02. 2014年10月10日 07:16:59
: jXbiWWJBCA
「The Economist」 日本と中国に歩み寄りの兆しAPECでの首脳会談の実現なるか? 2014年10月10日(金) The Economist すっかり冷え込んでいる日中関係に、雪解けを示す確かな兆しが広がっている。事実、11月に北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が会談する可能性が高くなってきた。これまで中国は、安倍首相の行動が一線を越えていると非難してきた。同首相が昨年12月に帝国主義の象徴である東京の靖国神社を参拝したからだ。
雪解けの始まりは夏だった。7月、福田康夫元首相が習主席を訪問した。福田氏は安倍首相からの手紙を携え、厳しい日中関係に対する「危機感」を習主席と共有した。日中の学者や官僚たちも会合を重ね、両国が歩み寄るための方法を模索している。 習主席も中国は「日中両国関係の長期的、安定的、健全な発展を望んでいる」と語った。また、最近、日本のビジネスリーダー数十人が北京で歓迎を受けている。9月23、24日の両日には、東シナ海における懸案事項に関する協議を再開するため、日中高級事務レベル海洋協議が港湾都市の青島で開かれた。そして今、安倍首相自身は習主席と会談することがいかに意義あることかを初めて公にしている。 意図せぬ衝突の回避で進展 中でも特に際立っていたのは青島での会合だ。この種のものとしては2年ぶりに開催された。この会合で中国と日本は、海上における意図しない軍事衝突やその他の緊急事態に対処するための「海上連絡メカニズム」の運用開始に向けて協議を再開することで合意した。中国は、尖閣諸島(中国ではこれらの無人島を釣魚島と呼び、領有権を主張している)に対する日本の実効支配に2012年以来激しい抵抗を続けている。この間、両国の巡視船は毎日のように遭遇してきた。 海上の安全どころか、小さな出来事があっという間に軍事衝突にエスカレートする可能性がある。日本と、そして日本を保護する立場にある米国は、日本とのホットラインを受け入れるよう長らく中国に対して求めている。 果たして妥協はできるのか 両国首脳が実質的な会合を持つことが最良のシナリオではあるが、うわべの握手を交わすだけでもそれは大きな出来事となる。日本側の仲介者は中国側に対し、戦犯が合祀された靖国神社に安倍首相が参拝するのは、昨年12月の参拝が最後になると密かに伝えてきた。中国は靖国神社を2度と参拝しないことを安倍首相がはっきり保証するよう強く求めているが、同首相がそれに従うとはとても考えられない。 また、首脳会談の再開に向けて中国側が提示しているもう1つの条件、すなわち尖閣諸島を巡って領土紛争が存在することを日本が認知することについても、日本が譲歩するとは到底思えない(中国はこれまで意識的に尖閣諸島を支配したことはなかったが、比較的最近になって同諸島の領有権を主張するようになった)。両国がうまく引き下がってこの件を棚上げにできるような玉虫色の打開策を講じるべく、水面下での努力が進められているのにはこうした理由がある。だが過度の期待は禁物だ。 中国がこうした条件を出してはいるものの、両国の関係を回復することは可能だ。中国がAPECを主催し、域内で開かれる他の大型会合(ミャンマーでの東アジアサミットや豪州でのG20)に参加するこの時期に、日本叩きをしているとの印象を会議参加国に与えることが得策にならないことを中国政府は理解している。 また、日本人の中には中国が対日関係の改善を望むのは同国の経済が急激に落ち込んでいるからだと見る向きもある。とりわけ、日本から中国への直接投資は現時点で、前年同期に比べて5分の2以上減少している。日本企業が中国以外の東南アジア地域に投資先を求めている理由の少なくとも一部は厳しい日中関係にある。 それでも日本の高官は依然として、日中関係の再建に極めて冷ややかな目を向けている。彼らにとって中国は、主張が強く攻撃的で、時には傲慢で、領土拡大主義を掲げる国なのだ。さらに、自ら提唱する「法による支配」についても、都合の良いときしか尊重しない国でもある。 ©2014 The Economist Newspaper Limited. Oct. 4th, 2014 All rights reserved. 英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。 このコラムについて The Economist Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。 世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。 記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。 このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141007/272246/?ST=print |