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APECでの日中首脳会談は実現するか!? アジア周辺への「微笑外交」を加速化させる習近平の狙いとは
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40439
2014年09月15日(月) 近藤 大介 北京のランダム・ウォーカー 現代ビジネス
11月の北京APEC(アジア太平洋経済協力会議)を控えた習近平主席が、アジア周辺への「微笑外交」を加速化させている。習近平主席、彭麗媛夫人、栗戦書中央弁公庁主任、王滹寧中央政策研究室主任、楊潔虎国務委員の「5人組」による周辺諸国行脚である。
私が8月に北京を訪問した際、中国の外交関係者は、次のように解説した。
「習近平主席は、周辺外交を『親・誠・恵・容』の4字の実践だと述べている。周辺国と親しくし、誠の心で接し、共に恵みを与え、広い心で受け容れるという意味だ。そして、習近平主席の持論である『シルクロード経済帯』と『21世紀の海上シルクロード』を構築する。それによって、アジアを中国を中心とした古代からの伝統的な姿に戻したいのだ」
■「中国モンゴル関係のさらに良い明日へ」
まず第1弾は、7月3日、4日の韓国訪問だった。これについては、7月の本コラムで記したので省略する。
続いて第2弾は、8月21日、22日のモンゴル訪問である。習近平5人組は、21日午前11時、ウランバートルのジンギスカン国際空港へ到着し、アルタンホヤグ首相夫妻の歓待を受けた。
習近平主席はこの日、モンゴルの主要4紙に「馬を走らせ中国モンゴル関係のさらに良い明日へ」と題した署名原稿を載せた。その大意は、以下の通りだ。
〈 モンゴルと聞くと、「天は蒼蒼、野は茫茫、風に草が靡き、牛や羊が見える」という風景を思い出す。私も2008年に訪問した時、深い印象を持った。
あれから6年経ち、国賓としてこの麗しい土地に戻ってきた。今年は両国の国交正常化65周年であり、友好条約締結20周年だ。「良馬は遠路をいとわず、良友は困難を畏れない」と言うが、中国はずっとモンゴルの最大の貿易相手国であり、最大の投資国だ。2013年には130万人が両国を往来し、うちモンゴル人の中国訪問は100万人を超えた。
中国は常に、ダブルウインの関係を目指しており、絶対に中国独り勝ち、独り占めの常態にはしない。中国は両国の鉄路を敷き、高速道路を敷き、モンゴルの発展に尽くしていく。歴史上、シルクロードもティロードもモンゴルを通っていた。今回の訪問を契機に、中国とモンゴル双方の夢を実現させたい。 〉
エルベクドルジ大統領との首脳会談後、共同宣言を発表し、両国関係を全面的戦略パートナーシップ関係に格上げするとした。
8月22日には、午前11時から、モンゴル国会で、「相互協力によって両国関係発展の新時代を創ろう」と題した講演を行った。
〈 両国は山水が連なる隣国であり(4700qの国境を接している)、中国は「二つの百年」の目標に向かって、モンゴルは改革と発展のために、それぞれ奮闘している最中だ・・。世界で最も著しく発展しているアジアにおいて、共に協力して発展していこうではないか。 〉
2日間で、エルベクドルジ大統領、アルタンホヤグ首相、エンシボロド国会議長らと個別に会談した習近平主席は、訪問の締めとして、民族衣装に身を包んだエルベクドルジ大統領の案内で、ウランバートル郊外のナーダムを見物した。ナーダムは、相撲・競馬・弓射からなるモンゴルの夏祭りだ。習近平主席は、ゲルに入って座ったり、2頭の名馬を贈られたりしてご機嫌だった。馬には習近平主席自ら、アルタイとクルルンと名付けた。
■「私はタジキスタンで胸躍る気持ちだ」
さて今回、習近平主席ら「5人組」は、3回目の旅に出た。9月11日から19日まで、タジキスタンの首都ドゥシャンベで行われた上海協力機構(SCO)の第14回首脳会議出席、モルジブ、スリランカ、インド歴訪である。
まずは、11日の午後12時半に、ドゥシャンベ国際空港に到着。ラスアサダ首相、ジャボリ副首相、アスロフ外相らの出迎えを受けた。
その前日、習近平主席は、タジキスタンの新聞『人民報』と国営通信社『フオワール』に向けて、署名原稿を出した。
〈 孔子は「仁者は山を楽しむ」と述べたが、私はタジキスタンで胸躍る気持ちだ。両国は2000年以上前の漢代に、張騫が2度にわたって西域へ行きシルクロードを開いた際に始まったものだ。
22年前に、タジキスタン共和国が独立した時、中国は初めてタジキスタンと国交を樹立した。昨年5月にラフモン大統領が国賓として訪中し、私と共同声明を発表。両国関係を戦略的パートナーシップのレベルまで引き上げることにした。
今年の上半期、両国の貿易は前年同期比で48%も増えた。両国を結ぶ道路が完成し、ドゥシャンベの2基目の火力発電所と鉱業冶金工業園、天然ガスのパイプラインD管がまもなく着工する。両国関係は、いまや最高潮に達しているのだ。 〉
昨年の両国の貿易額は、19.59億ドル(前年比5.3%増)で、タジキスタンにとって、中国は3番目の貿易相手国である。
ラフモン大統領との首脳会談では、習近平主席は次のように述べた。
「今回が初のタジキスタン訪問になるが、パミール高原の伝統国に着いて、気分爽快だ。昨年5月、私とラフモン大統領が、両国の戦略的パートナーシップ関係を決めて、両国の新時代に入った。秋はまさに収穫の季節だ。両国の関係を発展させて、共に果実を得ようではないか」
■4回目となる中ロ首脳会談も実施
ここまでは、予期していた動きだった。だがこの後、習近平主席は、思いもよらぬ行動に出た。ロシアのプーチン大統領、モンゴルのエルベクドルジ大統領と、3ヵ国首脳会談に臨んだのである。
これは、ウクライナ危機で完全に欧米を敵に回してしまったロシアが、東側の中国とモンゴルを味方につけるべく画策しているものだ。「シルクロード経済帯」を提唱している上に、ここのところアメリカとギクシャクしている中国は、「ここに勝機あり」と見て、乗ったのである。
モンゴルは、「陸続きで中ロ両大国に東西を挟まれ、毎日毎分が脅威」と、あるモンゴルの外交官が吐露したのを聞いたことがあるが、中ロが提案してきたことを拒否はできない。
3ヵ国の元首は、鉄道連結からエネルギー協力まで、多くのテーマについて話し合った。習近平主席は、来年の反ファシズム勝利70周年と、抗日戦争勝利70周年を、3ヵ国で祝おうと提案したという。この3ヵ国のそのまた東に位置する日本としては、何やら不気味な動きだ。
この時、習近平主席とプーチン大統領は、今年すでに4回目となる中ロ首脳会談も行っている。2月のソチ五輪開幕式前日、5月の上海のアジア信頼醸成会議、7月のブラジルBRICS首脳会談に続く会談だ。
この二人の会談を見ていて面白いのは、昨年3月のモスクワでの初対面の際は、15年政権のプーチンに教えを請う習近平という図式だったのが、ここのところは立場が逆転していることだ。いまでは欧米に叩かれてピンチのプーチンに、習近平が救いの手を差し伸べてやっている構図である。
■APECでの日中首脳会談は実現するか?
12日には、上海協力機構の首脳会議が行われた。
上海協力機構は、2001年6月15日に、上海で成立した国際機構である。中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンがメンバー国で、モンゴル、パキスタン、イラン、インド、アフガニスタンがオブザーバー国、そしてベラルーシ、スリランカ、トルコがパートナーシップ国である。正メンバーの6ヵ国を合わせると、ユーラシア大陸の6割にあたる3018万㎢、人口15億2500万人、GDPは11兆ドル(全世界の14.9%)に達する。
今回は、まずは正メンバー国の6人の国家元首だけの少人数会議を行い、その後に、他のオブザーバー国などを含めた拡大会議を行った。
今回のテーマは、@地区の安全維持と経済提携、Aウクライナやイラク、シリア問題に関する意見交換、Bオブザーバーとパートナーシップ国との交流、C来年のホスト決定、D「ドゥシャンベ宣言」への署名だった。
続くモルジブは、2010年以降、中国が最大の観光客数を誇っている。スリランカは、中国が第2の貿易相手国であり、スリランカ国内に両国の自由貿易区を設定する話し合いが進められている。中国としては、第2のパキスタンにしたいのだ。インドのモディ新政権の重要性は言うまでもない。
こうした習近平主席の動きを見ていると、11月のAPECで、初の安倍晋三首相との日中首脳会談を行う可能性は、十分にあると思う。だが、安倍首相と違って、作り笑いを浮かべることができない習近平主席なので、「冷たい会談」になることは避けられないかもしれない。
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