02. 2014年9月18日 07:41:14
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軍事より怖い、中国が世界一の金保有国になる日 着々と進める金塊生産と金輸入、狙いは米国に代わる基軸通貨国 2014年09月18日(Thu) 渡邉 誠一 有力産金業界団体のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の統計によると、中国本土の宝飾品・投資需要は2013年に前年比32%増の1065.8トンと過去最高を記録、インドを追い抜き世界最大の金需要国となった。2013年、世界最大の金需要国に 中国の金需要が急増した要因は金価格急落だ。 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物価格が2013年4月15日、米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和の早期縮小観測の台頭などで前日比140.30ドル安と、1日の下落幅としては1980年1月22日(143.50ドル)以来約33年3カ月ぶりとなる史上2番目の落ち込みを記録した。 金価格の急落でアジアでは熱狂的な金買いが起こり、中国本土の主な金輸入先のシンガポールや香港などでは延べ棒や金貨が店頭で品切れ状態となった。
中国国内でも金製品を買い求める人が殺到し、「ゴールドラッシュ」を引き起こした。「4月中旬の金価格急落で、中国大媽(中国のおばさん)が10日間で300トン以上の金を購入した」との報道や、5月初旬のメーデー3連休時には来客数が通常の1.5倍となった店舗もあった。 こうした金需要急増は、香港政府統計局の「中国本土の香港からの金輸入量」データにおいても裏づけされている。
同データによると、2013年3月に過去最高となる136.185トンを記録した後も、5月から6カ月間連続で100トン台を継続。年間では2012年の557.478トンから過去最高の1158.162トンに倍増し、初めて1000トンを上回った。 金需要が飛躍的に増大したのはいつ頃からか さて、中国は世界最大の金需要国となったわけだが、いきなり世界一となったのではない。それなりの時間と政策も必要だった。 手始めに中国人民銀行(中央銀行)が2004年に個人による金地金投資を1950年以来初めて認可したことで、金保有を禁止されていた個人の金買いは胎動を始める。 そして、2010年8月に国内銀行に金の輸出入量拡大を許可するとの方針や金の対外取引を認める商業銀行の対象増加など、金市場をさらに発展させるためのガイドラインを公表した。 また、2010年12月に中国工商銀行がWGCの協力の下に純金積み立てを開始すると、銀行側の積極的な販売姿勢で人気が爆発、口座保有者は中国全土で1000万人を超えた。 政府によるこうした金市場発展策により、もともと金選好の強かった国民が金購入しやくなったことで、中国は年間1000トンを超える世界一の金需要国となったのだ。 金生産量も世界トップへ 世界最大の金需要国である中国は、世界最大の金生産国でもある。 トムソン・ロイター傘下の英貴金属調査会社、ゴールド・フィールズ・ミネラル・サービシズ(GFMS)のデータによると、2013年の中国の金生産量は438.2トンと世界最大となり、第2位のオーストラリア(266.1トン)を大きく引き離している。
中国の金生産は1990年までは年間100トン以下であったが、中国政府による金の埋蔵調査や金鉱開発で90年代に入ると100トンを超えた。さらに、2000年以降になると民間投資も増え、2007年に南アフリカ共和国を抜いて世界最大の金生産国となった後も、他の生産国との差を広げ、ここ20年間で生産量は4倍に跳ね上がった。 2013年まで7年連続で世界一の座を維持、世界の金生産の15%を占めるまでになっている。鉱山開発は一朝一夕にはできない。国策による金需要爆発に備えての鉱山開発が功を奏したのだ。 出所:WGC、GMFS しかし、それでも旺盛な国内需要を満たすことはできなかった。中国黄金協会(CGA)によると、2013年の中国の金の消費量は前年比41%増の1176.40トンと生産量を大幅に上回った。その結果、不足分を海外から大量に輸入することになったのだ。
民間だけでなく、政府も金保有を拡大へ 中国の金準備高は長らく、600トンで変動がなかったが、2009年4月24日に突如、中国の新華社電で当時の国家外貨管理局局長の話として、「中国の金準備は現在、1054トンとなり、2003年以降454トン増加した」と伝えられた。 当時の世界の金市場規模は約4000トンであり、相当なインパクトがあった。現在まで正式報告はないが、中国の金輸入が急増するたびに世界の金市場では「中央銀行が金を購入した」との観測が流れる。 また、中国の外貨準備高は2013年末で3兆8200億ドルと過去最高を記録したが、その多くがドル資産で占められており、中国国内からは「外貨準備高の多様化や人民元の国際化のために金準備を増やすべきだ」との見解が度々報道されている。 そのような背景もあり、2013年5月初旬の「中国大媽が10日間で300トン以上の金を購入」との報道については、真偽はともかく、多くの金市場関係者が驚いたに違いない。なぜならば、100トンを超える金購入は一国の中央銀行が購入するレベルだからだ(例えば日本の金準備高は765トン)。 さらに、中国の金生産量は2007年から7年連続で世界一だが、ほとんど輸出されていないこともあり、「中国人民銀行が購入しているのではないか」、「国庫に入っているのではないか」と邪推したくなるのだ。 また、中国政府が深セン、上海に続き、北京を経由した金輸入を許可したことも、金準備を拡大しているとの憶測を呼んでいる。 というもの、香港−深センルートの輸入では香港政府統計局のデータにより取引が公になってしまうからだ。 中国政府による金購入では目立ってしまうので、規制緩和により国民に代わりに購入させていると見る向きもある。一党独裁国家ゆえに、いざとなったら吸い上げることも可能だからだ。 国民に金を買わせているもう1つの理由は、中国人民銀行の金準備高拡大で、世界の金市場を支配されるのを快く思わない某国(欧米)に妨害されるのを防ぐためではないかと見られる。 中国では金に関する統計は国家機密扱いであり、国際通貨基金(IMF)に正確なデータを報告する義務もないため、前回のようにある日突然、金準備高が公表され、数百トンあるいは数千トンレベルで増えていてもおかしくはない。 なお、世界の金市場では、中国本土の香港からの金輸入統計や生産量を基にした推定で3000〜5000トンに達しているとの見方が出ている。 官民挙げてての金購入の狙いは 前述のように中国政府が2004年から金市場発展策を推し進め、国民に金購入を奨励する一方、政府自体も秘密裏に金準備高拡大を進めていると思われている狙いは何か。 世界唯一の超大国である米国に金融・経済・軍事面で対抗する国家となるためというのが筆者の推論である。 歴史上覇権国家と呼ばれた英国、そして米国は世界を圧倒する金準備を誇っていた。WGCの統計によると、米国の公的金準備高は2014年8月時点で8133.5トンと世界第1位であるのに対し、中国は世界第7位となる1054.1トンにとどまっている。
中国人民銀行が今後、金準備高を公表し、市場関係者の予測通りに現在の水準より数千トンレベルで増えていれば、米国に次ぐ世界第2位の金準備国になっていることは確実。 また、中国は共産国家であり、銀行や国民が退蔵している金を国庫に吸い上げれば、米国を凌ぐ世界最大の金準備国になることも可能であり、中国が世界の覇権を握る1つの方策が、国を挙げての金買い集めなのだ。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41736 |