほどの皿を並べ、箸が止まろうものなら、「遠慮するな」とばかりに取り皿に盛りつけてくれる。とにかく客人を放ってはおかないのが中国人だ。

 こうした文化を持つ中国人にとって習氏の態度は不可解極まりない。日本企業に勤務する中国人社員も言う。「その表情からシグナルを分析すると、やっぱり日中関係の完全な修復はまだまだ遠いと思う」

 習氏の態度は論語の精神に反するとする批判もあった。最近、中国のMBA教育は儒家思想をカリキュラムに組み込むようになった。また、「弟子規」を子供の教育に取り込む家庭も増えている。

 論語をたしなむ上海の知識人が嘆く。「中国には『己所不欲勿施于人』(己の欲せざるところ人に施すなかれ)という故事があるが、一国のリーダーが世界の客人の前であのような態度を取ってしまったのは実に残念でならない」

決裂はないが友好もない

 上海では日中関係の改善に対する期待は総じて低い。仏頂面の“効果”があったということだろうか。

 日中首脳会談の翌日、上海の地元紙「東方早報」は、「日中関係は極めて困難、このような状況を生んだのはすべて日本にあることははっきりしている」と会談の内容を伝えた。記事は「領土問題だろうと歴史問題だろうと責任は日本にある。とりわけ歴史問題については回避しようとしても回避できない」と対日批判の手を緩めない。「分厚い氷になるのはたやすいが、溶けるには時間がかかる」とも記している。

 日中首脳会談の内容について、テレビでもほとんど報道されることはなかった。特集番組も少なく、専門家による鼎談が一部で行われたが、それも「展望は厳しい」という空気を漂わせていた。

 先週はAPECとそれに集まった要人をクローズアップするテレビ報道が続いた。だが、中国中央テレビの画面に安倍首相の姿が映ることはほとんどなかった。「握手シーン」を除き、テレビ局の編集部隊が極力画面からカットしたのではないかと思わせるほどだった。

 「領土」と「歴史認識」をめぐって双方の主張が交わることはない。上海市民もおおかた「この状態が続く限り関係改善は困難」だと諦めている。

 上海の大学教授は両国が置かれた状態について次のように形容する。「『剪不断、理環乱』――。互いに思い入れがあり、関係は切ってもきれないが、理性的に処理しようとすればするほど空回りしてしまう。それが今の日中関係だと言えるでしょう」

いきなりニコニコする態度は見せられない

 しかし、習氏の仏頂面が日中関係の改善を台なしにしてしまったとは言い切れない。というのも、「対話」が再開されただけでも大きな前進だからだ。

 2013年末、靖国神社を参拝した安倍首相に対し、中国外交部は「中国指導者は今後いついかなるときも安倍首相とは対話をしない」とする見解を出していた。つまり、「永遠に会うことはない」と断言したのである。このときの報道を記憶する中国人は「これが覆されただけでも今回の日中首脳会談は成功だったと言える」と評価している。

 だが、習氏といえども、中国の国民にいきなり「安倍首相とニコニコと握手する姿」は見せられない。これまで「敵だ、敵だ」と声高に日本を悪者呼ばわりしてきた中国政府にとって、「ガラリと転換」するわけにはいかない。「今までの『安倍首相=悪人』は何だったのだ」と突き上げを食らいかねない。ましてや「転換」を示したところで国民の理解を得難いことは目に見えている。それゆえ、あの仏頂面をわざと演出した、とも考えられる。

 日中関係に詳しいある専門家は、「政府がこれまでどのように大衆へメッセージを発してきたのかを考えれば、習主席の仏頂面は反対の意味を持つ可能性もある」と言う。

 つまり、中国政府は常に真実を隠し、情報をコントロールしようとする。そのロジックから言えば、習氏に現れた「歓迎しない態度」は“真実”ではないというわけだ。しかし、そこまで楽観していいのかどうかは、正直言って分からない。

 中国国内では、食品の安全から環境汚染、医療、住宅、教育などまで、社会問題が山積みだ。いつ爆発するか分からない国民の不満を抑え、共産党政権を維持させるためには、常にどこかの国を外敵に仕立て上げる必要がある。その外敵が日本だった。前出の専門家は、「今後も日本を外敵に据える構図は変わらないだろう。日中関係においてすぐに大きな変化が起こるとは考えにくい」と指摘する。

 ただし、首脳会談を機に中国の新聞紙面にはある変化が見られた。2010年9月から始まり、日中関係に関する報道では必ず使われてきた枕詞「釣魚島自古以来 是中国的領土」という表現が消えていたことである。

 日中関係にすぐに大きな変化はないだろう。だが、こうした微妙な変化は注視するに十分値する。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42215


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