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日中首脳会談で損するのは中国、実現すれば韓国に対しても立場が弱くなる―米華字メディア
http://www.asyura2.com/14/china4/msg/880.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 10 月 23 日 16:13:05: igsppGRN/E9PQ
 

21日、米華字メディア・多維ニュースは、「日中首脳会談が実現すれば、中国は揺れ動いているというイメージを世界に与える。歴史問題で一貫して態度を変えない韓国に対しても立場がなくなる」とする記事を掲載した。


日中首脳会談で損するのは中国、実現すれば韓国に対しても立場が弱くなる―米華字メディア
http://www.recordchina.co.jp/a96165.html
2014年10月23日 8時44分


2014年10月21日、米華字メディア・多維ニュースは、「日中首脳会談が実現すれば、中国は揺れ動いているというイメージを世界に与える。歴史問題で一貫して態度を変えない韓国に対しても立場がなくなる」とする記事を掲載した。

11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において日中首脳会談が実現するか否かが注目を集めている。日本のメディアによると、会談が実現した場合、安倍首相は習近平(シー・ジンピン)国家主席に対して「尖閣諸島は日本固有の領土であるが日本は中国の立場を理解しており、適当な時期が来たら問題を解決する」との棚上げ案を明確に伝える予定だ。ただし日本側にはこのやり方でこう着した日中関係を打開できるのかという焦りもある。

一方、中国側には習主席は会見すべきではないとの見方がある。理由として以下の4点が挙げられている。1.安倍首相には尖閣問題や靖国問題で妥協する姿勢が見られない。2.基本的に安倍首相は小泉元首相と同じく対中強硬論者。3.中国政府は安倍首相について「戦後秩序を変えた」とのマイナス判断を下し、「中国は積極的に戦後秩序を維持する」との態度を表明しているのだから、簡単に態度を変えるべきではない。会談が実現すれば、中国政府の態度は揺れ動いているというイメージを世界に与えてしまうことになり、歴史問題で一貫して態度を崩さない韓国政府に対しても言い訳ができなくなる。4.日中関係は東アジア局面における中国と米国の関係である。米国の態度が変化しない限り、日中首脳会談が実現しても日中関係のこう着状態は根本的に変わらない。(翻訳・編集/YM)


 

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コメント
 
01. 2014年10月23日 18:37:55 : FUtnN1arpo
韓国なんて関係ないんだよ。

02. 2014年10月24日 07:51:54 : jXbiWWJBCA
中国の「三戦」に立ち向かう方法
「戦わずして勝つ」戦法を封じ込めるための37の提言
2014年10月24日(Fri) 福田 潤一
 前回「アジアの地政学を一変させるロシアのINF条約違反」と前々回「中国が開発する超音速ミサイルの脅威」は、主にミサイルの問題を中心に中国を念頭に置いた抑止と防衛の議論を展開したが、今回は若干趣向を変え、こうしたハードな軍事力に関する議論とは別の観点からの対中対抗策を巡る議論を取り上げたい。

 それは中国のいわゆる「三戦(輿論戦、法律戦、心理戦)」への対抗策についてである。

 中国が、ハードな軍事力を中心とするキネティック(kinetic:動的)な能力ばかりではなく、ソフトな宣伝戦やプロパガンダといったノンキネティック(non-kinetic:非動的)な取り組みも強化しつつあることは、つとに強調されている。

 そこで今回は、こうした中国のノンキネティックな攻勢の代表例として「三戦」の問題を取り上げ、それがいかに国際秩序の根本的な基盤に挑戦し、日本をはじめとする周辺国の利益を損なうものであるかを指摘すると共に、日米およびその他の諸国がこれに対していかなる対抗策を採るべきかについて言及したい。

「三戦」は人民解放軍の公式な方針

 海洋進出をはじめとする中国の対外的な拡張姿勢を支える、ハードな軍事力に拠らない(=ノンキネティックな)攻撃手段として注目されているのが、「三戦(three warfares)」への取り組みである。

 ヘリテージ財団のD・チェン(Dean Cheng)上級研究員によれば、「三戦」とは次のように説明される。

(1)輿論戦(Public Opinion Warfare / Media Warfare)

 輿論戦とは、報道機関を含む様々なメディアを用いて、他者の認識と姿勢に長期的な影響を与えることを意図した持続的活動である。輿論戦の目的は友好的な雰囲気を醸成し、国内および国外における大衆の支持を生み出し、敵の戦闘意欲を削ぎ、その情勢評価を変化させることである。

(2)法律戦(Legal Warfare)

 法律戦とは、敵の行動を不法なものだと主張しながら、自国の行動を合法的なものだと正当化することを目指す法的主張を伴う活動である。自国の立場を法的に正当化することで、敵および中立な第三者の間に敵の行動に対する疑念を作り出し、自国の立場への支持を拡大することがその目的である。

(3)心理戦(Psychological Warfare)

 心理戦とは、外交的圧力、噂、虚偽の情報の流布などを通じて敵国内で敵の指導層への疑念や反感を作り出し、敵の意思決定能力に影響を与えたり、攪乱したりすることを意図した活動である。その目的は敵から迅速かつ効果的な意思決定能力を奪うことにある。

 こうした「三戦」の考え方は、ハードな軍事力の存在を誇示しつつも、本質的にはそれを実際には使用することなく敵の自壊を誘発するという点において、「戦わずして勝つ」という『孫子の兵法』の思想と平仄が合っている。ゆえに、中国において「三戦」への取り組みが重視されるのは、伝統からして当然と言うべきなのである。

 実際、「三戦」の考え方は、2003年12月に中国人民解放軍の政治工作条例に採用され、人民解放軍の公式な方針となっている。また、2008年の『国防白書』には、「軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させる」との記述もあり、中国がノンキネティックな分野の闘争を、キネティックな分野の闘争と一体のものとして見ていることが窺える。

 中国はこの「三戦」を活用することで、日米を含め中国の周辺国がこれまで正統な均衡(legitimate equilibrium)と考えてきた国際秩序の現状を、長時間をかけて徐々に浸食することを意図しているものと考えられる。

 そこで以下では、特にその傾向が尖鋭な形で表れる、海洋安全保障の問題に焦点を当てて、中国の「三戦」の実態に注目してみたい。

中国の「三戦」の実態:海洋安全保障問題における輿論戦

 「三戦」の概念は理論的にはあらゆる紛争に適用可能と思われるが、本質的にはこれは軍事闘争を支えるための工作活動である。その観点からは、キネティックおよびノンキネティックな活動の間の連関が顕著な、海洋安全保障問題に注目することが適切だと考えられる。

 中国は過去、既に「三戦」に該当する行動を海洋安保の問題で数多く採ってきている。まず、輿論戦について言えば、2001年の「EP-3事件」や、2009年の「インペッカブル号事件」等での対応がまず挙げられる。

(「EP-3事件」:中国の海南島沖約104キロメートルの上空で米国のEP-3電子偵察機と中国のJ-8II戦闘機が衝突し、EP-3が海南島に不時着し、米国の機体と乗員が拘束された事件)

(「インペッカブル号事件」:米国の音響測定艦インペッカブルが中国の海南島沖約80キロメートルの公海上を航行中に海軍艦や巡視船、漁船等を含む5隻の中国側艦船から進行妨害のハラスメントを受けた事件)

 EP-3事件においては、中国は米軍機が中国の領海外の公海上を飛行していたのにもかかわらず、この問題を米国による挑発的な軍事偵察の結果だとし、米国の「覇権主義」を非難対象として謝罪を求めた。米国はUNCLOS(国連海洋法条約)上、公海上の飛行への制約は受けないとして、そのような要求を受け入れることはなかったものの、最終的には機体と人員の返還のために「深刻な哀悼の意(very sorry)」を表明せざるを得なかった。

 インペッカブル号事件も米艦がUNCLOS上、通航に支障のない中国領海外を航行していたにもかかわらず、中国のEEZ(排他的経済水域)内での同意を得ない軍事調査は禁じられているとして、米側に非があるとの非難が中国側から行われた。米側はこの事件でもUNCLOSに基づかない批判を受け入れることはなかったが、中国はこれを機会にEEZ内での他国の軍事行動は禁じられているという独自のUNCLOS上の解釈に基づく主張を強めるようになり、周辺国との軋轢が増す結果に繋がった。

法律戦と心理戦

 法律戦について言えば、中国はそれを領域主権の主張と、上記の通り、EEZ内での他国の軍事活動を阻止する目的で実践している。

 まず領域主権の主張について言えば、中国は日本の尖閣諸島や南シナ海における島々の主権を主張しているが、いずれも近代国際法に基づく根拠が乏しく、対外的な説得力に乏しい。そこで中国は1992年に「領海法」を制定し、まず国内法で規定することで法的正当化を図り、次に南シナ海における「九段線」の主張を「歴史的水域」として正当化しようとするなど、繰り返し自己の主張を法的に正当化しようと試みている。

 また、中国は法律戦をEEZ内での他国の軍事活動を巡る対立でも展開している。UNCLOSはEEZ内における他国の軍事活動については何ら言及しておらず、加盟国の多数派の解釈はEEZ内の軍事活動は禁じられていないとするものだが、中国はUNCLOS第58条第3項に定める沿岸国の権利・義務への「妥当な考慮」を理由に、EEZ内で他国が軍事活動を行う際には自国の許可が必要であると主張しており、タイなどいくつかの国がこれに賛同する姿勢を示している。

 心理戦については、中国は2010年の尖閣沖漁船衝突事件や、2012年のスカボロー礁を巡るフィリピンとの対決の際に、相手に圧力をかける手段として利用している。

 例えば、尖閣諸島沖の事件においては、中国は中国に滞在する4人の日本企業駐在員を拘束すると共に、レアアースを巡る対日輸出規制等を通じて、日本政府に心理的圧力をかけた。この結果かどうかはともかく、日本政府は那覇地検による中国人船長の起訴猶予・釈放を了とする形でこの問題を決着させている。なお、続く2012年の尖閣「国有化」の際には、中国は反日デモを活用することで日本製品不買運動などの圧力をかけている。

 南シナ海のスカボロー礁を巡る対立においても、心理戦が活用されている。この事件は、フィリピンが領有を主張するスカボロー礁内部で密漁をしていた中国漁船が発見されたことをきっかけに、中国が巡視船を派遣し、両国間での睨みあいが生じ、最終的にはフィリピン側が同礁から事実上締め出されたというものである。この際、中国はバナナ等のフィリピン産の果物の対中輸出を検疫強化の名目で制限する措置を採り、フィリピン側に心理的圧力をかけている。

中国の「三戦」の試みを座視することはできない

 上記のような、海洋安全保障問題に係る中国の「三戦」の取り組みからは、物理的な力の存在を背景としつつも、それを現実には使用することなく、戦わずして相手を屈服させながら、現状を徐々に自身に有利なものとへと修正していこうとする(=サラミ戦術)中国の意図を感じ取ることができるであろう。

 幸いにして、中国の「三戦」は、特に法律戦の面において中国が希望するほどの成果はまだ挙げていないように感じられる。しかし、他方で今後、アジア地域における中国の経済的存在感はますます強まることが見込まれるため、特に他国に対する経済的な圧力を伴う心理戦の効果は無視できなくなるとも考えられる。

 そのため、中国の「三戦」の試みを座視することは、やがては中国に戦わずして現状を侵食されることにつながり得る。例えば公海における航行や飛行の自由といった、グローバルコモンズへのアクセス阻害という結果につながる可能性がある。そうした状態は我々が考える、あるべき国際秩序の姿とは言えまい。

 では、日米をはじめ、中国の周辺国は「三戦」にどのように対抗すればいいのか。

ハルパー教授らによる37の提言

 中国の「三戦」への対抗策を巡り、最近興味深い報告書を公表したのが、英ケンブリッジ大学のS・ハルパー(Stefan Halper)教授を中心とするグループである。

 ハルパー教授は2013年3月、日本を訪れて「三戦」を巡る対話を行った。その時に筆者は1週間ほど同教授をアテンドして様々な意見交換を行った。その教授が今年再び、日本を訪れ、完成した報告書を日本の識者に対して披露した。本稿では、その内容を簡単にご紹介したい。

 同報告書は、形としては米国防総省のネットアセスメント局への提言という形になっているが(注:ハルパー教授は英国の大学教授だが、国籍は米国人である)、その本質は日本としても参考になるところが多い。この報告書の中では、かなり具体的に、37項目にわたって中国の「三戦」への対抗策が提言されている。

【輿論戦への対抗策】

 まず輿論戦への対抗策としては、次のような措置が提言されている。

1. 中国が米メディアに対してビザを発給しないのであれば、米国も中国メディアにビザを発給しないという、相互主義の考え方を徹底する。

2. 米国の広報外交プログラムを拡充する。重要なのはどの軍隊が勝利するかではなく、どの物語が勝利するかであることを認識する。

3. 軍事情報支援作戦(MISO)への資金拠出を維持する。

4. 軍事広報担当官(military public affairs officers)がより良い戦略的コミュニケーションと広報外交の訓練を受ける。

5. 主要なグローバル・ニュース組織の編集委員会との交流を拡大および深化させる。

6. 南シナ海の状況についての定期的なブリーフィングを行い、中国がそれに反応せざるを得ないような言説を創出する。

7. 南シナ海と「航行の自由」に関する米国のコミットメントを強調する。

【法律戦への対抗策】

 次に、法律戦への対抗策として、次のような取り組みが議論されている。

8. 中国の「歴史的権利」の主張に法的根拠がないことを主張し、その恣意的な地図の使用を批判する。法律の専門家を活用し、メディアへの登場を後押しする。

9. 主権に関する、世界的および地域的な議論を促進する。

10. UNCLOSの役割と中国の野心を含む、関連する歴史的事実についての教育を促進する。

11. EEZ内の外国の海軍艦船の権利についての中国の立場に反論する。中国自身が他国のEEZ内で沿岸国の同意なく行う海軍の活動についても広報する。

12. 国際法の発展と執行についての関連する事実を、国際会議やシンポジウムなどを利用して公にする。

13. 法律戦への対抗措置を米軍の作戦計画や訓練の中に含める。

14. 三沙市事件(2012年にパラセルおよびスプラトリー諸島を含む南シナ海の多くの島嶼を管轄するとして中国が一方的に「三沙市」を設立した事件)を、中国とASEANの対決であると位置付ける。

15. UNCLOSの紛争解決メカニズムを強化し、中国を国際調停に引き出そうとするフィリピンの試みを支援する。

16. 米国がUNCLOSに加盟する。

【心理戦への対抗策】

 最後に、心理戦への対抗策としては、次が提言されている。

17. 米太平洋軍(PACOM)を通じた安心供与のメッセージを地域に伝達する。

18. 米国の能力とその改善状況を定期的に、地域全体に向けて繰り返し発信する。

19. 地域における中国の許容可能な行動の範囲を設定する(レッドラインを引く)。

20. 中国の主張するEEZの内部で米国艦船や航空機による航行や飛行を中国の事前同意なく定期的に行う。

21. 冷戦時代のNATOの「常設大西洋艦隊(Standing Naval Force Atlantic)」に相当する太平洋版の艦隊を設置する。これは主要な東アジア諸国から1隻ずつ提供を受け、合計4〜6隻の駆逐艦およびフリゲート艦で構成される常設艦隊を指す。

22. 米正規空母のプレゼンスを維持する。中東およびインド洋との往復の際に、東南アジアで演習や訓練などを実施する。

23. 短期的な政策サイクルを長期的な作戦計画のサイクルから切り離す。航行の自由に関する作戦や監視任務などへの短期的判断による影響を除く。

24. 計画された演習を中国の圧力によりキャンセルすることを避ける。

25. 事態発生時の管理手続きを定める。スカボロー礁のような事態の発生時には、影響を受ける国家への即時かつ劇的な安全保障上の支援増大の計画を含む。

26. 米国の「エアシーバトル構想」を強化する。

27. 米国の政策や意図を明確化することを越えた、問題自体に焦点を当てた声明を出す。攻撃的かつ不法な行動を正当化する中国の声明そのものに直接対抗するような措置を採る。

28. ASEANの統一性およびASEAN内部の中国の南シナ海における政策や主張に対する批判を打破しようとする中国の策謀について、公にする。

29. 南シナ海における海洋危機について、米国内の省庁間で議論する。それを通じて、中国の行動に対する心理的準備を整える。

30. 台湾、韓国、フィリピンやその他の地域的プレイヤーへの安全保障上の支援を増強することを通じて、彼らの自信を強化する。

31. ASEAN諸国との経済的および商業的関係を強化する。

32. 海洋の安定に関してインドとの協力を促進し、集団的な能力を構築する。

33. 多層的な制度に対する、強力で注目を集める米国の支援を維持する。

34. 中国との軍・軍間の協議合意(MMCA)の成功を活用する。

35. 朝鮮半島沿岸における米国の海軍プレゼンスの重要性をアピールする。

36. 南シナ海における「集団航行(group sail)」のアイデアを考える。複数国の艦船が集団で南シナ海を航行することにより、「航行の自由」に対する国際的なコミットメントを明らかにする。

37. サイバー安全保障の問題を引き続き優先的に重視する。

 本稿では残念ながらこれらの提言について個別に十分触れるだけの紙幅の余裕がないが、とりわけ注目したいのは、心理戦への対抗策として提言されている「36.」の「集団航行」のアイデアである。筆者がハルパー教授に質問した際、日米が協力して取り組むべき最も優先順位の高い「カウンター三戦」の取り組みの1つとして挙げられたのがこの 「集団航行」のアイデアであった。

 南シナ海を複数国の艦船が集団的に航行することで、「航行の自由」の確保に向けた国際的決意を明らかにすることがその趣旨であるが、この点はノンキネティックな「三戦」への対抗策が、形の上では(キネティックとまでは言わないまでも)物理的な行動となり得ることを示唆している。

 「集団航行」のアイデアは、同盟国やパートナー国を糾合して行うべき「カウンター三戦」の具体的な政策提言として、注目に値するであろう。同じく心理戦への対抗策として 挙げられている、「21.」の「常設太平洋艦隊」のアイデアにも留意する必要がある。

ソフトな対策はハードな軍事力があってこそ

 上記に関連して、最後に一つ述べておきたいことは、ノンキネティックな「三戦」ないし「カウンター三戦」の努力は、物理的な力の行使を伴うキネティックな活動と決して無縁ではない、と言うことである。それどころか、両者は極めて密接な関連を有しているのである。

 なぜならば、物理的な実力行使の後ろ盾があってこそ、ノンキネティックな領域における「さもなくば・・・」の威嚇が機能するからである。何らの力の後ろ盾もなく「三戦」や「カウンター三戦」を展開しても、それは所詮、空回りするに過ぎない。孫子の兵法も、基本的には敵に十倍する規模をもって、戦わずして敵を屈服せしめよ、との思想である。

 このことは、日米などによる「カウンター三戦」を考慮する上で重要である。ある程度のキネティック面での準備がなければ、「カウンター三戦」を通じて中国を牽制しようとしても、うまくいかないのである。例えば、法律の執行をする上では十分な海洋法執行機関の能力が各国に必要であろうし、「航行の自由」を守るために「集団航行」などを実践しようと思えば、各国が拠出できる艦船というものが必要であろう。

 同時にそのことは、「カウンター三戦」だけやっていれば、キネティックな投資を減らしてよいと言うものではない、ということも意味している。ある意味では、「三戦」ないし「カウンター三戦」の有効性は、キネティックな分野でどれだけエスカレーションに耐えられるか、によって決まってくるものだからである。

 そうしたわけで、「カウンター三戦」の努力は、キネティックな分野での取り組みと一体化したものとして理解されるべきであろう。ハードな能力を犠牲にしてソフトな対策で問題が解決するということはない、と考えるべきである。

 もっとも、「三戦」の概念は、ハードな能力だけでは全てを掴みきれないことも同時に教えてくれている。能力だけがあっても、ノンキネティックな分野での決意が欠如していれば、結局、紛争には負けてしまうだろう。

 我々に必要なのは、能力的な備えと精神的な備えの双方なのである。中国の「三戦」概念は、後者の重要性を我々に教えてくれている、とも言えるであろう。


【中国の「三戦」についてこちらも併せてお読みください】
・「「戦争をする国」なのは日本か中国か」
( 2014.08.21、北村 淳 )
・「オウンゴールで惨敗した中国の「三戦」広報戦略」
( 2014.06.06、宮家 邦彦 )
・「日本を絶体絶命の危機に陥れつつある中国」
( 2012.07.24、樋口 譲次 )
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42018


いつの間にか親中派がいなくなった米国議会
中国株式会社の研究(256)〜オバマ訪中を控えたワシントンで見る米中関係の現状
2014年10月24日(Fri) 宮家 邦彦
 この原稿はまたもや早朝ワシントン市内のホテルの一室で書いている。前回7月の米国出張では当地から見た中韓首脳会談について書いた(「中国の圧倒的存在感と苦悩する韓国〜中国株式会社の研究・250」)。あれから3か月経った今回は、ズバリ、米中関係の現状に焦点を当て、この米国最大の政治の街で感じたままを書いてみたい。

楊潔篪国務委員の訪米

米国務長官がクーデター後のエジプトを初訪問
米国のジョン・ケリー国務長官〔AFPBB News〕

 いつもの通り、事実関係から始めよう。

 今回筆者のワシントン入りは10月20日だったが、その直前には中国国務院で外交を担当する副首相級の楊潔篪・国務委員が訪米していた。

 目的は11月に北京で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の際予定される米中首脳会談の準備だという。

 ジョン・ケリー米国務長官は楊潔篪国務委員をマサチューセッツの自宅に招き、10月17〜18日の両日会談を行ったそうだ。

 報道によれば、楊潔篪国務委員は「米中両国は見解の相違を乗り越え、イスラム国やエボラ出血熱などの世界規模の脅威に協力して対処する必要がある」などと述べたらしい。まあ、そんなところだろう。

米中外相会談、経済・気候変動対策で協働を確認
外相時代の楊潔篪氏(右、左はヒラリー・クリントン国務長官=当時、2009年)〔AFPBB News〕

 楊潔篪氏は1950年5月、上海生まれ。文化大革命で大学教育の機会を一時奪われたが、1971年の共産党入党後に彼の人生は一転する。語学が堪能だった同氏は1973年に外交部負担で英国留学、帰国後もそのまま外交部に入り、英語の通訳官として活躍し始めたからだ。

 1980年代以降はワシントンの中国大使館での勤務が長く、北京でもほぼ一貫して北米畑を歩んだ。

 1998年には47歳で外交部副部長、2001年には50歳で駐米大使となっているから、中国外交部でも有数の米国通だろう。日本語が専門だった現在の王毅・外交部長とは正反対のキャリア形成である。

 楊潔篪国務委員は20日にホワイトハウスのスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官、チャック・ヘーゲル国防長官とも会談した。

 中国側メディアはいつもと同様、米中両国がアフガニスタン、北朝鮮の核問題、イラン、気候変動、イスラム国など対テロ対策などで協力していることを強調し、米中友好ムード演出に腐心している。

 以上は既に報じらたことばかりであり、詳細は繰り返さない。ここからご紹介したいのは、筆者が今回ワシントンで考えた最近の米中関係に関する見立てである。結論を先に言えば、楊潔篪国務委員の必死の「微笑外交」にもかかわらず、当地の関係者は今も米中関係をかなり醒めた目で見ているということだ。

中国に冷たくなった米国議会

オバマ大統領、アジア歴訪を4月に再設定 関係強化目指す
スーザン・ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)〔AFPBB News〕

 今回は少しホテル代を奮発して、ワシントン市内中心部の地下鉄ターミナル駅に直結する、筆者にしては珍しい「高級ホテル」を選んだ。

 予想通り、指定された多くの場所に地下鉄と徒歩だけで楽に行ける。これは便利だし、結果的に安上がりでもあるな、と実感した。

 というわけで、今回は市内中心部をやたらと歩き回った。ラッシュ時にタクシーに乗っても時間の節約にならない点は、あまり東京と変わらない。

 今回はバスと地下鉄を多用したから、ワシントン版「スイカ」カードが大いに役立った。少なくとも、タクシーなどを借り上げるより、はるかに安くて確実である。

 街を歩いていたら、ふと思い出した。昨年あたりからか、中国の英字紙「チャイナ・デイリー」がワシントンのシンクタンク、主要ホテルで配られるようになった。さらに、最近では、主要交差点に「ワシントンポスト」など主要紙に混じって「チャイナ・デイリー」の販売機が並ぶようになり、当時は大いに驚愕したものだ。

 ところが、今回街を歩き回って発見したことは、この「チャイナ・デイリー」の値段と販売部数だった。

 昨日見た限り、値段は1部25セントで以前と変わらない。しかし、当地で25セントは全然安くない。「チャイナ・デイリー」販売機の横には「Politico」など質の高い専門紙の無料配布機が数多く置かれているからだ。

 しかも、「チャイナ・デイリー」販売機の中は、朝早かったにもかかわらず、ほとんど空だった。偶然かもしれないが、元々販売機には実物を入れていないのではないかとすら感じた。それはそうだろう。忙しいワシントンで25セントも出して面白くもない中国のプロパガンダ紙を買う人などいないからだ。

 今回は中間選挙直前で議会が休会中だったこともあり、比較的多くの外交・安全保障を専門とする議会スタッフに会うことができたが、もちろん誰一人「チャイナ・デイリー」を愛読している者はいなかった。それどころか、彼らの口から出てくるのは中国に対する警戒感ばかり。米議会も大きく変わったと実感した。

ワシントンで見た米中の実態

 最後に、最近の米中関係に関する筆者の見立てを記しておく。もちろん、現時点で入手できた公開情報を基に分析した「独断と偏見」であり、あくまでも仮説に過ぎない。そうした前提で、以下の筆者の戯言にもうしばらくお付き合い願いたい。

●米中関係は首脳会談の前だけ好転する

 どこの国でもそうだが、特に、共産党一党独裁の中国では米大統領との首脳会談の結果が重視される。

 これに成功すれば、習近平総書記の覚えもめでたくなり、出世の可能性が高まる。逆に失敗でもしようものなら、外交関係を専門とする共産党幹部の首がいくつ飛んでもおかしくないからだ。

 だから、首脳会談前の中国は米国に対し下手に出る。少しでも米国との共通点を増やし、両国間協力の実績を高めたいからだろう。その点は米側もよく理解しているようで、このような中国側の「微笑外交」は実態を伴わないことが多い、などと達観していた。

●米議会に親中派がいなくなった

 振り返ってみれば、やはり分岐点は2008年のリーマン・ショックだったのかもしれない。賃金上昇や知的財産権侵害など中国経済の変化に伴い、それまで我が世の春を謳歌していた米国の対中進出企業の業績が悪化し始めたのだろう。

 アジアが専門のある議会スタッフは、最近中国進出企業の多くが事業縮小や撤退を始めており、これら企業の議員に対する働きかけが少なくなった分、米議会における対中親近感が低下していると嘆いていた。

 昔は中国一辺倒だった男がこうも変わるのか、と逆にこちらがびっくりしたほどだ。

●中国側は米側に対し実質譲歩する気がない

 米中関係が進まない最大の理由は、中国側の硬直した対外強硬姿勢だ。中国国務院の外交部がそのことを知らないはずはない。問題はそのような声が中国共産党中央の意思決定プロセスにほとんど反映されないことである。これにはさすがの米国も困っているらしい。

●それでも米国は中国との対話を望んでいる

 では米国は中国と対決姿勢を続けるのかと問われれば、答えは否だ。理由は2つある。第1は中国との軍事対決の可能性を完全には否定できない、第2は東アジア以外の国際政治で中国側の協力を得る必要があるからだ。

 いずれにせよ、米国側から対中関係を悪化させるインセンティブは働かない。米中関係改善のカギを握るのは米国ではなく中国である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/42050


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