03. 2014年11月21日 07:44:01
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「金曜動画ショー」 中国の大気汚染を解決するビジネスとは PM2.5問題、現地で見てきまショー4回目 2014年11月21日(金) 鶴野 充茂 大気汚染の深刻さが繰り返し報じられる中国・北京。実際どうなのか、現地に行って直接見てきましょう、というこの企画。4回目の今回は、PM2.5が生み出すビジネスチャンスについて、レポートします。 ネット動画はアイデアの宝庫、それでは今週もいってみましょう。 やっぱり戻った北京のPM2.5 APEC開催期間中、市内を中心に厳しい交通規制や休業命令などによって一時的に青空が見られた北京でしたが、大方の予想通り、国際会議が終わると同時に、大気汚染PM2.5のレベルも深刻なレベルに戻ってしまいました。 APEC首脳会談時が底で、状況は悪化している 中国政府はこれを大きな問題と認識し、解決に向けてさまざまな策を講じ始めてはいますが、前回までにお伝えした通り、実際に問題が収束に向かうには、少なくとも20-30年はかかると言われています。
「大きなビジネスチャンスも生み出しているんです」 集まった日本人ビジネスマンたちを前にそう語り始めたのは、北京を拠点に展開しエグゼクティブ教育に力を入れるビジネススクール長江商学院のアンソニー・リウ教授です。 同校では現地でも関心の高いPM2.5の最新事情について、教員や外部の専門家を講師役に、勉強会を開催しています。 この日のテーマは、「ビジネスチャンスとしてのPM2.5」でした。 長江商学院 アンソニー・リウ教授 PM2.5で生まれる新たな需要
「健康意識が高まっているため、人々はきれいな空気や環境を得るために喜んでお金を使うのです」 リウ教授は言います。 地元大学とハーバード大学による共同研究で、長期にわたって現在の北京レベルの大気汚染の中で生活していると、寿命が3年縮まるという結果が出たことを紹介。問題は誰が見ても明らかなため、空気の悪さが生み出す悪影響を少しでも減らすものへのニーズは非常に高いと言います。 これがB2C、つまり生活者一人ひとりの需要です。 そして、この個人の意識の高まりや外圧などから、政府が産業界に対するPM2.5排出の規制を強化しています。それによって、脱硫(硫黄酸化物の除去)・脱硝(窒素酸化物の除去)等の装置といったB2Bの需要が発生しています。 また、短期的な需要と長期的な需要という考え方もあります。 PM2.5で汚染された環境の中で求められるものが短期的な需要、これに対して長期的には、クリーンエネルギーなどを代表例とする、汚染自体を抑えるものへの需要が生まれると言います。 ベンチャーにもチャンス有り ニッチな分野には、ベンチャーが成長できる余地もたくさんあります。その例の1つとして、送風機に取り付けるだけでPM2.5などの粒子を大幅に減らせるフィルターを製造販売するSmart Air Filter社というベンチャー企業が紹介されていました。 家にある扇風機や送風機に、フィルターを取り付けて簡易の空気清浄器にしてしまうというイメージなのですが、そのフィルターがたいへん強力なので、実質的に従来の方法と比較して数十分の一という超低コストで、空気中の有害物質を除去できてしまうというのです。簡易さと効果、そして低価格で注目を集めているのだと言います。 手作り感たっぷりの説明動画(英語)がありましたので、ご覧ください。 [DIY Filter Test] 同社サイトの説明はとてもベンチャーらしくてユニークです。たとえばFAQ(よくある質問と答え)には、こんなものがあります。
質問:あなたたちは大気汚染の専門家ですか? 答え:違います。米バージニア大学で心理学の博士課程に学ぶ学生がデータを扱っています。正直にデータを開示して見てもらうことによって、我々がどのように効果的だという結論に至ったか、消費者一人ひとりが自分で判断できるようにしています。 質問:あなたたちの手作り空気清浄器は高額なブランドのものより優れているというのですか? 答え:我々のテストによると、ブルーエア(高性能空気清浄器ブランドとして有名)やフィリップスのものと比較して、それを上回る効果があることが分かりました。なので、答えはYesです。 ただし、気をつけないといけないのは、我々がテストした環境は、15平方メートルの部屋における一晩の微粒子の減少です。それ以外の部屋の大きさや一酸化炭素などのガスによる汚染については同じようには言えません。しかし、もしあなたが(我々と同様に)微粒子による汚染のことを心配していて寝室が15平方メートル以下であれば、高額なブランドと同等と言えるでしょう。 「ビジネスチャンスはココにある」 今回参加した勉強会を入口に、さまざまな専門分野からこのテーマをウォッチしている教授陣に順番に話を聞いて回りました。 その様子をオリジナル動画にまとめましたので、ご覧ください。 インタビューなどから「PM2.5ではココにチャンス有り」として挙げられた領域を以下にまとめておきます。 ●ココにチャンス有り 短期的に成長が見込めるもの 空気フィルター(自宅、職場、学校、車向けなど) 空気清浄器 浄水器 エネルギー効率を高めるもの(保温断熱材など) 特定用途向けのマスク(アスリート用など) 室内運動具(ルームランナーなど) オーガニックフード 旅行(空気がキレイな場所だということを訴求、旅行会社の情報によると、旅行ピーク時期に目的地として選ばれるのは海外向けは実際ほとんど空気がキレイな場所とのこと) 環境コンサルティング(職場、学校向けなど) 長期的に成長が見込めるもの エコカー(EV) クリーンエネルギー(天然ガスや原子力など) 不動産(空気がきれいなエリア、環境に優しく安全さを売りにした建物など) 消臭・脱臭技術(ゴミや汚水などを想定) 測定器(大気汚染度の測定地点が増える) 「日本が公害を経験して乗り越えたノウハウや技術は、役に立てられないのか?」 勉強会の終盤、そんな質問が誰からともなく挙がりました。もちろんすでにあちこちで取り入れられているものも少なくなく、主に自治体・姉妹都市レベルでの連携も進んでいるといいます。 「公害を経験し、乗り越えたのは、日本だけではなく、英・米・独などもあります。日本が持っているノウハウや技術を提供していける余地はたくさんありますが、営業しなければその機会も得られません。つまり、世界のライバルと戦って、選ばれる必要があるのです」 こうしたプロセスの中で、たとえば、技術で勝っていたとしても、商売で負けるということも少なくないという話で議論が盛り上がります。 「日本人はね、勉強不足なんですよ」「すごいチャンスなのに」 ある現地事情に詳しい日本人から、そんな声が出たところで、この日のPM2.5勉強会は終了になりました。 ネット動画はアイデアの宝庫。それではまた、金曜日にお会いしましょう。 P.S.日経BP社とアサヒビールが運営する新メディア「カンパネラ」でも動画紹介などを書いています。ぜひ読んでみてください。 今回のオリジナル動画は、ソニーからアクションカムHDR-AS100VとHDR-MV1をお借りして制作いたしました。 お知らせ 経営者はなぜ嘘つきと言われてしまうのか? PRのプロが教える社長の伝え方・話し方 「経営者はなぜ嘘つきと言われてしまうのか? PRのプロが教える社長の伝え方・話し方」が発売中です。 このコラムについて 金曜動画ショー 話題になっているネット動画をビジネスの視点から、コミュニケーションの専門家であるビーンスター鶴野充茂氏が紹介します。どんなメッセージをどのようにネット動画で伝えているのか。どんな要素や条件によって、その動画が広められ、多くの人に見られているのかを分かりやすく解説。最新の話題やトレンドのチェックとして、あるいは動画を活用した情報発信のヒントとしてご覧ください。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141120/274110/?ST=print
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