02. 2014年10月21日 13:18:42
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ウクライナ問題で、大分、得をしたが基本的に、中露はユーラシアの最大のライバル同士だから、いつまでも蜜月は続かない http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42007 中国の「新シルクロード」に地政学リスクの影 2014年10月21日(Tue) Financial Times (2014年10月18/19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 中国とドイツを結ぶ渝新欧鉄道、将来性に期待高まる 今年3月、ドイツ西部デュイスブルクで、渝新欧鉄道の路線図の前に座る習近平・中国国家主席(中央)ら〔AFPBB News〕 2014年3月のある日、ドイツ・ライン川のデュイスブルク河港でのことだ。銅鑼(どら)の音が3度響き渡る中、中国の習近平国家主席が1本の貨物列車の到着を出迎えた。そして習氏はドイツに対し、両国を結ぶ新しいシルクロードを一緒に整備しようと呼びかけた。 これは、習氏のお気に入りの戦略プロジェクトへの参加要請だった。習氏は2013年の国家主席就任以降、中国と欧州をつなぐ新シルクロードのアイデアに外遊先でたびたび言及している。 先月のスリランカ訪問では、15億ドルが投じられる港湾整備プロジェクトの起工式に出席し、「21世紀の海上シルクロード」なる構想を売り込んだ。 習氏がこれほど熱心なのは、中国の内陸部、とりわけ中国西部と欧州との結びつきを強化したいためでもある。額面通りに受け取るなら、これは中国が国際貿易の有力プレーヤーとして台頭してきたここ20年間で最大の貿易ルート再編成に発展し得るプロジェクトだ。 ウクライナ紛争を巡るロシアとEUの緊張の余波 しかし、デュイスブルク河港にやって来た貨物列車は、地政学リスクがグローバル化に影を落としている典型的な事例でもある。渝新欧鉄道と呼ばれるこの鉄道は、中国の重慶からデュイスブルクまで全長約1万1000キロを結ぶものだが、線路のかなりの部分がロシア領内にあり、路線の管理はドイツ鉄道とロシア鉄道の合弁会社トランス・ユーラシア・ロジスティクスが担当しているのだ。 ウクライナの紛争のためにロシアと欧州連合(EU)との間で通商面の緊張が高まっているときだけに、この鉄道はグローバルなサプライチェーンの中でも脆弱な環の1つになっている。 この輸送ルートの人気は、ヒューレット・パッカード(HP)をはじめとする西側のハイテク企業や、BMWやメルセデス・ベンツといったドイツの自動車メーカーの間で少しずつ高まっている。付加価値の高い製品を中国・欧州間で輸送する手段としては、従来型の海上輸送より効率が高いと見なされているためだ。 HPでは、重慶近郊の工場で作った製品の3分の2近くを鉄道で欧州に送っているという。また今年9月には、完成車をドイツで積み込んだ列車が初めて中国に到着している。 列車の運行会社とこれを利用する企業は、ウクライナの紛争の影響はまだ出ていないと話している。「遅れは全く生じていない」。ドイツ鉄道の貨物輸送部門、DBシェンカーはそう述べている。 しかし、この鉄道の将来は習近平氏の重商主義的な野心と同様にロシアのウラジーミル・プーチン大統領の好意にも左右されることから、HPなどの利用企業は、以前策定したコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)に再び目を向けている。 HPの欧州物流担当者ロナルド・クィジュウェクト氏は、この鉄道のサービスが停止される可能性を、中東での紛争を受けたスエズ運河の閉鎖になぞらえている。「今日では、そのリスクは常にある」と同氏は言う。「だから常にプランBを用意している」 中国・EU間のモノのやり取りは、その大部分がまだ海路で行われている。デュイスブルクには中国発の貨物列車が週に4〜5本到着し、いずれも40フィート・コンテナを40〜50個積んでいるが、現代の貨物船なら一度に数千のコンテナを運ぶことが可能だ。 しかし欧州・中国間の鉄道輸送量は急増しており、無視し難い存在になっている。DBシェンカーによれば、同社の欧州・中国間の貨物列車はここ2年間で、20フィート・コンテナ換算で4万個のコンテナ貨物を輸送している。このサービスは2011年に始まったばかりだ。 企業にとってはやはり大きな魅力 このルートの魅力は単純である。一部の企業には、グローバル化のさらに効率的なバージョンのように映るのだ。 HPのクィジュウェクト氏によれば、鉄道輸送なら、HPの製品を中国の工場の玄関からデュイスブルクの倉庫の入り口まで平均22日間で運ぶことができる。つまり海上輸送に比べれば半分ほどの日数で済むことになるが、コストは20〜25%高くなるだけだという。 また、HPにしてみれば鉄道輸送の方がより直接的にコントロールできるため、その分だけ海上輸送よりも予定が立てやすくなるという。確かに、海上輸送を使う場合は大手企業でさえ、時折生じる輸送スケジュールの思わぬ変更に翻弄されることがある。 HPは今のところ鉄道輸送を増やす計画でいる。ただ、それはロシアが欧州との国境を貨物列車に開放し続けるかどうか、そしてプーチン氏がどんな計算をしているか(その中には長期的な計算もあるかもしれない)によって左右される。 ロシア政府は中国を味方につけておきたいと思っている。しかし、米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院とスウェーデンの安全保障開発政策研究所の共同事業「シルクロード研究プログラム」を統括するニクラス・スワンストローム氏は、両国は基本的には中央アジアの戦略的ライバルだと指摘している。 同氏によれば、中国とロシアの政府は、中国と欧州を結ぶ鉄道の計画で競い合う関係にある。長期的には、習近平氏が提唱するシルクロードはロシアを通過せず迂回する経路を通る。一方のロシアは、既存のシベリア鉄道を欧州から中国に向かう鉄道幹線として売り込んでいる。 スワンストローム氏はロシアの計画にリスクがあると見ている。ロシアは欧州に天然ガスを供給するパイプラインを、自らが閉じたり開いたりできる戦略的ツールとして利用したことがあり、鉄道でも同じことをやり始める恐れがあるというのだ。 ロシアが鉄道を封鎖するリスクはあるが・・・ 欧州にとっての救いは、もしロシアが鉄道で天然ガスパイプラインと同じことを始めれば、それによりロシア政府が抱える長期的なリスクは欧州政府の、さらには中国政府のそれよりも大きなものになり得ることだ、とスワンストローム氏は指摘する。 欧州は中国にとって最大の輸出先である一方、「天然資源を除けば、ロシアには中国に長期間提供できるものがほとんどない」からだ。 列車はしばらくの間、中国とデュイスブルク河港の間を行き来する。しかし河港の関係者は、地政学リスクが濃い影を落とすようになる恐れがあることを認識している。「列車が今後も、これまでのようにスムーズに運行され続けたら、その方がむしろ驚きだ」。河港の広報担当者、ユリアン・ベッカー氏はこう語る。「これからどうなるのか、我々には分からない」 By Shawn Donnan in Washington |