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中国国境熱戦の跡を歩く 石井明著:権力掌握と結びついた歴史検証
http://www.asyura2.com/14/china4/msg/871.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 10 月 21 日 01:36:59: Mo7ApAlflbQ6s
 


中国国境熱戦の跡を歩く 石井明著
権力掌握と結びついた歴史検証

 本書の著者石井明氏の研究は、史料や現地調査に対する貪欲なまでの探究心と、それにもとづく丁寧な実証分析で知られる。本書は石井氏の戦地巡礼紀行と歴史考証がほどよくブレンドされた好著である。

 建国から現在まで、中国では少なくとも約20万人が国境線をめぐる戦争で犠牲となったという。台湾海峡の金門島の戦い、朝鮮戦争、中印国境紛争、中ソ国境紛争、ベトナム戦争と中越戦争、西沙(パラセル)海戦等々、著者はこれらの戦争の戦跡あるいは戦死者が祀(まつ)られた烈士陵園を訪れ、それぞれの歴史的意味を再吟味している。最終章では、今後の衝突回避を期してであろうが、尖閣についても史的考察を行っている。

 建国直後、共産党軍は勝利を楽観して国民党が支配する金門島への総攻撃を仕掛けたが、完全に敗北した。その結果、台湾統一の早期実現可能性を失った。同じく建国直後に北朝鮮支援のために参戦した朝鮮戦争では、18万を超える戦死者を出した。参戦当初中国軍は国連・韓国軍を敗走させたが、やがて反撃に遭って38度線付近で膠着状態となった。

 インドとは1962年に国境線をめぐって戦火を交えた。中国側の戦闘準備は周到であり、大躍進政策に失敗した毛沢東はこれをテコに復権を狙ったという。69年の珍宝島をめぐる中ソ国境紛争は、中国側が戦闘に有利な場と考えこの地を選んだ。著者は、文化大革命の遂行のために毛沢東には外敵が必要であったと見る。

 中国はベトナム戦争にも一部参戦しており、戦死者は1千人を超えた。79年の中越戦争とその後の闘いの結果、中国側には1万を超える死者が出た。中国はこれを「自衛反撃」というが、ケ小平の権力掌握の一つのプロセスでもあった。同じく「自衛反撃」とされる74年の西沙海戦も、資源確保を含む南方進出のための足場固めであった。

 尖閣を論じた最終章で、著者は中国が台湾を領土の一部とすると同時に、尖閣を台湾の一部と見ていると指摘する。ここから台湾の存在が中国の対尖閣行動を制約しているという。

 本書を通読して再認識させられるのは、中国は主権を守るためならいかなる犠牲も躊躇(ちゅうちょ)しないということである。またこれらの戦争の多くは、指導者個人の権力確立と関係があった。中越戦争35周年の今年、青春時代を失った当時の兵隊たち約4千人が自主的に追悼集会を行う写真を見た。過去の戦争の傷跡は十分に癒やされていない。
(岩波書店・2400円)

 いしい・あきら 45年生まれ。東大名誉教授。東アジア国際関係史専攻。著書に『中ソ関係史の研究』など。

《評》防衛大学校長
国分 良成

[日経新聞10月19日朝刊P.25]

 

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コメント
 
01. 2014年10月21日 13:23:44 : nJF6kGWndY

>中国は主権を守るためならいかなる犠牲も躊躇しない

経済成長を達成し、これまで低姿勢で狡猾に進めてきた戦略が転換したのは間違いないな


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41997
中国軍戦闘機の異常接近から見える狡猾な狙い 強圧的になる中国軍の対処を危惧する
2014年10月21日(Tue) 小野田 治
 本年9月28日、東京で開催された第10回東京−北京フォーラムに、安全保障分科会のパネリストとして出席する機会を得た。昨年10月に北京で行われた同フォーラムでは、日中間の関係があらゆる分野で完全に冷え込んでいる状況で、安全保障分科会の雰囲気は暗かったが、本年は昨年に比べて明るい雰囲気で始まった。

日中海上連絡メカニズムの協議再開に合意

戦闘機の異常接近、米の批判に中国が反論
米軍P8哨戒機のパイロットが撮影した中国軍の戦闘機〔AFPBB News〕

 フォーラム直前の9月24日、日中両政府が中国山東省青島市で高級事務レベル海洋協議を開き、偶発的な衝突を回避するための「海上連絡メカニズム」の構築に向けた防衛当局間の協議を再開することで原則一致したというニュースのせいである。

 同協議は、2010年に始まり2012年には合意に達して調印寸前だったが、9月の尖閣諸島の所有権移転を機に中国の態度が急変し凍結状態に陥っていたものである。

 また、本年4月には、同じ青島市で開かれた西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)において海上における不意遭遇の際のルール(CUES)について参加20数か国が合意したところでもあり、凍結されていた同協議の再開に期待が増していたところでもあった。

 分科会の前半、海洋における危機管理メカニズムについて、冒頭に日本側から協議再開を歓迎する旨の発言があり、その後日本側の出席者が、「海洋の安全とともにその上空における偶発的事故を心配する」とコメントしたのに対して、中国側から、昨年11月に中国が設定した東シナ海防空識別圏を日米両国が国際法違反だと強く非難するのは不当である、当該防空識別圏は諸外国が設定しているものと同じものであり国際法上問題はない、むしろ自衛隊機、米軍機が危険を招いているという趣旨の発言があった。

 筆者は、「おや?」と違和感を覚えた。中国側パネリストには陸軍少将が2人出席していたが、研究部門の所属で空軍種の専門知識には薄いと考えていたので、先方から航空の問題を積極的に取り上げてくるとは思わなかったからである。

 筆者は協議再開のニュースを聞いて、調印寸前の状態から容易に調印に至るだろうと考えていたが、それは誤りだと気がついた。中国は協議が凍結状態にある間の変化を協議に持ち込むつもりなのである。その変化とは「東シナ海防空識別圏」である。

 この点に触れる前に、昨年11月23日の東シナ海防空識別圏設定の発表以降に、当該空域で何が起こっているかについて概説しよう。

2014年5月24日:偵察中の自衛隊の偵察機2機を妨害

 2014年5月24日午前11時頃、東シナ海の公海上、日本の防空識別圏と中国の防空識別圏が重複する空域を飛行中の海上自衛隊の哨戒機OP-3Cに対して、中国軍のJ-11戦闘機が約50メートルまで接近し、またその約1時間後には同空域を飛行する航空自衛隊の電子測定機YS-11EBに対して、同様に中国軍のJ-11戦闘機が約30メートルまで接近したことを防衛省が当該機の写真とともに公表した。

 J-11は、優速な状態で低速のプロペラ機の至近距離を後方から抜き去っていく飛行を繰り返した。30〜50メートルと言えば、自衛隊機のパイロットがハッとして背中を冷や汗が伝うほどの至近距離である。

 日本側の発表から数日の後に中国国防省は、「自衛隊の偵察機2機が中露海軍共同演習を偵察、妨害するため、東シナ海防空識別圏に侵入した。中国軍の航空機は直ちに離陸して所要の識別及び防止措置をとり、演習中の艦船及び航空機の安全を確保した」、「自衛隊機は国際法および国際的な標準に反して共同演習の区域に侵入し危険な行動を行った」と日本を非難した。

2014年6月11日:異常接近しているのは航空自衛隊

米、中国に国際空域での緊張回避を呼び掛け
中国軍の最新鋭Su-27戦闘機〔AFPBB News〕

 最初の事案から約2週間後、6月11日午前11時頃から12時頃にかけて、前回と同様に中国軍のJ-11戦闘機2機が、自衛隊OP-3CおよびYS-11EBに対してそれぞれ45メートル、30メートルに接近する事案が発生した。

 防衛省の発表に対して中国国防省は、「白を黒と言う事実無視」であり、「悪人が、自分が起訴される前に被害者を起訴するようなものだ」と日本を非難し、上記の自衛隊機2機に対してはJ-11戦闘機2機を派遣して150メートル以上の距離から両機を識別、確認したものだと述べた。

 さらに同コメントは、東シナ海防空識別圏を哨戒中の中国軍偵察機Tu-154に対して、航空自衛隊のF-15戦闘機2機が午前10時17分から18分の間に最短距離で30メートルまで接近したと発表し、その証拠としてビデオを公開した。

2014年8月19日:長期にわたる米の頻繁な中国本土接近飛行を停止せよ

 さらに本年8月19日、海南島の東220キロを飛行する米海軍のP-8哨戒機に対して中国空軍のJ-11戦闘機が異常接近する事件が発生した。米国防省報道官によれば、中国戦闘機は米軍機の機首付近を進行方向に対して直角に横切ったり米軍機の進行方向に沿ってその下や横に接近したりする危険な飛行を行い、最接近は主翼間の距離がわずか6メートルだったという。

 米国政府は中国政府に抗議を行ったが、中国国防省報道官は中国機の行動は国際法の安全義務を遵守したものだと反論し、米国が長期にわたって広い範囲で中国への接近飛行を頻繁に繰り返していることが根本原因であり、中国の安全を脅かすものだと主張した。

 10月4日付のワシントンポストによれば、この事件以前に3度の危険な接近があったことを国防省の幹部が認めているとのことである。

 一方、中国の偵察機や哨戒機は東シナ海防空識別圏の東端付近まで定期的に飛行を行っているほか、8月25日には中国のY-8航空機2機が台湾の防空識別圏内で台湾戦闘機に触接された。中国国防部はこの飛行は定期的なもので特に異常な状況は発生していないとコメントしている。

米中協議の行方

 米中両国は昨年6月の首脳会談で、主要な軍事活動の相互通報や公海およびその上空における行動規範の作成について合意し、本年8月25日から29日にそのワーキンググループ会合が行われた。

 本件はその席上で議論されたと米紙が報道しているがその結果は明らかにされていない。中国側が米国に対し中国本土に接近する偵察活動を問題にしたと思われる。一方、米国は2001年のEP-3事件のように、中国の危険な飛行が不測の事故につながることのないよう、中国戦闘機の対処行動を改善させようと考えている。

 米軍にとっては、中国が開発中の戦略原子力潜水艦や搭載ミサイル、対艦弾道ミサイル、防空ネットワークなどの情報が極めて重要であり、偵察活動をやめるわけにはいかないことから、議論は平行線ではなかったかと推測される。

中国の防空識別圏は「日本がターゲット」、中国国営紙
日本固有の領土、尖閣諸島〔AFPBB News〕

 中国国防部のウエブサイトを見ると、識者の言として、中国軍は米軍の頻繁な接近偵察行動に対して無条件で複数の対抗策をとるべきだと主張し、スーパー・マーケットに買い物に行くような感覚でやすやすと行動させてはならないとしている。

 米軍機の合成開口レーダーやGPSシステムに対する妨害を仕かける、米軍の有人機やUAVによる長時間偵察に対して中国側もUAVによって長時間対処するといった方法が提案されている。さらに、米国が1972年にソ連との間で締結した公海およびその上空における事故防止協定のような協定を中国と締結しようとしているが、そう簡単ではないともコメントしている。

 その理由の1つとして、同協定には公海およびその上空における船舶および航空機の安全について双方ともに最大の注意と配慮を払わなければならないと記載されており、米国本土に対する接近偵察能力を持たない中国にとっては、中国本土への接近偵察飛行を続ける米国を一方的に利することになるからだという。

 もう1つの理由として、米ソ協定を締結した際には国連海洋法条約は存在していなかったことから同条約との整合が必要であると述べている。

無から有を生み出す中国の知恵にどう対処するか

 中国はかねて排他的経済水域(EEZ)内における航行上の自由は平和的なものに限られ、沿岸国にとって有害なものは航行の自由原則に該当しないとし、EEZおよびその上空における軍事的活動は沿岸国の同意が必要と主張してきた。

 この主張は、国連海洋法条約の内容を超えるものであり、日米両国ともにこの主張を認めていない。中国の東シナ海防空識別圏の東側境界線は、中国が主張するEEZの境界線にほぼ合致している。

 海洋は領海、接続水域、EEZ、公海という区分によって沿岸国の権利が規定されているが、その上空は沿岸国が排他的権利を有する領空と、自由航行が許される領空以外の空域しか存在しない。

 そこから透けて見えるのは、中国の協議再開の目的が、東シナ海防空識別圏の存在を否定する日本にその存在を認めさせるとともに、中国本土を偵察監視する飛行を断念させることにあるということである。

 さらに言えば、防空識別圏を空における排他的空域として定義しようとする意図すら有しているかもしれない。もう1点付言するが、中国の防空識別圏の公告には防空識別圏は中国の領土の外に設定するとしていて尖閣諸島は防空識別圏から除外されている。

 尖閣諸島を日本の領土として認めているのではもちろんない。自国の領土としているから圏外となっているのである。従って中国の防空識別圏の公告を認めることは、尖閣諸島を中国の領土と認めることになるのである。

 一連の経緯を俯瞰してみると、中国は平和で安定した状況を一方的な行動によって不安定化させて緊張状態を作り出し、それを交渉材料に使うという方法を各地で展開していることに気づく。無から有を生み出す中国四千年の知恵なのだろうか。

 少なくとも平和国家を標榜する我が国にはこのような芸当はできない。できないということが明らかだからこそ中国にとってはそれが弱点と映る。我が国はどう対処すべきか?

 尖閣諸島の領有権も同様だが、一方的に作り出された問題は認めないことが基本である。そもそも問題の因みは日本側にある、問題の存在をまず認めよと中国は迫るがそうはいかない。

 問題の存在を前提にしなくても対話は可能であり、海上連絡メカニズムに合意することも可能である。重要なのは偶発的事故によって両国がエスカレーションの危機に陥らないようにすることであり、それによって得られる利益は中国も同様なのである。

 こうした基本的考え方を同盟国である米国と共有し、地域諸国とも共有して、再開されるメカニズムに関する協議を透明性の高い論議にしていくことが不可欠である。

 協議再開にもかかわらず、APEC(アジア太平洋経済協力)以降は中国戦闘機が引き続き危険な行動をとり続けるのではないかと筆者は考えている。中国の目的が本土への接近偵察飛行を止めさせることであり、東シナ海防空識別圏を認めさせることだからである。

 南西方面における自衛隊や海上保安庁の体制整備を急がねばならない。冷戦の際に日本海やオホーツク海で起こっていた状況と同じ状況が既に生起しており、自衛隊などは抑制的にかつ効果的にこれに対処することが求められる。再び長い戦いになるだろう。


【中国戦闘機の米軍機、自衛隊機への危険な接近行為について、こちらも併せてお読みください】
・「中国軍戦闘機が米軍機に異常接近、南シナ海で何が起きているのか?」
( 2014.09.04、北村 淳 )
・「米軍機にも急接近していた中国戦闘機」
( 2014.05.30、織田 邦男 )
・「自衛隊機に危険なスクランブル、中国の強硬姿勢は「馬鹿げた脱線」か戦略的行動か」
(2014.05.29、北村 淳 )


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