01. 2014年10月21日 12:55:02
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現状では、学生の負けで終わりだろうなhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41978 上海エリートの目に 香港の民主化デモはどう映るのか 中国の政治体制こそが世界を主導する? 2014年10月21日(Tue) 姫田 小夏 「中国人は革命好きだ。5000年の歴史の中で6539回の革命を起こしてきたが、最終的には鎮められた。“占中”(香港のデモ)も同じで、これがもたらす結果は後退でしかない。デモをやっても歴史は変わらないのだ」――。 10月7日、英BBC(中国語オンライン版)は、清華大学法学院院長の王振民氏の特別寄稿を掲載した。同氏は全国香港・マカオ研究会の副会長でもある。A4サイズにして5ページにわたるそのメッセージは、中央政府を代弁する強気なものだが、語調はまるで香港の無邪気な大学生たちを諭すかのようでもあった。 民主化などあり得ないこと 無邪気な学生たち――実は大陸の同世代の若者も、選挙制度の民主化を訴える香港の学生たちに同様のまなざしを向けている。 さらには「無邪気」に加えて「幼稚すぎだろ」「笑わせる」とさえ言う者もいる。その理由は明確で、「中央政府がそんなことを認めるはずはない」と確信しているからだ。 ご存じのように、香港の学生たちの主張は「真の普通選挙の実現」である。しかしそんな抗議活動を、若い上海人エリートたちは「馬鹿げたことを」程度にしか思っていない。 あるビジネスパーソンは「民主化の要求に応えたら、いよいよ中央政府もおかしくなったと言わざるを得ない」と語る。別の上海在勤の会社員も「香港人は1人1票の直接選挙権と行政府長官の失職を要求しているが、中央政府がこれに応じれば人民を失望させることになる」とも言う。中国大陸の若い世代からすれば「民主化などあり得ないこと」なのだ。 一方で、「今の大陸の若者は政治について冷めているし、思考能力も不足している」というコメントもある。確かに、中国大陸の多くの若者は「民主化」が理解できない。香港の学生の要求する「民主」というものが一体どういう価値なのか、考えたことすらないのが現実だろう。 中国は西側の民主主義に屈しない 「民主主義」の基本精神は人間の自由と平等の尊重であり、選挙によって民意を政治に反映させるものだと捉えられている。そもそも中国は民主主義をどのように捉えているのだろう。 もちろん中国にも民主化を求める声はあり、北京を中心に多くの活動家たちが水面下で熱く語り合い、行動している。学者たちも民主主義について日夜、研究活動に勤しんでいる。政府役人もまた、途上国を中心とする多くの国家が民主化されるのを見て、それが戦後の国際社会における趨勢であることは認識している。 だが、共産党国家の中国では「西側諸国の民主制度が生んだ結果を決して最良と見なすことはできない」という主張が支配的だ。民主主義の仕組みは「世界のあちこちで問題になっている」(清華大学政治学教授)とし、懐疑的な態度を崩していない。そこには、中国古来の精鋭主義(エリート主義)こそが最良の統治法だとする自信と、西側諸国が作り上げた民主主義という価値観への否定が垣間見られる。 筆者は中国で上海人医師と民主政治をめぐり話をしたことがある。その医師が結論づけた言葉が印象に残っている。 「中国は歴史的にも一部のエリートが政治を動かす精鋭主義をその本質としている。この広い国土と人口で、一般市民が直接参加して民主政治を実現することは難しい」 中国では一般に知識人になるほど民主化に理解を示す傾向があるが、この医師の考え方は(恐らく上海出身という土地柄のせいもあるのだろう)非常に現実的なものだった。 精鋭主義では、民衆の要求を反映せず、ごく少数が政策を決定する。中国の古代の選挙は「少数が少数を選ぶ」というもので、それは「選挙」というよりむしろ「選抜」に近い。科挙制度もその表れの1つで、少数の中からさらに優れた少数を選ぶやり方だ。このような歴史に基づいて、中国人は「精鋭主義が中国に適した統治のあり方だ」と認識しているのである。 ある意味「居直り」にも受け取れるが、こうした考えは中国の学者らの研究にも表れている。論文や書籍には「西側諸国が主導する民主主義のあら探し」が色濃く打ち出されたものもある。大学生が手に取る政治学の教科書も、「民主主義への懐疑」を徹底的に刷り込む内容となっている。 ちなみにそれは次のように要約できる。 「多くの学者が自由民主主義を唱えるが、1980〜90年代の発展途上国の民主化は、西側諸国が想定した効果には至っていない。民主主義のモデルは様々であり、世界の国に2つと同じモデルはないのだから(他国に)追随する必要はない」 「民主主義は最良の政治形態だとされているが、批判も多い。人類社会の規律は結局のところ少数精鋭主義により統治される。それはプラトンの『民主政治は衆愚政治に落ちる』という言にも明らかだ」 選挙に行かなかった上海市民 一方、中国では部分的に選挙が導入されている。上海でも2011年11月に黄浦区と静安区を除く15の区と県で、5年に1度の人民代表の選挙が行われた。 中国では基本的に選挙ではなく、上からの命令で各人民政府のトップを選ぶ。だが、「郷」や「鎮」などの小さな行政単位では、代表者選びの選挙が徐々に導入されている。上海について言えば、市民は「全国の代表」は選ぶことができないが「区や県の代表」の直接選挙には参加できる。 しかし、上海市民は冷めていた。この選挙自体を「単なる形式だ」と言う者もいた。主な理由は「選挙に行っても世の中は変わらないから」というものだった。 中国の選挙法では、10人以上の有権者の推薦があれば候補者になれるが、当局の審査を経て立候補者となれるのは、結局「共産党にとって都合のいい人物」だ。愛国愛党を貫き、共産主義の思想と中国の特色ある社会主義思想を学習している者こそが「選ばれるべき代表」なのである。 選挙のさなか、「集団棄権」も発生した。上海市の区から代表を選ぶ直接選挙は「街道」(町内会)や「小区」(複数のアパート群を持つ住宅地)ごとに行われるのだが、ある小区では投票用紙がなかなか回収できなった。住民の関心は低く、ほとんどの住人は回収人に白紙の投票用紙を渡し、「好きな名前書いて投票してくれ」と丸投げした。 こうした部分的な直接選挙は、中国政府が試みる1つの実験だとも言える。それは「現代に合った中国流の統治の仕方を模索している」とも言えるし、あるいは「少しばかりの民主主義を味わわせて、不満の声を封じ込めるやり方」だとも考えられる。しかし、上海市民は無関心を示した。その根っこの部分には「諦め」があった。だからこそ、中国人は「幼稚で無邪気」という形容を香港人学生に与えたのかもしれない。 これからの国際秩序は中国が主導して構築 中国人はすでに、自分たちがどうやっても抗えない力に支配されている現実を知っている。ネット上には、香港人が民主化を要求したところで土台無理なことは分かっているだろう、と揶揄する声もあった。「あんたたちは中国の中の小さな島の、特別行政区の中の香港人に過ぎない。そこはアメリカなんかじゃないんだ」 一国二制度としてすでに中国に取り込まれた香港の殺生与奪権は中国にある。しかも、「民主化をしないことが経済発展につながった」という自信もある。中国にとって、西側の「民主主義」に価値は見出せない。 そして若い世代の中国人たちはこう言うのだった。「中国はもはや西側の顔色を窺う中国ではない。中華民族の偉大な復興は時代の必然だ」 これからは中国の主導で国際秩序が再構築される、西側の作った価値を勝ち取ろうなんて虚しいことはよせ、ということか。 【香港のデモの本質とは? こちらも併せてお読みください】 ・「香港:民主主義に甘やかされた駄々っ子」 ( 2014.10.16、The Economist ) ・「『俺の話を聞け』──北京に従う者、従わない者」 (2014.10.15、柯 隆 ) ・「香港はもう2度と元に戻らない」 (2014.10.10、Financial Times ) ・「香港を揺るがしたデモはどのように終わるのか?」 (2014.10.07、Financial Times )
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